164 / 197
愛
しおりを挟む「...」
静かな空間に、お互いの呼吸音が響く。
冷房のきく車内には、開けた窓から微かに生ぬるい風が入り込み私の肌をそっと撫でた。
「...」
あ、れ...何でこんなこと言ってしまったんだ...。
顔から火が出そうなくらい熱くて、若王子の顔を見ることが出来ない。
まさか自分の口から無意識に「嫉妬している」と告げてしまうなんて、私は一体どうしてしまったんだ。
「政宗さん...こっち向いて...」
「やだ...」
少しばかり熱を含んだ囁きに、腰の奥が疼く。
顔を伏せ下唇を噛むと、痺れを切らした彼の手が私の身体へ伸びた。
「あっ...」
「僕のこと、好き...?」
顎を掴み、腰を抱く彼の手は酷く熱い。
ギアがあるせいで、あまり近付くことは出来ないが、身体の熱さから彼が欲情していることは確かだ。
優しい瞳に見詰められれば、私は目の前の男から目が離せなくなった。
もう、拒絶することはおろか、その発言をも否定することが出来ないのだとわかった時、私は心のどこかで微かな喜びを感じていたのかもしれない。
「...っ、ぅん...」
その頷きは、紛れもない肯定。
私は妻以外の人に好意を示したのだ。
「どうしよう...」
若王子が顔を伏せ小さく呟く。
「...」
「嬉しい...僕も好きだよ...大好き...」
愛を囁きながら優しく口付けたかと思うと、今まで見たことの無い顔で笑う。
可愛い...甘々だ...。
若王子が彼氏(仮)になるってこんな感じなのか...?
ふわふわのオーラに、甘く愛を囁いて...カッコイイと言うより、可愛い...みたいな...。
「政宗さんのこと、帰したくないです...」
「...帰るよ」
「まだ一緒に居たい...」
ううっ...やめろ、そんな顔で見るな。
「あの...今日は...理由聞きたかっただけだから...それに他の先生に見られるかもだし」
彼の身体をやんわり押し返し、そそくさ帰る準備をすると、若王子は「えー...」と残念そうに肩を落とした。
「白衣、置いてってくださいね」
「え」
「これ洗濯しなきゃいけないので」
「やだ...一緒に帰る...」
ぎゅうと抱えた白衣を無理やり引っ張り、後部座席に投げやった若王子は別れ際に私の手を引いた。
「今週、また泊まりに行っていい...?」
「、ぁ...耳もと...っ」
耳を背後から甘噛みし、首筋に唇を寄せられればゾクゾクと身体が震えてしまう。
ワイシャツ越しに胸を撫でられ、首筋に歯を立てられた瞬間、私自身が大きく反応した。
「んっ♡い、いいから...、これ以上されちゃ勃っ、て...♡」
やばい...。
この前もえっちする前で止められたから、少し触られただけで過剰に反応する。
吐息を漏らしながら彼の愛部に身を委ねようとしたが、薄らと開けた視界の先に、何やら人影が見え一瞬にして身体が硬直した。
11
あなたにおすすめの小説
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
今度こそ、どんな診療が俺を 待っているのか
相馬昴
BL
強靭な肉体を持つ男・相馬昴は、診療台の上で運命に翻弄されていく。
相手は、年下の執着攻め——そして、彼一人では終わらない。
ガチムチ受け×年下×複数攻めという禁断の関係が、徐々に相馬の本能を暴いていく。
雄の香りと快楽に塗れながら、男たちの欲望の的となる彼の身体。
その結末は、甘美な支配か、それとも——
背徳的な医師×患者、欲と心理が交錯する濃密BL長編!
https://ci-en.dlsite.com/creator/30033/article/1422322
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる