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第八章

強化合宿三日目

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今日は朝から先生達が慌ただしい。
理由を聞くと行方不明者が出たらしい。
誰かと尋ねるとシード・カシエルだそうだ。

なので三日目は自由となった。
自由といっても、合宿場内の自由という意味だ。
さらに行方不明が出たら大変だからな。

そんな中、俺は山を捜索している。
正直シード・カシエルが死のうがどうでもいい。
けれどガルド先生に無理矢理、連れて行かれた。
断ろうとしたら「Aランク冒険者ならそれぐらい働け」と押し切られた。
冒険者って・・・何だろう・・・
テキトーに探した振りをして帰ろう・・・
ちなみにジルも冒険者ということで呼ばれたらしい。

◆◇◆◇◆山・合宿場十メートル下◆◇◆◇◆

いないから、帰りてぇ・・・
俺が面倒くさそうな顔をしてるとジルに「いや~捜索五分でその顔とはなぁ~」と言われた。

「だいたい五分でも長いほうだぞ?アレの為に動くんだからな。」

ガルド先生が引っ張らなければ部屋で寝ていただろう。

「きゅぅ・・・」
「ん?ジル今、裏声だしたか?」
「どっからその発想が出るんだよ・・・」

確かにジルはこんな声はださないからな・・・
隠れて裏声練習してたらもしかしたら・・・と思ったが・・・
すると草むらから赤い毛並みのポメラニアンが出て来た。

「うおっ!・・・可愛いな」

ジルがポメラニアンに近付く。
ポメラニアンは何だか、苦しそうだ。
よく見ると、お腹に怪我をしている・・・

カプッ

「・・・」

ポメラニアンはジルの手を噛む、ジルの手はベトベトになった。

「なぁクロ、コイツを討伐しても魔物だから大丈夫だよなぁ」

ジルは剣を取り出す。
ベトベトな手で剣を持ったので剣がベトベトになった。

「やめとけ、でも何でこんなところにポメラニアンが・・・」

とりあえず、俺はポメラニアンを回復させた後、抱っこしてガルド先生に報告しに行く。

◆◇◆◇◆合宿場◆◇◆◇◆

「ガルド先生ー」

ガルド先生は合宿場の門の前で他の先生の報告を紙に書いている。
俺達もガルド先生に手を振って近付く。
ガルド先生も気付く。

「お前らか、報告をきこう、あとジル、その手こっちに向けんな」

「ポメラニアンどうぞ」

俺はガルド先生にポメラニアンを渡す。

「おぉぅ!?何だぁ?コイツは」

俺はポメラニアンを拾った事を説明する。
ついでに怪我をしていた事も・・・

すると他の先生が近付く、シード・カシエルのクラスの担任だ。

「そ、その使い魔はカシエル君の使い魔だ!む?しかしおかしい・・・使い魔の契約が解かれている・・・まるで何かの強い力で強引に引き剥がさえたように・・・」
「え?使い魔契約してないの?ってそれよりもコイツが山にいるってことは・・・」

そのあと山を捜索したが結局シード・カシエルは見つからなかった。

その日は捜索をやめ、強化合宿最終日へと時は流れていった・・・
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