apocalypsis

さくら

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alea jacta est

tres

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「破壊と混乱か、先生か……」
 どちらかを選ばなくてはならない状況でも、心では斎を選んでいる。世界が滅んでも斎が良いと考えてしまうのは間違っていると頭の中では理解しているのだ。だが、どうしても斎と共にありたいと願ってしまう。

  金曜日の放課後、天弥は少し思いつめたような表情で目の前のドアを見つめる。一度、深呼吸をするとドアをノックした。すぐに在室を知らせる返事があり、思い切ってドアを開けた。室内に入ると、椅子に座る斎が少し驚いたような表情と視線を向けてくる。視線は、天弥が持っている大きめの鞄に注がれていた。
 斎は、天弥のクラスの時間割を思い起こす。特になにか大きめな物が必要な授業は無かった。部活動をしている訳でもなく、なぜ、そのような大きめな鞄が必要なのか悩む。
「先生」
 呼び声に応えるように、斎の視線が天弥の顔に移る。
「あの……僕……」
 少し言い難そうに言葉を濁す天弥が気になり椅子から立ち上がった。
「えっと……日曜日の夜までその……」
 断片的な言葉であったが、理由は理解できた。斎は天弥に近寄る。
「大丈夫なのか?」
 長い時間、天弥と共に居られるのは嬉しいが、長期の不在から戻ったばかりで、保護者の許しが出ているかどうか謎であった。
「はい」
 返事と共に、天弥は笑みを向ける。
「なら、少し遠出するか?」
 天弥は再び考え込む。
「あの……」
 なにか事情があるのかと斎の胸に不安が湧き上がる。
「僕、先生に話が……」
 斎が考え込む。
「分かった。俺も着替えを取ってくる」
「はい」
 考えに考え、全てを話すと決めた。間違いなく、斎からは拒絶されるだろう。だが、破壊と混乱を避けたかった。もし、それらが起これば斎も無事では無いことは理解できた。それに、斎なら破壊と混乱が支配することになるとしたら、それを止める手段は考えてくれるはずだ。拒絶されたとしても、それは間違いないと思った。それに、はっきりと拒絶をされた方が諦めもつくだろうと思える。
 天弥は斎の顔を見上げた。
「どうした?」
 それに気がついた斎が天弥に向かい手を伸ばす。斎に好きだと言いたかったが言葉を飲み込んだ。これから全てを話すのだ。好意を寄せるのは重荷になるだろう。
「いえ……なんでもありません……」
 斎は黙って天弥を見つめる。様子がおかしいのは分かる。今、問い詰めるべきなのか。それとも後にするべきなのか悩む。未だ、いきなり消えてしまう恐怖に支配されているのだ。
「行くか?」
 天弥が無言で頷く。
「どこか行きたいところはあるか?」
 天弥が首を横に振る。
「まずは、晩飯を食うところを探すか」
 食べ物の話題を出しても喜ばない様子はやはりおかしかった。話というのは、それだけ深刻なことなのだろうかと考える。
「食べたいものはあるか?」
 やはり天弥は無言であった。不安に苛まれながら揃って部屋を後にした。
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