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ため息
しおりを挟む目をまん丸くする2人に、赤い頬を隠しながらはにかむ。
「「それはこっちの台詞だよ」」
あ、またハモってる。
朝の光を浴びた彼らもまた、柔らかな笑みを浮かべて私の身体に手を伸ばした。
「わ...」
「今日はずっとこうしていよう...政宗さんのこと何処にも出したくないし、誰にも見せたくない」
ぎゅう
「政宗、こいつ絶対やばい奴なんだよ。独占欲も征服欲も心の狭さも人一倍やばいし、控えめに言って頭おかしいから気をつけて」
ぎゅう
「これでもかなりセーブしてるんだけどな。でも、もう僕無しの生活なんて考えられないんじゃない...?ね?政宗さん」
甘い声で囁きながら頬に指を滑らせる。
彼のキラキラと輝く瞳にうっとりしては、従順に頷いて見せた。
「うん...亮くん、好き...」
「はぁ...宇宙一かわいい...!誰よりも幸せにしてみせるからね...!」
バカ丸出しのじゃれ合いを、目を細めながら見つめた神崎は私の身体を強く引っ張る。
「俺は...?本当は俺のことなんていらない...?俺より亮介の方がいい...?政宗は同情で一緒にいてくれてるの...?」
...!なんだこの大型ワンコは...!!
耳と尻尾を下げ、悲しそうな表情を浮かべる神崎の可愛さに息を詰まらせた。
こんなにワンコなのに、しっかりとした男らしい腕や身体にキュンキュンする。
「あ、う...なおくん~...めちゃめちゃかわいい、好き...」
「嬉しい...」
すりすりと身を寄せれば、満足気に私の頭を撫で回す神崎。
「...なおくん、1日に触っていい回数決めよう。このままだといつお前が死体で発見されてもおかしくない」
真顔で怖いことを...。
「な...?政宗、亮介って本当心狭いだろ?」
やれやれ、と両肩を竦めて見せた神崎と目を合わせて笑う。
「ちょっと、政宗さんまで笑わないでくださいよ。本気で言ってるんですから」
ああ、本当に賑やかで楽しい
幸せだ。
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
「あ、引越し?」
ビクッ
突然背後から声を掛けてきた黒田に驚き、3mくらい飛び跳ねる。
「あはは、おもしろい」
花壇前のベンチに腰掛け、物件を見ている時にスマホを覗いたのだろう。
私の隣に座った黒田が爽やかに笑った。
「え、ええ...、じゃなくて!勝手に見ないでください!」
「ごめんごめん、人のスマホ見るの趣味なんだよね」
最低だ。
この前の、若王子との関係がバレて以来気まずい。
少し距離を取り、引き攣る顔を無理やり笑顔に変える。
「若王子先生と一緒に暮らすの?」
ぎくっ
ここはなんて答えるのが正解なのか。
確かに若王子と一緒に暮らすが、実はもう1人居るわけで。
それに、関係を知ってるとは言え、はいそうですって気軽に答えてしまってもいいのだろうか...。
「...考え中です」
「へぇ、そうなんだ」
下校するために校門を通る女子生徒達が、わーきゃー言いながら黒田に手を振れば、黒田も嫌な顔1つせず手を振り返す。
「相変わらずモテますよね...」
「そうだねぇ」
いや、あんたのことだよ。
他人事のような空返事に再び顔が引き攣っていると、それまで笑顔を浮かべていた黒田が「はぁ」とため息を吐いた。
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