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5.カレドニア・カーネリアンの回想と調査結果
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とは いえ、噂のお相手の妹(らしき人)の登場で、この事に対処しなければならなくなったのは言うまでもない。
それまでは、噂だけの輪郭の無い幽霊のようだった物がハッキリと形になって目の前に現れたからだ。
ラフレシア嬢の妹(らしき人)やその取り巻き、私の友人達の前では、表面上大丈夫そうに振る舞っていたが、心の中ではかなり動揺していたし、胸がざわついて苦しかった。
けれど、王都と東部&南部辺境伯領とは位置的にはかなり離れているので、如何する事もできない事をもどかしく思った。
お陰で、その後以降の授業内容は集中できず、何も頭に入らなかった。
それは学生寮の自室に戻ってからも同じで、まんじりともせずに次の朝を迎えた
。
~~~~~~~
寮の自室のベッドの上で眠れずにいた私は、ライアン様と初めてお会いした当時の事を思い出していた。
母親同士が仲良くしているラピス伯爵家のラズベリー様とお茶会等に参加する度、交流のあるご令嬢達が次から次へと婚約者が決まっていく中、未だ婚約者が決まらない私。
いくらのほほんとしている私でも流石にマズいのでは…?と思い始めた頃、普段ではお目にかかる事等無いような有り得ないハイテンションで私の婚約者が決まったと父から告げられた。
周囲と比べると遅い婚約と、お相手が七才年上と聞いて色々な意味で戸惑った事は内緒だ。
けれど、こればかりは自分の努力だけでどうなるものでもない。
相手の気持ちや相性、立場等で決まってしまう。
確かに貴族の婚約・婚姻は政略結婚が主流とは言え、自家に来た釣書の中から少しでも条件の良い好みの人物を選ぶからだ。
当然絵姿も含まれる。
只でさえ、兄姉弟妹が優秀で谷間や海溝と揶揄される私は、ある意味有名な所為で中々婚約者が決まらなかったのは仕方がない。
だから、喩え父が決めてきた婚約でも嬉しかったのだ。
こんな私でも良いと言ってくれる方がいたという事が。
初めての顔合わせの前日は、期待と不安で眠れなかったほどだった。
そして初めて会ったライアン様は、物凄く格好良くて優しくて、幼心にもこんな素敵な方と結婚できるのだと舞い上がってしまったのだ。
婚約すら素っ飛ばして結婚確定で考えていた辺り、いくら舞い上がっていたとは言え子供だったなと自分でも思う。
いや、穴があったら入りたい。何ならその穴を自分で掘ってでも入りたい。
そして思う。
ラフレシア嬢は相思相愛と言われる婚約者がいるのに、何故婚約者がいるライアン様と二人で一緒にいたりするのかわからなかった。と言うか、わかりたくなかった。
結婚するまでの暇潰しなのか、何か理由があって婚約が解消されたからなのか…?。
だからと言って納得できる訳なんて無い。
ライアン様に会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。
そう思っていた私は、後日それが違っていたと、ライアン様とラフレシア嬢の二人共が同じ気持ちなのだと思い知らされる事となるのだが、この時の私はそんな事などこれっぽっちも思っていなかった。
△▽△▽△▽△▽△▽
あれから暫く経って、来週から学園が夏季休暇に入る頃、エマ様から話たい事があるからと休日にお茶会に誘われた。
勿論、ラズベリー様も一緒だった。
お茶会の日、エマ様は何処か緊張した面持ちで口数も少なかった。
ラズベリー様は、ラフレシア嬢の妹であるアマリリス嬢の態度に不快感を示していて、この日もぼやいていた。
それが途切れた時に、エマ様が徐に口を開いた。
「ニア、ライアン様とラフレシア嬢の事だけど…。事態は思っていたより深刻かもしれないわよ。それでも聞きたい?」
エマ様が調べてくれた事だとわかった。
というのも、私は自分でもラフレシア嬢の事を調べたけれど、ライアン様と学園以外の何処で接点があって、一緒に行動する事になったのかまではわからなかった。
だから、エマ様から「ニアさえよければ調べてみましょうか?」と言われ、顔の広い彼女の好意に甘える事にしたのだった。
それは、これまでのライアン様に関する噂の中で、“心に決めた相手がいる”という噂があったからで、その相手がラフレシア嬢かもしれないと思ったのだ。
だとしたら、今のライアン様の婚約相手が私だとしても、ラフレシア嬢の婚約が解消されているのなら、ライアン様の気持ちがまだラフレシア嬢にあるのなら…彼の気持ちを考えて私が身を引いた方がいいのかと思ったから。
とは言っても、ライアン様の幸せを願ってとかいう綺麗事ではなく、心に決めた相手がいる人を振り向かせられるほど自分に自信がある訳じゃないからっていうのと、そんな人と何も知らない振りして結婚しても上手くいく訳無い。って思ったからなんだけど。
そして、エマ様が調査結果を教えてくれた。
ライアン様とラフレシア嬢の最初の接点は、子供の頃にお茶会に出席したライアン様がラフレシア嬢に一目惚れして婚約を申し込んだというものだった。
結果は、タッチの差で他家との婚約が決まった後だった為にライアン様はラフレシア嬢を諦めざるを得なかった。
それは、“心に決めた相手がいる”という噂は本当だったという事で…。
そしてラフレシア嬢の婚約が一年ほど前に解消されていたのだ。
つまり、二人で観劇したり、カフェで仲良くお茶をしていた。という目撃情報や噂も本当の事だったかもしれない。
という事だった。
後ろからハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
いや、後ろからトマホークが飛んできて後頭部に刺さったかのような衝撃でショックだった。
そう、「ライアン様に出会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。」なんて思っていたのは間違いだったのだ。
少なくとも、ライアン様がラフレシア嬢に心を奪われたのは私と出会う前の事で、彼女の婚約が解消されたのならば二人の前に立ちはだかる障害は…二人の幸せの邪魔をしているのは…私だった。
この後、エマ様とラズベリー様が何か言っていたような気もするが、何を言っていたのかわからず、どうやって家に帰り着いたのかさえもわからなかった。
それほど私の頭と心の中は、何も考えられないほどぐちゃぐちゃになってしまっていた。
それまでは、噂だけの輪郭の無い幽霊のようだった物がハッキリと形になって目の前に現れたからだ。
ラフレシア嬢の妹(らしき人)やその取り巻き、私の友人達の前では、表面上大丈夫そうに振る舞っていたが、心の中ではかなり動揺していたし、胸がざわついて苦しかった。
けれど、王都と東部&南部辺境伯領とは位置的にはかなり離れているので、如何する事もできない事をもどかしく思った。
お陰で、その後以降の授業内容は集中できず、何も頭に入らなかった。
それは学生寮の自室に戻ってからも同じで、まんじりともせずに次の朝を迎えた
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寮の自室のベッドの上で眠れずにいた私は、ライアン様と初めてお会いした当時の事を思い出していた。
母親同士が仲良くしているラピス伯爵家のラズベリー様とお茶会等に参加する度、交流のあるご令嬢達が次から次へと婚約者が決まっていく中、未だ婚約者が決まらない私。
いくらのほほんとしている私でも流石にマズいのでは…?と思い始めた頃、普段ではお目にかかる事等無いような有り得ないハイテンションで私の婚約者が決まったと父から告げられた。
周囲と比べると遅い婚約と、お相手が七才年上と聞いて色々な意味で戸惑った事は内緒だ。
けれど、こればかりは自分の努力だけでどうなるものでもない。
相手の気持ちや相性、立場等で決まってしまう。
確かに貴族の婚約・婚姻は政略結婚が主流とは言え、自家に来た釣書の中から少しでも条件の良い好みの人物を選ぶからだ。
当然絵姿も含まれる。
只でさえ、兄姉弟妹が優秀で谷間や海溝と揶揄される私は、ある意味有名な所為で中々婚約者が決まらなかったのは仕方がない。
だから、喩え父が決めてきた婚約でも嬉しかったのだ。
こんな私でも良いと言ってくれる方がいたという事が。
初めての顔合わせの前日は、期待と不安で眠れなかったほどだった。
そして初めて会ったライアン様は、物凄く格好良くて優しくて、幼心にもこんな素敵な方と結婚できるのだと舞い上がってしまったのだ。
婚約すら素っ飛ばして結婚確定で考えていた辺り、いくら舞い上がっていたとは言え子供だったなと自分でも思う。
いや、穴があったら入りたい。何ならその穴を自分で掘ってでも入りたい。
そして思う。
ラフレシア嬢は相思相愛と言われる婚約者がいるのに、何故婚約者がいるライアン様と二人で一緒にいたりするのかわからなかった。と言うか、わかりたくなかった。
結婚するまでの暇潰しなのか、何か理由があって婚約が解消されたからなのか…?。
だからと言って納得できる訳なんて無い。
ライアン様に会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。
そう思っていた私は、後日それが違っていたと、ライアン様とラフレシア嬢の二人共が同じ気持ちなのだと思い知らされる事となるのだが、この時の私はそんな事などこれっぽっちも思っていなかった。
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あれから暫く経って、来週から学園が夏季休暇に入る頃、エマ様から話たい事があるからと休日にお茶会に誘われた。
勿論、ラズベリー様も一緒だった。
お茶会の日、エマ様は何処か緊張した面持ちで口数も少なかった。
ラズベリー様は、ラフレシア嬢の妹であるアマリリス嬢の態度に不快感を示していて、この日もぼやいていた。
それが途切れた時に、エマ様が徐に口を開いた。
「ニア、ライアン様とラフレシア嬢の事だけど…。事態は思っていたより深刻かもしれないわよ。それでも聞きたい?」
エマ様が調べてくれた事だとわかった。
というのも、私は自分でもラフレシア嬢の事を調べたけれど、ライアン様と学園以外の何処で接点があって、一緒に行動する事になったのかまではわからなかった。
だから、エマ様から「ニアさえよければ調べてみましょうか?」と言われ、顔の広い彼女の好意に甘える事にしたのだった。
それは、これまでのライアン様に関する噂の中で、“心に決めた相手がいる”という噂があったからで、その相手がラフレシア嬢かもしれないと思ったのだ。
だとしたら、今のライアン様の婚約相手が私だとしても、ラフレシア嬢の婚約が解消されているのなら、ライアン様の気持ちがまだラフレシア嬢にあるのなら…彼の気持ちを考えて私が身を引いた方がいいのかと思ったから。
とは言っても、ライアン様の幸せを願ってとかいう綺麗事ではなく、心に決めた相手がいる人を振り向かせられるほど自分に自信がある訳じゃないからっていうのと、そんな人と何も知らない振りして結婚しても上手くいく訳無い。って思ったからなんだけど。
そして、エマ様が調査結果を教えてくれた。
ライアン様とラフレシア嬢の最初の接点は、子供の頃にお茶会に出席したライアン様がラフレシア嬢に一目惚れして婚約を申し込んだというものだった。
結果は、タッチの差で他家との婚約が決まった後だった為にライアン様はラフレシア嬢を諦めざるを得なかった。
それは、“心に決めた相手がいる”という噂は本当だったという事で…。
そしてラフレシア嬢の婚約が一年ほど前に解消されていたのだ。
つまり、二人で観劇したり、カフェで仲良くお茶をしていた。という目撃情報や噂も本当の事だったかもしれない。
という事だった。
後ろからハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
いや、後ろからトマホークが飛んできて後頭部に刺さったかのような衝撃でショックだった。
そう、「ライアン様に出会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。」なんて思っていたのは間違いだったのだ。
少なくとも、ライアン様がラフレシア嬢に心を奪われたのは私と出会う前の事で、彼女の婚約が解消されたのならば二人の前に立ちはだかる障害は…二人の幸せの邪魔をしているのは…私だった。
この後、エマ様とラズベリー様が何か言っていたような気もするが、何を言っていたのかわからず、どうやって家に帰り着いたのかさえもわからなかった。
それほど私の頭と心の中は、何も考えられないほどぐちゃぐちゃになってしまっていた。
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