83 / 236
emitte lucem et veritatem
viginti
しおりを挟む
なんらかの組織があるのではと考えていたが、間違いではないのかもしれない。それに新たに浮かんだ疑問がある。なぜ、十二年も前のことを知っているのかという事だ。
「俺の雇い主」
個人とも組織とも取れるような答えを返してきた。それは、はっきりと応える事が出来ないということなのかと予想する。だが、先ほど敵対勢力と言っていた。それに加え『やつら』と言った。それらの表現から少なくとも二つ、同じような組織があるということになる。一つはサイラスが所属すると思われるもの、そして他にもう一つ。
「なら、その雇い主の敵対勢力とは?」
少しでも情報が欲しいと思い尋ねてみたが、明らかにサイラスの様子が変わる。困惑しているような感じで、何かを考え込んでいる。これも答えられないのか? そう思った瞬間、サイラスの口が開いた。
「あーあれや、魚や」
おそらく、それが精一杯の答えだったのだろうと予想できる。だが、その一言で十分だった。魚とサイラスが表現したもの、それは深きものと呼ばれる、水棲種族の事を示唆する。父なるダゴンと母なるハイドラを始祖とし、人間と交わりダゴン秘密教団を作り上げている。そして旧支配者の一柱であり、ルルイエに眠る水を象徴する邪神クトゥルーを復活させようとしているものたち。
それに敵対するものといえば、同じく旧支配者の一柱であり、風を象徴する邪神ハスターの復活を望むもの。
「ハスター教団……」
思わず、頭に浮かんだ言葉を斎は口にする。それに対し、サイラスは沈黙を守る。その様子に、自分の予想が当たっているのだと斎は確信した。
ハスター教団は、おぞましい、忌まわしいなどといわれる集団として有名であるが、それは創作世界の中でのことである。現実に存在しているとするならば、それはどのような集団なのかと疑問が湧きあがる。少しでも情報を得られればと思いはしたが、返って謎が増えていく状態だ。
組織の事を聞き出すのは無理だろうと判断をし、斎は改めてサイラスを見る。天弥とそう変わらないであろう年齢で、なぜこのような組織と関わりがあるのか謎だ。そして、なぜ深きものと戦えるのか、それも疑問である。
深きものは下級の奉仕種族とはいえ、無限の寿命と冷酷さを持つ種族だ。外的要因での死を迎えはするが、人の身で立ち向かうのは無謀な事だ。
「なぜ、魚と戦える? それに、風の影響を受けないのはなぜだ?」
サイラスには出会った時から謎がある。あの不思議な風の中で、その力の干渉を一切受けずにいた。
「あー、それはお守りのせいや」
あっさりと答える。
「お守り?」
こうもあっさり答えるとは予想もしていなかったため、少し拍子抜けする。
「これや」
そう答えるとサイラスは、胸元に手を入れ、金色の鎖を手にする。それを引っ張り、鎖に繋がれたコインのようなものを服の中から取り出す。それが見えたとたん、斎の鼓動が大きな音を立て、感じていた嫌な感じが大きくなる。
「なんだ……? それ……」
「俺の雇い主」
個人とも組織とも取れるような答えを返してきた。それは、はっきりと応える事が出来ないということなのかと予想する。だが、先ほど敵対勢力と言っていた。それに加え『やつら』と言った。それらの表現から少なくとも二つ、同じような組織があるということになる。一つはサイラスが所属すると思われるもの、そして他にもう一つ。
「なら、その雇い主の敵対勢力とは?」
少しでも情報が欲しいと思い尋ねてみたが、明らかにサイラスの様子が変わる。困惑しているような感じで、何かを考え込んでいる。これも答えられないのか? そう思った瞬間、サイラスの口が開いた。
「あーあれや、魚や」
おそらく、それが精一杯の答えだったのだろうと予想できる。だが、その一言で十分だった。魚とサイラスが表現したもの、それは深きものと呼ばれる、水棲種族の事を示唆する。父なるダゴンと母なるハイドラを始祖とし、人間と交わりダゴン秘密教団を作り上げている。そして旧支配者の一柱であり、ルルイエに眠る水を象徴する邪神クトゥルーを復活させようとしているものたち。
それに敵対するものといえば、同じく旧支配者の一柱であり、風を象徴する邪神ハスターの復活を望むもの。
「ハスター教団……」
思わず、頭に浮かんだ言葉を斎は口にする。それに対し、サイラスは沈黙を守る。その様子に、自分の予想が当たっているのだと斎は確信した。
ハスター教団は、おぞましい、忌まわしいなどといわれる集団として有名であるが、それは創作世界の中でのことである。現実に存在しているとするならば、それはどのような集団なのかと疑問が湧きあがる。少しでも情報を得られればと思いはしたが、返って謎が増えていく状態だ。
組織の事を聞き出すのは無理だろうと判断をし、斎は改めてサイラスを見る。天弥とそう変わらないであろう年齢で、なぜこのような組織と関わりがあるのか謎だ。そして、なぜ深きものと戦えるのか、それも疑問である。
深きものは下級の奉仕種族とはいえ、無限の寿命と冷酷さを持つ種族だ。外的要因での死を迎えはするが、人の身で立ち向かうのは無謀な事だ。
「なぜ、魚と戦える? それに、風の影響を受けないのはなぜだ?」
サイラスには出会った時から謎がある。あの不思議な風の中で、その力の干渉を一切受けずにいた。
「あー、それはお守りのせいや」
あっさりと答える。
「お守り?」
こうもあっさり答えるとは予想もしていなかったため、少し拍子抜けする。
「これや」
そう答えるとサイラスは、胸元に手を入れ、金色の鎖を手にする。それを引っ張り、鎖に繋がれたコインのようなものを服の中から取り出す。それが見えたとたん、斎の鼓動が大きな音を立て、感じていた嫌な感じが大きくなる。
「なんだ……? それ……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる