35 / 108
第2部 魔王って? 獣王って? 天使って?
第6話 ヴァルプルギス(新魔王の初仕事)
しおりを挟む
皆様いかがお過ごしでしょうか?
私はと言えば、何だか良くわからない経緯で魔王になど指名されてしまい、拒否する事も逃げる事も無駄らしく、仕方なくこれから初仕事に向かうところです……
部屋に帰って着替えを済ませた。
「そろそろ時間ね。じゃあ、初仕事といきましょうか」
自分に言い聞かせようと、あえて声に出して言ってみる。
(ほう、あれだけ嫌がっておったのに、魔王になる事を納得したのか?)
いーえ、今だって決して割り切れちゃいませんけど、これ以上、あんまりウジウジしてたり、鬱入っててもしょうがないしね。
脱走してもどうせ使い魔の監視は付くだろうし、どこに逃げても魔王は魔王なそうなんで、だったら魔王城にいても一緒でしょ。
それに、何をするにしても、初めての時ってなんだか高揚感がある。
ゼブルさんの言う通りなら、手っ取り早くやるべきことを済ませて、今度は私が次の適当な人を見つけて指名すれば、その人が新しい魔王になるわけだし。
とっととそうしよう。
(きっとガイアも同じように考えながら300年、とは思わぬか?)
う…… お婆さんになるまで魔王とか、嫌だなあ。
腰が曲がって、皺だらけで、曲がりくねった杖でもついて、それでも「魔王様」って呼ばれてる自分なんか、想像しただけで、ぶるぶるぶる。
悪い未来は考えないようにするのだ。
背の高い魔族さんに案内されて豪華な広間に入ると、この国の主だった顔ぶれなんだろう、数十人の盛装した魔族さんたちが、既に片膝付いて頭を下げた礼の姿勢で私を待っていてくれた。
床は大理石造りで、壁には金銀の装飾、アーチ型の天井には青空や雲が描かれてて、ちょっと屋外に出たみたいな開放的な雰囲気の部屋だ。
さすがにこの部屋には変な飾り付けは無かったんで、ちょっと安心したけど、同時に少しがっかりもした。私、ミスマッチに毒されてきたのかも。
正面に数段高くなった部分があって、そこに、いかにも偉そうな作り付けの椅子がある。あれが王座なんだろう。
椅子の横にガイアさんが立って、こっちを向いて手招きしてる。
呼ばれるままに赤い絨毯の上を歩いて壇上へと進み
しっかり階段につまづいてコケた。
気を取り直して、イヤー、ナニカアッタカナ、てな知らんふりの顔で立ち上がり、促されて椅子に座った。
ガイアさんが良く通る声で皆に言う。
「昨夜、使い魔を通じて知らせた通り、妾は魔王を引退する。新たな魔王はここに居るアスラじゃ」
すると、まず一番前にいたゼブルさんが、次に皆が声を揃えて答える。
「この宰相ゼブル以下、我ら一同、身命を尽くして新魔王であるアスラ様にお仕えすることを誓います」
「「「「「誓います」」」」」
あ、執事なだけじゃなくて、宰相さんだったんだ。
まあ、この人だったら納得かな。
「アスラは本来はヒト族の勇者じゃ。勇者が魔王になるなど前代未聞であろう。面白い事になったと、皆も思わぬか?」
「「「「「おおーっ!」」」」」
これは初めて聞いたらしい。
「ただし妾は、ヒト族を驚愕させるためにアスラを魔王に指名した訳ではないぞ。新たな魔王に最もふさわしいと思ったからじゃ。さあここで、そのアスラ自身から魔王就任の挨拶をして貰おうか」
「えっ?」
「何を驚いておる」
「だって、挨拶するとか聞いてませんって」
「前もって伝えておかなくても当たり前じゃろう。所信表明とか抱負とか、ほら、そういったものを語ってみよ」
うーん……
で、私はほんのちょっと考えてから、ごくごく当たり前のことを、とりあえず言った。
「ええと、抱負ってほどでもないけど、私の思うのは皆が楽しく暮らせる国にしたいってこと。だから、ここに居られる皆さんにも、魔族の国に住むみんなにも、たったひとつ、これだけはお願いします。仲間の嫌がることはしないように、自分がされて嫌なことは相手にもしないようにしましょう。
これは相手を不快にすることもそうだけど、騙したり、盗んだり、相手を傷つけたりすることも含まれます。これに反した人には相応の罰を与えます」
(まあ、至極ありきたりの、よくある「一言」だな。具体性が全く無い)
だそうだ。ところが
「「「「「おおーっ!」」」」」
「自分が嫌なことは他人にもしない、そんな考え方は初めて聞いた。目から鱗だ!」
「確かにその通り。さすがガイア様が選ばれた新たな魔王様だ。発想が常人とは違う!」
え、何、この反応? フツーに考えて、誰だって守るべき当然の心掛けでしょうに。
「うんうん、規則は簡略で分かりやすい方が良い。なかなかのものじゃ」
なんて、ガイアさんも喜んでくれてる。
うーん、なんか釈然としないけど、とりあえず良しとしよう。
うん、そうしよう。
それから
「次に、本当の意味で初仕事として、この街と国の名前を決めたいと思います。城の名前はヴァルハラのままでいいけど、考えてみれば街には名前がないから。まず、街の新たな名は『ガイア・シティー』」
「何じゃと!? や、やめろ! 妾はそれには反対じゃ」
「なんで? ガイアさんの作った街だから『ガイア・シティー』って、わかりやすくて、覚えやすくて、いいじゃないですか」
「ま、待て! そんな、自分の名前を街に冠するなど恥ずかしいではないか」
「自分で決めたわけじゃないから、別に恥ずいことはないと思いますよ。それに、ガイアさん、もう魔王じゃないし、決定権は私にあるんじゃ?」
「むむむ」
「何だったら、みんなに意見を聞いてみてもいいですよ。反対の人、いたら手を挙げて」
しーん。
「ほら、誰もいないじゃないですか」
ということで、街の名前はサラッと決まった。
次は国の名前だが、こっちは割と大変だった。
今度はまず、みんなのアイディアを募ってみたからだ。
「はい、アスラ様。吾輩に良い考えがあるのである」
「あら、いたんだ。猫ちゃ…… ではなかった、ベベル君。言ってみなさい」
「ベベルではない。バベルである。いい加減に記憶して頂きたいのである」
「わかりました。善処します。それで、君の意見とは?」
「『バビロニア』は如何であるか? これは遠い昔、旧文明でも非常に古い時代に繁栄した強大な国家の名前で、縁起も良く、音の響きも荘厳なのである」
「却下!」
「えーっ、何故であるか」
「君、自分の名前にひっかけて国の名前にしようとしてるでしょう。『バベル』に由来して『バビロニア』なんて、いい神経してるねえ」
「しかし、その国には天にも届く巨大な塔さえあったとか」
ここでゼブルさんが小さな声で「しかしもタカシ君もヒロシ君も……」とか呟いてたが、見なかったこと、聞かなかったことにする。
「はいはい、その塔に神様の怒りが落ちて破壊されたっていう、古代の聖典にあるおとぎ話ですね。それからは人間の言葉も幾つにも分かたれてしまったとか」
「その通りである。有名なバベルの塔。だからこそ『バベル』とは、猫や人の言葉は勿論、カラスの言葉も狼の言葉も話せる吾輩の名にふさわしいのである」
「ほら、やっぱり君の名前でしょ。だからこそ『バビロニア』は却下。他の案は?」
ここで、文官らしい魔族さんが立ち上がって言った。
「本国は、美食をもってヒト族を凌駕する文化、文明を築き上げる事を目指しております。ならば、いっそのこと『グルメ・パラダイス』などは名案ではないかと、僭越ながら愚考致します」
「それは確かに愚考です。却下。なんだか田舎の居酒屋か安っぽいテレビ番組のタイトルみたいだから」
「むむむ、残念」
今度は鎧を着た、いかにも貫禄ある武官って感じの熊の獣人さんが言った。
「某が思うに、『ラピュタ』は如何でしょう。伝説の空中都市国家の名前で、夢が有るのでは?」
「却下。それは伝説ではなく『あにめ』です。パクリはいけません。著作権侵害になります」
「『ちょさくけん侵害』とは何の事でありましょう?」
「旧文化において厳しく禁じられていた行為で、他人の創作物から物語の筋書や重要な要素を無断で借用することです。今の世界には存在しない概念ですが、とてもとても恥ずかしいことです。バレないからとか罰せられないからといって行うと、自身の倫理感や羞恥心を疑われます」
その後、あれやこれや、いろんな案が出た。
例えば
伝説の楽園系で、「アヴァロン」「エルドラード」「アルカディア」「崑崙《こんろん》」「アトランティス」「エデン」など。
旧文明に存在した地名系で、「江戸川河川敷公園」「びっぐ・あっぷる」「原宿竹下通り」「鈴鹿サーキット」など。
懲りずに創作物系で、「ゴッサム」「デビルマンランド」「ら・ら・らんど」「M78星雲」など。
飲食物系で、「ロコモコ」「ガンボ」「元祖タピオカ本舗」など。
ふざけんな、なに考えてんだ系で、「地球防衛軍本部」「農業協同組合」「ハローワーク」「火曜サスペンス劇場」など。
真似やパクリばっかり。
「ワシはやはり『マル・デ・アホ』が良いと思うな。はるか昔、アルゼンチンという国にあったという地名で、何と言っても笑えるではないかね」
「笑えるか否かが重要ならば、わたしは『アフォバッカ』を推しますね。これもやはり旧文明時代の、南米と呼ばれる地域に実在したという村の名前らしい。村人は何も知らずに可哀そうに……」
「その系統でいいのなら、ギニアに『バカ』と『ボケ』、嘗てのアメリカ合衆国カンザス州にも『ケチ』という、もはや悪口にしか聞こえない地名があったとか」
「やはり、厨二病患者は誰でも知っていたという『エロマンガ』は外せない」
てな感じで全然まとまらない。
まあ、みんなが自由に意見を言える雰囲気って大事だけどさ。
で、私は、ごく軽い気持ちで言ってみた。
「ヴァルプルギス」
「「「「「ん?」」」」」
「『ヴァルプルギス』って、魔族や魔物の饗宴の日のことで、年に一度、春の訪れを告げる五月一日の前夜に集まって…」
「「「「「おおーっ!!!」」」」」
え、えっ?
「良いぞ。音の響きが」
「意味は分かりませんが、何だか恰好いい」
「さすが魔王様の御発案。迫力があって素晴らしい名だ!」
「うーん、極めて『ごーじゃす』な国名ですなあ」
「禿同!」
誰も意味の説明なんか聞いちゃいなかった。
そんなこんなで、国の名前は「ヴァルプルギス」に正式決定。
私はと言えば、何だか良くわからない経緯で魔王になど指名されてしまい、拒否する事も逃げる事も無駄らしく、仕方なくこれから初仕事に向かうところです……
部屋に帰って着替えを済ませた。
「そろそろ時間ね。じゃあ、初仕事といきましょうか」
自分に言い聞かせようと、あえて声に出して言ってみる。
(ほう、あれだけ嫌がっておったのに、魔王になる事を納得したのか?)
いーえ、今だって決して割り切れちゃいませんけど、これ以上、あんまりウジウジしてたり、鬱入っててもしょうがないしね。
脱走してもどうせ使い魔の監視は付くだろうし、どこに逃げても魔王は魔王なそうなんで、だったら魔王城にいても一緒でしょ。
それに、何をするにしても、初めての時ってなんだか高揚感がある。
ゼブルさんの言う通りなら、手っ取り早くやるべきことを済ませて、今度は私が次の適当な人を見つけて指名すれば、その人が新しい魔王になるわけだし。
とっととそうしよう。
(きっとガイアも同じように考えながら300年、とは思わぬか?)
う…… お婆さんになるまで魔王とか、嫌だなあ。
腰が曲がって、皺だらけで、曲がりくねった杖でもついて、それでも「魔王様」って呼ばれてる自分なんか、想像しただけで、ぶるぶるぶる。
悪い未来は考えないようにするのだ。
背の高い魔族さんに案内されて豪華な広間に入ると、この国の主だった顔ぶれなんだろう、数十人の盛装した魔族さんたちが、既に片膝付いて頭を下げた礼の姿勢で私を待っていてくれた。
床は大理石造りで、壁には金銀の装飾、アーチ型の天井には青空や雲が描かれてて、ちょっと屋外に出たみたいな開放的な雰囲気の部屋だ。
さすがにこの部屋には変な飾り付けは無かったんで、ちょっと安心したけど、同時に少しがっかりもした。私、ミスマッチに毒されてきたのかも。
正面に数段高くなった部分があって、そこに、いかにも偉そうな作り付けの椅子がある。あれが王座なんだろう。
椅子の横にガイアさんが立って、こっちを向いて手招きしてる。
呼ばれるままに赤い絨毯の上を歩いて壇上へと進み
しっかり階段につまづいてコケた。
気を取り直して、イヤー、ナニカアッタカナ、てな知らんふりの顔で立ち上がり、促されて椅子に座った。
ガイアさんが良く通る声で皆に言う。
「昨夜、使い魔を通じて知らせた通り、妾は魔王を引退する。新たな魔王はここに居るアスラじゃ」
すると、まず一番前にいたゼブルさんが、次に皆が声を揃えて答える。
「この宰相ゼブル以下、我ら一同、身命を尽くして新魔王であるアスラ様にお仕えすることを誓います」
「「「「「誓います」」」」」
あ、執事なだけじゃなくて、宰相さんだったんだ。
まあ、この人だったら納得かな。
「アスラは本来はヒト族の勇者じゃ。勇者が魔王になるなど前代未聞であろう。面白い事になったと、皆も思わぬか?」
「「「「「おおーっ!」」」」」
これは初めて聞いたらしい。
「ただし妾は、ヒト族を驚愕させるためにアスラを魔王に指名した訳ではないぞ。新たな魔王に最もふさわしいと思ったからじゃ。さあここで、そのアスラ自身から魔王就任の挨拶をして貰おうか」
「えっ?」
「何を驚いておる」
「だって、挨拶するとか聞いてませんって」
「前もって伝えておかなくても当たり前じゃろう。所信表明とか抱負とか、ほら、そういったものを語ってみよ」
うーん……
で、私はほんのちょっと考えてから、ごくごく当たり前のことを、とりあえず言った。
「ええと、抱負ってほどでもないけど、私の思うのは皆が楽しく暮らせる国にしたいってこと。だから、ここに居られる皆さんにも、魔族の国に住むみんなにも、たったひとつ、これだけはお願いします。仲間の嫌がることはしないように、自分がされて嫌なことは相手にもしないようにしましょう。
これは相手を不快にすることもそうだけど、騙したり、盗んだり、相手を傷つけたりすることも含まれます。これに反した人には相応の罰を与えます」
(まあ、至極ありきたりの、よくある「一言」だな。具体性が全く無い)
だそうだ。ところが
「「「「「おおーっ!」」」」」
「自分が嫌なことは他人にもしない、そんな考え方は初めて聞いた。目から鱗だ!」
「確かにその通り。さすがガイア様が選ばれた新たな魔王様だ。発想が常人とは違う!」
え、何、この反応? フツーに考えて、誰だって守るべき当然の心掛けでしょうに。
「うんうん、規則は簡略で分かりやすい方が良い。なかなかのものじゃ」
なんて、ガイアさんも喜んでくれてる。
うーん、なんか釈然としないけど、とりあえず良しとしよう。
うん、そうしよう。
それから
「次に、本当の意味で初仕事として、この街と国の名前を決めたいと思います。城の名前はヴァルハラのままでいいけど、考えてみれば街には名前がないから。まず、街の新たな名は『ガイア・シティー』」
「何じゃと!? や、やめろ! 妾はそれには反対じゃ」
「なんで? ガイアさんの作った街だから『ガイア・シティー』って、わかりやすくて、覚えやすくて、いいじゃないですか」
「ま、待て! そんな、自分の名前を街に冠するなど恥ずかしいではないか」
「自分で決めたわけじゃないから、別に恥ずいことはないと思いますよ。それに、ガイアさん、もう魔王じゃないし、決定権は私にあるんじゃ?」
「むむむ」
「何だったら、みんなに意見を聞いてみてもいいですよ。反対の人、いたら手を挙げて」
しーん。
「ほら、誰もいないじゃないですか」
ということで、街の名前はサラッと決まった。
次は国の名前だが、こっちは割と大変だった。
今度はまず、みんなのアイディアを募ってみたからだ。
「はい、アスラ様。吾輩に良い考えがあるのである」
「あら、いたんだ。猫ちゃ…… ではなかった、ベベル君。言ってみなさい」
「ベベルではない。バベルである。いい加減に記憶して頂きたいのである」
「わかりました。善処します。それで、君の意見とは?」
「『バビロニア』は如何であるか? これは遠い昔、旧文明でも非常に古い時代に繁栄した強大な国家の名前で、縁起も良く、音の響きも荘厳なのである」
「却下!」
「えーっ、何故であるか」
「君、自分の名前にひっかけて国の名前にしようとしてるでしょう。『バベル』に由来して『バビロニア』なんて、いい神経してるねえ」
「しかし、その国には天にも届く巨大な塔さえあったとか」
ここでゼブルさんが小さな声で「しかしもタカシ君もヒロシ君も……」とか呟いてたが、見なかったこと、聞かなかったことにする。
「はいはい、その塔に神様の怒りが落ちて破壊されたっていう、古代の聖典にあるおとぎ話ですね。それからは人間の言葉も幾つにも分かたれてしまったとか」
「その通りである。有名なバベルの塔。だからこそ『バベル』とは、猫や人の言葉は勿論、カラスの言葉も狼の言葉も話せる吾輩の名にふさわしいのである」
「ほら、やっぱり君の名前でしょ。だからこそ『バビロニア』は却下。他の案は?」
ここで、文官らしい魔族さんが立ち上がって言った。
「本国は、美食をもってヒト族を凌駕する文化、文明を築き上げる事を目指しております。ならば、いっそのこと『グルメ・パラダイス』などは名案ではないかと、僭越ながら愚考致します」
「それは確かに愚考です。却下。なんだか田舎の居酒屋か安っぽいテレビ番組のタイトルみたいだから」
「むむむ、残念」
今度は鎧を着た、いかにも貫禄ある武官って感じの熊の獣人さんが言った。
「某が思うに、『ラピュタ』は如何でしょう。伝説の空中都市国家の名前で、夢が有るのでは?」
「却下。それは伝説ではなく『あにめ』です。パクリはいけません。著作権侵害になります」
「『ちょさくけん侵害』とは何の事でありましょう?」
「旧文化において厳しく禁じられていた行為で、他人の創作物から物語の筋書や重要な要素を無断で借用することです。今の世界には存在しない概念ですが、とてもとても恥ずかしいことです。バレないからとか罰せられないからといって行うと、自身の倫理感や羞恥心を疑われます」
その後、あれやこれや、いろんな案が出た。
例えば
伝説の楽園系で、「アヴァロン」「エルドラード」「アルカディア」「崑崙《こんろん》」「アトランティス」「エデン」など。
旧文明に存在した地名系で、「江戸川河川敷公園」「びっぐ・あっぷる」「原宿竹下通り」「鈴鹿サーキット」など。
懲りずに創作物系で、「ゴッサム」「デビルマンランド」「ら・ら・らんど」「M78星雲」など。
飲食物系で、「ロコモコ」「ガンボ」「元祖タピオカ本舗」など。
ふざけんな、なに考えてんだ系で、「地球防衛軍本部」「農業協同組合」「ハローワーク」「火曜サスペンス劇場」など。
真似やパクリばっかり。
「ワシはやはり『マル・デ・アホ』が良いと思うな。はるか昔、アルゼンチンという国にあったという地名で、何と言っても笑えるではないかね」
「笑えるか否かが重要ならば、わたしは『アフォバッカ』を推しますね。これもやはり旧文明時代の、南米と呼ばれる地域に実在したという村の名前らしい。村人は何も知らずに可哀そうに……」
「その系統でいいのなら、ギニアに『バカ』と『ボケ』、嘗てのアメリカ合衆国カンザス州にも『ケチ』という、もはや悪口にしか聞こえない地名があったとか」
「やはり、厨二病患者は誰でも知っていたという『エロマンガ』は外せない」
てな感じで全然まとまらない。
まあ、みんなが自由に意見を言える雰囲気って大事だけどさ。
で、私は、ごく軽い気持ちで言ってみた。
「ヴァルプルギス」
「「「「「ん?」」」」」
「『ヴァルプルギス』って、魔族や魔物の饗宴の日のことで、年に一度、春の訪れを告げる五月一日の前夜に集まって…」
「「「「「おおーっ!!!」」」」」
え、えっ?
「良いぞ。音の響きが」
「意味は分かりませんが、何だか恰好いい」
「さすが魔王様の御発案。迫力があって素晴らしい名だ!」
「うーん、極めて『ごーじゃす』な国名ですなあ」
「禿同!」
誰も意味の説明なんか聞いちゃいなかった。
そんなこんなで、国の名前は「ヴァルプルギス」に正式決定。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
