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第3章 修行

第19話 修行の日々

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 ファンタジック歴1096年。スカイマウンテンーー頂上への洞窟内ーー

 レックスがハウルの下へ修行のために赴いてもうすぐ半年となる。

「フゥッ、ハァッ!」スパッ! スパッ! 現在レックスは村を出る時に持ってきた短剣2本で洞窟内に生息している魔物を斬り倒していた。

「ふぅ、大分力も付いてきたみたいだな」そう呟きながらハウル様の家に向かっていた。

 半年前10歳で騎士団の養成学校に入学する前、ハウル様に言われていた事もあって約1年間ハウル様の下で修行させてもらおうと思いこのスカイマウンテンを訪れ、事情を説明してハウル様も快く僕を迎え入れてくれた。

 ここでの暮らしとして基本は朝身支度をした後どちらかのルートで下山し、ルート上や近くの森に巣食っている魔物を倒して手に入れた素材を換金する。

 そのお金と魔物から手に入れたお金でお昼ご飯を済ませたり、2人分の夕ご飯と翌日の朝ご飯とハウル様のお昼ご飯の材料を購入する。

 そして帰りは朝とは違うルートで頂上に帰り夕ご飯を食べた後、ハウル様からその日出会った魔物を報告しつつ、それらについての情報を教えてもらったりしている。

 そしてたまにハウル様から直接指導を受けている状態だ。それらの行動を繰り返して過ごしてきたことで前世では同じくらいの時にはまだ知らなかった様々な事を習得することが出来た。

 まず何と言ってもアビリティだ。どんな者でも必ず1つ神より与えられし他の者より多少超越した能力があり、前世でも養成学校の1年目で教えてもらっていたと思うが本来は家族や自分に近しいものに見極めてもらうのだという。

 しかし僕はそれを見極めてもらう前に心が塞ぎ込んでしまったり、両親を殺されたりして分からずじまいで学校に入学し、ようやく刀剣術系であると判明したぐらいだった。

 しかし今世では今までの経験から刀剣の中でも短剣術であると自他とも理解出来ていた。

 次にスキルと呼ばれるこれまでの経験などで得られる能力のことで、僕も今世の今までの体験からどうやら「強斬スラッシュ」「双剣」「集中(神経を研ぎ澄まし、他者の居場所や弱点を探知)」というスキルを身に付けている事が分かった。

 それ以外にも各魔物の特性やら対処法などを教えてもらったりと充実した毎日を送っていた。


「戻りました」「おぉ帰って来たか」そう挨拶を交わして夕ご飯の準備をし、食事にした。

「どうじゃ、ここに来てもう半年となるが自分自身の事を理解し力も大分付いてきたと実感してきたじゃろう」

「はい。まだまだ手を焼いてしまう奴もいますが、ほとんどのはそつ無く倒せるようになってきましたし」「そうか」と言ってハウル様は何かをお考えになっている雰囲気だった。

「ではそろそろ良いかもしれんのぉ」「そろそろって?」ハウル様の発言に僕が問いかけると、「砂漠の森のエルフ族の長、ヨートスを覚えておるか?」「はい! 覚えています」

 約半年前に僕とアッシュ兄ちゃんがトロル襲撃の対処法を求めてここに来た後、向かったエルフ達が住んでいる森の長だった人だ。

「そのヨートスから時間が出来たら手伝って欲しい事があると前に言われた事があってのぉ」「そうだったんですか」「うん。お主の修行も兼ねてそろそろ行ってやろうかと思っていたところじゃ」「そうですね。ところでいつ頃頼まれた事なんですか?」「なぁに、ほんの3、40年前じゃ」ズゴォ!! ハウル様の発言を聞いて僕は前方にぶっ倒れた。

「な、何じゃ?」「さ、3、40年前がほんのって······」「儂や彼奴からしたらそれぐらいはほんのの範囲じゃ」「そ、そうですか」

 今まで全く気にしてはいなかったが、ここにきてハウル様がいくつなのか少し気になった。

「というわけで明日は朝からエルフの森へ向かうからな」「分かりました」それから夕ご飯の後片付けなどをして眠りについた。

 翌朝、身支度やら食事を済ませ出発の時を迎えた。「それじゃ行くとするか」「はい。でもどうやって?」と問いかけた。流石にどちらから行くにしても時間が掛かるような······。

 と僕が思っているとハウル様が「大丈夫じゃよ」と言ってクイックイッと僕を手招きし、「わしの肩に手を乗せるんじゃ」と言われたので手を乗せた。

 その後ハウル様が杖で地面を叩いた直後、フワッ! と一瞬地面から足が離れたような感じがしたと思ったら、次に地面に足が付いた時には今までとは別の感触を感じた。

 そして周りを見たら砂漠地帯が視界に入った。「ここって······」僕が尋ねたら、「見覚えがあるじゃろう?」とハウル様が答えた。確かにそこはエルフ族の森があると思われる辺りの砂漠地帯だった。

 が、「今のは?」と当然の疑問を聞いたところ、「一種の瞬間移動のようなモノじゃ」と答え、そういう事も出来るのねと思った。

 そして、「では行くぞ」とハウル様が言ってエルフ族の森があると思しき方向へ歩き出したのだった······。
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