侍と忍者の記憶を持ったまま転生した俺は、居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で無双し異世界で成り上がる!

空地大乃

文字の大きさ
99 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第98話 サムジャ、ダミールの部屋に向かう

しおりを挟む
 ダミールは焦っていた。手に持っていたワンドはハデルからいざというときのためにと譲り受けていた品だった。ダンジョンで手に入る特殊な魔法のワンドでアーティファクトとも呼ばれる類の物だ。

 これを手にしていると言葉の重みが増すというものであり、嘘でも真実と思い込ませることが可能だ。一度効果が及べばそう簡単に解けるものでもない。

 ただし、例えばミレイユのように最初から嘘だと気づかれているような相手だと効果がない。故にミレイユやメイシル、さらに言えばメイシルと小行動を共にしている冒険者にも効果は及ばないだろう。

 故にこういった連中は多少強引でも屋敷の兵や使用人を向かわせて取り押さえるほか無い。

 それがダミールの考えだった。とは言え屋敷には手練の騎士や兵士がいる。数も多い。これであれば連中を捕らえたり、場合によって殺しても致し方なしと考えており、そう時間は掛からないと思っていた。

「ダミール様。連中は兵たちを無効化しながらこっちに迫ってきてます」

 だがそんなダミールの考えなどあざ笑うかのように執事から三度目の報告がなされた。二回目の段階で半分以上の兵が返り討ちにあっていた。

 しかも傷つけることなく、眠らせたり気絶させたりしているということだ。

 実力が近いもしくは上の相手を一切傷つけることなく無力化するのは難しい。逆に言えば、ダミールの下に向かってきている連中はそれだけ強いということなのだろう。

「もういい。ならお前も戦闘に参加してこい」
「え? 私がですか?」

 戸惑いの感情が執事から見えた。執事は肉体的にもとても戦闘向きではない。実際普段から事務方のみをメインでやってるような男だった。

「いいからっさと行け! 首にされたいのか!」
「は、はいいぃいい!」

 執事が部屋から出ていった。怒鳴り追い出した後、悔しそうに机を殴りつけた。

「そしてこの後どうするかを考える――とは言え出来る手立ては多くないだろうが……





◇◆◇

 途中で襲ってきた兵や騎士を無力化し俺はダミールの下へ向かった。洗脳を受けている使用人達を助けるためにはダミールを見つけるのが手っ取り早い。もしスキルの効果ならダミールを倒せばいいし、道具によるものなら大抵はその道具を破壊すれば解決する。

「こ、ここから先は通さん!」

 目の前に鍋をかぶった執事がいた。腰が引けていて膝も笑っている。

「あ~道をあけてくれたら何もしないけど?」
「お願い。悪いのは全てダミールなの!」
「……フッ、良かろう通るが良い」
「え? いいの?」
「……君たちの目を見ていたら信じていいかもしれないと、そう思ったのだ。私は君たちに賭けてみるとしよう」
「ありがとうございます!」

 執事はこうして素直に道をあけてくれた。

「色々と言っていたが戦いたくなかっただけだろうな」
「身も蓋もないな」

 マスカが確信したように言った。そこは触れないであげたほうがいいと思うぞ。

 さて、ここまでは順当だったがもうすぐダミールの部屋の前に着くといった時に鎧騎士が立ち塞がった。

「誰か知らないけど、私達を相手しようと言うなら無駄よ」
「私達はダミールの不正の証拠を持ってきたのです。通しては頂けませんか?」

 だが、黒い鎧騎士は何も語ることなく、それぞれ剣を手にして攻撃を仕掛けてきた。

「ルン。鑑定できるか? 予想通りならあれは魔物だ」
「やってみるわ」

 ルンが鑑定している魔、俺とマスカとパピィが食い止める。

「あ! 本当だ! ブラックナイトだって!」
「それさえわかればいい。ありがとうなルン」

 相手が魔物とくれば遠慮はいらないな。

「居合忍法・抜刀烈火連弾!」

 刀から発射されたようにも見える無数の火球が黒騎士を蹂躙した。

 鎧に穴があき、次々と倒れていく。これで先に進めるな。

「シノ、さすがね。また強くなった?」
「レベルが上ったからな」
「ワンワン!」

 パピィも納得といったとこか。そしてダミールの部屋にたどり着く。

 メイシルの合図で中に乗り込むと、席に座って苛立ちの表情を浮かべるダミールの姿があった。

「くそ! やくたたず共が!」
「当家の使用人は全員真面目で仕事熱心です。十分役に立ってます。敢えていえば一番の役立たずは貴方です! ダミール!」

 メイシルがはっきりと言い放つ。ダミールの表情からは余裕が消え同時に怒りの色も滲んでいた――
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...