194 / 236
alea jacta est
tredecim
しおりを挟む
「先生! Umihotaruってとこへ連れて行ってや!」
サイラスの言葉に、斎が考え込む。そこへ行くには車が必要になり、サイラスのところへ置いてきてしまったのだ。
「車をどうにかしないと……」
サイラスは斎に車を置いていくように言ったことを思い出した。
「天弥! Umihotaruって知っとるか?」
斎は当てにならないと思ったのか、今度は天弥に狙いを定めた。
「前に先生に連れて行って貰ったところだけど……」
「よし! それやったら行けるな!」
「僕、ずっと車に乗っていたから、どこにあるのか分かんない……」
サイラスがため息を吐く。やはり、斎を頼るしか無いのかと、視線を戻した。
「車が必要なのかのぉ?」
突然、天の助けのように聞こえてきた言葉に、サイラスの視線が移動した。胡桃沢が興味深げな表情で三人を見つめていた。
「はい」
斎の返事を聞き、胡桃沢は満足そうに何度か頷く。
「それなら、ガレージにある車はどうかのぉ?」
返事もせずに、サイラスは玄関へ急ぐ。
「良いのですか?」
「構わんよ。手入れと点検はしておるから、走れるはずじゃ」
斎がソファから立ち上がる。天弥もその後に続いた。
「ありがとうございます」
深く頭を下げた斎を見て、天弥も同じく頭を下げる。
「あ、わしも行くからのぉ」
サイラスの後を追おうと玄関に向かう斎に声をかけた。すぐに、斎の足が止まった。
「危険……ですよ?」
「そんなのは承知しておる」
斎は戸惑う。胡桃沢は教団の人間ではないとサイラスから聞いているが、それ以外のことが分からない。今まで、なぜ何も教えてくれなかったのかと問い詰めたいところだが、今は時間が惜しかった。
「せんせー! はよ来てや!」
開け放たれた玄関から、サイラスの呼び声が聞こえた。斎は再び玄関に向かって足を踏み出す。その後を天弥が続き、最後に胡桃沢が付いて行った。開いたままのドアの向こうで、サイラスが手を振っている。
「これ、走るんか?」
ガレージにある車を指差していると思われる動作に興味を惹かれ、斎が急ぐ。玄関で靴を履き外へ出ると、ガレージに置いてある車におもわず立ち止まる。すぐ目の前の地面に置かれているシートからさっするに、見えない状態であったことに納得する。
「なぁ、これ大丈夫なんか?」
サイラスが不安そうに尋ねるが、それが聞こえていないような感じで、斎は車を見つめた。
「……スバル360」
玄関から出てきた胡桃沢に視線を移す。
「これですか?」
もしかすると他に車があり、これでは無いのかもしれないと一縷の望みを向けてみた。
「そうじゃ」
車と胡桃沢のを交互に見比べ、斎が考え込む。手入れや点検をしているというのなら動かすことは出来るのだろう。ただ、胡桃沢を乗せても走るのかどうかは分からなかった。
「乗れますか……?」
サイラスの言葉に、斎が考え込む。そこへ行くには車が必要になり、サイラスのところへ置いてきてしまったのだ。
「車をどうにかしないと……」
サイラスは斎に車を置いていくように言ったことを思い出した。
「天弥! Umihotaruって知っとるか?」
斎は当てにならないと思ったのか、今度は天弥に狙いを定めた。
「前に先生に連れて行って貰ったところだけど……」
「よし! それやったら行けるな!」
「僕、ずっと車に乗っていたから、どこにあるのか分かんない……」
サイラスがため息を吐く。やはり、斎を頼るしか無いのかと、視線を戻した。
「車が必要なのかのぉ?」
突然、天の助けのように聞こえてきた言葉に、サイラスの視線が移動した。胡桃沢が興味深げな表情で三人を見つめていた。
「はい」
斎の返事を聞き、胡桃沢は満足そうに何度か頷く。
「それなら、ガレージにある車はどうかのぉ?」
返事もせずに、サイラスは玄関へ急ぐ。
「良いのですか?」
「構わんよ。手入れと点検はしておるから、走れるはずじゃ」
斎がソファから立ち上がる。天弥もその後に続いた。
「ありがとうございます」
深く頭を下げた斎を見て、天弥も同じく頭を下げる。
「あ、わしも行くからのぉ」
サイラスの後を追おうと玄関に向かう斎に声をかけた。すぐに、斎の足が止まった。
「危険……ですよ?」
「そんなのは承知しておる」
斎は戸惑う。胡桃沢は教団の人間ではないとサイラスから聞いているが、それ以外のことが分からない。今まで、なぜ何も教えてくれなかったのかと問い詰めたいところだが、今は時間が惜しかった。
「せんせー! はよ来てや!」
開け放たれた玄関から、サイラスの呼び声が聞こえた。斎は再び玄関に向かって足を踏み出す。その後を天弥が続き、最後に胡桃沢が付いて行った。開いたままのドアの向こうで、サイラスが手を振っている。
「これ、走るんか?」
ガレージにある車を指差していると思われる動作に興味を惹かれ、斎が急ぐ。玄関で靴を履き外へ出ると、ガレージに置いてある車におもわず立ち止まる。すぐ目の前の地面に置かれているシートからさっするに、見えない状態であったことに納得する。
「なぁ、これ大丈夫なんか?」
サイラスが不安そうに尋ねるが、それが聞こえていないような感じで、斎は車を見つめた。
「……スバル360」
玄関から出てきた胡桃沢に視線を移す。
「これですか?」
もしかすると他に車があり、これでは無いのかもしれないと一縷の望みを向けてみた。
「そうじゃ」
車と胡桃沢のを交互に見比べ、斎が考え込む。手入れや点検をしているというのなら動かすことは出来るのだろう。ただ、胡桃沢を乗せても走るのかどうかは分からなかった。
「乗れますか……?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる