俺で妄想するのはやめてくれ!-Another-

元森

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7 変態すぎるだろ

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 二人分の視線は執拗だった。まるで服の上から身体を見るような目に、心臓が早くなる。角川を見ていると、ふいに頭がズキンと痛くなる。俺は頭を思わず押さえた。なんだろう。角川を見ていると、心がざわつく。不快感と違う感覚だった。
 俺は、とんでもない事をしてしまっているような気がする。やっちゃいけない事をしてしまっているような…。いや、というより、何か大事な事を忘れている気がしてならない。
 何か、根本的な…角川に関して凄く大切な事を…。
 その答えはあっさりと角川の口から聞かされた。
「スカートをたくし上げるっていう『願い事』は出来ないんだから早くしろって」
 ニヤニヤしながら、言われた言葉に頭の中に電撃が走る。
 ――――俺は、願っただけだよ。栗須と増栄が明日の夜2人きりで一緒の部屋にいるようにって…
 角川の言葉が頭に蘇る。
「あ!!」
 俺は思わず声を上げる。その声に二人目を丸くしている。声を上げた理由―――それは、俺が全ての事を思い出したからだ。
 …そうだ。角川の能力は、自分の『願い』を叶えることだった!
 どうしてそんな事を忘れていたんだろう。これは確かに推測で、角川の口から能力を直接聞いたわけじゃないが、十中八九そんな能力だろう。普通は絶対にこんな重要な事を忘れるはずないのに…。そこまで考えてから、はっとした。
「角川の能力で、それも忘れさせてた…。俺と栗須を会わせないようにするために…」
 俺の独り言に、目の前の角川はニヤリと笑った。栗須は何のことか分かっていないので、首を傾げている。
 俺はゾッとした。背中に冷たいものを押し付けられたように、体をぶるりと震わせた。角川の能力でここまでお膳立て出来るようにできているのだ。どうして要注意人物として、政府の施設に送られていないのか不思議でならないぐらいの強い神通力だと思う。
 俺が忘れていたために、俺は西島に助けを求め、無意味な調査をしてしまっていたのだ。西島に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。西島は何にも分からなかったことを謝ってくれたが謝るべきは俺だった。
 分からないピースが全てはまったが、この絶望的な状況は変わらない。黒髪ロング姿の栗須は目を細め俺の動向を見守っており、逃げられる状況ではない。逃げたら栗須と角川が二人きりになる。それだけは嫌だった。
 ―――お前がやんないともっと栗須に凄い事命令するけど…
「ううっ…」
 そんなのイヤだ―――!
 俺はそんな想いのまま思い切り、スカートを掴みそのまま上にあげた。スース―とした風がパンティに当たる。俺はきっと情けない姿を二人に晒している。命令通り、スカートをたくし上げている姿を…。恥ずかしくて、前なんて見れるわけがない。上を見上げた俺に、二人の歓声が上がった。
「「おお…」」
 まるで風呂敷の中から高値のツボが出てきたみたいな反応だった。
 今俺の息子は反応はしていないけど、下着からのふくらみは隠し切れない。感じる舐めるような視線に、俺は手が震えてきた。み、水着を着ている女の子ってこんな気持ちなのかな?
「も、もういいかよ?! 確認できただろ?!」
 俺が耐え切れずに叫ぶと、角川が言った。
「栗須はまだやってんのに、お前がやめるのはナシだろ」
「ああ…まだ下ろしちゃ駄目だ」
 栗須も角川と同じように慈悲もない事を言ってのけた。栗須ってそんな血も涙もない奴だっけ?!
『エロい…ちんこ、見えそう…見たい…でも角川には見せたくない』
「…ッ」
 頭の中に直接響く、願望と角川への嫉妬に心臓がドクンと高鳴る。
『あ…ッ、つ、角川が見てる…っだめえ』
 甘い俺の声が脳内に響き渡る。毎回思うけど、俺ってこんなに甘い声出してんの?!
「ぅ、あぁ…」
 俺は思わぬ刺激に呻き目を瞑る。パンツの中に手を突っ込まれ、身体が震えた。目を開けると目の前に栗須が息を荒げスカートをたくし上げている。そして下を見れば、もう一人の全裸の栗須が俺の股間をまさぐっていた。
 こんなところで妄想するなんて―――!
 栗須と共感度が高いのか理由は分からないが、栗須の妄想は俺に直接刺激としてやってくるタイプのものだった。それに付き合う前は散々酷い目に遭ってきたが、まさか付き合ってからも…ここでそうされるとは思っていなかった。
 俺のちんこを直接まさぐる恋人の手に翻弄され、現実の俺にも刺激がやってくる。
『角川が見てるのに反応してるなんてエロすぎるな』
『や、いやあ…イっちゃうよお…う、あぅ、っ』
『いいのか? 角川が見てるのにイッちゃって…』
 聞いたこともない栗須の低い声で妄想の俺は翻弄されていた。擦られて限界になった妄想の俺は、甘い嬌声を上げ、今にも精を出しそうな程身もだえている。俺は震えながらその刺激に耐えていた。これじゃあ、反応してパンツの中からはみ出してしまう!
「やめろ!」
 俺は栗須に向かっていつの間にか叫んでいた。瞬間、パンツの中をまさぐっていた手が霧のように消えた。甘い刺激から解放された俺はほっと胸を撫でおろす。
「……ごめん…」
 栗須にしおらしく謝られてから、思わず角川を見てしまった。角川は突然の事に驚き目を瞬いている。
 マズイ、バレた?!
 俺が心底怯えていると、角川は首を傾げ頭をボリボリと掻いている。
「よく分かんねえけど…。えーと、じゃあ次は二人とも向かい合ってそのまましゃがんでくれる?」
「…え?」
 先ほどの事を流してくれたのは助かったが、新たな課題を出され俺は困惑した。困惑した俺に冷静な栗須の言葉が部屋に響いた。
「スカートを上げたままでいいのか?」
「うん、それでいいよ~。その状態で写真撮るから」
「え?!」
 角川の言葉にも驚いたが、栗須の行動の早さにも驚いた。栗須は角川の言う通り俺に向かってしゃがみ込んだ。栗須は立っている俺を上目遣いで見つめており、その表情には「増栄もやらないのか?」と書いてある。
「う…、わ…ぁ」
 俺はカーッと身体が熱くなるのを感じていた。だって、栗須の格好はまるで和室トイレをするときの女子みたいな恰好だったから。しゃがみ込むことにより、パンツがさらにぴったりと張り付き、栗須のモノがはっきりと分かる。俺はその姿を見て、妙に興奮していた。
 スカートをたくし上げた時は感じなかったのに、栗須にエロティシズムを抱いてしまう。それは角川も同じなようで、どこからか一眼レフカメラを取り出し鼻息荒く栗須を激写していた。
「……増栄」
 栗須に上目遣いで名前を呼ばれ、俺はその声に従うようにスカートをたくし上げたまましゃがんだ。瞬間、パンツが食い込み、目を瞑る。向かい合ったままの状態でしゃがみ込んだ俺は、栗須と同じ目線になった。そして視界に入る栗須の反応した股間を凝視してしまう。
 カシャッ、と写真を撮られ俺は我に返る。お、俺何見てるんだ―――!
 いつも無表情な栗須の顔が赤く染まり、息を荒げていることが近くにいるとよく分かった。そしてその細めた目線の先には、俺の股間を見ていることも。
『可愛い…、やっぱりポニーテール似合ってる…リクエストしてよかったなぁ…』
「ええ?!」
 栗須の願望ではない声が聞こえてきて、その内容に思わず声を上げる。その反応に栗須と角川は驚いており、俺はまたやってしまったと肩を落とした。
 
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