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第1話 八王子先輩と私の秘め事
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目を覚ますと、私はホテルの一室で寝ていた。
…………何があった?
真新しい清潔なベッドで、全裸で掛け布団を掛けられていて、隣には同じく裸の男が寝ている。
この男は私の会社の先輩、八王子秀一さん。
会社では爽やかで人当たりの良い性格の美形とその名字をもじって、『営業部の王子様』なんて呼ばれている。
――いやマジで何が起こった?
私はパニックになりかけながら昨日の記憶を必死で思い出そうとする。
――私の名前は村崎薫子。経理部で電卓を打つのが仕事の平社員。営業部とはまあ、関係がないわけではない。営業部が取ってきた案件にかかる費用、クライアントに提示する金額を計算するために書類をやり取りしたり直接会話したりもしょっちゅうだ。
ただ、私は八王子先輩とはあまり面識はない。経理部の他の女性社員が率先して八王子先輩とやり取りするからだ。たまに出会えば挨拶を交わす程度の関係。
それが、何故こんなところで私は八王子先輩と寝てるんだ?
思い出せ。昨日なにかあったはずだ。
私が頭を抱えてウンウン唸っていると、
「――……ん……」
八王子先輩の声が聞こえてドキーッ! と緊張が走る。
「……あ、村崎さん、おはよ」
「お、おはようございます……?」
「俺より先に起きたんだ、早いね」
「あ、ありがとうございます……?」
ガチガチになりながら、なんとか言葉を交わす。
八王子先輩は私の緊張に気付いているのかいないのか、私の方に近寄って優しく抱き締めてくる。
ひ、ヒエーッ! 『営業部の王子様』がこんな至近距離に!
混乱していると、不意に八王子先輩が私を抱き締めたまま首すじに顔を埋めて、スンと匂いを嗅ぐのを感じた。
え? も、もしかしてクサイですか? 八王子先輩が寝てる間にシャワー浴びときゃ良かった……!
そう後悔しかける私の耳元で、
「はァ……やっぱり村崎さん、いい匂いだね……」
「へぁっ?」
私は思わず間抜けな声が出てしまう。
「昨日はシャワー浴びたし、香水……じゃないよね? やっぱりフェロモンか何かなのかなぁ……ずっと嗅いでいたい、優しい匂いがする」
「……っ! み、耳元で話すのやめてもらっていいですかね……!?」
八王子先輩の色気をまとった声が、耳をくすぐって、堪えられない気分になる。
「……ああ、そっか。村崎さん、声フェチだもんね。そんなに俺の声好き?」
「!?」
何故、何故私が声フェチであるという秘密を知っている……!?
誰にも話したことのない、私だけの秘密なのに。
「昨日みたいに、『八王子先輩の声でイッちゃう』って言ってほしいなぁ」
「ハァ!? い、いいい言いませんよそんなこと!」
っていうか、昨日の私なにしてんの!?
「……? もしかして、昨日のこと覚えてない?」
「そう! それ! 昨日私の身に何があったんですか!?」
また混乱の渦に巻き込まれた私を見て、八王子先輩は意地悪そうに笑う。
「今のこの状況見て分かんないほど子供じゃないでしょ?」
裸の男女がホテルのベッドでしただろうことを想像し、私は顔を真っ赤に染めた。
そして、全裸の自分と八王子先輩に目が行ってしまい、思わず自分の局部を隠してベッドから逃げようとする。しかし。
「おっと」
八王子先輩が私の腕を掴んでまた布団の中に引きずり込み始めた。
「離してください! これはお互い夢を見ていたということで!」
「だーめ。こんな理想の匂いをまとわせた女の子初めてなんだから、ちゃんとキープしておかないとね」
ベッドに戻され、優しく押し倒された私を、八王子先輩は覆い被さるように見下ろす。
「大丈夫だよ。今日も昨日みたいにゴム使うから」
そう言って、八王子先輩はコンドームのパックを取り出す。
ひ、ヒエエーッ!! 私マジで先輩と寝ちゃったの!?
青ざめた私を全く気にすることなく、先輩は幸せそうな微笑みを浮かべながら、私の髪に唇を寄せる。
「はァ……、髪もいい匂い……甘い香りがする」
太ももに何か硬いものが当たる感触がして、私は「ギャーッ!」と断末魔の悲鳴を上げた。
――そう。今更言うまでもないが、八王子先輩は匂いフェチであった。
〈続く〉
…………何があった?
真新しい清潔なベッドで、全裸で掛け布団を掛けられていて、隣には同じく裸の男が寝ている。
この男は私の会社の先輩、八王子秀一さん。
会社では爽やかで人当たりの良い性格の美形とその名字をもじって、『営業部の王子様』なんて呼ばれている。
――いやマジで何が起こった?
私はパニックになりかけながら昨日の記憶を必死で思い出そうとする。
――私の名前は村崎薫子。経理部で電卓を打つのが仕事の平社員。営業部とはまあ、関係がないわけではない。営業部が取ってきた案件にかかる費用、クライアントに提示する金額を計算するために書類をやり取りしたり直接会話したりもしょっちゅうだ。
ただ、私は八王子先輩とはあまり面識はない。経理部の他の女性社員が率先して八王子先輩とやり取りするからだ。たまに出会えば挨拶を交わす程度の関係。
それが、何故こんなところで私は八王子先輩と寝てるんだ?
思い出せ。昨日なにかあったはずだ。
私が頭を抱えてウンウン唸っていると、
「――……ん……」
八王子先輩の声が聞こえてドキーッ! と緊張が走る。
「……あ、村崎さん、おはよ」
「お、おはようございます……?」
「俺より先に起きたんだ、早いね」
「あ、ありがとうございます……?」
ガチガチになりながら、なんとか言葉を交わす。
八王子先輩は私の緊張に気付いているのかいないのか、私の方に近寄って優しく抱き締めてくる。
ひ、ヒエーッ! 『営業部の王子様』がこんな至近距離に!
混乱していると、不意に八王子先輩が私を抱き締めたまま首すじに顔を埋めて、スンと匂いを嗅ぐのを感じた。
え? も、もしかしてクサイですか? 八王子先輩が寝てる間にシャワー浴びときゃ良かった……!
そう後悔しかける私の耳元で、
「はァ……やっぱり村崎さん、いい匂いだね……」
「へぁっ?」
私は思わず間抜けな声が出てしまう。
「昨日はシャワー浴びたし、香水……じゃないよね? やっぱりフェロモンか何かなのかなぁ……ずっと嗅いでいたい、優しい匂いがする」
「……っ! み、耳元で話すのやめてもらっていいですかね……!?」
八王子先輩の色気をまとった声が、耳をくすぐって、堪えられない気分になる。
「……ああ、そっか。村崎さん、声フェチだもんね。そんなに俺の声好き?」
「!?」
何故、何故私が声フェチであるという秘密を知っている……!?
誰にも話したことのない、私だけの秘密なのに。
「昨日みたいに、『八王子先輩の声でイッちゃう』って言ってほしいなぁ」
「ハァ!? い、いいい言いませんよそんなこと!」
っていうか、昨日の私なにしてんの!?
「……? もしかして、昨日のこと覚えてない?」
「そう! それ! 昨日私の身に何があったんですか!?」
また混乱の渦に巻き込まれた私を見て、八王子先輩は意地悪そうに笑う。
「今のこの状況見て分かんないほど子供じゃないでしょ?」
裸の男女がホテルのベッドでしただろうことを想像し、私は顔を真っ赤に染めた。
そして、全裸の自分と八王子先輩に目が行ってしまい、思わず自分の局部を隠してベッドから逃げようとする。しかし。
「おっと」
八王子先輩が私の腕を掴んでまた布団の中に引きずり込み始めた。
「離してください! これはお互い夢を見ていたということで!」
「だーめ。こんな理想の匂いをまとわせた女の子初めてなんだから、ちゃんとキープしておかないとね」
ベッドに戻され、優しく押し倒された私を、八王子先輩は覆い被さるように見下ろす。
「大丈夫だよ。今日も昨日みたいにゴム使うから」
そう言って、八王子先輩はコンドームのパックを取り出す。
ひ、ヒエエーッ!! 私マジで先輩と寝ちゃったの!?
青ざめた私を全く気にすることなく、先輩は幸せそうな微笑みを浮かべながら、私の髪に唇を寄せる。
「はァ……、髪もいい匂い……甘い香りがする」
太ももに何か硬いものが当たる感触がして、私は「ギャーッ!」と断末魔の悲鳴を上げた。
――そう。今更言うまでもないが、八王子先輩は匂いフェチであった。
〈続く〉
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