侍と忍者の記憶を持ったまま転生した俺は、居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で無双し異世界で成り上がる!

空地大乃

文字の大きさ
29 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第28話 サムジャ、ギルドにパピィを連れて行く

しおりを挟む
 後日、俺は新しく仲間になったパピィを連れてギルドにやってきた。

 中に入るとシエロが俺に気が付き、その横にいたギルド長のオルサが声を張り上げた。

「おう! 来たかシノ。丁度良かったぜ」

 うん、本当に大きな声だな。自然とギルドにいた他の冒険者の注目が集まった。

 とりあえずシエロとオルサのいるカウンターに向かう。

「うん? お前そんな犬連れていたか?」
「いや、昨日から口寄せしたパピィだ。今日からは一緒に行動しようと思う」
「アン!」
「……か、可愛い」

 パピィが背中をよじ登ってきて頭の上から顔を出して一鳴きした。シエロの頬がヒクヒクと反応している。動物が好きなんだろうか。

 すごく興味深そうにパピィを見ているな。

「撫でてみるかい?」
「え? い、いいの?」
「大丈夫だよなパピィ?」
「アン♪」

 弾んだ鳴き声を上げるパピィ。人懐っこい性格のようだし、撫でられるのも好きそうだからな。

「そ、それじゃあ――ふわぁああ、すっごく気持ちいぃ」
「クゥ~ン――」

 シエロに撫でられてパピィも嬉しそうだな。

「しかし、昨日の今日で犬を飼うとはな。その口寄せってのもスキルなのか?」
「あぁ、忍者のスキルだ。口寄せの効果でパピィも天職が忍犬になったし一緒に戦えると思う」
「本当か!? ちっちぇのに凄いんだなお前」
「ワンッ!」
 
 パピィが俺の頭上で元気よく吠える。何となく得意になっている顔が思い浮かんだ。

「しかし、この犬は結局どうしたんだ?」
「あぁ、実はその事もあって聞きたいことがあったんだ」

 オルサが丁度話題を振ってくれたので、パピィを飼うに至った経緯を話した。その上で通り魔についても聞いてみようとも思う。

「そんなことがあったんだな……」
「飼い主が殺されてしまうなんてね……」
 
 シエロが眉を顰めた後、憐憫の感じられる眼差しをパピィに向けた。ギルド長のオルサもどことなく同情的だ。

「それは可愛そうなことをしたものだな。しかし、つまりこいつは犯人を見たってことか?」
「そうかもしれない。殺害現場で倒れていたから、飼い主の仇を討とうとした可能性もある。通り魔はまだ捕まってないんだよな?」
「あぁ、こっちでも情報集めしているし、依頼書も張り出しているが情報が錯綜していてな。性別にしても男だ女だとはっきりしないんだ」

 そうなのか……性別もわかってないとなると、はっきりしたことは何もわかってないと言っていいかもしれない。

「ワン! ワン! ワン!」

 すると、パピィが何かを訴えるように吠えた。どうかしたのかな?

 パピィが俺の頭を優しく叩いてきた。ポンポンっと感じで。

「アンッ!」

 そして鳴いた。その後、シエロに顔を向けて今度はフルフルと首を左右に振る。いやいやと言っているようであり、シエロがガーン! とハンマーで後頭部を殴られたような顔を見せた。

「わ、私、嫌われ……」
「クゥ~ン、クゥ~ン」
  
 しょんぼりするシエロだが、パピィは違うよ、とでも言ってそうな細い無き声を上げる。さて、これはつまり――

「もしかしてパピィ、犯人は男だといいたいのか?」
「アンッ! アンッ!」
 
 パピィが元気よく吠える。やっぱりそうか。今のは俺が男でシエロが女性だから、こんな表現になったんだな。

「つまりパピィは相手の顔を見たってことか? どんな顔かわかるのか?」
「クゥ~ン……」

 ギルド長が更に問いかけるが、どうやら顔までは見てないようだ。それで男女の違いがわかったということは――そうか声か。

「犯人の声を聞いたのか?」
「ワンッ!」
「つまり顔は見えないが犯人の声は聞こえる状況だったということか。恐らくは何らかの手段で顔を隠していたのだろう」

 よく考えてみれば犯人は未だ顔すら知られていない奴だ。それならば顔ぐらい隠していても不思議ではない。

「ふむ、しかし性別がわかっただけでも大きいな。これは有力な情報とみなそう。シエロ報酬を支払っておいてくれ」
「いいのか?」
「情報も金になるってことだ。そこまで大きな金額じゃないけど、新しいペットのエサ代ぐらいにはなるんじゃないか?」

 オルサがニヤッとした笑いを見せる。これは、情報をくれたパピィの為に使ってやってくれと暗に伝えてきてるのだなと俺は判断した。

 後でパピィの好きそうな食べ物を買ってあげるとしよう。この報酬もパピィがいたからこそだしな。

「あの、ところでまさかシノくん。通り魔の犯人を追っているわけじゃないよね?」
「う~ん、追っていると言えばそうかな。パピィの主人の仇だし、実際犠牲者が出ているなら一応は俺も冒険者だし」
「駄目よ! 大体貴方はまだFランクなのよ。そんな危険な真似許されないわ!」

 シエロが語気を強めて俺の行為を咎めた。ただ頭ごなしに怒ってるわけじゃなくて、心配してくれているみたいだな。

「ランクか……」
「ワオン?」

 俺の足元におりたパピィが鳴きながら小首を傾げた。冒険者のランクについてパピィは知る由もない。

「その件だが、Eランクへの昇格は決まったぞ。何せ大事になる前にゾイレコップまで倒したんだからな。うちとしては上げない理由がない」
「ま、マスターこのタイミングでそんな……」
 
 シエロがギロリとマスターを睨む。俺にランクが低いから危険だと言った直後だったからだろう。もっともこれだけの案件だ。Eランクになったからいいというわけでもないかもしれない。

「そんな顔するなって。シノをEランクに上げるがシエロの言う通り、このランクじゃ通り魔事件に深く首を突っ込めとはこっちからも言えない。お前の力は認めるが、相手はかなり危険なスキルを所持している可能性もあるしな」

 確かに今に至るまで性別ぐらいしか情報が出なかった相手だ。天職を手にしてまだ間もない俺が挑むには無謀かもしれない。

「お前自身気づいていると思うが、今のお前に必要なのは何より経験だ。もっと色々な依頼をこなしその上で天職をより活かせるよう精進すべきだろう」
「……マスター――」

 マスターの言うことももっともか。確かに俺には経験が足りない。

 だけど、何故かマスターを見るシエロの目が冷ややかだ。

「もしかして、あれをシノくんに?」
「あっはっは、気づいたか。うむ、というわけで今回は俺から直接お前に一つ仕事を任せたい。引き受けてくれるか?」

 そう、ギルドマスターのオルサが俺に持ちかけてきた。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...