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第10章 学校生活3

第55話 大活躍

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 あっという間に冬期休暇の1週間が過ぎ、1年生最後の期間が始まった。

 教科の授業はこれまでの内容を踏まえて来年から学ぶ事の基本情報(現在の世界情勢やヒト族内の実情など)を学習する事となり、実技は1対1の個人対決や集団同士による対決やら実践訓練を中心に行われた。

 そんなある日、バーミリアン先生から次の授業には出なくても良いと言われ、代わりに······。


 お昼ご飯を食べた後、僕はベアーズを連れて魔法科1年のあるクラスが授業のために訪れている王都内の屋敷に向かっていた。

 その屋敷の前には既にそのクラスの生徒と担当の先生がいた。

 その先生に「あの、バーミリアン先生からこちらの授業に参加するように言われたレックス・アーノルドです」と挨拶をした。

 その先生は「おお、来てくれたか。では授業内容を説明する」と説明を始めた。

 この屋敷には大分以前から幽霊ゴースト系の魔物が潜伏しており、授業の過程やクエストで度々駆除しているのだが、また再び潜伏しだしたとの事だ。

 普段は2年生が授業で駆除するのだが、今回は彼ら(Sクラス)でも大丈夫と学校側が認めて実施する事となったそうだ。

 なぜなら、「感知魔法が使えない場合は動物を用いて気配を感知させているんだ」というわけだからだ。

(動物、という事は······)そこまで聞いて僕だけでなく魔法科の生徒らも一斉にベアーズを見た。そういう事ね。

 そのため、今回はまずベアーズに魔物を感知させ、気配を感じた所に1人が出現魔法をかける。そして魔物が姿を現したらすかさず滅却魔法をかける。ということを順次行うとの事だ。


 説明が終わったところで先生、僕 (ベアーズ)、最初に指名された生徒の順に屋敷へ入り、僕はすぐにベアーズを地面に放した。

 直後にベアーズはある場所へ駆け出し、ピタリと止まって唸り出した。すぐに先生が指名した生徒に出現魔法をかけるように指示した。

 生徒がベアーズの唸っている先へ出現魔法をかけたら、フワッと魔物が目の前に現れたのだ。

(うそぉ!?)僕だけでなく魔法をかけた生徒も、また後ろで待機して見学していた生徒らも全員が驚いていた。

「何をしている! すぐに滅却魔法をかけんか!!」先生の言葉で我に返った生徒はすかさず滅却魔法をかけた。すると目の前の魔物は消滅した。

 魔法科の生徒らは全員がさらに驚いており、僕も(凄いな、ベアーズ)と思ってベアーズの方を見たら、さっきまでいた場所にはもういなかった。辺りを探していたら別の場所に移動してまた唸っていた。

 そのため僕は「あの、先生。ベアーズがもう別の場所に向かって唸っているみたいなんですが······」と伝えた。

 それを聞いた先生は「何をしている! 次の者、すぐ準備をせんか!」と言われたので次の生徒が出現魔法をかけ、魔物が現れたところで滅却魔法をかけた。

 その後はベアーズが唸る・そこへ出現魔法をかける・魔物が姿を現したら滅却魔法をかける······が繰り返されたのだった。

 1階がひと通り終わったらそのまま2階へベアーズと魔法科の生徒らは移動し、僕と先生は入り口近くで待機していた。

 暫くしたらベアーズが2階から降りて来て僕の近くに寄って来た。

 その後魔法科の生徒らも降りてきて「先生、ひと通り駆除し終わりました」と報告した。

 先生も屋敷全体の気配を確認して「その様だな。皆良くやった。今回の実践訓練は合格だ!」と言われたので生徒らも「やったぁーー!!」と喜んだ。

 その後先生が「レックス君、今日はありがとう。君のお陰でスムーズに駆除が出来たよ」とお礼を言われた後僕らは学校に帰った。

 帰りながら「今日は大活躍だったなぁ、ベアーズ」僕が話し掛けてもベアーズは素知らぬ顔をして前を向いていた。(ったくコイツは)と思いながら学校に向かった。


 この授業以降もあらゆる学年や科のクラスが授業でベアーズを利用するようになり、最初のうちはその都度僕も同行したのだった(そのため兄ちゃんやお姉ちゃん、またアリスのクラスにもお邪魔した)。

 それによってベアーズの存在も多くの生徒に知れ渡り、注目の的となった。

「ベアーズすごい人気者になってんなぁ」「うん。だけど当の本人は全く関心ないみたい。スペースの中でも周りに人がいようと関係なく走り回ったり眠ったりしてるから」「本当に森にいた時のように過ごしてるみたいね」「そうなんだ」ご飯を4人で食べる機会があった時もベアーズの話題で持ちきりだった。

「だけど、本当にベアーズちゃんあちこちで活躍してるみたいね?」「うん。まさかこうなるなんて、あの時は考えもつかなかったよ」

 確かに最初のような魔物の感知を始め、探索物の発見やらちょっとした実験体(危険なものではない)にされたりと多岐で重宝されている。

「ハウル様もここまで見越して連れて行ってはって言ったのかなぁ?」「そうかもしれないな」「きっとそうだよ」などと会話をした。

 その後徐々にベアーズも特に先生達には警戒しなくなったので、引き渡す時だけ立ち会って僕は自分の授業に出るようになった。
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