異世界球技無双~最強すぎる必殺シュートで伝説のドラゴンや魔王も全てふっ飛ばす!~

空地大乃

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第2章 球技を扱う冒険者編

第53話 ハスラーの真実

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 キングとウィンとボールは再びハスラーの下へとやってきた。

 部屋にやってきた三人を見て、ハスラーが頭を下げる。

「キング、さっきはごめん。何か追い出すようなことを言って」
「気にしてないさ。それより聞いたよ。無尽流との因縁について」
「聞いた?」

 キングがそう口にすると、ハスラーが目をパチクリさせた。

「キングがね、情報屋と知り合いで、それで知ったのよ。でもとんでもないよね! 無尽流の連中!」
「……とんでもないか」

 憤るウィンだがハスラーは目を伏せる。

「……ハスラーは無尽流でその腕を買われていた。だから指導は比較的まともだったが他の弟子は全く違った。修行とはいえないような扱きと嫌がらせ。m差に修行とは名ばかりでただ苦痛を伴うだけの練習と奴隷のような扱いが見ていられなかった。だから兄弟子も師範も倒し、奥義書も奪い免許皆伝の証も受け取った。そしてこのことを喧伝されたくなかったらこんな真似はやめろと約束させ入門料も弟子たちに返還させた――それが真相だろう?」
「……まいったな。そんな情報どこで掴むんだか」
「この街には優秀な情報屋がいてね」
 
 キングがニカッと笑うがすぐ真顔になり。

「ハスラー……お前はその後、結局無尽流のやり方が変わってないことを知った。だからそれからは敢えて無尽流の師範も含めて軽く倒し免許皆伝も奥義書も手に入れたと口にするようになった。そうやって評判を落として無尽流の被害者が減るようにしたかったんだろう?」
「……」

 ハスラーはその問いには答えなかったがキングは更に続ける。

「正直言えば、ハスラーのやり方を手放しで正しいとは言えない。もっと他にもやり方はあったかもしれない。だが、結果的にお前は苦しんでいる弟子たちを助けた。奴らの言っていたように自分勝手な理由ではなかった筈だ」
「それは違うかな」

 キングが自分の考えを伝えるとハスラーが否定し、自嘲した。

「僕は愉しくなければ嫌なんだ」
「え、愉しい?」

 ウィンの長い耳がピコピコと揺れ動く。

「そう。槍はやってみて愉しいから始めた。冒険者もそうだった。だけど、我流でやるにも限界を覚えた。これまで愉しめていた鍛錬もそこまで愉しめなくなった。だから技を習って見るのもいいかなと思って無尽流の門を叩いたんだ。でも、そこでの修行は愉しくはなかった。弟子の件もそうだ。奴らのやり方は愉しくないどころか見ていてイライラして不愉快だった。だから潰した。理由なんてそんなところさ。自分勝手だろう?」
「え? え~と……」
「キュ、キュ~……」

 ウィンは返答に困っていた。ボールも似たようなものだろう。

 だがキングは違った。

「いいんじゃないか?」
「え?」
「別にいいだろう。愉しくなければやりたくないならそれはそれで。それにその愉しくないが結果的に人助けになった」
「――肯定するのかい? こんな考え?」
「そりゃそうだ。俺だって似たようなものだ。今の技を覚えたいと思ったのも心がワクワクしたからだ。年甲斐もなく新しいことにチャレンジできる自分に高揚感を覚えたし、それが愉しくもあった。だからハスラーの気持ちはわかる。それに愉しむは別に楽したいってわけじゃない。寧ろ自分が愉しめなければ苦しいはただ苦しいだけだ。だけどそこに愉しみを見いだせれば辛い修行にもやりがいが生まれる」

 キングがそこまで言うと、ハスラーは目をパチクリさせ、そして笑った。大笑いだった。

「はは、まいったな。今まで愉しくないと嫌だと言った僕にそんな返しとした人はいなかった。人生をなめてるとか、考えが甘いとか否定的なことばかりだったんだよ。ははっ」

 そう笑うハスラーはどことなく嬉しそうだった。

「何かよくわからないけど、ふっきれたみたいね。うん、そのつもりよ! その意気であのヤンをやっつけちゃいましょう! 次の試合でね!」
「うん? 次の試合?」
「う、うむ――」
「あ……」

 ウィンが両手で口を押さえた。思わず出てしまった言葉にしまったという顔。勿論話さなければいけないことだ、それはタイミングを見計らうつもりでもあった。だが、話してしまったものは仕方ない。

 なのでキングがさっきの食堂でのやり取りを伝えたが。

「そうか……そんなことが」
「ご、ごめんなさい! 私がつい!」

 ウィンが頭を下げる。だが、ハスラーはふっと笑い。

「いいさ。それに僕のために怒ってくれたんだろう? それは嬉しい」
「それなら!」
「でも、駄目だ。今の僕じゃあいつには勝てない」
「えぇええぇええぇえ!」
「キュッキューーーー!」

 ウィンとボールが驚いた。まさかこうも弱気な発言が飛び出すとは。

「ごめん。だけどキング達には迷惑を掛けない。何とか謝って済ませてもらうよ」
「ちょ、まだ諦めるのはやいってば! 1ヶ月あるんだし」
「だけど、駄目なんだ。あいつは確かに強かったし今の僕じゃ勝てるビジョンが浮かばない。少なくとも無尽流じゃ駄目だ。さっきもいったろう? 僕は愉しめなければ駄目なんだ」
「うむ、それなら無尽流以外に自分にあった戦い方を探してみるのはどうだ? 槍を扱った戦いは好きなのだろう?」
「それはそうだけど。我流では限界があったしなぁ。それに槍の技術を活かせてそれでいてやってみて愉しい武術なんてすぐには見つからないよ」
「う、確かに……愉しいってのがネックよね」
「キュッ~……」

 ウィンが腕組みし悩む。ボールの頭にも?マークが浮かんでいたが。

「うん? 待てよ……ハスラー! 俺に心当りがある!」
「心当り?」
「そうだ。やってみて愉しい武術。しかも槍の技
術が生きるハスラーに最適かもしれない武術が!」
「え? 本当かいキングそれは!」
「うむ、そうだな。先ずは怪我を治してそれからでも見せて」
「だったらこうしちゃいられない! すぐに教えてよ!」
「え? でも怪我……」
「こんなのもうへっちゃらさ!」

 ハスラーがベッドから飛び降り着替えを始めた。 動きも軽快でとても元気そうだ。

「これはまた、驚異的な回復力だな」
「今まで寝てたのはなんだったの?」
「はは、ちょっと精神的にね」

 どうやら寝てたのは精神的なダメージによるところが大きかったようだ。

「さぁ、教えてよキング! 僕にその技を!」 
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