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終止
しおりを挟む後ろを振り返れば、2人して片膝を付いて俯いている。
「...?どうしたの?」
「なんでこのタイミングなんだよ...どれだけ僕の邪魔する気なんだてめぇは...」
「うるせー、こちとらこの日のこの時間にするって最初から決めてたんだよ。お前が別の日にすりゃあいいだろうが...」
先程注意したばかりだと言うのに、小声で言い合っている姿を見れば、貯金を切り崩して本当に出て行こうか悩んでしまう。
「...喧嘩...?」
「違いますよ、僕たち仲良いので」
「亮介とは、やっぱり気が合うねって話をしてたんだ」
ふーん...、怪し...。
未だに片膝を着く彼らを、目を細めながら見ていると、目の前に2つの小さな箱が差し出された。
若王子の掌にはロイヤルブルーの箱。
神崎の掌にはホワイトの箱。
なんだか、これって...
「「結婚してください」」
プロポーズ、みたいだな...
なんて
「...!?」
各々箱を開ければ、中には目を見張る程に美しい指輪が飾られていた。
思わず両手で口を塞げば、目の前の男2人は綺麗な笑みを浮かべる。
「政宗さん、僕は貴方の幸せだけを願ってる。これからも貴方のためだけに生きていきたい...」
立ち上がった彼が、口を抑えていた手の甲に口付けを落とし、キラキラと輝く瞳をこちらに向ける。
「受け取って、いただけますか...?」
膝が震えて立つのもやっとなのに、目の前で微笑む若王子を見ると自然と涙が溢れた。
「政宗」
その落ち着いた声音に釣られ、神崎に視線を送ると、ぼやける視界の中でも彼が笑っていることが分かった。
「俺をこんなに幸せな気持ちにしてくれて、本当にありがとう。これからもずっと一緒に居て欲しい...」
若王子同様、反対の手の甲へ口付けた神崎は、すぐ様溢れ出た涙を親指で拭う。
「うっ...う...うう~...」
「政宗って泣顔ブサイク」
「あ゛?めちゃくちゃに可愛いだろうがこの世から消すぞ。姫、指輪嵌めようね?」
「おいちょっと待て。お前の指輪は右手だろ?俺の指輪は左手の薬指に嵌めるんだからそこ退け」
「んでだよ...左手に決まってんだろうが、僕が最初に嵌める」
「いや俺が」
......。
涙と感動が引っ込んでしまう程の醜い争い。
「帰る...」
いや、嘘だよ嘘!と取ってつけたような言葉を2人で口にして私の身体を抑え込めば、用意のいい若王子がどこからか細いチェーンを取り出した。
「2人とも最初からネックレスにするつもりだったんですよ」
「...ほんと?」
「ほんとだよ政宗、2人から指輪渡されてもどっち付けたらいいか迷うもんね?はい、どうぞ」
着けてもらったネックレスを見て、顔を上げる。
「嬉しい...2人ともありがとう。私は世界一の幸せ者だ...」
自分は、一生幸せとは無縁の生き物だと思っていた。
誰にも愛されずに1人で死んでいく、愛される資格も、誰かを愛する資格もないと思っていた。
父には勘当を言い渡され、家族と呼べるものが居ないと思っていたのに。
「亮くん、なおくん...」
目の前の2人に飛びつけば、驚きながらも優しく抱き留めてくれる。
「大好きだよ」
愛しい彼らの腕の中で、満面の笑みを浮かべながら私は愛を伝えたのだった。
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