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第一章
第二話 12、13 勉強会
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―――暑い。
今の時期が7月の終わりだから、と言えばそれまでだが、やっぱり暑いものは嫌だ。聖月は今はもう夏休み中であるのだが、高校に向かうためバスに揺られていた。一人掛けの座席にのんびりと座って。
高校二年生である聖月はもうそろそろ受験だ。ということなので、2年の夏休み期間になると聖月の学校では『勉強会』を実施していた。
これが結構分かりやすいので…―――というよりは先生に質問できるし、家でダラダラ勉強するよりは身に入るのか、この勉強会はうちの学校では人気だった。バスの中では同じ高校の制服を着た学生が数人いた。きっと目的は勉強会だろう。
聖月の学校は偏差値は平均より少し下だ。言ってはいけないけれど、ちょっと頭が悪い学校なのである。なので、この勉強会で多くの生徒は少しでも偏差値の高い大学を狙えるようにするのだろう。
着ている夏服である白いシャツはバスの冷房で少し揺られていた。少しだけ楽しそうな同級生たちの声をBGMに、学校まで着くまで聖月はつい考え事をしてしまう。
前に家族と住んでいた家はもう清十郎が売ってしまった。
―――早すぎるよ。
聖月がそんなことをいったら、「早いほうがいいだろ」と言われていろんな意味で兄に拍子抜けした。
そのもう売ってしまった家から高校は電車に乗り、またバスに乗ってだいたい40分ほどで学校へ着く。
だが、小向の施設からだとバスを一本乗るだけなので20分ほどで着く距離であった。この行きやすさにはありがたいが小向の施設なのであまり喜べない聖月でもあった。どこか、そんな便利の良さに無性に腹が意味もなく立つ。
昨日、小向の部屋に行ったらいろいろと驚いた。
まず小向の部屋は、本物の一つの家だった。この小向の部屋だけが、格が違っていたのだ。本当の家のようだった。本当にここは児童施設か?と聖月が疑うほどにここだけがすべて違っていた。
聖月は、小向に促されてリビングに二人で入った。
きちんとソファーと木製のテーブルがあって、おまけのように大きなテレビが置いてあった。ソファーがいかにも高級そうなもので少し聖月はドギマギしていた。
小向に、ソファーに座って、と言われたので聖月はそれに従ってふかふかのソファに座った。
当然のように小向は聖月の隣に座って笑った。
「はいこれ。ここの住所」
「あ、はい!」
小向が笑顔で渡したのは小さな紙だった。よく見ると施設の住所が記載されていた。これは兄に頼まれていたここの住所だと、すぐに理解する。
その紙を受け取った聖月はまじまじと、小向の顔を見つめる。まだ数回しか会っていないけれど、目の前の人は特別な人だとわかる。眉は綺麗につりあがっていて、鼻もそれに合わせるように高い。口元も唇が厚くてどことなくセクシーだ。
一見冷たくも見れる綺麗な顔立ちだが、それを補っているのは目元が優しい穏やかな目。
40代と言っていたがそうは決して見えなかった。まだ30代に見えてしまうほどの若々しく、力強いオーラが小向を包んでいた。
そして雰囲気とガタイのよさで、守ってくれそうな…そう社長のような貫禄も感じられる。絶対の自信が彼を一層魅力を上げているのかもしれないと聖月は思った。
小向は、かなり人を魅了する容姿だ。
だから、あの眼が笑っていない薄笑いのような微笑みが小向の印象を悪くしている気がして聖月はならないのだ。
仮面のような作られた笑み。
表情が硬く、あまり表情筋が動かない聖月だがあんな気味悪い笑顔はしたことない。
目がまるで感情を持たない。目が笑ってもいない顔はそうそう人がやっているのを見たことがない。
優しそうな目があの黒々しい目を聖月に向けるたびに、悪寒がするのだ。
今の時期が7月の終わりだから、と言えばそれまでだが、やっぱり暑いものは嫌だ。聖月は今はもう夏休み中であるのだが、高校に向かうためバスに揺られていた。一人掛けの座席にのんびりと座って。
高校二年生である聖月はもうそろそろ受験だ。ということなので、2年の夏休み期間になると聖月の学校では『勉強会』を実施していた。
これが結構分かりやすいので…―――というよりは先生に質問できるし、家でダラダラ勉強するよりは身に入るのか、この勉強会はうちの学校では人気だった。バスの中では同じ高校の制服を着た学生が数人いた。きっと目的は勉強会だろう。
聖月の学校は偏差値は平均より少し下だ。言ってはいけないけれど、ちょっと頭が悪い学校なのである。なので、この勉強会で多くの生徒は少しでも偏差値の高い大学を狙えるようにするのだろう。
着ている夏服である白いシャツはバスの冷房で少し揺られていた。少しだけ楽しそうな同級生たちの声をBGMに、学校まで着くまで聖月はつい考え事をしてしまう。
前に家族と住んでいた家はもう清十郎が売ってしまった。
―――早すぎるよ。
聖月がそんなことをいったら、「早いほうがいいだろ」と言われていろんな意味で兄に拍子抜けした。
そのもう売ってしまった家から高校は電車に乗り、またバスに乗ってだいたい40分ほどで学校へ着く。
だが、小向の施設からだとバスを一本乗るだけなので20分ほどで着く距離であった。この行きやすさにはありがたいが小向の施設なのであまり喜べない聖月でもあった。どこか、そんな便利の良さに無性に腹が意味もなく立つ。
昨日、小向の部屋に行ったらいろいろと驚いた。
まず小向の部屋は、本物の一つの家だった。この小向の部屋だけが、格が違っていたのだ。本当の家のようだった。本当にここは児童施設か?と聖月が疑うほどにここだけがすべて違っていた。
聖月は、小向に促されてリビングに二人で入った。
きちんとソファーと木製のテーブルがあって、おまけのように大きなテレビが置いてあった。ソファーがいかにも高級そうなもので少し聖月はドギマギしていた。
小向に、ソファーに座って、と言われたので聖月はそれに従ってふかふかのソファに座った。
当然のように小向は聖月の隣に座って笑った。
「はいこれ。ここの住所」
「あ、はい!」
小向が笑顔で渡したのは小さな紙だった。よく見ると施設の住所が記載されていた。これは兄に頼まれていたここの住所だと、すぐに理解する。
その紙を受け取った聖月はまじまじと、小向の顔を見つめる。まだ数回しか会っていないけれど、目の前の人は特別な人だとわかる。眉は綺麗につりあがっていて、鼻もそれに合わせるように高い。口元も唇が厚くてどことなくセクシーだ。
一見冷たくも見れる綺麗な顔立ちだが、それを補っているのは目元が優しい穏やかな目。
40代と言っていたがそうは決して見えなかった。まだ30代に見えてしまうほどの若々しく、力強いオーラが小向を包んでいた。
そして雰囲気とガタイのよさで、守ってくれそうな…そう社長のような貫禄も感じられる。絶対の自信が彼を一層魅力を上げているのかもしれないと聖月は思った。
小向は、かなり人を魅了する容姿だ。
だから、あの眼が笑っていない薄笑いのような微笑みが小向の印象を悪くしている気がして聖月はならないのだ。
仮面のような作られた笑み。
表情が硬く、あまり表情筋が動かない聖月だがあんな気味悪い笑顔はしたことない。
目がまるで感情を持たない。目が笑ってもいない顔はそうそう人がやっているのを見たことがない。
優しそうな目があの黒々しい目を聖月に向けるたびに、悪寒がするのだ。
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