学園一のイケメンにつきまとわれています。

永久保セツナ

文字の大きさ
23 / 35
9月編(体育祭編)

第23話 文月栞と体育祭。【プロローグ】

しおりを挟む
時は九月。
この末吉高校では体育祭が開催されようとしていた。
――今、私――文月栞の目の前では、担任の今ちゃん先生が必死に私を説得しようとしている。
「お願い、文月さん! 徒競走のランカーをやってほしいの!」
「いや~……私、文系なんで……」
「あら、七夕の件、私が平謝りしてお咎めなしになったの、忘れたとは言わせないわよ?」
「うう……それを言われると弱い……」
七夕まつりで他校の生徒を相手に暴れまわった件については、生徒会――神楽坂緋月が握りつぶしたのと、なりたてピカピカの新任教師でありながら問題児である私を必死にかばった今ちゃん先生の功績が大きい。だから私は今ちゃん先生には恩義を感じているし頭が上がらない。
しかしそこで問題が発生してしまう。今ちゃん先生は喧嘩ができる私を「運動ができる生徒」と認識してしまったのだ。そこで、体育祭で大いに活躍してもらいたい、と、現在説得中というわけである。
「文月さん、まだクラスに仲のいい人、曽根崎くんくらいしかいないでしょう? みんなと仲良くなるチャンスだと思うの。体育祭で思いっきり身体を動かしてリフレッシュしてほしいし」
――その曽根崎のせいで、女子との仲が最悪なんですけどね。
とは、流石に言えなかった。
曽根崎が私に近寄るたびに女子の突き刺すような殺気を感じるし、私を恐れているためかイジメまでは発展しなかったが、ぼっちに「はーい、好きな子と班を組んでくださーい」の言葉は無情なものである。
そして、曽根崎が私を班に誘ってくれるから同じ班の女子の圧がすごい。
……いい加減、「脈なし」と判断して、曽根崎が離れてくれればいいのだが。
もともと一匹狼気質の私は曽根崎にベタベタされると落ち着かない。たまには一人になりたい。教室の隅っこで本でも読んでたほうが落ち着く。
「ね、お願い文月さん! 徒競走の練習してる間は図書委員も部活も休んでいいことになってるから!」
「いえ、それが一番困るんですけど」
大好きな図書委員の仕事まで取り上げられてしまうのか。部活はもともと幽霊部員だったからどうでもいいけど。
「やめなよぉ、今ちゃん先生。文月さん嫌がってるじゃん」
「そもそも喧嘩と足の速さは関係ないっしょ。ランカーなんて荷が重いからやりたくないだけなんじゃないの?」
クラスの女子たちが冷やかし半分に笑いながら今ちゃん先生を諌める。
「じゃあ、実際にタイムを測ってみましょう! 文月さん、ジャージに着替えて」
「ええ……」
「みんなに言われっぱなしで悔しくないの?」
今ちゃん先生はきっと、教師という職業に真摯に向き合う熱血派なのだろう。私をクラスに溶け込ませたい気持ちもわかる。
反面、私の気持ちは冷めてゆくばかりである。
女子に馬鹿にされようがどうでもいい。興味がない。そもそも徒競走のランカーなんて思いっきり目立つポジションではないか。
私は本性を暴かれてもなお、学校で目立つのを嫌っていた。
しかし、私の抵抗もむなしく、現在私はジャージ姿でグラウンドに立たされている。
このグラウンドは体育祭でも使われるものだ。白線引きもテントの設営もまだ途中である。
「いい、文月さん? ちゃんと本気で走ってね?」
今ちゃん先生の笑顔に威圧感を感じる。
徒競走に参加する他の女子生徒たちもグラウンドでなんだなんだと集まっていた。
好奇心。恐怖心。嫉妬心。その他諸々のなんとも言えない感情の視線が一点に集中し、刺さるような感覚を覚える。
……これで手なんか抜いたら、流石に全員に責め立てられてしまうな。
私はスタート地点で構える。ゴール付近では今ちゃん先生がタイマーを持ち、周りに生徒がタイムを見てやろうと集まっている。
「よーい……ドン!」
号令役の女子の合図とともに、真っ直ぐに駆け抜ける。
百メートル。人によって長いか短いかは微妙なところである。私にはゴールまであっという間に感じた。
ゴールと同時に、「ピッ」とタイマーを止める音がする。
「今ちゃん先生、何秒!? 何秒!?」
「めっちゃ足早くね!?」
女子たちが今ちゃん先生のタイマーめがけて群れ始める。
「……文月さん、やっぱりあなたはアンカーをやるべき人間よ。担任命令です。文月栞さんを今日から徒競走のアンカーに任命します」
「ええ……」
せめてタイムを教えてほしかったのだが、今ちゃん先生はすぐにタイマーをリセットしてしまった。
「さあ、徒競走のメンバーもちょうど集まってるし、今日から特訓よ!」
「おーっ」
徒競走組は盛り上がっているようだったが、私は図書委員の仕事を奪われたことに落胆を隠せなかった。

体育祭当日。
この高校の体育祭は赤組・白組ではなく、学年ごとのA組とB組に分けられる。
つまり、私の知り合いで言うならば、私・曽根崎・神楽坂・桐生VS銀城・猫春となる。
「銀城があっち側にいるのは痛手だけど、これで正々堂々と中島を潰せるわけだ?」
「運動できる人が運動できない人にマウント取ろうとするのホント見苦しいですよね」
ククク……と嫌な笑いを浮かべている曽根崎に、私は冷たく返した。
すると、銀城先輩と猫春が歩いてくるのが見えた。
「中島、自分の足を引っ張らないように気をつけろ」
「はっ、はひ……」
あまり接点がない上に、無表情でキツめの言葉を投げかけてくる銀城先輩に苦手意識を持っているのか、猫春は緊張気味……というか、怯え気味だ。
「ちょっと、銀城先輩。猫春くんをいじめたら許しませんよ」
私が諌めると、銀城先輩はフン、と鼻を鳴らす。
「運動が出来ないやつは体育祭で居場所がなくて可哀想だな」
「カーッ、体育会系のこういうとこ嫌だわ~」
私は思い切り顔をしかめた。
「まあまあ……。中島が銀城の近くに来て怪我しないようにって遠回しに言ってるんだよ、アレは」
曽根崎は微苦笑を浮かべながらとりなすように言う。
そうなのかなあ……。
「まあどのみち中島くんは保健委員で体育祭には参加しませんがね」
声のする方を見ると、神楽坂緋月先輩と桐生京介先輩が歩いてくるところだった。
「曽根崎くんは運動得意ですか?」
神楽坂先輩の言葉に、曽根崎はニヤリと笑う。
「分かってて聞いてるでしょセンパイ。ちなみにセンパイは?」
「こういうことは桐生に任せているので、わたくしは放送席にいますね」
「へっ、貴族は汗を流さないってか。使えねーな」
曽根崎がそう言うと、桐生先輩はひと睨みする。
「曽根崎逢瀬くん、緋月様への暴言は許しません」
「へえへえ」
猫春と神楽坂先輩は体育祭に参加しない。
よって、実質私・曽根崎・桐生VS銀城である。
数の上ではA組が有利だが、銀城先輩の身体能力はなにせ全国大会で二位を獲るほどの実力である。そこ、微妙とか言ってはいけない。
「桐生センパイ、言っときますけど銀城は強いですよ」
「一度手合わせして実力の高さは充分に実感しております。アレは一般の生徒には抑えられません。当方と曽根崎逢瀬くん、あとは文月栞、あなたの腕力にかかっています」
「なんか期待が重い……」
こんな調子で、私たちは開会式を迎えることとなったのである。

〈続く〉
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...