辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃

文字の大きさ
130 / 158
第五章 転生忍者吸血鬼出現編

第三百二十五話 転生忍者、バレる? バレない?

しおりを挟む
 マグに忍法を忍法として見られた。自分でも何を言ってるのかよくわからないが、いや何か凄く当たり前のことを言っているようにも思えるが芳しくない状況では有る。

 本当やってしまったなぁ~といった思いだ。どう説明しようか……

「……ジンの魔法は気になる。でも、言いたくないなら無理して言わなくてもいい」

 だけど、直後俺の顔を見ていたマグからそんな言葉が飛び出した。

「えっと、いいのか?」

 マグがコクッと頷き、そして頭の上に登って来たサラぽんっがボォっと火を吐いた。自由だな……

「……ジンは精霊が視えている」
「え? あ、あぁそうだな」
「……でもそのことは皆に黙ってくれているし、詳しくは聞こうとしない。なら、私だけ聞きたいと思うのはズルいこと。だから、言いたくないなら聞かない」

 ……どうやらマグは俺の顔色を見て、言いにくいことだと察してくれたようだ。

 全く。マグは大事なところではちゃんと察せられる子なんだな。

「……悪いな。だけど、一つだけ伝えるなら俺はマグと同じで普通ではない力が使える……ただ、そのことは秘密にして欲しい。こんな曖昧な回答しか出来ないのに悪いけど」
 
 俺の答えにマグはふるふると首を左右に振った。

「……わかった。誰にも言わない」
「ありがとうな。勿論。俺もマグに関することは喋らないし、余計な詮索はしないから」
「……ん!」

 マグが嬉しそうに答え、頭の上ではサラぽんがやっぱり元気に火を吹いていた。

「……ジン、一つだけ言い?」
「うん? 何だ?」
「……今のジン弱い。それも特殊な力のせい?」

 俺は頭を抱えた。いや、そうだよな。マグなら気づくよな。

「まぁ、そんなとこだ。兄貴と戦った時にな」
「……ん。なんとなくわかった」

 どうやら今ので理解してくれたようだ。

「……いつまで?」

 これはいつまで力が封印されているかって意味なんだろうな。

「そうだな。もう少し掛かるとは思う。自分の意思で戻せないのが厄介なところなんだ」
「……ん! ならその間は、私がジンを守る!」
「へ?」
「……絶対に護る!」

 な、何か途中から護るの強調ぐあいが変わった気がするけど、そうか。俺はマグに護られるのか。

「き、気持ちだけはありがたく受け取っておくよ」
「……別に恥ずかしがることじゃない」

 そう言われてもな。何故かサラぽんの火の吐き方が激しくなってるし。

 くそ、いい加減解けてくれないだろうか全く――



◇◆◇

「はあああぁああ!」
「おっと!」
「イヤぁああぁあ!」
「とと、あぶね!」

 今、俺はデックとミモザを同時に相手していた。二人はビアやゼンラ、それに今逗留している騎士に剣術を習いかなり自信がついてきたようで、俺ともやってみたいと申し出てきたんだ。

 俺からしても特に断る理由がないから二人を相手して木刀で戦っている。

 しかし、デックも相当腕を上げたな。動きからも無駄が削げ落とされているし、力の入れ方も以前より自然な感じになってきている。

「マジックスラスト!」

 おっとミモザの魔力を込めた斬撃か。魔力を乗せることで間合いが広がるのが特徴だな。

 それを俺はバックステップで避けたが、ミモザはそこから逆側の足を踏み込み、さらにマジックスラストを続けてきた。彼女の着実に腕を上げている。

「当たる!」

 二連続とはやるな。だが、地面を蹴ってそれを躱した。

「貰った!」

 と、そこへ俺に合わせて飛んできたデックが俺の背中側に到達。

「壊振の一撃!」
 
 強化魔法のターボチャージを絡めた技か。空中でまともに受けたら不味いが、俺は後ろ手でデックの肩を掴みそれを視点に転回して逆に背中をとった。

 強化した木刀を振り抜いたことでデックの体が完全に流れてしまいバランスを崩す。空中でそれを外したのは悪手だったな。

「よっ!」
「ぐわっ!」

 バランスを崩したデックに蹴りを叩き込むとそのまま地面に落下。

「デック!」

 心配そうにデックに声を掛けるミモザを確認しつつ、地面に着地後すぐにその距離を詰めて彼女の喉元に木刀をあてた。

「はい、これで俺の勝ち」
「あ……」

 声を漏らし悔しがる。デックに気を取られすぎたな。仲間思いなのはいいが、戦闘中はある程度の割り切りも必要だ。

「はぁ、結局二人がかりでも一本も取れなかったぜ」
「むぅ、いい感じに思えたんだがな」
「いや、二人共強くなってたし、気を抜いたら危なかったと思うぞ」
「ジンさん、やっぱり凄いね」
「……ん」

 三人で感想を述べあっていると、試合を見ていたデトラとマグが駆け寄ってきた。
 
「タオル、持ってきたのだけど、もしかして、い、いらなかったかかな?」

 そして両手でタオルを差し出してきたデトラが、俺を窺うように見ながら言う。

「ありがとう。助かるよ」

 折角出しね。タオルを受け取って使わせてもらった。

「えへへ……」
「おうおう、嬉しそうだなデトラ」
「も、もうお兄ちゃんってば!」

 デックがにやにやしながらデトラに声を掛けると、デトラが右手を振り上げじゃれあいっぽい雰囲気になる。

 兄妹で相変わらず仲がいいな。

「ガウガウ」
「ウキィ」
「あぁ、二人共強くなったな。俺もうかうかしていられないよ」

 マガミとエンコウを撫でながらそう伝える。今の二人なら騎士学園でも間違いなくやっていけると思う。いや、下手したら一目置かれる存在になるかもな。

「あっはっは! しっかり見ていたぞ我が最愛の弟子よ!」
「い、いたのか。しかし、本当に神出鬼没だな」

 突如声を上げたゼンラにミモザが退いていた。俺もそれは同感だ。まだ封印中とはいえ、俺も近づいてきたのに気づかなかったほどだぞ。こんなに変態的なのに!

「あっはっは、そうだそうだ。大事なことを忘れるところだったぞ。ミモザよ。今度私の父が遊びにくることになった。その時にミモザは勿論皆も紹介するとしよう。では、私はまだ仕事があるからさらばだ!」

 そう言い残してゼンラがマントをなびかせ風のように去っていった。いい加減服を着て欲しい。

 ふぅ、しかし何かと思えば父がくるって、そんなの、そんなの――

「「「「ゼンラの父親ーーーーーー!?」」」」
「……興味ある」
「ガ、ガウ」
「ウキィ!」

 俺たち四人の絶叫が空に向かって響き渡る中、マグは変わらずマイペースだった……てか本当かよ――
しおりを挟む
感想 1,746

あなたにおすすめの小説

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」 ────何言ってんのコイツ? あれ? 私に言ってるんじゃないの? ていうか、ここはどこ? ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ! 推しに会いに行かねばならんのだよ!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。