apocalypsis

さくら

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suggestio veri, suggestio falsi

octo

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 サイラスの言葉に斎は、張り詰めていた緊張と共に、全身の力が抜けるのを感じた。少なくとも、その時点では見限られてはいないということだ。それ以降、特に天弥に変化はなかったと思う。ただ、急速にサイラスと親しくなったことは気がかりだ。
 斎の表情が見る間に変わっていくのを、サイラスは見つめた。先程までの様子で、どれだけ斎が天弥にのめり込んでいるのかが、手に取るように理解できた。
「先生と天弥はラブラブやん。何でそんなこと聞くんや?」
 我ながら少し意地悪かと思いつつ、何も分からない振りをして尋ねる。自分の言葉に表情を曇らせる様子を見て、少しだけ後悔をする。
 斎の中に残っていた不安がくすぶり出す。先程のような、胸が千々に乱れることはないが、少しずつ懸念が広がっていく。
「あ、言いたくないんやったら、別に言わんくてもええけど」
 斎はサイラスを見つめる。背後のカーテンと共に、風にたなびく金髪が月光を浴びて輝いている。おそらく、何もかも知っているであろうその存在を、羨ましく思う。
 サイラスのように、何もかも知る事が出来れば、不安は消えるのだろうか。それとも、天弥を抱いて自分のものにしてしまえば、不安に苛まれる事もなくなるのだろうか。答えの分からない問題を前に、思い悩む。
「どうすれば……」
 斎はゆっくりと口を開く。
「どうすれば、総てを知る事が出来るんだ?」
「奴らの仲間になればええんとちゃう? 今の先生やったら、諸手を上げて歓迎してくれるで。紹介しよか?」
 今の心境や感情を搾り出すような斎の問いに、サイラスは即答した。
「せやけど、そんな事になったら天弥と敵対するのは確定やけどな」
 考え込む斎に、サイラスは言葉を続けた。
「それは無理だ」
 続けて発せられたサイラスの言葉に、斎は即答する。天弥を望むためにすることだというのに、それでは本末転倒になってしまう。
「さよか」
 分かりきっていた斎の返事に、サイラスは抑揚の無い声で言葉を返す。もし仲間になると答えたなら、簡単に仕事が一つ片付いたのだが、それも仕方が無い。天弥の事を伝えずに、騙すように連れて行ったとしても後味が悪いだけだ。自分としては、堂々と叩き伏せて引きずって連れて行く方が、性に合っている。
「ほな、そろそろ帰るわ」
 窓枠に足をかけ外へ出ようとした。
「あ、そうや」
 何かを思い出したかのように、動作を止め斎へと視線を向けた。
「胡桃沢斉明が帰国しとるから、色々と聞いたらええんとちゃう? 教えてくれるかどうかは知らんけど」
 これ以上、斎が望む事を話すことは出来ないし、疑問に答えることも出来ない。そう思い、胡桃沢の名前を口にする。
 本当に何でも知っているのだと、斎は軽くため息を吐きながら、窓から飛び出すサイラスを見送った。
 サイラスが残した言葉を、深く思索し始める。まずは自分を調べている事についてだが、これは完全に天弥絡みで間違いは無い。サイラスの言い方では、自分が天弥に何らかの影響を与えると考えられている。
 初めて出会った時の天弥は、何も反応がない子供だった。何度か接触していくうちに、反応を示すようになっていった。それは偶然なのか必然なのか、他に何か要素があったのかは分からない。そもそも自分が原因なのかどうかも不明だ。
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