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幕間
第二百八十二話 転生忍者、密猟者を追いかける
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密猟者……ダガーが俺たちに向けてそう語った。
その口ぶりを見るに盗賊とは違うようだ。
「ふむ、それは盗賊と何が違うというのじゃ?」
対して姫様が聞き返す。俺としてもその違いってのは知っておきたいところだ。
「狩人と同じで密猟者も狩りを生業としている連中だ。違うのは一般の狩人と違い本来狩るのが認められていない獣や魔獣を敢えて狩って売り飛ばすという点だ。盗賊みたいに商人の馬車を襲ったりはしないが、非合法な連中という意味では一緒で所属するのもまっとうなギルドじゃない」
つまり表立った組織には属せず、裏ギルドや闇ギルドと呼ばれる組織に加入して動いているということか。
「直接人には危害を加えないが、やってることは違法ってわけだな」
「それに関しちゃ必ずしもそうとは言えないけどな。基本的に裏で取引される対象は魔獣や竜が多い。狩るのが禁止されてるのは生態系への悪影響だったりそもそも数が少なかったりというのもあるが、中には下手につっついて怒らせると危険という場合もある。しかし密猟者はそういった獲物も狙う」
ダガーは顔を顰めつつ更に続ける。
「例えば休眠状態の竜を敢えて刺激し、その結果町の一つ二つが破壊されることだってあるんだ。直接ではなくても間接的に危害を加えることも多く、しかも甚大な被害を生む可能性もあるとなれば寧ろ盗賊より厄介な連中と言えるかもな」
なるほど……盗賊も野放しにしてはおけない連中だが、それでも町を破壊するほどの驚異になることは少ない。
そう考えたらより大きな被害を生みかねないという意味で危険か。
「待ってください。ということはここに主のキジムナがいないということは?」
「あぁ、実際盗賊だけじゃなく厄介な密猟者がここに入り込んでるって噂は出てきてたんだ。俺も念の為見に来たんだがな……」
生態調査というのは密猟者を警戒する意味もあったのか。そしてその予感が現実のものとなった。
「密猟者が卵を確保したと見たほうがいい。だけど、そうなると親鳥が黙ってるわけないんだがな」
「親鳥も確保されたってことはないのか?」
「キジムナはかなりの大きさだ。親鳥を捕まえるのは現実的ではないな。いくら密猟者でも卵が目的なら親は狙わない筈だ」
つまり、密猟者は親に気づかれずに卵を奪ったということか。野生の感覚は鋭い。並の人間じゃそうそう出し抜けないと思うが、それだけの実力があるってことか。
「とにかく卵を奪ったなら急いで密猟者を探し出さないといけない。問題はどこにいったかだ」
「なら俺に任せてくれ。エンコウ」
「ウホッ! ウキキキキイィイイイ!」
エンコウが胸を力強く叩き、声を上げて周囲に呼びかけた。途端に大勢の猿の鳴き声が響き渡り、そして遠ざかっていく。
「おいおい、まさかこの鳴き声が全てこのエンコウの子分なのか?」
「そうだ。最近魔猿も加わったからより多くなったんだよ」
『私の元部下は優秀ですからな。きっとすぐにみつけますぞ! 我が元部下が!』
エンサイが自信を見せて胸を張った。随分と元部下っていうのを強調するなお前。
とにかく人海戦術いや猿海戦術で密猟者を探してもらう。そして――どうやら山を下る怪しい奴を見つけたようだ。
「どうやらこっちに妙な奴がいるらしい」
「なら急ぐのじゃ」
「あぁ、デトラもいけるかい?」
「え? えっと、うん。これで大丈夫! いけるよ!」
デトラは巣を見ながら何かしていたようだ。そして用事も済んだのかエンコウの肩にデトラが乗る。本当は姫様といい危険だから同行は推奨出来ないが、子を奪われた親鳥が気がかりだしここに残すわけにはいかない。
とにかくマガミとエンコウにしっかり守ってもらおう。
「こっちだな!」
「あぁ」
ダガーも含めて猿の教えてくれている方角へ急ぐ。獣道のような道を敢えて通ってるようだな。ただでさせ険阻な山道で敢えて危険な道を通るとはますます怪しい。
「あいつか。こっから下るよ」
「えぇ! こ、これほぼ崖じゃ……」
「その代わり近道だからな。エンコウ頼んだぞ」
「ウッキィ!」
『お、お手柔らかに、ひ、ヒイィィイイイイ!』
崖を滑り落ちるとエンサイが悲鳴を上げた。デトラでさえ声を上げるのを耐えてるのにお前ときたら――
「凄いのじゃ! 急斜面でもマガミにはどうということはないのじゃ! 楽しいのじゃ!」
「アオオオォオオオオン!」
一方姫様は崖を下ってるのに実に楽しそうだ。こういうところは肝が据わってるよな。
そして俺たちは谷あいの道を進む奴を挟み込むようにして着地した。岩山に溶け込むような色合いのローブを纏い目深にフードを被っていて腰には小さな袋を吊り下げていた。
杖を手にしている辺り魔法士なのかもしれないが、普段は人が足を踏み入れないような場所だ。なんとも怪しい。
「……何だい貴方たちは?」
斜に構え、俺とダガーを交互に見ながら誰何してきた。こちらを訝しんでるようでもある。
「俺は冒険者のダガーだ。ちょっと探しものをしていてね。荷物を見せてもらえるかい?」
「……ふむ、突然何かと思えば冒険者っていうのは礼儀がなってないんですねぇ。大体あなた方に荷物を見せる理由がない」
「黙るのじゃ! お主山の主の卵を盗んだのだろう? とっとと返すのじゃ!」
姫様が凄く直接的な物言いで相手に要求した。その、もうちょっと駆け引きとかがあってもいいと思うんだが……
「やれやれ困ったお嬢ちゃんだ。そうやって見ず知らずの人に疑いを掛けるもんじゃありやせんぜ」
「だが、この周辺で密猟者が出たという話もあるんだよ。それに方向からしてお前は山の上から下りてきたんだろう? しかも普通は通らないよううな道だ。どう考えても怪しいのさ」
「ただ怪しいってだけじゃねぇ」
「なら、そのフードを取って見せてくれ。もし密猟者でないならな」
ダガーが男に顔を晒すよう要求した。このやり取りを見るに密猟者なら手配書が回っているということなんだろう。それなら顔を見れば判断できる。
「……やれやれ、あまり人様に見せるような顔じゃないんですがね」
そして男がフードを捲ってみせたが。
「……あ――」
「む、むぅ――」
デトラと姫様の顔が曇る。フードを捲った男の顔はかなり爛れていて髪の毛も抜け落ちていた。目の辺りにもかなり痛々しい傷が遺っている。
「これがあるから顔は隠すようにしてるんですよ。気が済みましたかい?」
「……一応袋は見せてもらおうか」
様子を見るに顔で判断するのは諦めたか。もしこの顔で手配書が回っていればすぐにわかるだろうが、実際は違ったのだろう。
「やれやれ、大体その卵っていうのはこんな袋にしまえるようなものなんですかい?」
「念の為だよ。魔法の袋って可能性もあるからな」
男の持ってる袋は小さく、あれだけ巨大な巣を持つ鳥の卵が入るとは思えないが、魔法の袋なら見た目以上に物が入る。だから念の為なのだろう。もっとも俺には他にも気になる点があるが。
「仕方ない。ほら、好きに見てくださいよ」
男は腰に下げていた袋をダガーに投げて渡した。ダガーは相手を警戒しながらも袋を受け取り中身を確認する。
「……銅貨に銀貨か」
「ただの袋だったでしょう? 大体私みたいな貧乏人にはとても魔法の袋なんて手が出せません」
ダガーが投げて返す。男はそれを受け取った後、頭を下げた。
「これでもう疑いは晴れましたかい? それじゃあそろそろ」
「まだだ。もう一つの袋を見せてもらってないぜ」
男は話を切って離れようとしたが、そうは問屋がおろさない。
「もう一つだって?」
「そうだダガー。そいつは懐にもう一つ袋を隠し持っている」
「……一体何の話だが」
「隠しても無駄だ俺にはわかるんでな」
普通のやつならごまかせたかもだが、俺の目はごまかせない。動いている時のローブの動き、その一部に違和感があった。あれはそこに何か袋状の物が入っている証拠だ。
「……ならその袋も見せてもらわないとな」
「勘弁してください。そんなの子どもの戯言じゃないですか。大体私はその卵も知らないし巣にもいっていないだ。濡れ衣で疑われたんじゃ溜まったもんじゃない」
「巣には近づいてないんですね?」
するとデトラが男に対して念を押すように聞いた。
「そうだよお嬢ちゃん。あんたもそいつの仲間なら何とかいってやってくれ」
「そうですね。ならば調べましょう。それは緑の追求者、この者の――」
デトラが種を巻き詠唱を始めた。男は訝しげにそれを見ている。
「植物魔法シャーロック!」
デトラの魔法が行使されると頭に何か帽子でも乗せたような花が咲いた。花からはまるで口に咥えているかのようにキセルのような管が飛び出ている。
「な、何だいそれは?」
「今にわかります。お願い!」
デトラが声をかけるとキセルのような管からぽっぽと煙が吹き出て辺りを覆った。
「全くわけのわからないことを。子どもの遊びに付き合ってるほど暇でもないんですがねぇ」
「――遊びじゃありません。そしてわかりました。貴方は間違い無しに巣に足を踏み入れましたね!」
デトラと何故かデトラが咲かせた花が指のようなものを男に突きつけた。なんだろう、デトラが勇ましく思える。
「馬鹿な、何を根拠に……」
「自分の体を見てみるのですね。その光こそが巣に近づいた動かぬ証拠なのです!」
更にデトラが追求した。そして確かに男のローブがところどころ淡く光っていた。とくに足元の光が強い。
「な、何だこれは?」
「このシャーロックは場所を捜査しその痕跡を記憶します。そして痕跡と重なる箇所があるとそうやって光るのです」
「こりゃすげぇ。やるなデトラ! さて、こうして優秀な魔法士さんが決定的な証拠を突きつけてくれたわけだがどうする?」
どうやら巣でデトラがやっていたのは、シャーロックによる捜査だったようだ。
全くよく気がつく子だな。しかし、これでもうこいつは言い逃れ出来ないな。
「……なるほどなるほど。そんな魔法があったとは、フフ、仕方ないな、コブラ!」
そう言って男が顔を俺に向けると、手から飛び出た紫色の蛇が俺の喉に噛み付いてきた。
「ジンさん!」
「ジン!」
「はは、馬鹿が、余計なことに首を突っ込まなければ俺の毒蛇魔法の餌食にならずに済んだというのに!」
その口ぶりを見るに盗賊とは違うようだ。
「ふむ、それは盗賊と何が違うというのじゃ?」
対して姫様が聞き返す。俺としてもその違いってのは知っておきたいところだ。
「狩人と同じで密猟者も狩りを生業としている連中だ。違うのは一般の狩人と違い本来狩るのが認められていない獣や魔獣を敢えて狩って売り飛ばすという点だ。盗賊みたいに商人の馬車を襲ったりはしないが、非合法な連中という意味では一緒で所属するのもまっとうなギルドじゃない」
つまり表立った組織には属せず、裏ギルドや闇ギルドと呼ばれる組織に加入して動いているということか。
「直接人には危害を加えないが、やってることは違法ってわけだな」
「それに関しちゃ必ずしもそうとは言えないけどな。基本的に裏で取引される対象は魔獣や竜が多い。狩るのが禁止されてるのは生態系への悪影響だったりそもそも数が少なかったりというのもあるが、中には下手につっついて怒らせると危険という場合もある。しかし密猟者はそういった獲物も狙う」
ダガーは顔を顰めつつ更に続ける。
「例えば休眠状態の竜を敢えて刺激し、その結果町の一つ二つが破壊されることだってあるんだ。直接ではなくても間接的に危害を加えることも多く、しかも甚大な被害を生む可能性もあるとなれば寧ろ盗賊より厄介な連中と言えるかもな」
なるほど……盗賊も野放しにしてはおけない連中だが、それでも町を破壊するほどの驚異になることは少ない。
そう考えたらより大きな被害を生みかねないという意味で危険か。
「待ってください。ということはここに主のキジムナがいないということは?」
「あぁ、実際盗賊だけじゃなく厄介な密猟者がここに入り込んでるって噂は出てきてたんだ。俺も念の為見に来たんだがな……」
生態調査というのは密猟者を警戒する意味もあったのか。そしてその予感が現実のものとなった。
「密猟者が卵を確保したと見たほうがいい。だけど、そうなると親鳥が黙ってるわけないんだがな」
「親鳥も確保されたってことはないのか?」
「キジムナはかなりの大きさだ。親鳥を捕まえるのは現実的ではないな。いくら密猟者でも卵が目的なら親は狙わない筈だ」
つまり、密猟者は親に気づかれずに卵を奪ったということか。野生の感覚は鋭い。並の人間じゃそうそう出し抜けないと思うが、それだけの実力があるってことか。
「とにかく卵を奪ったなら急いで密猟者を探し出さないといけない。問題はどこにいったかだ」
「なら俺に任せてくれ。エンコウ」
「ウホッ! ウキキキキイィイイイ!」
エンコウが胸を力強く叩き、声を上げて周囲に呼びかけた。途端に大勢の猿の鳴き声が響き渡り、そして遠ざかっていく。
「おいおい、まさかこの鳴き声が全てこのエンコウの子分なのか?」
「そうだ。最近魔猿も加わったからより多くなったんだよ」
『私の元部下は優秀ですからな。きっとすぐにみつけますぞ! 我が元部下が!』
エンサイが自信を見せて胸を張った。随分と元部下っていうのを強調するなお前。
とにかく人海戦術いや猿海戦術で密猟者を探してもらう。そして――どうやら山を下る怪しい奴を見つけたようだ。
「どうやらこっちに妙な奴がいるらしい」
「なら急ぐのじゃ」
「あぁ、デトラもいけるかい?」
「え? えっと、うん。これで大丈夫! いけるよ!」
デトラは巣を見ながら何かしていたようだ。そして用事も済んだのかエンコウの肩にデトラが乗る。本当は姫様といい危険だから同行は推奨出来ないが、子を奪われた親鳥が気がかりだしここに残すわけにはいかない。
とにかくマガミとエンコウにしっかり守ってもらおう。
「こっちだな!」
「あぁ」
ダガーも含めて猿の教えてくれている方角へ急ぐ。獣道のような道を敢えて通ってるようだな。ただでさせ険阻な山道で敢えて危険な道を通るとはますます怪しい。
「あいつか。こっから下るよ」
「えぇ! こ、これほぼ崖じゃ……」
「その代わり近道だからな。エンコウ頼んだぞ」
「ウッキィ!」
『お、お手柔らかに、ひ、ヒイィィイイイイ!』
崖を滑り落ちるとエンサイが悲鳴を上げた。デトラでさえ声を上げるのを耐えてるのにお前ときたら――
「凄いのじゃ! 急斜面でもマガミにはどうということはないのじゃ! 楽しいのじゃ!」
「アオオオォオオオオン!」
一方姫様は崖を下ってるのに実に楽しそうだ。こういうところは肝が据わってるよな。
そして俺たちは谷あいの道を進む奴を挟み込むようにして着地した。岩山に溶け込むような色合いのローブを纏い目深にフードを被っていて腰には小さな袋を吊り下げていた。
杖を手にしている辺り魔法士なのかもしれないが、普段は人が足を踏み入れないような場所だ。なんとも怪しい。
「……何だい貴方たちは?」
斜に構え、俺とダガーを交互に見ながら誰何してきた。こちらを訝しんでるようでもある。
「俺は冒険者のダガーだ。ちょっと探しものをしていてね。荷物を見せてもらえるかい?」
「……ふむ、突然何かと思えば冒険者っていうのは礼儀がなってないんですねぇ。大体あなた方に荷物を見せる理由がない」
「黙るのじゃ! お主山の主の卵を盗んだのだろう? とっとと返すのじゃ!」
姫様が凄く直接的な物言いで相手に要求した。その、もうちょっと駆け引きとかがあってもいいと思うんだが……
「やれやれ困ったお嬢ちゃんだ。そうやって見ず知らずの人に疑いを掛けるもんじゃありやせんぜ」
「だが、この周辺で密猟者が出たという話もあるんだよ。それに方向からしてお前は山の上から下りてきたんだろう? しかも普通は通らないよううな道だ。どう考えても怪しいのさ」
「ただ怪しいってだけじゃねぇ」
「なら、そのフードを取って見せてくれ。もし密猟者でないならな」
ダガーが男に顔を晒すよう要求した。このやり取りを見るに密猟者なら手配書が回っているということなんだろう。それなら顔を見れば判断できる。
「……やれやれ、あまり人様に見せるような顔じゃないんですがね」
そして男がフードを捲ってみせたが。
「……あ――」
「む、むぅ――」
デトラと姫様の顔が曇る。フードを捲った男の顔はかなり爛れていて髪の毛も抜け落ちていた。目の辺りにもかなり痛々しい傷が遺っている。
「これがあるから顔は隠すようにしてるんですよ。気が済みましたかい?」
「……一応袋は見せてもらおうか」
様子を見るに顔で判断するのは諦めたか。もしこの顔で手配書が回っていればすぐにわかるだろうが、実際は違ったのだろう。
「やれやれ、大体その卵っていうのはこんな袋にしまえるようなものなんですかい?」
「念の為だよ。魔法の袋って可能性もあるからな」
男の持ってる袋は小さく、あれだけ巨大な巣を持つ鳥の卵が入るとは思えないが、魔法の袋なら見た目以上に物が入る。だから念の為なのだろう。もっとも俺には他にも気になる点があるが。
「仕方ない。ほら、好きに見てくださいよ」
男は腰に下げていた袋をダガーに投げて渡した。ダガーは相手を警戒しながらも袋を受け取り中身を確認する。
「……銅貨に銀貨か」
「ただの袋だったでしょう? 大体私みたいな貧乏人にはとても魔法の袋なんて手が出せません」
ダガーが投げて返す。男はそれを受け取った後、頭を下げた。
「これでもう疑いは晴れましたかい? それじゃあそろそろ」
「まだだ。もう一つの袋を見せてもらってないぜ」
男は話を切って離れようとしたが、そうは問屋がおろさない。
「もう一つだって?」
「そうだダガー。そいつは懐にもう一つ袋を隠し持っている」
「……一体何の話だが」
「隠しても無駄だ俺にはわかるんでな」
普通のやつならごまかせたかもだが、俺の目はごまかせない。動いている時のローブの動き、その一部に違和感があった。あれはそこに何か袋状の物が入っている証拠だ。
「……ならその袋も見せてもらわないとな」
「勘弁してください。そんなの子どもの戯言じゃないですか。大体私はその卵も知らないし巣にもいっていないだ。濡れ衣で疑われたんじゃ溜まったもんじゃない」
「巣には近づいてないんですね?」
するとデトラが男に対して念を押すように聞いた。
「そうだよお嬢ちゃん。あんたもそいつの仲間なら何とかいってやってくれ」
「そうですね。ならば調べましょう。それは緑の追求者、この者の――」
デトラが種を巻き詠唱を始めた。男は訝しげにそれを見ている。
「植物魔法シャーロック!」
デトラの魔法が行使されると頭に何か帽子でも乗せたような花が咲いた。花からはまるで口に咥えているかのようにキセルのような管が飛び出ている。
「な、何だいそれは?」
「今にわかります。お願い!」
デトラが声をかけるとキセルのような管からぽっぽと煙が吹き出て辺りを覆った。
「全くわけのわからないことを。子どもの遊びに付き合ってるほど暇でもないんですがねぇ」
「――遊びじゃありません。そしてわかりました。貴方は間違い無しに巣に足を踏み入れましたね!」
デトラと何故かデトラが咲かせた花が指のようなものを男に突きつけた。なんだろう、デトラが勇ましく思える。
「馬鹿な、何を根拠に……」
「自分の体を見てみるのですね。その光こそが巣に近づいた動かぬ証拠なのです!」
更にデトラが追求した。そして確かに男のローブがところどころ淡く光っていた。とくに足元の光が強い。
「な、何だこれは?」
「このシャーロックは場所を捜査しその痕跡を記憶します。そして痕跡と重なる箇所があるとそうやって光るのです」
「こりゃすげぇ。やるなデトラ! さて、こうして優秀な魔法士さんが決定的な証拠を突きつけてくれたわけだがどうする?」
どうやら巣でデトラがやっていたのは、シャーロックによる捜査だったようだ。
全くよく気がつく子だな。しかし、これでもうこいつは言い逃れ出来ないな。
「……なるほどなるほど。そんな魔法があったとは、フフ、仕方ないな、コブラ!」
そう言って男が顔を俺に向けると、手から飛び出た紫色の蛇が俺の喉に噛み付いてきた。
「ジンさん!」
「ジン!」
「はは、馬鹿が、余計なことに首を突っ込まなければ俺の毒蛇魔法の餌食にならずに済んだというのに!」
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