異世界球技無双~最強すぎる必殺シュートで伝説のドラゴンや魔王も全てふっ飛ばす!~

空地大乃

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第2章 球技を扱う冒険者編

第49話 決闘

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「来てしまったか……」

 やれやれと言った様子でキングがヤンを見た。長大な槍を肩で担いている。そのあまりの大きさに穂先がギルドの天井に達していた。

「ハスラーここであったが百年目だ!」
「いや、おっさん誰? 初対面だよね?」
 
 指をハスラーに向け、語気を荒げるヤンだが、ハスラーはキョトンとした眼差しを向けていた。

 どうやらハスラーはヤンとの面識がないようである。

「俺は無尽流四天槍が一人ヤン! 育てて貰った恩も忘れ、道場をメチャクチャにし無理矢理免許皆伝の称号を奪っていった貴様に目に物見せるためにやってきた! どうやら貴様は周囲に無尽流無槍術の免許皆伝を言い渡されたなどと嘯いているようだが、それも今日までだ!」
 
 ヤンが槍の石突で床をドンッと叩いた。建物がぐらりと揺れる。

「なるほどね。誰かと思ったらあの無尽流か。それにしても四天槍とか大層な肩書を引っさげて来たものだね」

 ハスラーが軽口を叩くと、ふんっ、とヤンが鼻を鳴らし彼を睨みつける。

「本来なら貴様のような小物、相手にしたくはないが道場の看板に泥を塗られたとあっては黙ってられないのでな。この俺、自らがきてやったのだ」
「そう。キングごめんね。あとそっちの可愛らしいエルフちゃんも。何かこのおっさん僕に用があるみたいだから」
「あぁ、実は俺も知っていた。馬車で乗り合わせてな。ハスラーについても聞かれたが、どうせすぐわかることだろうと基本的なことは教えてしまったんだ」
「はは、キングは正直者だね。でも、問題ないよ。別に知られて困るものじゃないし」

 当初考えていたとおり、キングは包み隠さず経緯を述べた。ハスラーはそれについて怒るようなこともなく納得してくれた。

「それでおっさんはどうしたいの?」
「決闘だ! 貴様のような輩が無尽流無槍術の免許皆伝を授かったなどと吹聴するのは我慢ならん! この俺に負けたら二度と無尽流無槍術の名を語るなよ」

 随分と一方的な要求だなとキングは思った。

「それで、僕が勝ったらどうするのかな?」
「そんなものはありえん話だが、その時は俺が四天槍の名を返上してやろう」
「別に僕はそんなものに興味はないんだけどね。あぁそれなら返上しなくてもいいからその邪魔そうな槍を折ってくれる? そんなもの持ってチョロチョロ歩かれても皆、迷惑だろうし」
「あぁ、確かにそうね」

 ウィンが目を細める。ヤンの持つ槍はとにかく長いので傍から見る分にはただ歩いているだけでも危なっかしいのだ。

「貴様、無槍流にとって命より重い槍を折れとは、やはりその根性ごと叩き潰す必要があるな!」
「別にどう捉えてくれても構わないけど、その条件でいいかい?」
「ふん、わかった。ならば決闘だ!」

 ヤンが声高々に宣言すると周囲で聞いていた冒険者の喧騒が激しくなった。冒険者はとかくこういう荒事が大好きなのである。

「何か妙な話になったわね……」

 するとキングの隣にやってきたダーテがため息を添え渋い顔を見せた。

「あ、ちょうど良かった。下の訓練場借りてもいい? このおっさんが決闘したいって言うんだよ」
「駄目に決まってるじゃない。訓練場はあくまで訓練のためにあるのであって個人的な私闘の場所じゃないのよ」

 腕を組みダーテが諭すように答えた。確かに冒険者ギルドの設備はあくまで冒険者に役立たせる為にある。個人的な理由での決闘で利用するなど本来は不可能だが。

「いいじゃねぇか。使わせてやれば。丁度今は利用者がすくねぇみたいだしよ」
「マスター!?」

 しかし、そこに口を挟んできたのはギルドマスターのマラドナだった。顎を擦りながらどこか楽しそうにハスラーとヤンを見ている。

「貴方まで何を言ってるんですか! ギルドのルールを甘んじなければいけない立場なのに、そんなことでは示しがつきませんよ!」
「固いこと言うなって。それにほら、他の冒険者も盛り上がってるし」
「そうだぜダーテぇ」
「こんな楽しそうなこと止めさせる理由がねぇよ」
「既に賭け金も集まってんだ。今更やめろなんて言いっこなしだぜ」

 やんややんやと観客となった冒険者達が囃し立てる。しかも既に賭けまで始まっておりギルド内がすっかりお祭り騒ぎ状態となっていた。

「全く。相変わらずよね冒険者は」
「うむ。まぁ何でも楽しみに変えてしまうところも冒険者のいいところなのかもな」
「キュッキュッ~」
「うぅ~……」

 その光景にダータが困った顔で唸るが、その後、はぁ、とため息をつき額を押さえた。その顔は諦めに満ちている。

「もういいわよ。マスターが言ってるんだし好きにすればいいわ」
「よっしゃ決まりだぜ!」
「期待の新星ハスラーと四天槍とかいうヤンって槍使いの対決だ!」
「見逃す手はないぜ!」
「私断然ハスラーくん応援しちゃう!」

 ギルドの冒険者たちが湧く。ハスラーは女性人気が高い。賭けもハスラーに賭けたのはほぼ女性冒険者だった。

「決まりだね。じゃあ行こうか」
「ふん、俺はどこでも構わなかったがな。真の強者は場所を選ばぬ物よ。なんなら人通りの多い往来でも勝負してやるところだ」
 
 それは流石に周りに迷惑だろうとキングが眉をしかめる。モンスターを退治した時もそうだが、ヤンの言動はどこか自己中心的な物が多い。

 そしてぞろぞろと下の訓練場へと場所を移す。おかげでハスラーとヤンが戦うスペースを除いて冒険者たちで埋め尽くされた。

「結局お前も来るんだな」
「う、受付嬢としてしっかり見ておく必要性を感じただけです」

 ダーテの回答にマラドナが、ククッ、と含み笑いを見せる。そんな彼もギルドマスターとして両者の決闘には興味津々な模様だ。

「ねぇキング。この勝負どっちが勝つと思う?」
「ふむ、そうだな。俺はハスラーと手合わせしたがヤンは一度技を見ただけでしかない。だが――」

 キングが真剣な眼差しを対峙する二人に向けた。それから先はっきりとした答えは示さなかったがキングの中では一つの答えが出ているようでもあった。

「さて始めようか」

 首の後に槍を当てブラブラさせていたハスラーが持ちかける。

「ふん、どこからでも掛かってくるがよい」

 一方でヤンは槍を肩で担いただままハスラーを挑発する。その表情は自信で満たされていた。

「そう。なら僕は遠慮しないよ」

 スッと流れるようにハスラーが槍を構えた。

「悪いけど一気に決めさせてもらうよ」

 そしてハスラーが加速しその間合いを一気に詰めに掛かり直後ハスラーが増え散開する。

「無尽流無槍術奥義・四槍八槍!」

 そしてハスラーの残像がヤンを取り囲む。

「凄い。何人にも分身した!」
「あぁ、俺も受けた技だ。ハスラーの十八番だな」
「キュッキュッ~!」

 ウィンが驚きボールも興奮した様子でキングの肩で跳ね鳴き声を上げる。

 周囲の冒険者達も早速決まったか! などとハスラーの勝ちを意識したようだが、迎え撃つヤンは無表情のまま迫る槍に目を向け。

「笑止!」

 ヤンが長大な槍を一薙ぎするとそれだけで残像が全て消え失せハスラーの本体に槍の柄が当たり吹き飛ばされた。

「くっ!」

 うめき声を上げるも体勢を立て直し地面に足をつける。だが、その表情からはいつもの軽さが消え去っていた。

「おいおい、ハスラーの技が破られたぞ」
「これでキングに続いて二人目か」

 冒険者達が口々に騒ぐ。確かに以前キングもこの技を受けたが球技を持って制した。ただ当時のキングは籠球を利用したガードだったが、ヤンは圧倒的な剛の技で力任せに跳ね返したといったところか。

「ふん、その程度で奥義とは笑止千万! どうやらその技を姑息な手段で盗み得意がっていたようだが、その程度の奥義、我が無尽流無槍術においてはもっとも基本的な奥義に他ならない!」
「基本的な奥義って何なのかしら……」
「奥義の基本なんだろう?」

 ダーテが目を細めて呟く。マラドナはそのままの意味で受け取ったようだが本来奥義とは特別なものである。

「さぁ、真の無尽流をその目に焼き付けるがいい! 旋風の型!」
 
 するとヤンが頭上に槍を持ち上げブンブンっと振り回し始めた。以前マウンテンボアを倒した時にも見た行為だが、今回は回転を続けており、しかもその勢いで大気が掻き回され突風を生み出していた。

「むぅ、これはマズイな」
「え? どうゆうこと?」

 キングの表情が険しくなりウィンが問う。

「ハスラーの強みはあのスピード。しかし、あの回転によって生まれた風圧の前ではそのスピードを活かしきれない」

 そうキングが評す。そして偶然にもこれは以前キングがハスラー対策に講じた手でもある。あの時キングは土離震ドリブルで地面を揺らすことでその足を封じたのだ。

「くっ、近づけない――」
「フンッ、それが貴様の限界よ! さぁこれが真の奥義というものだ無尽流無槍術奥義・猛弧裂槍!」

 刹那――ヤンの豪槍が振り抜かれ、かと思えばヤンの胸部がパックリと割れ、出血を撒き散らしながらふっ飛ばされたのだった――
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