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幕間
第二百九十七話 転生忍者、決闘を申し込まれる
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兄貴が突如俺との決闘を申し込んできた。だが、俺にはちょっと意味がわからない。
「決闘って、何でまた?」
だから一応確認を取る。
「――私にとって大事なことだ。そして私が望むのは真剣勝負。ジン、本気のお前と戦いたいのだ」
「ほ、本気の?」
兄貴が俺に指を突きつけて挑戦してきたが、いやいや、流石にそれは無茶だ。別に自惚れてるつもりないが俺が本気出したら兄貴は死ぬ。
「兄貴、その、決闘と言うのが随分と仰々しくも感じてしまうが、大会でお互い一度勝負しただろう? あれで決着がついたじゃないか」
大会では俺の勝ちだった。だから姫様も俺の奴隷という形で今はそばにいる。
「……あの時の私は、今思えば恥ずかしい真似ばかりしていた。危険な魔道具にも頼った。だからあの戦いでの私は自分の全てを出し切れたとは思っていない」
出し切れて、か。確かに最近の兄貴と前の兄貴は異なる。魔法に対しても今のほうが真剣に向き合っているだろう。
だが、それでも本気でというのはな……
「ロイス、突然どうしたのだ? 大体決闘などと……」
父上も怪訝に思ったのか兄貴に問いかける。
「いえ父様。前々から考えていたことです。それに私にはあまり時間も残されていない。私はジンに負けたが、それでも魔法学園に入る資格は与えられましたよね?」
「あ、あぁ確かに。しかし、それが決闘と何の関係が?」
そう言えば兄貴は学園への入学資格を得ていたんだったな。
「……けじめの問題です。とにかくジン。お互い忖度なしの真剣勝負で決闘して欲しい」
「……嫌だと言ったら?」
正直何故兄貴がここまで俺との決闘に拘っているかはわからない。別に訓練とかなら今の兄貴となら付き合ってやってもいいとは思うが。
「……そうか。ならば仕方ない。勝った時の商品にはカグヤと魔獣を全ていただこうと思っていた。受けないというなら不戦勝でいいな?」
「は?」
「な、何を言うておるのじゃお主は!」
「ピィピィ!」
「ガルルルゥウウ!」
「ウキキィ!」
『あきれましたな。何か拾い食いでもしたのでしょうか? 愚かな話です』
「ケーン! ケーン!」
兄貴の発言に姫様や魔獣達が憤る。今の話だけ聞いていると前の兄貴に戻ったかのようだが。
「まてロイス。そんなことを勝手に決めるんじゃない」
「父様は黙っていてください」
「何?」
「これは私と弟の問題なのです。さぁ、どうする? 断るなら私はどんな手を使ってでもカグヤと魔獣を奪うぞ。それが嫌なら私と決闘し本気で戦い勝つことだ」
兄貴が高慢な態度を覗かせ俺を挑発してきた。父上の制止も聞く様子がない。
「……本気で言っているのか兄貴?」
「伊達や酔狂でこんなことは言わないさ」
兄貴の目は、真剣だった。
「……ふぅ、わかった。受けて立とう。それでいつどこでやる?」
「三日後。場所は屋敷を出て西に行った先にある高原だ」
「屋敷ではやらないってことか」
「当然だ。屋敷だとお前は本気を出せないだろう?」
兄貴の言っていることはわかる。確かに屋敷の敷地内では被害を考えるとあまり派手な忍法は使えない。
「では三日後だ。忘れるなよジン。手加減抜きの真剣勝負だ」
そう言い残して兄貴が立ち去る。父上からは戸惑いの様子が見られた。
「何て奴なのじゃ! 妾や皆を物みたいに言いおって!」
姫様が憤る。魔獣達も不満そうだ。
「以前の兄貴ならこれぐらいは普通に言いそうだったがな」
「以前? 今言われたことであるぞ!」
思わず俺が零すと姫様が眉を怒らせ声を荒げた。
「そうだが、今のは心配しなくていい。どう見ても本気じゃないし、あれで俺を焚きつけるための挑発のつもりだったんだろう」
俺はそう判断した。正直わかりやすい安い挑発だったけどな。そもそも姫様やマガミ達を兄貴だけの手でどうにかできるわけもないし、そんなことは本人もわかっているだろう。
だが、そう言えば俺の性格なら受けると判断したか。
だけど、逆に言えばそこまでしてでも俺と決着がつけたかったってことか……
「……全く読めない。何でこんな馬鹿なことをしたのか」
一連のやり取りにマグも眉を顰めた。
「そうじゃ。まさか本気でジンに勝てる気なのかのう?」
「……ありえない本気なら自殺行為」
マグが呆れたように言った。ま、まぁ気持ちはわからなくもないが。
「……あいつじゃジンには絶対勝てない。ジンがマガミの力使う、本気ならあいつは五等分に切り裂かれる。ロイスは死ぬ」
「ガ、ガウ?」
お、おいおい……
「エンサイだとどうじゃ?」
「……本気でエンサイの力を使う。ロイスは消し炭になるロイスは死ぬ」
『間違いないですな』
「エンコウの力ならどうじゃ?」
「……本気でエンコウの力を使う。ロイスは磁力で世界の反対側まで飛ばされる。ロイスは死ぬ」
「ウキィ♪」
「キジムナならどうじゃ?」
「……本気でキジムナの力を使う。ロイスに雷が落ちて愉快な感じで死ぬ」
「ケーン! ケーン!」
「いや、愉快な感じでって何だよ」
「……骨が透けて見える」
「それは愉快じゃな!」
確かに愉快だが散々だな兄貴。
「いや、一応ロイスは私の息子なのだが……」
父上が困った顔を見せた。目の前で自分の息子が死ぬ死ぬ言われたらそうもなるか。
「……私が言いたいのは全く勝負にならないということ。確かに以前より頑張ってそうだけど、大会からそこまで日が経っているわけでもない」
確かにな……兄貴が今は真面目に修行に励んでいるのはわかっているが。
「こうなったら私が言い聞かせます! そんな馬鹿なことは止めなさいって」
すると母上が鼻息を荒くして兄貴の下へ向かおうと踵を返した。
「待ちなさい。今のあの子に私達がどうこういったところで聞きはしないだろう。それに、あの子には何か譲れないものがあるようだ。以前と違い今の気持ちは真剣なものだろう」
母上を引き止め諭すようにいいつつ、父上は腕を組み一つ唸った。そして俺を見てきて。
「ジン、その、なんだ。あの子は本気でお前と戦いたいようだが、流石にみすみす死なせるわけにはいかん」
「いや、俺も流石に殺す気はないけど……」
今の兄貴に特に何か思うことがあるわけでもないしな。
「だが、ただ手加減してもあいつは納得出来ないと思うのだ。そこで本気を出しながら加減をすることは出来ないか?」
「はい?」
「決闘って、何でまた?」
だから一応確認を取る。
「――私にとって大事なことだ。そして私が望むのは真剣勝負。ジン、本気のお前と戦いたいのだ」
「ほ、本気の?」
兄貴が俺に指を突きつけて挑戦してきたが、いやいや、流石にそれは無茶だ。別に自惚れてるつもりないが俺が本気出したら兄貴は死ぬ。
「兄貴、その、決闘と言うのが随分と仰々しくも感じてしまうが、大会でお互い一度勝負しただろう? あれで決着がついたじゃないか」
大会では俺の勝ちだった。だから姫様も俺の奴隷という形で今はそばにいる。
「……あの時の私は、今思えば恥ずかしい真似ばかりしていた。危険な魔道具にも頼った。だからあの戦いでの私は自分の全てを出し切れたとは思っていない」
出し切れて、か。確かに最近の兄貴と前の兄貴は異なる。魔法に対しても今のほうが真剣に向き合っているだろう。
だが、それでも本気でというのはな……
「ロイス、突然どうしたのだ? 大体決闘などと……」
父上も怪訝に思ったのか兄貴に問いかける。
「いえ父様。前々から考えていたことです。それに私にはあまり時間も残されていない。私はジンに負けたが、それでも魔法学園に入る資格は与えられましたよね?」
「あ、あぁ確かに。しかし、それが決闘と何の関係が?」
そう言えば兄貴は学園への入学資格を得ていたんだったな。
「……けじめの問題です。とにかくジン。お互い忖度なしの真剣勝負で決闘して欲しい」
「……嫌だと言ったら?」
正直何故兄貴がここまで俺との決闘に拘っているかはわからない。別に訓練とかなら今の兄貴となら付き合ってやってもいいとは思うが。
「……そうか。ならば仕方ない。勝った時の商品にはカグヤと魔獣を全ていただこうと思っていた。受けないというなら不戦勝でいいな?」
「は?」
「な、何を言うておるのじゃお主は!」
「ピィピィ!」
「ガルルルゥウウ!」
「ウキキィ!」
『あきれましたな。何か拾い食いでもしたのでしょうか? 愚かな話です』
「ケーン! ケーン!」
兄貴の発言に姫様や魔獣達が憤る。今の話だけ聞いていると前の兄貴に戻ったかのようだが。
「まてロイス。そんなことを勝手に決めるんじゃない」
「父様は黙っていてください」
「何?」
「これは私と弟の問題なのです。さぁ、どうする? 断るなら私はどんな手を使ってでもカグヤと魔獣を奪うぞ。それが嫌なら私と決闘し本気で戦い勝つことだ」
兄貴が高慢な態度を覗かせ俺を挑発してきた。父上の制止も聞く様子がない。
「……本気で言っているのか兄貴?」
「伊達や酔狂でこんなことは言わないさ」
兄貴の目は、真剣だった。
「……ふぅ、わかった。受けて立とう。それでいつどこでやる?」
「三日後。場所は屋敷を出て西に行った先にある高原だ」
「屋敷ではやらないってことか」
「当然だ。屋敷だとお前は本気を出せないだろう?」
兄貴の言っていることはわかる。確かに屋敷の敷地内では被害を考えるとあまり派手な忍法は使えない。
「では三日後だ。忘れるなよジン。手加減抜きの真剣勝負だ」
そう言い残して兄貴が立ち去る。父上からは戸惑いの様子が見られた。
「何て奴なのじゃ! 妾や皆を物みたいに言いおって!」
姫様が憤る。魔獣達も不満そうだ。
「以前の兄貴ならこれぐらいは普通に言いそうだったがな」
「以前? 今言われたことであるぞ!」
思わず俺が零すと姫様が眉を怒らせ声を荒げた。
「そうだが、今のは心配しなくていい。どう見ても本気じゃないし、あれで俺を焚きつけるための挑発のつもりだったんだろう」
俺はそう判断した。正直わかりやすい安い挑発だったけどな。そもそも姫様やマガミ達を兄貴だけの手でどうにかできるわけもないし、そんなことは本人もわかっているだろう。
だが、そう言えば俺の性格なら受けると判断したか。
だけど、逆に言えばそこまでしてでも俺と決着がつけたかったってことか……
「……全く読めない。何でこんな馬鹿なことをしたのか」
一連のやり取りにマグも眉を顰めた。
「そうじゃ。まさか本気でジンに勝てる気なのかのう?」
「……ありえない本気なら自殺行為」
マグが呆れたように言った。ま、まぁ気持ちはわからなくもないが。
「……あいつじゃジンには絶対勝てない。ジンがマガミの力使う、本気ならあいつは五等分に切り裂かれる。ロイスは死ぬ」
「ガ、ガウ?」
お、おいおい……
「エンサイだとどうじゃ?」
「……本気でエンサイの力を使う。ロイスは消し炭になるロイスは死ぬ」
『間違いないですな』
「エンコウの力ならどうじゃ?」
「……本気でエンコウの力を使う。ロイスは磁力で世界の反対側まで飛ばされる。ロイスは死ぬ」
「ウキィ♪」
「キジムナならどうじゃ?」
「……本気でキジムナの力を使う。ロイスに雷が落ちて愉快な感じで死ぬ」
「ケーン! ケーン!」
「いや、愉快な感じでって何だよ」
「……骨が透けて見える」
「それは愉快じゃな!」
確かに愉快だが散々だな兄貴。
「いや、一応ロイスは私の息子なのだが……」
父上が困った顔を見せた。目の前で自分の息子が死ぬ死ぬ言われたらそうもなるか。
「……私が言いたいのは全く勝負にならないということ。確かに以前より頑張ってそうだけど、大会からそこまで日が経っているわけでもない」
確かにな……兄貴が今は真面目に修行に励んでいるのはわかっているが。
「こうなったら私が言い聞かせます! そんな馬鹿なことは止めなさいって」
すると母上が鼻息を荒くして兄貴の下へ向かおうと踵を返した。
「待ちなさい。今のあの子に私達がどうこういったところで聞きはしないだろう。それに、あの子には何か譲れないものがあるようだ。以前と違い今の気持ちは真剣なものだろう」
母上を引き止め諭すようにいいつつ、父上は腕を組み一つ唸った。そして俺を見てきて。
「ジン、その、なんだ。あの子は本気でお前と戦いたいようだが、流石にみすみす死なせるわけにはいかん」
「いや、俺も流石に殺す気はないけど……」
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