5 / 44
5.カレドニア・カーネリアンの回想と調査結果
とは いえ、噂のお相手の妹(らしき人)の登場で、この事に対処しなければならなくなったのは言うまでもない。
それまでは、噂だけの輪郭の無い幽霊のようだった物がハッキリと形になって目の前に現れたからだ。
ラフレシア嬢の妹(らしき人)やその取り巻き、私の友人達の前では、表面上大丈夫そうに振る舞っていたが、心の中ではかなり動揺していたし、胸がざわついて苦しかった。
けれど、王都と東部&南部辺境伯領とは位置的にはかなり離れているので、如何する事もできない事をもどかしく思った。
お陰で、その後以降の授業内容は集中できず、何も頭に入らなかった。
それは学生寮の自室に戻ってからも同じで、まんじりともせずに次の朝を迎えた
。
~~~~~~~
寮の自室のベッドの上で眠れずにいた私は、ライアン様と初めてお会いした当時の事を思い出していた。
母親同士が仲良くしているラピス伯爵家のラズベリー様とお茶会等に参加する度、交流のあるご令嬢達が次から次へと婚約者が決まっていく中、未だ婚約者が決まらない私。
いくらのほほんとしている私でも流石にマズいのでは…?と思い始めた頃、普段ではお目にかかる事等無いような有り得ないハイテンションで私の婚約者が決まったと父から告げられた。
周囲と比べると遅い婚約と、お相手が七才年上と聞いて色々な意味で戸惑った事は内緒だ。
けれど、こればかりは自分の努力だけでどうなるものでもない。
相手の気持ちや相性、立場等で決まってしまう。
確かに貴族の婚約・婚姻は政略結婚が主流とは言え、自家に来た釣書の中から少しでも条件の良い好みの人物を選ぶからだ。
当然絵姿も含まれる。
只でさえ、兄姉弟妹が優秀で谷間や海溝と揶揄される私は、ある意味有名な所為で中々婚約者が決まらなかったのは仕方がない。
だから、喩え父が決めてきた婚約でも嬉しかったのだ。
こんな私でも良いと言ってくれる方がいたという事が。
初めての顔合わせの前日は、期待と不安で眠れなかったほどだった。
そして初めて会ったライアン様は、物凄く格好良くて優しくて、幼心にもこんな素敵な方と結婚できるのだと舞い上がってしまったのだ。
婚約すら素っ飛ばして結婚確定で考えていた辺り、いくら舞い上がっていたとは言え子供だったなと自分でも思う。
いや、穴があったら入りたい。何ならその穴を自分で掘ってでも入りたい。
そして思う。
ラフレシア嬢は相思相愛と言われる婚約者がいるのに、何故婚約者がいるライアン様と二人で一緒にいたりするのかわからなかった。と言うか、わかりたくなかった。
結婚するまでの暇潰しなのか、何か理由があって婚約が解消されたからなのか…?。
だからと言って納得できる訳なんて無い。
ライアン様に会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。
そう思っていた私は、後日それが違っていたと、ライアン様とラフレシア嬢の二人共が同じ気持ちなのだと思い知らされる事となるのだが、この時の私はそんな事などこれっぽっちも思っていなかった。
△▽△▽△▽△▽△▽
あれから暫く経って、来週から学園が夏季休暇に入る頃、エマ様から話たい事があるからと休日にお茶会に誘われた。
勿論、ラズベリー様も一緒だった。
お茶会の日、エマ様は何処か緊張した面持ちで口数も少なかった。
ラズベリー様は、ラフレシア嬢の妹であるアマリリス嬢の態度に不快感を示していて、この日もぼやいていた。
それが途切れた時に、エマ様が徐に口を開いた。
「ニア、ライアン様とラフレシア嬢の事だけど…。事態は思っていたより深刻かもしれないわよ。それでも聞きたい?」
エマ様が調べてくれた事だとわかった。
というのも、私は自分でもラフレシア嬢の事を調べたけれど、ライアン様と学園以外の何処で接点があって、一緒に行動する事になったのかまではわからなかった。
だから、エマ様から「ニアさえよければ調べてみましょうか?」と言われ、顔の広い彼女の好意に甘える事にしたのだった。
それは、これまでのライアン様に関する噂の中で、“心に決めた相手がいる”という噂があったからで、その相手がラフレシア嬢かもしれないと思ったのだ。
だとしたら、今のライアン様の婚約相手が私だとしても、ラフレシア嬢の婚約が解消されているのなら、ライアン様の気持ちがまだラフレシア嬢にあるのなら…彼の気持ちを考えて私が身を引いた方がいいのかと思ったから。
とは言っても、ライアン様の幸せを願ってとかいう綺麗事ではなく、心に決めた相手がいる人を振り向かせられるほど自分に自信がある訳じゃないからっていうのと、そんな人と何も知らない振りして結婚しても上手くいく訳無い。って思ったからなんだけど。
そして、エマ様が調査結果を教えてくれた。
ライアン様とラフレシア嬢の最初の接点は、子供の頃にお茶会に出席したライアン様がラフレシア嬢に一目惚れして婚約を申し込んだというものだった。
結果は、タッチの差で他家との婚約が決まった後だった為にライアン様はラフレシア嬢を諦めざるを得なかった。
それは、“心に決めた相手がいる”という噂は本当だったという事で…。
そしてラフレシア嬢の婚約が一年ほど前に解消されていたのだ。
つまり、二人で観劇したり、カフェで仲良くお茶をしていた。という目撃情報や噂も本当の事だったかもしれない。
という事だった。
後ろからハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
いや、後ろからトマホークが飛んできて後頭部に刺さったかのような衝撃でショックだった。
そう、「ライアン様に出会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。」なんて思っていたのは間違いだったのだ。
少なくとも、ライアン様がラフレシア嬢に心を奪われたのは私と出会う前の事で、彼女の婚約が解消されたのならば二人の前に立ちはだかる障害は…二人の幸せの邪魔をしているのは…私だった。
この後、エマ様とラズベリー様が何か言っていたような気もするが、何を言っていたのかわからず、どうやって家に帰り着いたのかさえもわからなかった。
それほど私の頭と心の中は、何も考えられないほどぐちゃぐちゃになってしまっていた。
それまでは、噂だけの輪郭の無い幽霊のようだった物がハッキリと形になって目の前に現れたからだ。
ラフレシア嬢の妹(らしき人)やその取り巻き、私の友人達の前では、表面上大丈夫そうに振る舞っていたが、心の中ではかなり動揺していたし、胸がざわついて苦しかった。
けれど、王都と東部&南部辺境伯領とは位置的にはかなり離れているので、如何する事もできない事をもどかしく思った。
お陰で、その後以降の授業内容は集中できず、何も頭に入らなかった。
それは学生寮の自室に戻ってからも同じで、まんじりともせずに次の朝を迎えた
。
~~~~~~~
寮の自室のベッドの上で眠れずにいた私は、ライアン様と初めてお会いした当時の事を思い出していた。
母親同士が仲良くしているラピス伯爵家のラズベリー様とお茶会等に参加する度、交流のあるご令嬢達が次から次へと婚約者が決まっていく中、未だ婚約者が決まらない私。
いくらのほほんとしている私でも流石にマズいのでは…?と思い始めた頃、普段ではお目にかかる事等無いような有り得ないハイテンションで私の婚約者が決まったと父から告げられた。
周囲と比べると遅い婚約と、お相手が七才年上と聞いて色々な意味で戸惑った事は内緒だ。
けれど、こればかりは自分の努力だけでどうなるものでもない。
相手の気持ちや相性、立場等で決まってしまう。
確かに貴族の婚約・婚姻は政略結婚が主流とは言え、自家に来た釣書の中から少しでも条件の良い好みの人物を選ぶからだ。
当然絵姿も含まれる。
只でさえ、兄姉弟妹が優秀で谷間や海溝と揶揄される私は、ある意味有名な所為で中々婚約者が決まらなかったのは仕方がない。
だから、喩え父が決めてきた婚約でも嬉しかったのだ。
こんな私でも良いと言ってくれる方がいたという事が。
初めての顔合わせの前日は、期待と不安で眠れなかったほどだった。
そして初めて会ったライアン様は、物凄く格好良くて優しくて、幼心にもこんな素敵な方と結婚できるのだと舞い上がってしまったのだ。
婚約すら素っ飛ばして結婚確定で考えていた辺り、いくら舞い上がっていたとは言え子供だったなと自分でも思う。
いや、穴があったら入りたい。何ならその穴を自分で掘ってでも入りたい。
そして思う。
ラフレシア嬢は相思相愛と言われる婚約者がいるのに、何故婚約者がいるライアン様と二人で一緒にいたりするのかわからなかった。と言うか、わかりたくなかった。
結婚するまでの暇潰しなのか、何か理由があって婚約が解消されたからなのか…?。
だからと言って納得できる訳なんて無い。
ライアン様に会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。
そう思っていた私は、後日それが違っていたと、ライアン様とラフレシア嬢の二人共が同じ気持ちなのだと思い知らされる事となるのだが、この時の私はそんな事などこれっぽっちも思っていなかった。
△▽△▽△▽△▽△▽
あれから暫く経って、来週から学園が夏季休暇に入る頃、エマ様から話たい事があるからと休日にお茶会に誘われた。
勿論、ラズベリー様も一緒だった。
お茶会の日、エマ様は何処か緊張した面持ちで口数も少なかった。
ラズベリー様は、ラフレシア嬢の妹であるアマリリス嬢の態度に不快感を示していて、この日もぼやいていた。
それが途切れた時に、エマ様が徐に口を開いた。
「ニア、ライアン様とラフレシア嬢の事だけど…。事態は思っていたより深刻かもしれないわよ。それでも聞きたい?」
エマ様が調べてくれた事だとわかった。
というのも、私は自分でもラフレシア嬢の事を調べたけれど、ライアン様と学園以外の何処で接点があって、一緒に行動する事になったのかまではわからなかった。
だから、エマ様から「ニアさえよければ調べてみましょうか?」と言われ、顔の広い彼女の好意に甘える事にしたのだった。
それは、これまでのライアン様に関する噂の中で、“心に決めた相手がいる”という噂があったからで、その相手がラフレシア嬢かもしれないと思ったのだ。
だとしたら、今のライアン様の婚約相手が私だとしても、ラフレシア嬢の婚約が解消されているのなら、ライアン様の気持ちがまだラフレシア嬢にあるのなら…彼の気持ちを考えて私が身を引いた方がいいのかと思ったから。
とは言っても、ライアン様の幸せを願ってとかいう綺麗事ではなく、心に決めた相手がいる人を振り向かせられるほど自分に自信がある訳じゃないからっていうのと、そんな人と何も知らない振りして結婚しても上手くいく訳無い。って思ったからなんだけど。
そして、エマ様が調査結果を教えてくれた。
ライアン様とラフレシア嬢の最初の接点は、子供の頃にお茶会に出席したライアン様がラフレシア嬢に一目惚れして婚約を申し込んだというものだった。
結果は、タッチの差で他家との婚約が決まった後だった為にライアン様はラフレシア嬢を諦めざるを得なかった。
それは、“心に決めた相手がいる”という噂は本当だったという事で…。
そしてラフレシア嬢の婚約が一年ほど前に解消されていたのだ。
つまり、二人で観劇したり、カフェで仲良くお茶をしていた。という目撃情報や噂も本当の事だったかもしれない。
という事だった。
後ろからハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
いや、後ろからトマホークが飛んできて後頭部に刺さったかのような衝撃でショックだった。
そう、「ライアン様に出会ったのも好きになったのも私の方が先なのに。」なんて思っていたのは間違いだったのだ。
少なくとも、ライアン様がラフレシア嬢に心を奪われたのは私と出会う前の事で、彼女の婚約が解消されたのならば二人の前に立ちはだかる障害は…二人の幸せの邪魔をしているのは…私だった。
この後、エマ様とラズベリー様が何か言っていたような気もするが、何を言っていたのかわからず、どうやって家に帰り着いたのかさえもわからなかった。
それほど私の頭と心の中は、何も考えられないほどぐちゃぐちゃになってしまっていた。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
夫婦戦争勃発5秒前! ~借金返済の代わりに女嫌いなオネエと政略結婚させられました!~
麻竹
恋愛
※タイトル変更しました。
夫「おブスは消えなさい。」
妻「ああそうですか、ならば戦争ですわね!!」
借金返済の肩代わりをする代わりに政略結婚の条件を出してきた侯爵家。いざ嫁いでみると夫になる人から「おブスは消えなさい!」と言われたので、夫婦戦争勃発させてみました。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。