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第25章 大奮闘
第195話 避難拠点づくり4~材料集め・土石材~
しおりを挟む採掘場に向かいながら団長はエルリック王子に事の経緯を説明した。
「それで石材や土砂を······」「ええ、そうなんです」「確かにあそこの石や土は建物を建てるのには何かと役に立つだろうが······」「ホントですか!?」「ああ」「「(やった!)」」
僕達や団長はエルリック王子の言葉に喜んでいたが、唯一最後尾を歩いていたヒューズ隊長だけは難しい顔をしていた。
暫く歩いて「ここが採石場だ」と案内された場所は、様々な種類の石が埋まっていると思われる崖が見渡す限り上空までそびえ立っていた。
僕達がその光景に見とれている間にエルリック王子はある種類の石材をまとめて置いてあるところに歩み寄り、「おーい! この石なんてのはどーだー?」と聞いてきたので近くに向かった。
目の前に置かれている石は確かにウッド村の家や各地の建物の土台に使われている石材に似ていた。
「どうだ? ヒューズ」「ええ······確かにこれなら、問題ないでしょう」ヒューズ隊長が石材を色々調べた上で問題ない事を告げた。
「では」「はい。この石材以外もこの辺りの物であれば恐らく建物建設の際に活用できそうですので、ここの土石材だけで大丈夫でしょう」「「やった!」」「良かった」と僕達と団長が喜び安堵した直後、「ただ問題は······」とヒューズ隊長が何かを言いかけた。
「も、問題は?」「これらの土石材をどうやってあの建設予定地まで運ぶかです」「「あっ!」」「そうか。言われてみれば確かに······」「ええ。恐らくアンドレア王の事ですから、そこまでは協力はしないなどと仰ってくるはずでしょう」(有り得る)とその場にいた全員がそう思った。
「我々で運ぶにしましても、相当の人手や日数が必要となるでしょうし、流石に無理な話でしょう」「そうだな。確かにそこまで考えは及んでなかった」
「そうですね。いくらなんでもこんなに沢山の土砂や石材を一度に大量に運ぶ方法なんてありませんよね」マーシュの発言を聞いて(一度に大量に······かぁ)マーシュの言葉を聞いて僕も考えだした。
(確かに、こんなに沢山の物を移動させるなんて······移動?)それまでのみんなの会話を聞いていた時には感じなかったが、僕がふと今頭で思った移動という言葉がひっかかった。
(移動、移動、移······移動の羽!? そうだ! これらを移動の羽を使って運べれば······あ)そこまで思い付いてつい先日の出来事が脳裏に浮かび、直後「あーーーっ!!」と大きな声を上げてしまった。
僕の叫び声を聞いてマーシュや団長らはもちろん、エルリック王子や採石場にいた他のドワーフ族の人達も驚いたのだった。
「い、いきなり何だレックス! 大きな声出して!」「ど、どうしたんだいレックス君?」マーシュと団長が声をかけてきたので「な、何とか、なるかもしれません」「な、何とかって?」「ここの土石材を建設予定地に運ぶ方法です」
「「ええっ!?」」「ど、どうやって?」「こ、これを使ってです」と先日世界樹にもらってから肌身離さず持ち歩いている世界樹の葉を皆に見せた。
「それは?」「······ま、まさかそれは」「はい。世界樹の葉です」「ええっ!?」「やっぱり」「ど、どうしてお前がそれを?」
「少し前に世界樹へ葉を分けて下さいとお願いしたら1枚だけ(本当はジェシーと1枚ずつ)もらえたんだ」「そうだったのか」「しかし、世界樹の葉で何を?」
「······そうか、ここへの移動の羽にするのか!」「「あっ!!」」団長の思いつきに他の2人も気付いた。
「はい! この採石場近くへ到着出来るように移動の羽を作り、ドワーフ族の人達にはそこまで採掘した土石材を運んでもらい、後は僕達の方で移動の羽を用いて運べば、手間はかかるかもしれませんが僕達だけで運べる事になります!」「確かに。それなら土石材を準備してもらえばいいだけとなるからな」「やったじゃないか、レックス!」「うん!」
取り敢えず建設予定地まで土石材を運ぶ方法の目処が立った事で再び喜びあった。
まさかあの時もらえた世界樹の葉がこんなにも早くに役立った事に僕自信が一番驚いていた。(本当にありがとう、世界樹)そう空を見上げながら世界樹に感謝したのだった。
そんな僕達の様子を驚きすぎて呆然と見ていたエルリック王子に団長が「エルリック王子! この採石場近くで移動の羽に変える事の出来そうな物か場所はございますか?」「は、はい! それなら、すぐ近くに作業中の安全を祈願するために祀っている守り岩があるんで、それでなら、多分······」「ではそちらまで案内をお願いします!」「わ、分かっただ」とエルリック王子に守り岩まで案内してもらった。
少し歩いた所に守り岩が祀られていたので、「じゃあレックス君」「はい!」と僕は持っていた世界樹の葉を守り岩に押し当てた。すると世界樹の葉は以前マリンタウンで変化させた時と同じ様に茶色い羽の形に変化していった。
そして羽の形になったところで僕と団長が確認のために一旦王国の外に向かい、羽で飛んでくる実験をする事にした。その結果は······無事飛んで来る事が出来たのだった。おまけに、団長が片方の手を大きな岩に当てていたところ、その岩も一緒に飛ばせれる事も確認出来た。
こうして建設に利用出来そうな土石材を見つけられ、運搬方法も決まったところで改めてアンドレア王に許可をもらいに向かった。
団長からの説明を聞き、改めて土石材利用の許可を求められたアンドレア王はあまりの事態の展開にただただ驚くばかりだったのだ。
そして「クッ、ククククク、アーハッハッハッハ······」「ア、アンドレア王?」「良いだろう。好きなだけ使ってくれ。それと······」「それと?」
「実際に建設を始めたらこちらからも人を派遣してやろう」「「えっ!?」」突然のアンドレア王からの提案に全員が驚いた。
「よ、宜しいのですか!?」「ああ。会ってすぐに俺もこんな事態を見せられたからな。そいつに興味を持ったまでだ」と僕を見ながら答えられた。「ありがとうございます!」
こうして僕達はドワーフ族のアンドレア王から土石材料の利用許可と、建設時の人的派遣という思いがけない収穫を持って王都に帰還する事にした。
その帰りの道中、「あの、団長。1つ良いでしょうか?」「ん? 何だい? レックス君」「卒業式の時、フィンラル様と何を話されたのですか?」とアンドレア王の言った事が気になってて団長に聞いてみた。
「ああ、あれか。大した事じゃないんだけど······」
場面は今年の養成学校卒業式開始直前まで遡る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「パーシバル殿!」
「ああ、フィンラル王。お久しぶりです」
「去年の卒業式以来ですな」
「ええ。またこの時期が参りましたね」
「本当に。今年卒業する者達にも我々は昨年大変お世話になりましたし」
「そういえば、今年の卒業生も全員ダークエルフとの戦いには参戦してましたね」
「ああ。本当にあの時はお世話になったが、その事以外でも今年卒業する者の中で興味のある者がいるものだからね」
「ほぉ、そのような子が。一体誰なんですか?」
「恐らくそなたも名前は聞いた事があるだろうし、もう既に関わった事があるかもしれないが、"レックス・アーノルド君"だよ」
「レックス君ですか!」
「やはりご存知でしたか」
「ええ。私も二度ほど依頼を受けてもらいましたから」
「そうでしたか。我々も今の世界樹の苗木を見つけてもらったりと色々世話になったものだから、本当に今後の活躍に興味を持っているんだよ」
「その期待に応えられるよう入団した際にはしっかりと指導させてもらいますよ」
「ああ。楽しみにしているよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「って言う会話をしていたんだ。恐らくその話をお聞きになられたんだと思うよ」「そういう事だったんですか」「ああ」その話を聞いて納得したのだった。
後日、世界樹の葉をドワーフ族の王国への移動の羽に変えた事をジェシーに伝えるため彼女の部屋を訪れた。
「それじゃあ」「うん。あの時もらった世界樹の葉がもう役に立ったんだ」「凄い! それじゃあ、私がもらったのも······」とジェシーは自分がもらって机の引き出しに閉まっている世界樹の葉を見つめた。
「きっといつか必要になる時が来るはずだよ」「そうね。ありがとうレックス。教えてくれて」「良いんだよ。それじゃあ」「うん!」僕はジェシーの部屋を出た。
レックスが部屋を出て行った後、ジェシーは再び机の引き出しに視線を送ったのだった······。
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