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19 モンスター
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スケルトン兵は、筋肉や臓器を持たないため、食物を必要としない。
だからこれは、たぶん……『生存のための狩猟』をしているわけじゃない。
人間をいたぶるために行動しているのだ。
スケルトン兵が、私に近づいてくる。
そのときだった。
「アーデルさんから離れろッ!」
アカの声が森に突き刺さるように響いた。
銀色の刃が一閃し、スケルトン兵の身体が真横に裂け飛ぶ。
陶器を割るような乾いた音をひびかせながら、骨片が飛び散り、地面に落ちてバラバラと砕けた。
スケルトン兵は、靭帯でつながった生体組織(※肉や皮膚など)がないぶん、強い衝撃をあたえれば割ることができるらしい。
目の前に着地してきたアカを見て、私は安堵の声をあげる。
「アカ……!」
立ち上がろうとしたけれど、その瞬間に視界がまた揺れてしまう。
失血とショックで、脳への血流が不安定になっているのだ。
そこへ――
アオが走ってきて、私の体をささえた。
「アーデルさん、立てる?」
返事をしようとしたのに、声が喉につかえて出なかった。
頭の奥がぼうっと熱く、視界の端はまだ白く瞬いている。
ギンとコハクも、かけつけてきた。
「こっち、つかまって」
アオが私の腕を支え、反対側からはコハクが小さな肩で必死に支えてくれた。
彼らの体温が、冬の森の冷気の中でじんわりと心地よい。
けれど、歩き出そうとした瞬間――
足の力が抜けた。
「……あ」
世界が遠のいていく。
音が水の下に沈むように、ゆっくり薄れていく。
自分の体が地に崩れ落ちる感覚だけが最後に残り、私は意識を手放した。
◇
次に目を覚ましたとき、
鼻をくすぐったのは、暖炉で燃えるブナの薪の匂いだった。
このあたりの村でよく使われるのは、
火持ちのよいブナやカシの薪。
その焦げた甘い香りが、薄い布越しにふわりと届く。
まぶたを開くと、見慣れた低い梁と、土壁の家の天井があった。
――私たちの家だ。
粗織りの毛布がかけられ、背中には藁床のざらついた感触。
脇には湯を入れた素焼きの壺が置かれ、中世の簡易湯たんぽとして私の体を温めていた。
その周りで――
「アーデルさん、目ひらいた!」
「ほんとか!? ギン、タオルもう一枚よこせ!」
「アカ、お湯まだ熱いよ、それ火傷する!」
「コハク、そこにのぼらない!」
四人が大騒ぎしていた。
まるで小さな動物が一斉に巣穴から顔を出したようだ。
それぞれ違う色の髪が、暖炉の火に照らされて揺れている。
ベッドの縁に駆け寄ったコハクが、大きな目をうるませたまま、勢いよく飛びついてきた。
「アーデルさん、やだよ……いなくならないで……っ!」
小さな手が私の服をぎゅっとつかむ。
私は痛む頭をおさえながら、そっと抱きしめ返した。
「……ごめんね。ひとりで森の奥まで行っちゃって。こわい思いをさせたね」
謝った瞬間、コハクは首をぶんぶん振って、胸に顔をうずめた。
「こわかったのは、アーデルさんのほうだもん……! ぼく、もっと早くいけばよかった……!」
後ろで聞いていたアカが、絆創膏代わりの布切れを差し出してきた。
ギンは薬草の煮汁を入れた木椀を握りしめ、
「これ、村の薬師さんにもらった。苦いけど、のんで」と言う。
炎症をおさえる効果がある草のオオバコや、痛みの緩和効果のあるカモミール、免疫強化の効果をもつセージなどが入っているらしい。
修道院由来の知識と、民間療法の混合で作られた飲み薬。
アオは火加減を見ながら湯を温め、「……アーデルさん、もうだいじょうぶだよ。僕らが、まもるから」と小さく付け加えた。
騒がしくて、温かくて、胸がしめつけられるほど愛しい。
私が意識を失ったのは恐怖と衝撃のせいだけど、目を覚まして最初に見たのがこの子たちでよかったと、心の底から思った。
だからこれは、たぶん……『生存のための狩猟』をしているわけじゃない。
人間をいたぶるために行動しているのだ。
スケルトン兵が、私に近づいてくる。
そのときだった。
「アーデルさんから離れろッ!」
アカの声が森に突き刺さるように響いた。
銀色の刃が一閃し、スケルトン兵の身体が真横に裂け飛ぶ。
陶器を割るような乾いた音をひびかせながら、骨片が飛び散り、地面に落ちてバラバラと砕けた。
スケルトン兵は、靭帯でつながった生体組織(※肉や皮膚など)がないぶん、強い衝撃をあたえれば割ることができるらしい。
目の前に着地してきたアカを見て、私は安堵の声をあげる。
「アカ……!」
立ち上がろうとしたけれど、その瞬間に視界がまた揺れてしまう。
失血とショックで、脳への血流が不安定になっているのだ。
そこへ――
アオが走ってきて、私の体をささえた。
「アーデルさん、立てる?」
返事をしようとしたのに、声が喉につかえて出なかった。
頭の奥がぼうっと熱く、視界の端はまだ白く瞬いている。
ギンとコハクも、かけつけてきた。
「こっち、つかまって」
アオが私の腕を支え、反対側からはコハクが小さな肩で必死に支えてくれた。
彼らの体温が、冬の森の冷気の中でじんわりと心地よい。
けれど、歩き出そうとした瞬間――
足の力が抜けた。
「……あ」
世界が遠のいていく。
音が水の下に沈むように、ゆっくり薄れていく。
自分の体が地に崩れ落ちる感覚だけが最後に残り、私は意識を手放した。
◇
次に目を覚ましたとき、
鼻をくすぐったのは、暖炉で燃えるブナの薪の匂いだった。
このあたりの村でよく使われるのは、
火持ちのよいブナやカシの薪。
その焦げた甘い香りが、薄い布越しにふわりと届く。
まぶたを開くと、見慣れた低い梁と、土壁の家の天井があった。
――私たちの家だ。
粗織りの毛布がかけられ、背中には藁床のざらついた感触。
脇には湯を入れた素焼きの壺が置かれ、中世の簡易湯たんぽとして私の体を温めていた。
その周りで――
「アーデルさん、目ひらいた!」
「ほんとか!? ギン、タオルもう一枚よこせ!」
「アカ、お湯まだ熱いよ、それ火傷する!」
「コハク、そこにのぼらない!」
四人が大騒ぎしていた。
まるで小さな動物が一斉に巣穴から顔を出したようだ。
それぞれ違う色の髪が、暖炉の火に照らされて揺れている。
ベッドの縁に駆け寄ったコハクが、大きな目をうるませたまま、勢いよく飛びついてきた。
「アーデルさん、やだよ……いなくならないで……っ!」
小さな手が私の服をぎゅっとつかむ。
私は痛む頭をおさえながら、そっと抱きしめ返した。
「……ごめんね。ひとりで森の奥まで行っちゃって。こわい思いをさせたね」
謝った瞬間、コハクは首をぶんぶん振って、胸に顔をうずめた。
「こわかったのは、アーデルさんのほうだもん……! ぼく、もっと早くいけばよかった……!」
後ろで聞いていたアカが、絆創膏代わりの布切れを差し出してきた。
ギンは薬草の煮汁を入れた木椀を握りしめ、
「これ、村の薬師さんにもらった。苦いけど、のんで」と言う。
炎症をおさえる効果がある草のオオバコや、痛みの緩和効果のあるカモミール、免疫強化の効果をもつセージなどが入っているらしい。
修道院由来の知識と、民間療法の混合で作られた飲み薬。
アオは火加減を見ながら湯を温め、「……アーデルさん、もうだいじょうぶだよ。僕らが、まもるから」と小さく付け加えた。
騒がしくて、温かくて、胸がしめつけられるほど愛しい。
私が意識を失ったのは恐怖と衝撃のせいだけど、目を覚まして最初に見たのがこの子たちでよかったと、心の底から思った。
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