非モテ男は轢いてもOK! ~トラックを避けた先にあったのは、リア充ハーレム状態の学園生活…そして俺を異世界に転生させたいクソ女神の殺人計画~

本多凱音

文字の大きさ
32 / 40

31.機械仕掛けの英雄

しおりを挟む
 医務室。学園全体が寝静まったその寝台にて。
 気を失ったメテオラの各部位にライトのような機器を当てていた孤児院の院長。

 バラバラに解体された身体が、関節を切り離された状態で寝かされていた。
 指示に従い手伝った俺ははじめこそ動揺したものの、血の一滴も出ない――配線と鉄の臭いが溢れてきたのが身体ではなく、部品だったと実感してからは、躊躇など一切冷めた。

 あの、外見そとみでは照明装置と見間違えた器具。あれは異世界の産物だった。ドロイド。人型の機械、その点検用に使うらしい。

 別世界の異物には俺は驚かなかった。

 削銘と旧知の間柄の院長が、異世界の来訪者であった事も。
 小さい頃、クリスマスに手編みのマフラーや手袋を編んでシチューを作ってくれた院長が、実はメカニック派だったのが今世紀最大驚愕した事実だった。

 電源が切れたと思しき光が消えた器具を腰元に下げた院長は、苦笑いを交え首を振った。

「異常は、特にないわ」
「とても、無傷には見えないが」

 訊いた削銘とて、院長の元いた世界は、彼女の話で断片的にしか知らなかった。
 知識の差、疑問の量でいえば俺と大して違わなかった。

「そうね……これは、経年劣化よ」
「経年劣化?」
「言うなれば。この点検器具は、ドロイドの修理工だった祖父の形見なの。メテオラ、彼女と最後に会ったのは、果たしていつぐらいだった、かしらね」

 院長は思い詰めた様子で口を濁した。

 思い出せなかったのも、唐突に家族との思い出を縁もゆかりもない俺達に打ち明けたのも、無理なかった。

 院長がこちらの世界で削銘に保護されたのは何十年も前になる。それが具体的にはどの年代を指すかまで前もって話してくれなくても、長い時間。
 それこそ幼い少女が異界の言葉を習得し孤児院を持つまでに至る長い歳月が経った。

 過去を想起させるほどに、昔となに一つ変わってなかった、自分の世界で勇者だった機械仕掛けの英雄を眺め、院長は皺に骨の浮き出た手でその髪を撫でた。

「世界が滅んだ後も、ずっと戦っていたのね」
「開陽君、ボクが君に話したこと、憶えてるかな」
「ついさっきですよ。忘れたくても無理ですって」

 世界が崩壊する直前、女神は現地人を無作為に選んで別世界に飛ばす。大抵は清らかな信仰心を持ち、長生きする子ども。

 自分の存在を維持するために。
 院長は、削銘の出逢いで女神への信仰はとうに捨てたが。

 信仰心が失われた神は力を大幅に弱まる。
 削銘が俺達を保護するのも、信頼され、最低限の信仰を得るためだった。

「ほとほと恥ずかしい限りだよ。結局はボク達、神という存在は、偉大でも高貴でもない」
「生きるために、そんなの元から必要ないでしょうが」

 そう、俺だって肉を食べる。野菜にしたって植物から無理やり搾取した。
 だから女神とおなじ行いで生きている、生きるしかない削銘を責めなかった。

「今、できるのは応急処置だけ。説明が済んだら私は、子ども達のところに戻るわ」

 そして部屋を出る際、院長に言われた。

「久志君のことで、自分を責めちゃ駄目だよ」

 この場で院長が名乗り出るなんて、予想外の展開にならなければそんなの、土台無理な話だった。

 院長に会って、親友も異世界で元気に過ごしているかもしれないと希望が持てた。

「では、手はずどおりに」

 削銘はメテオラの胴部分を運び出した。

 物質からエネルギーを精製する〈擬似ネクタル動力炉〉と、外部の大気を取り込む〈エーテル変換炉〉は、一つを除いて身体の各部に搭載されていた。

 分割した方が修復も早いと、院長は点検前にメテオラを分解したのだ。
 祖父を手伝ったからやり方を思い出せた。ボタンの一押しで少女型ロボットが弾けた時は小鹿のような悲鳴を上げたと昔話を交えた院長は、少女に戻ったような顔で笑い。

 できるだけ離した方が早く修復すると言われた。
 経年の劣化から治癒するのに、一週間。

 胴体と〈ヘファイストスの腕〉は削銘が特別強力な結界内に封じた。

 この〈ヘファイストスの腕〉と呼称される外骨格は、あの性格がプルトニウムのように扱いづらい女神からの賜物とのこと。


 メテオラが英雄になったのは、アンナチュラルが創造した魔法世界に科学が発展した世界となっており、科学と魔法が同時に存在していた。

 外部からの栄養摂取、睡眠を取りさえすれば永久に稼働する〈擬似ネクタル動力炉〉。
 大気の物質を魔力に変換、肉体の強化や武装の生成に使われる〈エーテル変換炉〉。
 
 説明を聞いても、やっぱり一体全体、なにがなんやら。

〈ヘファイストスの腕〉にはあらゆる武器の設計図が記録されており、変換炉と併用し武具の生成、腕そのものも変形することができた。

 だが院長が診た限り、かつての世界での連戦で破損し、本来の性能は著しく損なわれてしまった。

 修道服は防御に特化した鎧だが、これについてもこの世界の設備では修復できず。

 科学が主体となって発展したこの世界に、女神の刺客からもたらされた兵器はオーバーテクノロジー以外のなにものでもなかった。

 残る三本の手足についても、護衛についてない騎士が管理。

 そして。
 首は俺。

 頭脳体であるから二つの炉は搭載されていなかった。
 機械だから魔法で女神がなにかを仕掛けることもまた不可能。
 だったら首だけは自分で見張っておきたいと、俺は反対を押し切って手を挙げた。

 猫を持つように首を抱え上げようとした俺。

 ポニーテールだった赤髪を解かれ、片目が前髪で隠れた表情の乏しい寝顔。

 志願したとはいえ、今にも目が合いそうな機械の眠り顔が内心不気味に感じた。

 それでも万が一目覚めたら、密かに確かめておきたいこともあって、辞退はしなかった。

 ――お前自身の使命を『選ばな』かったせいだ。
 訊きたいこととは無論、気を失う前の言葉について。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...