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10月編(学園祭編)
第26話 文月栞と学園祭ときどきハロウィン。
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私――文月栞がこの学園に入学して、もう半年が経つ。
十月。
この末吉高校では学園祭が行われるため、校内は準備のために大わらわだ。
私と、同じクラスの曽根崎逢瀬、そして曽根崎の友人である二ノ宮銀城の三人は、学園近くの百均ショップで買ったのであろう装飾を持って校内外を出入りする生徒たちが通る入場門を見上げている。
その入場門もまだ作っている最中で、カンカンと釘を打つ音が響き渡っている。
「学園祭って十一月のイメージあるんですけど」
「なんか、神楽坂センパイがハロウィン面白そうだからくっつけちゃおうって」
「自由だなオイ」
曽根崎の回答に、私は呆れ顔を浮かべる。
神楽坂緋月先輩は生徒会長である。本来、生徒会が教師以上の権力を持っているわけがないのだが、会長の親が学園に多額の寄付をしているとあらば、生徒会に学園の規律を牛耳られてしまうのは仕方ないというか。……いや、果たして仕方ないのか?
とにかく、生徒会副会長も神楽坂家の執事の息子――桐生京介先輩が就任しており、実質生徒会のやりたい放題であった。
「まあ、どのみち学園祭にはコスプレがつきものだからな。面白い案かもしれん」
銀城先輩はひとりうなずく。
「生徒は全員コスプレが義務だってさ。なんか楽しそうだよね」
「コスプレねえ……適当に通販で買っときますか」
私は頭をかきながら独りごちた。
それが、学園祭が始まる前の私たちの会話である。
学園祭当日。
いつものメンバー……私と曽根崎、銀城先輩、中島猫春、神楽坂先輩、桐生先輩が一堂に会していた。
ちなみに選んだコスプレは、私が巫女服、曽根崎が狼男、銀城先輩がミイラ男、猫春が猫又、神楽坂先輩が吸血鬼、桐生先輩がフランケンである。
「栞ちゃんの巫女服可愛いねえ。食べちゃいたい」
「しまった、猟銃持ってくるんだった」
わざとらしく音を立てて舌なめずりする曽根崎に、私は顔をしかめる。
「ミイラ男は包帯巻くだけでいいから楽でいい」
銀城先輩は、誰にいうでもなくポツリとつぶやく。あまりお金をかけたくない銀城先輩らしいっちゃらしい。
「栞さんが巫女服で良かった……僕だけ和風で浮いちゃうところでした」
「わー猫春くんの猫耳かわいいな~」
もちろん作り物の猫耳なのだが、触らせてもらうとふわふわで心地が良い。
日本の妖怪ということで、和服を着ているのもポイント高い。
「十字架を持っていないのなら……血を吸っても構いませんね?」
「セクハラ……」
私は銀城先輩の背中に隠れる。
「おや、わたくし何か変なこと言いましたかね?」
「緋月様、セクハラはされたほうがセクハラだと思えば成立してしまうのです」
桐生先輩は表情一つ崩さず冷静に言ってのける。
「窮屈な世の中ですね」
「変態が世の中を語るな」
ガルル、と私は神楽坂先輩に威嚇した。
「それにしても、桐生先輩にはフランケンがはまり役ですね」
「正確には『フランケンシュタインの怪物』です。フランケンシュタインは怪物を作った博士の名前です」
「あー、そういう豆知識はいいですから」
私は興味ないと手をひらひら振る。
とりあえずこのいつもの六人で学園祭を回ることになったのであった。
「ねえねえ栞ちゃん、何か食べたいものある?」
「うーん……とりあえずあそこのメイド喫茶入ってみます?」
曽根崎の質問に、私は目の前の『メイド喫茶』と書かれた看板のかかった教室を指差す。
ハロウィンとは関係ないが、とりあえずメイド服もコスプレなのでセーフなのだろう。よく考えたもんだ。
さて、メイド喫茶に入り、席に案内されたまではいいのだが。
ざわ……ざわ……
なんだか店内の客もメイドもそわそわしているのが見て取れる。
うーん、やっぱり男五人に囲まれている女一人ってのはどうしても目立つもんだなあ。
巫女服の紅白衣装というのも人目を引くのであろう。もうちょい地味なコスプレにすればよかった。
そこへ、
「オムライスお持ちいたしました~!」
猫耳のカチューシャをつけたメイドさんがオムライスの皿を持ってごきげんな様子でやってくる。
「それではもっと美味しくなる魔法をかけますね! みなさんも一緒にやってください!」
あ、これ本場のメイド喫茶でもよくやるやつだ。テレビで見たことある。
「せ~のっ、萌え萌えきゅ~ん♪」
メイドさんが手でハートを作り、オムライスに美味しくなる魔法をかける。
「萌え萌えきゅ~ん」
私も真似してみる。ちょいとこっ恥ずかしいが、まあ祭りのノリだ。
「お嬢様ノリがいいですねえ! お坊ちゃまたちが全員悶絶する破壊力です!」
「何やってんだお前ら」
振り向くと、本当に男子五人が全員悶絶していた。「萌え萌えきゅ~ん」やったの私だけかよ。恥ずかしいな。
「い、いや、だって……可愛すぎて……」
曽根崎が珍しく顔を真赤にしている。
「な、なんだこれは……不整脈……!?」
銀城先輩は胸に手を当て、顔を真赤にしながら青ざめるという器用な状態になっている。
「もう一度! もう一度お願いいたします! 動画で撮らせてください!」
神楽坂先輩はスマホを片手に懇願してくる始末。
「既に当方が録画済みでございます緋月様」
「でかした桐生!」
でかしたじゃねーわ。あとで消させる。
「か、かわ……かわ……」
猫春は顔を真赤にして、頬に手を当てたままプルプルしている。お前が一番可愛いよ(イケメンボイス)。
その後、オムライスは六人で少しずつシェアした。学園祭は食べ物系の出店が多い。オムライスでお腹いっぱいになってしまっては十全に楽しむことは出来ないのだ。
メイド喫茶を出たあとは、様々な出店を回った。
チョコバナナにかき氷、パンナコッタにナタデココ。私が食べていると曽根崎や神楽坂先輩がスマホをこちらに向けて撮影しようとするのには参った。
人がモノ食べてるの写真に残して、何に使うんだろうか。
「そういえば栞さんたちはクラスや部活の出し物は大丈夫ですか?」
神楽坂先輩の言葉に、私はハッとして腕時計を見る。
「あ、そろそろ私たちの持ち回りですよ、曽根崎くん」
「ホントだ。それじゃ、俺たち二人でフランクフルト売ってますんで、よかったら買い占めてくださいね~」
「冗談ですからね、神楽坂先輩!」
というわけで、他のメンバーも自分たちの持ち回りがあるということで、一旦解散になったのであった。
私たち一年A組の出店であるフランクフルト屋は、校舎の玄関のすぐ傍に設営されている。学園祭を見物しようと思ったら必ず立ち寄るような立地だ。
十月ということで気温的には涼しいくらいなのだが、店の中はフランクフルトを焼く熱気で充満していた。
フランクフルトという商品自体は冷凍のものを業者から仕入れ、売る際には自分たちで焼く。フランクフルトを焼くための機材も業者から借りている。この仕入れ代と機材のレンタル代を売上で返せるかどうかは微妙なところではあったが、まあ学園祭の出店というのは商売について学ぶという側面が大きいのでどれだけ売り上げたかは重要ではない、というのが学園の方針であった。仮に売上が足りなくても学園側が不足分を支払うことになっている。むしろ売れ残っても生徒たちが食べられるので美味しい。それを狙って食べ物系の出店を出すクラスが多いくらいだ。
「フランクフルト、いかがっすか~」
私は巫女服のまま店の前に立ち、呼び込みを行っている。学園祭に対するモチベーションは体育祭に比べれば幾分マシな方だったが、それでもやはり本を読めないのは退屈だし、そもそも人混みというのがあまり好きではない。人が多いということはトラブルが発生する確率もそれに比例して上昇する。教師陣が目を光らせているとはいえ、客の数に対してあまりに目の数が足りなかった。
「おっ、君可愛いね~」
ほら、トラブルの予感。
「巫女さんがフランクフルト売ってくれるの? どっちかというと巫女さんにフランクフルト咥えてほしいな~」
「俺のフランクフルト食べる?」
よし、殴ろう。
この不逞の輩どもを校内に入れてトラブルの原因になる前に私がぶちのめして防ぐべきだと判断した。
しかし、私の殺気を察したのか、私の目の前にスッ……と立ち塞がる背中が見えた。
「……俺の彼女に何ほざいてくれてんの?」
曽根崎だった。
こちらに背を向けているため顔は見えないが、彼もそれなりに怒っているようだった。
「チッ、彼氏持ちか……」
「リア充爆発しろ」
不逞のモブ男どもは吐き捨てるようにその場を去った。
「……あ、あの、ごめんね?」
「何がですか」
こちらを振り向いた曽根崎は申し訳無さそうに手を合わせて謝る。
何のことかよく分からず、私は訊き返した。
「その……彼女って言ったこと、怒ってない?」
「嘘も方便、というやつでしょう。あの場合は仕方なかったと思いますし」
普段は彼女って言い張りそうなもんなのに、変なところで律儀だな……。
「それに、もう少しでまた人を殴って問題沙汰になるところだったので逆に助かりました」
「そ、そっか。……えへへ」
美少年のはにかんだ笑顔は、ちょっと可愛い…………いかんいかん、正気に戻れ文月栞。
どんなに美しい顔立ちをしていても、コイツがストーカーであるという事実は覆らない。
……しかし、どうして犯罪者予備軍と分かっていても、コイツとなんとなく一緒にいてしまうんだろうな?
フランクフルト屋のシフトを終えて、なんとなく曽根崎と学園祭を回る流れになってしまった。
女子の友達がいない私には一緒に回ってくれる人なんて曽根崎くらいのものだ。
曽根崎は曽根崎で、他の男子が私に近寄らないように牽制しているし……結局、コイツのせいで友達が出来ず、孤立してしまっている気がする……。
それもコイツの策略であるのだろうが。
いい匂いにつられて焼きそば屋を通ると、銀城先輩が焼きそばを焼いている。デジャブ。
「銀城先輩、焼きそば屋がすっかり板について……」
「というか、夏祭りで女子に売れるのを知って味を占めたんだろうね……」
鉄板の上で焼かれる焼きそばは、焼いたそばから女子たちに売り飛ばされていく。
玉の汗を飛ばしながら焼きそばを焼く銀城先輩は、無表情なのに何故か爽やかな雰囲気のイケメンに映る。
女性客で焼きそば屋の前に待機列が出来ており、たいへん混雑していた。
「忙しそうなので声をかけるのはやめておきましょうか」
「そうだね」
私の言葉に曽根崎はうなずき、私たち二人は銀城先輩をスルーして女性客の群れをなんとか抜けた。
しばらく他の教室を覗きながら歩いていくと、一年B組の教室に行き当たった。
曽根崎は渋い顔をしていたが、私は猫春がいたら挨拶でもしようかと入ってみることにした。
「猫春くんのクラスは……美術展示?」
美術の時間に制作した作品が飾られているだけの、簡素な部屋だ。
「僕のクラスは、みんな遊びたいからって出店に積極的じゃなくて」
「で、猫春くんだけ見張りで座り続けるのを押し付けられたと」
猫春は教室の出入り口近くに置かれた机で本を読んでいた。
「まあ、生徒の展示品を盗む人もいないでしょうし、出入りだけ見張ってあとは本を読んでればいいので気楽ですよ?」
「猫春くんがそれでいいならいいですけど……」
猫春は押し付けられた、というわりにはそれほど苦には思っていないようだった。
もともと読書家の彼は座りっぱなしで本を読むことに苦痛は感じない。
おまけに生徒の美術展示なんてわざわざ見に来る外来の客も少ないので、読書に没頭できるというわけで、彼にとっては最高の環境なのだろう。
「ま、一緒についてこないっていうなら俺には好都合だけど。……お、この絵うまいな」
ブラブラと美術展示を眺めていた曽根崎が声を上げた。それを見るとたしかに周りの作品に比べて完成度が高いというか精緻な印象というか、高校生が描いたにしては上手い、といった感じだ。
「あ、それ僕が描いたやつです」
「へ~、猫春くん美術の才能あるんですね」
「あ、ありがとうございます……」
私が褒めると、猫春は顔をほんのり赤く染めて頭をかきながらうつむく。
「栞ちゃん、美術館巡りとか好きだもんね。もうちょっと見ていく?」
曽根崎は何故か機嫌が良さそうに爽やかなイケメンスマイルで訊ねてくる。
「なんか今日の曽根崎くん、寛容ですね。あと美術館巡りが趣味なの教えた覚えないんですけど」
「……栞ちゃんが独り占めできてるから、心の余裕ができてるのかもね?」
「美術館巡りが趣味なの、教えた覚え、ないんですけど」
テレテレしている曽根崎に、容赦なく尋問する私。
「栞ちゃんのことならなんでも知ってるよ?」
「ストーカーこわ」
「それでもなんだかんだ一緒にいてくれるんでしょ?」
「今すぐここに人混みができて曽根崎とはぐれないだろうか」
多分いま、私の目は死んでいる。
「照れない照れない」
「ハァ~? 一ミリも照れてないですけどォ~?」
「それより、早く展示見ないと教室出ちゃうよ」
曽根崎は上機嫌で私の手を引いていく。
「……やっぱり、曽根崎くんと栞さん、仲いいなあ……」
猫春は誰もいなくなった教室で、独りごちるのであった。
幽霊部員とはいえ、一応籍を置いてもらっている漫画研究会にもご挨拶に行こうと教室に伺った。
漫研の教室に入ると、部長が嬉しそうに歓迎してくれた。
「私たち、毎年夏と冬と学園祭の時期に部誌作って頒布してるんだ。よかったら一冊どうぞ」
そう言って、部長は私と曽根崎の分の部誌をくれた。
「へえ~、漫画やイラストだけじゃなくて小説を書いてる人もいるんだ」
漫画研究会というくらいだから、漫画しかないのかと思っていたので意外だった。
「文月さんもこっちの世界へおいでよ……沼は楽しいよ……」
「沼?」
「部長、栞ちゃんに変なこと教えないで」
曽根崎は引きつった笑顔で私と部長の間に割って入る。
「変なことって何さ。創作の楽しさとオタクの沼に引きずり込もうとだね……」
「それをやめてって言ってんの」
部長と曽根崎がギャーギャー騒いでいる間にも、私は部誌を読み進めていく。
末吉高校の漫研は、プロとして稼いでいる部員から絵を描き始めたばかりの新人まで幅広い。
そんな彼女たちが上手かろうと下手だろうと己の心血を注いで描き上げた作品たちが、一冊の本に収まっている。
漫研は陰キャのたまり場なんてバカにされるがとんでもない。彼女たちは創作の喜びに輝いていたし、これもひとつの青春である。
「私、小説は読む側だったから、小説を書くなんて発想なかったなあ」
とつぶやくと、
「乗り気になってるのやめよう? 絶対この人たちBLとか押し付けてくるよ」
曽根崎がうんざりした顔で忠告する。
「びいえる?」
「大丈夫、初心者向けの作品から勧めてどんどん奥へ引きずり込んでいくから」
「部長、そのへんにしてもらえません?」
曽根崎の弧を描いた口の端がピクピクと引きつっているのが見えた。眉間にシワもよっている。
『びいえる』なるものが何なのか気になったが、なんとなく聞いてはいけない気がした。
「ちぇ~、曽根崎くんは彼女を守るとなると必死だなあ」
「いえ、彼女ではないです」
つまらなそうに言う部長に、私は拒絶の意思を示す。
「さっきは彼女でもいいって言ってたのに……」
「嘘も方便って言いましたよね?」
いじけた様子の曽根崎に、私は冷静にツッコんだ。
「あ、そういや生徒会長がこれを配りに来たんだけどさ、要る?」
漫研の部長が思い出したように、私に紙を手渡した。
パンフレットのようだった。
「演劇のパンフレット? へえ……神楽坂先輩と桐生先輩のクラス、演劇やるのか。……見に行きます?」
曽根崎と顔を見合わせる。
「行かなくて良くない?」
「自分の演技を知り合いに見られるの恥ずかしいだろうしスルーしますか」
私はパンフレットを小さく畳んでカバンにしまった。
その後、いつものメンバーが全員シフトを終えて集まった頃、
「栞さん、演劇見ていただけましたか?」
「え、見てませんけど」
「な……何故……」
と、神楽坂先輩が膝から崩れ落ちたのは言うまでもない。
「緋月様、下賤な狂犬には高尚な演劇は理解できなかったのではないかと」
「……そういうことにしておきましょうか」
「こいつら腹立つなあ」
桐生先輩と神楽坂先輩に思いっきり下に見られている。
「やっぱり、栞ちゃんに見てほしくてわざわざパンフレットを無関係な漫研に配ったわけだ? 残念だったねえ、会長。今頃漫研の女子たちは神楽坂×桐生か桐生×神楽坂かで論争中だよ」
曽根崎がからかうように嘲笑った。
「意味はまったくわかりませんが何か嫌な予感がします」
「当方も理由のわからない悪寒がいたします」
神楽坂先輩と桐生先輩はブルッと身を震わせたのであった。
やがて、時刻は夕方の五時を回った。校内放送で『蛍の光』が流れてくるのが聞こえる。学園祭終了の合図であり、「校内に残っている学校と無関係な者はさっさと立ち去れ」の合図でもある。
生徒たちは簡単に教室内を片付けてから、校庭に集合してキャンプファイアの周りをフォークダンスする伝統がある。
「栞さん、よければわたくしと踊っていただけませんか?」
神楽坂先輩は絵本の中の王子様のようにひざまずいて手を差し伸べる。ホント、こういう芝居がかったとこあるよな、この人。
「あっ、ずるいぞ会長!」
曽根崎がブーブーと文句を垂れる。
「自分は踊りは不得手だからな……」
銀城先輩は聞かれてもいないのに首を振る。
「あんたら全員と踊ってたらこっちの身がもたないので、今回は早いもの勝ちということで」
というわけで、キャンプファイアを囲んで、フォークダンスが行われた。
踊っている途中、
「……栞さん、学園祭は楽しんでいただけましたか?」
と、神楽坂先輩が話しかけてくる。
「まあ、それなりに? コスプレも面白かったしいい案だったと思いますよ」
「よかった。……わたくしは、来年にはもうここにはいないものですから」
「……」
神楽坂先輩は三年生だ。こんな優秀な人間が留年などするはずもなく、曽根崎と違って経歴に傷をつけることも許されない。
「思えば、貴女には随分失礼な態度をとったものだと思います。今更謝罪したところでもう遅いかもしれませんが」
「……人は、理解し合おうと思えるのならいつでもやり直せますよ。本で読んだ言葉ですが」
そう返すと、神楽坂先輩は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに目を細めて微笑む。
「……フッ。貴女らしい」
キャンプファイアの火花は、夜空高くへと舞い上がっていくのであった。
〈続く〉
十月。
この末吉高校では学園祭が行われるため、校内は準備のために大わらわだ。
私と、同じクラスの曽根崎逢瀬、そして曽根崎の友人である二ノ宮銀城の三人は、学園近くの百均ショップで買ったのであろう装飾を持って校内外を出入りする生徒たちが通る入場門を見上げている。
その入場門もまだ作っている最中で、カンカンと釘を打つ音が響き渡っている。
「学園祭って十一月のイメージあるんですけど」
「なんか、神楽坂センパイがハロウィン面白そうだからくっつけちゃおうって」
「自由だなオイ」
曽根崎の回答に、私は呆れ顔を浮かべる。
神楽坂緋月先輩は生徒会長である。本来、生徒会が教師以上の権力を持っているわけがないのだが、会長の親が学園に多額の寄付をしているとあらば、生徒会に学園の規律を牛耳られてしまうのは仕方ないというか。……いや、果たして仕方ないのか?
とにかく、生徒会副会長も神楽坂家の執事の息子――桐生京介先輩が就任しており、実質生徒会のやりたい放題であった。
「まあ、どのみち学園祭にはコスプレがつきものだからな。面白い案かもしれん」
銀城先輩はひとりうなずく。
「生徒は全員コスプレが義務だってさ。なんか楽しそうだよね」
「コスプレねえ……適当に通販で買っときますか」
私は頭をかきながら独りごちた。
それが、学園祭が始まる前の私たちの会話である。
学園祭当日。
いつものメンバー……私と曽根崎、銀城先輩、中島猫春、神楽坂先輩、桐生先輩が一堂に会していた。
ちなみに選んだコスプレは、私が巫女服、曽根崎が狼男、銀城先輩がミイラ男、猫春が猫又、神楽坂先輩が吸血鬼、桐生先輩がフランケンである。
「栞ちゃんの巫女服可愛いねえ。食べちゃいたい」
「しまった、猟銃持ってくるんだった」
わざとらしく音を立てて舌なめずりする曽根崎に、私は顔をしかめる。
「ミイラ男は包帯巻くだけでいいから楽でいい」
銀城先輩は、誰にいうでもなくポツリとつぶやく。あまりお金をかけたくない銀城先輩らしいっちゃらしい。
「栞さんが巫女服で良かった……僕だけ和風で浮いちゃうところでした」
「わー猫春くんの猫耳かわいいな~」
もちろん作り物の猫耳なのだが、触らせてもらうとふわふわで心地が良い。
日本の妖怪ということで、和服を着ているのもポイント高い。
「十字架を持っていないのなら……血を吸っても構いませんね?」
「セクハラ……」
私は銀城先輩の背中に隠れる。
「おや、わたくし何か変なこと言いましたかね?」
「緋月様、セクハラはされたほうがセクハラだと思えば成立してしまうのです」
桐生先輩は表情一つ崩さず冷静に言ってのける。
「窮屈な世の中ですね」
「変態が世の中を語るな」
ガルル、と私は神楽坂先輩に威嚇した。
「それにしても、桐生先輩にはフランケンがはまり役ですね」
「正確には『フランケンシュタインの怪物』です。フランケンシュタインは怪物を作った博士の名前です」
「あー、そういう豆知識はいいですから」
私は興味ないと手をひらひら振る。
とりあえずこのいつもの六人で学園祭を回ることになったのであった。
「ねえねえ栞ちゃん、何か食べたいものある?」
「うーん……とりあえずあそこのメイド喫茶入ってみます?」
曽根崎の質問に、私は目の前の『メイド喫茶』と書かれた看板のかかった教室を指差す。
ハロウィンとは関係ないが、とりあえずメイド服もコスプレなのでセーフなのだろう。よく考えたもんだ。
さて、メイド喫茶に入り、席に案内されたまではいいのだが。
ざわ……ざわ……
なんだか店内の客もメイドもそわそわしているのが見て取れる。
うーん、やっぱり男五人に囲まれている女一人ってのはどうしても目立つもんだなあ。
巫女服の紅白衣装というのも人目を引くのであろう。もうちょい地味なコスプレにすればよかった。
そこへ、
「オムライスお持ちいたしました~!」
猫耳のカチューシャをつけたメイドさんがオムライスの皿を持ってごきげんな様子でやってくる。
「それではもっと美味しくなる魔法をかけますね! みなさんも一緒にやってください!」
あ、これ本場のメイド喫茶でもよくやるやつだ。テレビで見たことある。
「せ~のっ、萌え萌えきゅ~ん♪」
メイドさんが手でハートを作り、オムライスに美味しくなる魔法をかける。
「萌え萌えきゅ~ん」
私も真似してみる。ちょいとこっ恥ずかしいが、まあ祭りのノリだ。
「お嬢様ノリがいいですねえ! お坊ちゃまたちが全員悶絶する破壊力です!」
「何やってんだお前ら」
振り向くと、本当に男子五人が全員悶絶していた。「萌え萌えきゅ~ん」やったの私だけかよ。恥ずかしいな。
「い、いや、だって……可愛すぎて……」
曽根崎が珍しく顔を真赤にしている。
「な、なんだこれは……不整脈……!?」
銀城先輩は胸に手を当て、顔を真赤にしながら青ざめるという器用な状態になっている。
「もう一度! もう一度お願いいたします! 動画で撮らせてください!」
神楽坂先輩はスマホを片手に懇願してくる始末。
「既に当方が録画済みでございます緋月様」
「でかした桐生!」
でかしたじゃねーわ。あとで消させる。
「か、かわ……かわ……」
猫春は顔を真赤にして、頬に手を当てたままプルプルしている。お前が一番可愛いよ(イケメンボイス)。
その後、オムライスは六人で少しずつシェアした。学園祭は食べ物系の出店が多い。オムライスでお腹いっぱいになってしまっては十全に楽しむことは出来ないのだ。
メイド喫茶を出たあとは、様々な出店を回った。
チョコバナナにかき氷、パンナコッタにナタデココ。私が食べていると曽根崎や神楽坂先輩がスマホをこちらに向けて撮影しようとするのには参った。
人がモノ食べてるの写真に残して、何に使うんだろうか。
「そういえば栞さんたちはクラスや部活の出し物は大丈夫ですか?」
神楽坂先輩の言葉に、私はハッとして腕時計を見る。
「あ、そろそろ私たちの持ち回りですよ、曽根崎くん」
「ホントだ。それじゃ、俺たち二人でフランクフルト売ってますんで、よかったら買い占めてくださいね~」
「冗談ですからね、神楽坂先輩!」
というわけで、他のメンバーも自分たちの持ち回りがあるということで、一旦解散になったのであった。
私たち一年A組の出店であるフランクフルト屋は、校舎の玄関のすぐ傍に設営されている。学園祭を見物しようと思ったら必ず立ち寄るような立地だ。
十月ということで気温的には涼しいくらいなのだが、店の中はフランクフルトを焼く熱気で充満していた。
フランクフルトという商品自体は冷凍のものを業者から仕入れ、売る際には自分たちで焼く。フランクフルトを焼くための機材も業者から借りている。この仕入れ代と機材のレンタル代を売上で返せるかどうかは微妙なところではあったが、まあ学園祭の出店というのは商売について学ぶという側面が大きいのでどれだけ売り上げたかは重要ではない、というのが学園の方針であった。仮に売上が足りなくても学園側が不足分を支払うことになっている。むしろ売れ残っても生徒たちが食べられるので美味しい。それを狙って食べ物系の出店を出すクラスが多いくらいだ。
「フランクフルト、いかがっすか~」
私は巫女服のまま店の前に立ち、呼び込みを行っている。学園祭に対するモチベーションは体育祭に比べれば幾分マシな方だったが、それでもやはり本を読めないのは退屈だし、そもそも人混みというのがあまり好きではない。人が多いということはトラブルが発生する確率もそれに比例して上昇する。教師陣が目を光らせているとはいえ、客の数に対してあまりに目の数が足りなかった。
「おっ、君可愛いね~」
ほら、トラブルの予感。
「巫女さんがフランクフルト売ってくれるの? どっちかというと巫女さんにフランクフルト咥えてほしいな~」
「俺のフランクフルト食べる?」
よし、殴ろう。
この不逞の輩どもを校内に入れてトラブルの原因になる前に私がぶちのめして防ぐべきだと判断した。
しかし、私の殺気を察したのか、私の目の前にスッ……と立ち塞がる背中が見えた。
「……俺の彼女に何ほざいてくれてんの?」
曽根崎だった。
こちらに背を向けているため顔は見えないが、彼もそれなりに怒っているようだった。
「チッ、彼氏持ちか……」
「リア充爆発しろ」
不逞のモブ男どもは吐き捨てるようにその場を去った。
「……あ、あの、ごめんね?」
「何がですか」
こちらを振り向いた曽根崎は申し訳無さそうに手を合わせて謝る。
何のことかよく分からず、私は訊き返した。
「その……彼女って言ったこと、怒ってない?」
「嘘も方便、というやつでしょう。あの場合は仕方なかったと思いますし」
普段は彼女って言い張りそうなもんなのに、変なところで律儀だな……。
「それに、もう少しでまた人を殴って問題沙汰になるところだったので逆に助かりました」
「そ、そっか。……えへへ」
美少年のはにかんだ笑顔は、ちょっと可愛い…………いかんいかん、正気に戻れ文月栞。
どんなに美しい顔立ちをしていても、コイツがストーカーであるという事実は覆らない。
……しかし、どうして犯罪者予備軍と分かっていても、コイツとなんとなく一緒にいてしまうんだろうな?
フランクフルト屋のシフトを終えて、なんとなく曽根崎と学園祭を回る流れになってしまった。
女子の友達がいない私には一緒に回ってくれる人なんて曽根崎くらいのものだ。
曽根崎は曽根崎で、他の男子が私に近寄らないように牽制しているし……結局、コイツのせいで友達が出来ず、孤立してしまっている気がする……。
それもコイツの策略であるのだろうが。
いい匂いにつられて焼きそば屋を通ると、銀城先輩が焼きそばを焼いている。デジャブ。
「銀城先輩、焼きそば屋がすっかり板について……」
「というか、夏祭りで女子に売れるのを知って味を占めたんだろうね……」
鉄板の上で焼かれる焼きそばは、焼いたそばから女子たちに売り飛ばされていく。
玉の汗を飛ばしながら焼きそばを焼く銀城先輩は、無表情なのに何故か爽やかな雰囲気のイケメンに映る。
女性客で焼きそば屋の前に待機列が出来ており、たいへん混雑していた。
「忙しそうなので声をかけるのはやめておきましょうか」
「そうだね」
私の言葉に曽根崎はうなずき、私たち二人は銀城先輩をスルーして女性客の群れをなんとか抜けた。
しばらく他の教室を覗きながら歩いていくと、一年B組の教室に行き当たった。
曽根崎は渋い顔をしていたが、私は猫春がいたら挨拶でもしようかと入ってみることにした。
「猫春くんのクラスは……美術展示?」
美術の時間に制作した作品が飾られているだけの、簡素な部屋だ。
「僕のクラスは、みんな遊びたいからって出店に積極的じゃなくて」
「で、猫春くんだけ見張りで座り続けるのを押し付けられたと」
猫春は教室の出入り口近くに置かれた机で本を読んでいた。
「まあ、生徒の展示品を盗む人もいないでしょうし、出入りだけ見張ってあとは本を読んでればいいので気楽ですよ?」
「猫春くんがそれでいいならいいですけど……」
猫春は押し付けられた、というわりにはそれほど苦には思っていないようだった。
もともと読書家の彼は座りっぱなしで本を読むことに苦痛は感じない。
おまけに生徒の美術展示なんてわざわざ見に来る外来の客も少ないので、読書に没頭できるというわけで、彼にとっては最高の環境なのだろう。
「ま、一緒についてこないっていうなら俺には好都合だけど。……お、この絵うまいな」
ブラブラと美術展示を眺めていた曽根崎が声を上げた。それを見るとたしかに周りの作品に比べて完成度が高いというか精緻な印象というか、高校生が描いたにしては上手い、といった感じだ。
「あ、それ僕が描いたやつです」
「へ~、猫春くん美術の才能あるんですね」
「あ、ありがとうございます……」
私が褒めると、猫春は顔をほんのり赤く染めて頭をかきながらうつむく。
「栞ちゃん、美術館巡りとか好きだもんね。もうちょっと見ていく?」
曽根崎は何故か機嫌が良さそうに爽やかなイケメンスマイルで訊ねてくる。
「なんか今日の曽根崎くん、寛容ですね。あと美術館巡りが趣味なの教えた覚えないんですけど」
「……栞ちゃんが独り占めできてるから、心の余裕ができてるのかもね?」
「美術館巡りが趣味なの、教えた覚え、ないんですけど」
テレテレしている曽根崎に、容赦なく尋問する私。
「栞ちゃんのことならなんでも知ってるよ?」
「ストーカーこわ」
「それでもなんだかんだ一緒にいてくれるんでしょ?」
「今すぐここに人混みができて曽根崎とはぐれないだろうか」
多分いま、私の目は死んでいる。
「照れない照れない」
「ハァ~? 一ミリも照れてないですけどォ~?」
「それより、早く展示見ないと教室出ちゃうよ」
曽根崎は上機嫌で私の手を引いていく。
「……やっぱり、曽根崎くんと栞さん、仲いいなあ……」
猫春は誰もいなくなった教室で、独りごちるのであった。
幽霊部員とはいえ、一応籍を置いてもらっている漫画研究会にもご挨拶に行こうと教室に伺った。
漫研の教室に入ると、部長が嬉しそうに歓迎してくれた。
「私たち、毎年夏と冬と学園祭の時期に部誌作って頒布してるんだ。よかったら一冊どうぞ」
そう言って、部長は私と曽根崎の分の部誌をくれた。
「へえ~、漫画やイラストだけじゃなくて小説を書いてる人もいるんだ」
漫画研究会というくらいだから、漫画しかないのかと思っていたので意外だった。
「文月さんもこっちの世界へおいでよ……沼は楽しいよ……」
「沼?」
「部長、栞ちゃんに変なこと教えないで」
曽根崎は引きつった笑顔で私と部長の間に割って入る。
「変なことって何さ。創作の楽しさとオタクの沼に引きずり込もうとだね……」
「それをやめてって言ってんの」
部長と曽根崎がギャーギャー騒いでいる間にも、私は部誌を読み進めていく。
末吉高校の漫研は、プロとして稼いでいる部員から絵を描き始めたばかりの新人まで幅広い。
そんな彼女たちが上手かろうと下手だろうと己の心血を注いで描き上げた作品たちが、一冊の本に収まっている。
漫研は陰キャのたまり場なんてバカにされるがとんでもない。彼女たちは創作の喜びに輝いていたし、これもひとつの青春である。
「私、小説は読む側だったから、小説を書くなんて発想なかったなあ」
とつぶやくと、
「乗り気になってるのやめよう? 絶対この人たちBLとか押し付けてくるよ」
曽根崎がうんざりした顔で忠告する。
「びいえる?」
「大丈夫、初心者向けの作品から勧めてどんどん奥へ引きずり込んでいくから」
「部長、そのへんにしてもらえません?」
曽根崎の弧を描いた口の端がピクピクと引きつっているのが見えた。眉間にシワもよっている。
『びいえる』なるものが何なのか気になったが、なんとなく聞いてはいけない気がした。
「ちぇ~、曽根崎くんは彼女を守るとなると必死だなあ」
「いえ、彼女ではないです」
つまらなそうに言う部長に、私は拒絶の意思を示す。
「さっきは彼女でもいいって言ってたのに……」
「嘘も方便って言いましたよね?」
いじけた様子の曽根崎に、私は冷静にツッコんだ。
「あ、そういや生徒会長がこれを配りに来たんだけどさ、要る?」
漫研の部長が思い出したように、私に紙を手渡した。
パンフレットのようだった。
「演劇のパンフレット? へえ……神楽坂先輩と桐生先輩のクラス、演劇やるのか。……見に行きます?」
曽根崎と顔を見合わせる。
「行かなくて良くない?」
「自分の演技を知り合いに見られるの恥ずかしいだろうしスルーしますか」
私はパンフレットを小さく畳んでカバンにしまった。
その後、いつものメンバーが全員シフトを終えて集まった頃、
「栞さん、演劇見ていただけましたか?」
「え、見てませんけど」
「な……何故……」
と、神楽坂先輩が膝から崩れ落ちたのは言うまでもない。
「緋月様、下賤な狂犬には高尚な演劇は理解できなかったのではないかと」
「……そういうことにしておきましょうか」
「こいつら腹立つなあ」
桐生先輩と神楽坂先輩に思いっきり下に見られている。
「やっぱり、栞ちゃんに見てほしくてわざわざパンフレットを無関係な漫研に配ったわけだ? 残念だったねえ、会長。今頃漫研の女子たちは神楽坂×桐生か桐生×神楽坂かで論争中だよ」
曽根崎がからかうように嘲笑った。
「意味はまったくわかりませんが何か嫌な予感がします」
「当方も理由のわからない悪寒がいたします」
神楽坂先輩と桐生先輩はブルッと身を震わせたのであった。
やがて、時刻は夕方の五時を回った。校内放送で『蛍の光』が流れてくるのが聞こえる。学園祭終了の合図であり、「校内に残っている学校と無関係な者はさっさと立ち去れ」の合図でもある。
生徒たちは簡単に教室内を片付けてから、校庭に集合してキャンプファイアの周りをフォークダンスする伝統がある。
「栞さん、よければわたくしと踊っていただけませんか?」
神楽坂先輩は絵本の中の王子様のようにひざまずいて手を差し伸べる。ホント、こういう芝居がかったとこあるよな、この人。
「あっ、ずるいぞ会長!」
曽根崎がブーブーと文句を垂れる。
「自分は踊りは不得手だからな……」
銀城先輩は聞かれてもいないのに首を振る。
「あんたら全員と踊ってたらこっちの身がもたないので、今回は早いもの勝ちということで」
というわけで、キャンプファイアを囲んで、フォークダンスが行われた。
踊っている途中、
「……栞さん、学園祭は楽しんでいただけましたか?」
と、神楽坂先輩が話しかけてくる。
「まあ、それなりに? コスプレも面白かったしいい案だったと思いますよ」
「よかった。……わたくしは、来年にはもうここにはいないものですから」
「……」
神楽坂先輩は三年生だ。こんな優秀な人間が留年などするはずもなく、曽根崎と違って経歴に傷をつけることも許されない。
「思えば、貴女には随分失礼な態度をとったものだと思います。今更謝罪したところでもう遅いかもしれませんが」
「……人は、理解し合おうと思えるのならいつでもやり直せますよ。本で読んだ言葉ですが」
そう返すと、神楽坂先輩は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに目を細めて微笑む。
「……フッ。貴女らしい」
キャンプファイアの火花は、夜空高くへと舞い上がっていくのであった。
〈続く〉
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