非モテ男は轢いてもOK! ~トラックを避けた先にあったのは、リア充ハーレム状態の学園生活…そして俺を異世界に転生させたいクソ女神の殺人計画~

本多凱音

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38.萌えちまえ、糞女神

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 削銘と再会を果たし、元の世界に戻る事になったが。

 俺を雲海に呑まれるような感覚が襲い、それがいきなり晴れたかに思った途端、白一色の空間に立っていた。

 飽きあきするくらい身に沁みた空気。ただ一つはっきりしていた。

 久々に実物の女神を見た。夢に視るより眩い光。

「夢で遭うよりケバイじゃん。若作りのつもりか?」

 俺が口を開けば光に熱エネルギーが加わってなお強さを増した。存在感を強める事、こうする事で殺意で脅しているのが肌身に感じた。

 断片化された概念の集合。なにを言っているか俺の頭では理解できなかった。

 アンナチュラルの姿もまた……目を焦がす大きな光が揺れている、ただそれだけ。

 はじめて顔合わせした時の態度とは明らかに異なると、俺はひどく『弱り果てた』女神に思わざるを得なかった。

「お前になにがあった」

 意識、ではなく『意図を持った現象』が〝それは開陽〟に言えることだと発した。

 勇者の資格を失い、平凡な人間の魂になりつつある。天界の神殿、女神の存在を認識しづらくなってきている状態。

 あと数分もしないうちに開陽は、ただのどこにでもいる普通の人間になると、どうやそれが俺が女神を、現実なのに夢ほど強く認識できない理由らしかった。

「そうか。じゃあ清々するね、お前が気に留められない存在に成り下がっていくと思うと」

 信仰心の欠けた発言に対する憤怒、俺ともはや会わなくてもいいことへの充実感。

 意図はまだ辛うじて、だが花火みたいなあの黄色い声は耳に掠りとも、俺には聞こえない。

「お前の最後の挨拶にしちゃあ、趣向に凝っているんじゃないか?」

 物静かでこっちは言いたい放題だし。

 アンナチュラルの思考が変化したように、俺は光を受け、想像した。

 こうしていると所詮は蠅の飛ぶ音。最初に会った時、勇者なんて持ち上げるんじゃなかった。

 女神に選ばれる魂は、生まれた瞬間から特別でないと。

「神でさえ、事は思い通りには運べなかったわけだ」

 力を失った削銘、そんな神を慕った挙句の果てに世界を背負う羽目になった駄女神と自分は違う。

 アンナチュラルの思ったその点に関しては、俺も首を縦に振った。

「その通り、お前は削銘やウカノミタマとは決定的に違う部分があった。大切な人を、自分の力だけでは救えなかった」

 だから俺が救うはずだった異世界が久志に救われた後に、メテオラに俺の殺害を命じなければならなかった。

 いつ吹かれるか予想のつかない笛を渡し片時もそばを離れないよう強制するほかなかった。

「お前の望み通り、俺達は一度滅んだ世界を救った。礼を言う気で、最後に呼んだんなら聞いてやる」

 押し黙った。なんの感情も発してこなくなった。
 いや違う。

 感情がない混ぜになり収拾が追いついてなかった女神。
 こんなに事が上手く運ぶとは予想だにしてなかったのだろう。

 なんだよ、なんなんだよまったく。

 ニート辞めた日にトラックに轢かれかけ、避けたら女神に命を狙われ、結局はその女神の策略からも『本当の神サマ』ってヤツの運命からも逃れることはできず、世界を救っちまったんだから。

 泣きたいのはこっちの方だよ!

「メテオラはこれからも生きていくんだし。俺も、前向きに勇者じゃなくなった人生ってやつを考えてやるさ。大したことはなにもしてない、俺も、お前もな」

 俺は手伝いをしただけだった。

 つくづく性格が終わっている我が儘な女の子が、不器用ながら、ずっと気に掛けていた友達に罪滅ぼしをしようとしたのを。

「そろそろ帰るぞ、本当にこれで終わる気か?」

 謝れとは言わなかった。こいつには俺のこれまでの人生を狂わされたといっても過言ではない。

 親友に再会できたからチャラ? 女友達ができたからまあいい?

 背中を預かってもらう人。こんな俺を好きになってくれた人。

 神様にも大切にされていると知った。

 それをこいつのお陰とはまったくもって思ってなんてやらない。俺をトラックで轢き殺して、異世界に無理やり連れて行こうとしたこの糞女神を俺は一生嫌うと誓っていた。

 強い光に包まれた。

『それなら』せめて謝るくらいはしてみろ、と俺は肩を竦めるように笑った。

「まあいいだろう、やればできるじゃないか……どういたしまして!」

 あーあ。

 俺も男、世界を救う勇者に憧れる年頃の少年であった。

 それなのに、アニメや漫画のようにもいかないし、ライトノベルに小説投稿サイトで見た展開も起こらない。

 もしトラックに轢かれていれば、俺は、この最悪最低糞女を『女神様』と慕う未来を異世界で生きていたのかもしれなかった。

 まあ、そんなの、起こらなくてよかったと心から思える程度には、轢かれなかった過去も、轢かれるのはやっぱり怖いと震えて生きる未来を俺は好きになれたから、女神を前にして今さらなにか思うという事もない。

 最後の最後、アンナチュラルの再会で発見した事実もどうせすぐに忘れる。

 だがこいつがまたいつ俺に干渉してくるか、その時までは警戒のつもりで覚えておくとしよう。

 ――ギャップ萌えって、命を狙われた相手でも覚えるんだ。
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