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神崎七王
しおりを挟む「君、大丈夫...?」
大丈夫なわけあるか。
廊下は走ったら危ないだろって、文句を言ってやるつもりだった。
「...っ」
その顔を見るまでは。
「ほんとごめんね、ちょっと急いでて...。どっか怪我してない?」
稲妻のような衝撃が走った。
あたふた慌てながら、俺の身体をぺたぺた触る。
眉尻を下げ、心配そうに顔を覗き込まれては不覚にもドキリとした。
...?
「頭...打った...」
「え、嘘!どこ!?」
「その辺」
「わ~...痛かったよね、ごめんごめん」
俺の頭を抱き抱えながら撫でる、綺麗な手。
ふわりと香る花のような匂い。
人に抱き締められるなんて何年ぶりだろう、凄く安心する。
しかも、かわいい...
かわいい?
いや違う、相手は男で教師。
かわいいってなんだよ。
散らばった教材には見向きもせず、俺の頭を撫でたその男は、もう一度顔を覗き込み「大丈夫?」と問う。
「あ、ああ...」
「良かった」
安心した顔で笑う姿を見て確信した。
やっぱりくそかわいいじゃねーか...!
散乱した教材をかき集めて男の胸に押し付ければ、その場を逃げるようにして立ち去った。
なんだ、あの人...。
ぶつけた頭が少し痛んだが、それよりも心臓がバクバクと高鳴ることを不思議に思った。
「あ、こら...入る時はノックしなさい」
「次から気を付ける...ちょっと寝かせて欲しい」
保険医の黒田を押し切ってベッドに潜り込むと、黒田はデスクに投げ出されていた眼鏡をかけた。
「神崎七王、1-D...9時32分入室...保健室の利用理由は?」
「うーん...寝不足」
「体調不良、と言うことにしておこう。オレが保険医じゃなかったら追い出されてるんだからな」
呆れた顔で俺を見下ろした黒田がペンを走らせた後、俺の額に手をあてがう。
「熱は36.5程度か」
掌に体温計の機能が搭載されているらしい。
体温の項目に再びペンを走らせた黒田に向かって口を開いた。
「黒田先生。髪の毛が茶色で...30前半くらいの男の先生って、誰がいる?」
「んー...ここって若い先生多いからな、茶髪ねぇ...」
「今日、ネイビーのスーツ着てた。あとブラウンのネクタイ。花みたいな匂いがする人」
うーん?と考えた黒田が思い出したかのように、その男の名前を口にする。
「2学年担当の姫神政宗先生かも。今日は確かネイビーのスーツだった」
「姫神先生...」
名前まで綺麗だ。
「彼女、いんのかな...」
「...は?」
天井を見つめていた目をそっと閉じ、布団を首までかける。
「...いい匂いがして、儚げで...触ったら壊れそうな...」
硝子細工のような、繊細な人だと思った。
「儚いと言うよりかは元気ハツラツって感じだけど、彼は身体も丈夫だし」
確かに、黒田の言う通り元気ハツラツな人物なのかもしれない。
さっきの一瞬ではきっと何も分かっていない。
でも、どこか陰りを帯びた雰囲気を醸し出し、無理して明るく振舞っているような気がしてならなかったのは...ただの気のせいだったのだろうか。
「...まぁ、いいや...寝る」
「1時間後に起こすよ、おやすみ」
カーテンが閉められた後、微かに熱の篭もる身体を抱き締めながら、俺は深い眠りについた。
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