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サイラスは、天弥の部屋へ入ると辺りを確認した。あまり、男子高校生の部屋だとは思えない様子に、少し呆気に取られる。部屋に飾られているヌイグルミたちに、明るい色合いのカーテン、チェック柄のベッドカバー、どちらかといえば女子高生の部屋と言った方が良いかもしれない。
気を取り直し、改めて室内を観察する。最悪の事態も想定していたが、状況的にそれは無いと分かり、少し安堵する。もし、深きものが天弥を攫ったのだとしたら、あの強烈な臭いが残っているはずだ。
窓に近づいた。鍵はしっかりと掛けられている。普通にドアから部屋を出たと思われるが、家を出る時にどこから出たのかが分からない。自宅の鍵と思われるものは、携帯と一緒に机の上に置かれている。母親の話では、玄関も窓も鍵を開けられていたところはなかったそうだ。
部屋の中央に立ち、少し考え込む。攫われたのでなければ、天弥は自分の意思で出て行った事になる。その場合、どうやって密室状態から抜け出したのかが謎である。ミステリー小説のようなトリックを使ったのかと一瞬考えたが、そんな事をする必要がどこにあるのか分からない。
一つの可能性が浮かぶ。普段の天弥には無理なことだが、本来の成瀬天弥には造作もないことだ。もしそうだとしたら、天弥を捜し出すのは困難を極める。
ざっと見た感じ、特に手がかりになりそうなものも見当たらず、部屋のドアへと向かう。花乃の客として来ている以上、あまりここに長居も出来ない。
ドアを開けて廊下へと出た目の前に、私服に着替えた花乃の姿があった。不安と戸惑いを浮かべた視線を、サイラスに向けている。さすがに露骨過ぎたかと考え、花乃に向けて笑顔を作る。まだ、天弥の事がハッキリとしない以上、この家に入り込む手段は確保しておきたかったのだ。
「どこかに遊びに行こか?」
内心、ため息を吐きつつも花乃に声をかけた。あまり自分の性に合わないやり方だが、羽角からは何の連絡もなく天弥も姿を消した。手がかりや可能性は、一つでも多いほうが良い。
花乃は躊躇いながらも静かに頷いた。
「ほな、行こか」
そう言い、サイラスは花乃の手を取ると玄関へと向かった。
近所の小さな公園にたどり着くと、斎は腕時計を見て時間を確認した。時計の針は、二十三時五十九分を示している。視線が、その手にある本へと移った。すぐに腕が下ろされ、視線は前方へと向けられる。指定された時間まで後一分であるが、辺りには人がいる様子がない。自分の背後を確認しようと振り向いたが、そこにも人影は無かった。
「先生」
突如、後ろから声を掛けられ、斎は振り向く。先程までは、確かに誰も居なかった。人が居る気配すらなかったはずなのに、どこから現れたのかと考えながら、眼前の人物を見つめる。
「天弥」
名を呼ばれ、天弥は足を踏み出すと斎に抱きついた。
「約束を果たしに来ました」
その言葉に、自分に抱きつく天弥を見下ろす。
「約束?」
天弥の自宅を後にしてから、失踪の真偽もハッキリとせずに、どうしてよいか分からずにいた。何かをしていないと落ち着かず、とりあえず天弥を捜そうとした。だが、行動範囲を知らず、途方に暮れながら彷徨っていた。
「はい」
気を取り直し、改めて室内を観察する。最悪の事態も想定していたが、状況的にそれは無いと分かり、少し安堵する。もし、深きものが天弥を攫ったのだとしたら、あの強烈な臭いが残っているはずだ。
窓に近づいた。鍵はしっかりと掛けられている。普通にドアから部屋を出たと思われるが、家を出る時にどこから出たのかが分からない。自宅の鍵と思われるものは、携帯と一緒に机の上に置かれている。母親の話では、玄関も窓も鍵を開けられていたところはなかったそうだ。
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一つの可能性が浮かぶ。普段の天弥には無理なことだが、本来の成瀬天弥には造作もないことだ。もしそうだとしたら、天弥を捜し出すのは困難を極める。
ざっと見た感じ、特に手がかりになりそうなものも見当たらず、部屋のドアへと向かう。花乃の客として来ている以上、あまりここに長居も出来ない。
ドアを開けて廊下へと出た目の前に、私服に着替えた花乃の姿があった。不安と戸惑いを浮かべた視線を、サイラスに向けている。さすがに露骨過ぎたかと考え、花乃に向けて笑顔を作る。まだ、天弥の事がハッキリとしない以上、この家に入り込む手段は確保しておきたかったのだ。
「どこかに遊びに行こか?」
内心、ため息を吐きつつも花乃に声をかけた。あまり自分の性に合わないやり方だが、羽角からは何の連絡もなく天弥も姿を消した。手がかりや可能性は、一つでも多いほうが良い。
花乃は躊躇いながらも静かに頷いた。
「ほな、行こか」
そう言い、サイラスは花乃の手を取ると玄関へと向かった。
近所の小さな公園にたどり着くと、斎は腕時計を見て時間を確認した。時計の針は、二十三時五十九分を示している。視線が、その手にある本へと移った。すぐに腕が下ろされ、視線は前方へと向けられる。指定された時間まで後一分であるが、辺りには人がいる様子がない。自分の背後を確認しようと振り向いたが、そこにも人影は無かった。
「先生」
突如、後ろから声を掛けられ、斎は振り向く。先程までは、確かに誰も居なかった。人が居る気配すらなかったはずなのに、どこから現れたのかと考えながら、眼前の人物を見つめる。
「天弥」
名を呼ばれ、天弥は足を踏み出すと斎に抱きついた。
「約束を果たしに来ました」
その言葉に、自分に抱きつく天弥を見下ろす。
「約束?」
天弥の自宅を後にしてから、失踪の真偽もハッキリとせずに、どうしてよいか分からずにいた。何かをしていないと落ち着かず、とりあえず天弥を捜そうとした。だが、行動範囲を知らず、途方に暮れながら彷徨っていた。
「はい」
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