アドレナリンと感覚麻酔

元森

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第一章

第一話 9 子供の悲鳴

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  今、たしかに子供の悲鳴のような声が聞こえた。この声の小ささは外からだろうか。
 この声は、子供同士のじゃれあっての声だろうか。
 そういえばと、はたと聖月は気づく。
「子供に会ってない」
 そういえばそうだ。タイミングもあるし、神山は子供は2階にいるといっていたがいくらなんでも一人は会うだろうと聖月は思い始める。
 でも、声が聞こえるのはたしかだ。
 しかも意味心の、悲鳴だ。
 まさか、虐待されているのか?――そんな自分の考えを早とちりだと思いその考えを聖月は打ち消した。
 だが、聖月は見たことがある。テレビで児童養護施設で、おとなの作業員たちが施設の子供たちを虐待されたというニュースだ。
 心が傷ついている子供に何を、そんな惨いことをするのだ。そう聖月の心が痛んだ。
 もし、小向たちが子供たちを虐待していたら、証拠写真をとっておこうと聖月は本気で思っていた。
 こんな怪しい施設で何が起こるか分からないのだから。
 あの小向の暗い目を思い出す。聖月は背筋に冷たい冷気が走って、体が強張った。
 あの男の目は怖いのだ。怖い。
 口が嗤っているのに、眼だけが異様に暗いので本当に笑っているのかが分からない。
 それが、聖月にはなによりも恐ろしい。
 腹の中で考えていることが分からない者ほど、怖いものはないのだ。
 預かってもらっている聖月としては何だが、小向は危険だ――。そう思ってしまっている自分もいた。
 信じられないのだ、あの『コムカイ』という人物が。どうしても。
 ぐるぐる、こんなことを考えたって何も始まらない。
 そう自分を聖月は叱咤し、段ボールの中身を聖月はせっせとなにかを考えないように、物を取り始めていた。
 
 
***
 
 
 
 小向と神山は二人きりで部屋に居た。
 場所は神山が住んでいる部屋である。この部屋は聖月の部屋の真上にある、聖月のワンルームとほぼ変わらない部屋だ。
 家具が大きいダブルベットと、小さなミニテーブル。そしてその隣にある西洋アンティークのような豪華なワイン色のした椅子がこの白い無機質な部屋では目立っていた。
 ここは神山が住んでいる、部屋だ。
 神山にはもう一つの顔があった。大きな声ではいえないようなその顔は、きっと聖月にいったらモラルも何もない!といって怒りだすような職業だ。
 だが神山はこの職業を気にいっていた。
「小向様、どういうことですか?」
「どうしたんだい、神山。君らしくもない」
 小向は堂々と、この部屋で目立っている西洋アンティークのような椅子に座っていた。椅子には草模様の飾りが背もたれ部分についていて、神山も小向もその美しい椅子はお気に入りだった。
 その端正な顔からにじみ出ている、貫禄には神山は何も言えない。感嘆の声をあげたいほどに、小向は堂々としていた。
 そこが、神山の部屋の小向の特等席だ。
 そして、その年とは思えない若々しい手には、ワイングラスを持っていた。そこには赤ワインが注がれていて、彼は芳醇な香りを愉しんでいた。
 ああ、いい香りだ。と小向は呟く。
 神山は、小向に熱い欲望のまなざしでうっとりと見ていた。
 ああ…。おもわず神山は熱い息を吐き出した。
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