不死鳥契約 ~全能者の英雄伝~

足将軍

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第十一章

母さん

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ルビーさんにリンとレイチェルさんが魔法を撃ち始めて二時間が経過していた。俺は何もするなとレイチェルさんに言われた。おそらく俺に無駄な魔力を使わせたくないのだろう。リンも魔力供給を拒む。
するとリンは魔力切れになり、その場で膝をつく。

「リン!」
「クロ…だめだよ。魔力供給しなくてもこれぐらいなら…」

俺は精神世界に戻るように言うが、リンはそれを拒む。確かに魔力切れになってもしばらくすれば治る。けれど治るまでは貧血状態に陥りそれなりに苦しむのだ。
するとメリィがリンのもとに駆け寄り手を握る。おそらく魔力供給をメリィがするのだろう。

「メリィ…ありがとね」
「はい、どういたしましてです」

レイチェルさんは魔力がどれだけあるのか知らないが、二時間以上魔法を使い続けているのだからかなり消耗しているはずだ。

「ルビー、あとどのくらいよ!」
「そうね、この二時間で溜まった量の倍ってところかしら!」

魔法の飛び交う音で声が聞きずらく、大声で話し合う。
ってか必要な魔力量、多くないか!?神だから魔力量も多いからその分必要な魔力が多いのは知っているがレイチェルさん大丈夫なのか!?

「倍…そう、なら大丈夫ね」

そう言うと、レイチェルさんは魔法を放つをやめてルビーさんのほうへ脱力したようにフラフラ歩き出す。顔色は悪く、今にも倒れそうだ。

「レイチェル…何をするつもり?」

ルビーさんがレイチェルさんの意図が読めず困惑している。俺もレイチェルさんが何をするのか分からない…だが、もの凄く嫌な予感がする。レイチェルさんがルビーさんの目の前に来る。するとルビーさんは何かに気付いた。

「レイチェル…貴方、どのくらい前から魔力切れだったの」
「…十分ほど前かしらね」

魔力切れでも僅かに魔力は残っているので魔法は発動できる。だが、それは理論上であり普通は貧血状態に耐えられず何もできないはずなのだ。それ以前に魔力切れの状態で魔法など使ったら自分の命を削っているようなものだ。本来は一分やるだけでも危険なのだが十分などやれるわけがない。けれど可能にしたのはレイチェルさんの信念の硬さがそうさせた…としか言いようがない。

「ルビー、右手を出してくれないかしら」
「ッ!まさか、レイチェル…!」
「早くして」
「だ、ダメよ!そんなのダメ!」
「貴方はあの人のために死ぬ気なのに、私だけ何も出来ないほうがダメよ。ほら、手を出して」
「…本気なのね、後悔はしない?あの人に会えないのよ」
「それはルビーも同じでしょ。私はあの人が生きていればそれでいいの」

何の話か分からない。分からないけれど一つ分かる。それは…レイチェルさんは死ぬ気だという事。俺はこれを止めるべきか悩んでいた。

止めたい、レイチェルさんを死なせたくない。だけどこれはレイチェルさんの選んだ道…俺にそれを止める権利はない。

「ク、クロ、ママを止めなきゃ!」
「それは…」
「クロ!ママが!」

リンが焦るもの分かる。俺だって止めたくてしょうがない。俺だって…レイチェルさんに返していない恩が沢山ある。死なせたくない、そんなのは当たり前だ。
でも…

「クロ、リン、いいのよ。そこで見ていて」
「ママ…」
「レイチェルさん…」

目的があっても俺を養子として引き取ってくれた…
十年間育ててくれた…
色んな事を教えてくれた…
沢山の宝物愛情を貰った…
偽物じゃない、本物の宝物愛情、は確かにあった…

そんな人が
目の前で
死のうとしているのに
助けることも出来ず
恩の一つも返せないでいいのか?







嫌だ。
死なせたくない、助けたい、救いたい、守りたい、恩を返したい。
朝を寝過ごしている時に布団を剥がされ起こされたあの時間を失いたくない。
鍛錬をサボって訓練量を倍にされて、やりこなして疲れ切った後で俺の好きな特製のドリンクを渡された時の達成感を失いたくない。
料理を教えてもらって、できた時に褒められたあの嬉しさを失いたくない。
春には森を歩いて花を見つけて部屋に飾ったり、夏には虫を取ってきて捨てて来いと虫嫌いのレイチェルさんに言われたり、秋にはレイチェルさんの似顔絵をかいて今でも家に飾っていたり、冬には雪を投げ合って風邪を引いてレイチェルさんに怒られた。

助けられないことは分かっている、レイチェルさんの意思が硬いのもわかっている。だけどあの言葉だけは言いたい。いや、言わなくちゃいけない。

俺はそう思うと無言でレイチェルさんの元へ向かった。

「母…さん」
「…クロ?」
「母、さん、ってずっと呼びたかった…でも、呼べなかった。血が繋がっていないから拒絶されると…思っていた」
「……」
「それでも、それでも呼びたかった。俺を母さんの子供でいさせてくれる…?」

そう言うと母さんは涙を流す。指で涙を拭うと優しく微笑んで言ってくれた。

「クロ、貴方は昔からずっと、私の子供よ。もし、生まれ変わっても貴方はずっと私の子供よ」
「…ありがとう、母さん」
「それとクロ!母さんって呼ばれるのをどれだけ待ってたか分かる?もう少し人の気持ちを考えるようになりなさい!」
「あ、あぁ、ごめん…」
「だけど…ありがとね」

母さんは涙を静かに流すと「クロ、行きなさい」と言った。
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