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4話 父上と話す

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 今日は公務のため王都に行っていた父上が帰ってくる。
 基本的に、食事の際は家族全員集まるのでそのときに、父上に剣術の講師の件を相談するのが良いだろう

 (転生してから父上に会うのは初めてだ。気を引き締めないと。)



 父上が帰ってきたのは、黄昏時だった。
 この時間なら夕食は一緒だろう。
 程なくして夕食の時間になった。
 食堂に向かうと、既に自分以外揃っていた。
 食事が始まると、父上が兄上に話しかけた。

「ローラン、四階位魔法の発動に成功したらしいな。
 五階位魔法の発動も、もうじき可能だと聞いている
 次期公爵家当主に相応しい才能だ。
 これからも精進するとよい。」

 兄上は、現在10歳だ。
 10歳だと、ニ階位魔法を発動できるのが普通、三階位魔法で優秀なぐらいだから、四階位魔法を発動できる兄上はまさしく天才だろう。

「まだまだでございます。
 公爵家の長男として、これからも精進して参りま
 す。」

 兄上は表情を変えずにそう言った。
 
 (まだ10歳の子供だから、親に褒められたら、喜びそうなものだけど……貴族の子供はみんなそうなのかな?)

 なんてことを考えていたら、父上が話し掛けてきた

「アラン、意識を失っていたと聞いたが大丈夫だった
 のか?」

「はい。
 大丈夫です。
 ご心配をおかけしました。」

「大丈夫ならばよい。
 これからは、気をつけろ。」

 言うなら、今がいいだろう。

「父上、お願いがあるのですが。」

「なんだ、言ってみろ」

「剣術の鍛練をしたいと思うのですが、その講師の手
 配をしたくれませんか。」

「何故剣術の鍛練をしようと思ったのだ。」

 この質問にどう答えるかで決まる。
 父上が望む回答をしなきゃいけない。
 だが、父上は外交官だ。
 嘘を見抜く能力に長けている。
 俺の嘘なんて簡単に分かるだろう。
 本心をぶつけるしかない。
 
「自分のためです。
 自分の身を守るため。
 自分の望みを叶えるため。
 好きなように生きるため。
 そのために強さが必要なので、剣術の鍛練をしよう
 と思いました。」

「……ふむ。
 いいだろう。
 剣術の講師の件は任せておけ。
 アランにあった者を手配しておく。」

「ありがとうございます。」

 ひとまず認めてもらえたようだ。
 簡単に認めてもらえたことが予想外だが、俺に父上の考えは分からない。
 俺に価値があると思ってもらったのだとあれば、
嬉しいが…まぁまずは身と認めてもらえたことを喜ぶべきだろう。
 その後は、特に話しかけられなかった。
 兄上にパーティーの誘いがたくさん来ているらしく
その話をしていた。
 この国では10歳になると、貴族家の子息令嬢が王都に集まり、国王が主催するパーティーに参加する。
 それを機に、色々なパーティー参加して、派閥の形成をしていくのだ。
 ハイド家は国内の派閥はあまり大きくないが、兄上の能力を見込んで、親密になっておきたいのだろう。
 ハイド家が公爵家である以上、自らの派閥に引き込むというのは難しいから、そういう魂胆だろう。
 また、この年齢になると、婚約者を決めていくから
そういう意図もあるのかもしれない。

 (まぁ、現状は俺には関係のないことだ)

 そんなこんなで夕食を終えた後は自室に戻って、魔力量を増やす訓練を始める。
 まず初めに、闇属性の一位階魔法を発動する。
 
「ダークネス」

 漆黒の球体が生成され、辺りが途端に暗くなった。
 この魔法は球体を起点に周辺を暗くする魔法だ。
 イメージ次第で暗さを調節することが可能である。
 ちなみに光属性の一位階魔法の「ライト」は球体を起点に周辺を明るくすることができる。
 「ダークネス」を何度も発動して、魔法が切れないように、魔力を流し続ける。
 このやり方だと、短時間で大量の魔力を消費できる上に複数の魔法を同時に発動する練習にもなる。
 そのまま維持していると、不意に強い倦怠感に襲われた。
 魔力枯渇の症状だ。
 魔法が切れて、周辺が明るくなる。
 頭痛もあり、意識を失いそうになる。
 だが、これからもこの訓練をするのだ。
 毎度意識を失っているわけにはいかない。
 必死に意識を保とうとする。
 そのまま数十分程耐え続けると、魔力が回復してきたことで、魔力枯渇の症状が治ってきた。
 この苦痛に耐え続けなければならない。

 (この訓練をする者がいない理由が理解できる。)

 これに加えて剣術の鍛練もする必要があるのだ。
 この程度で根を上げてはいられない。
 未来を変えるためと思えば安いものだ。
 

 
 
 
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