アドレナリンと感覚麻酔

元森

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第一章

第二話 20 喜多嶋十夜

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 聖月はその五月蠅い人物がくると、学校に来たなと思うのだがまだその人物は会っていなかった。
 どこか軽いようであるが、心がしっかりとしているので、聖月はその男のことをかなり好いている。と、いうよりはたぶんクラスのなかで聖月と一番仲がいいのは、その男だと思っている。
 それに、その人物の容姿と風貌は目立つものがあるので、一度すれちがって会っていたなら分かるのだが。なんて思いながらドアを聖月は見つめていた。
 やがて急に大人しめの女の子が急に「きゃあっっ!」と歓声をあげたので聖月はその声がした後ろのドアをみた。大人しい女の子がそんな声を出すほどの人物は聖月が知っている限りあの人以外にはない。
 そして見てみるとやはり聖月が考えていた通りの人が居た。
「聖月、おはよう。早かったな」
 その男は色気のある笑顔で聖月に微笑んできた。朝から美形に会ってばっかりだなぁと、聖月は感慨深げに目を閉じた。
 この精悍な顔立ちである男の名前は、喜多嶋 十夜 (きたじま じゅうや)、聖月の友人であるクラスメートだ。
「おはよ、十夜」
 聖月が呼び捨てで、緊張しなくていえる貴重な人物だ。十夜は何も迷わず、自分の席である聖月の後ろの席に向かう。
 クラスの女の子の黄色い声が、こちらまで届いてきている。十夜はそんな声を聞くのは日常茶飯事なので特に気にもせず机に学生鞄を置き椅子に座った。十夜を聖月は座ったまま振り返って、じいっと見つめてみる。
 十夜の顔があった瞬間に、彼がウインクというあざといことをしてきた。聖月は顔を強ばらせ、思わず目を逸らした。目を合わせてする行動がこれか、と聖月は悪態をつきたくなる。
 そしてケイのような鮮やかでうっとりするような、十夜の匂いが聖月の鼻腔を掠めた。
 目の前にいる色男も、ケイと同じく甘い甘美で女性を誘うような香りが十夜から漂ってくるのだ。美形は匂いまでいい。
 十夜が色っぽい目を細めて、聖月に話しかけた。
「そういえば、新しい家はどうよ」
 聖月はその言葉を聞いて少し詰まった。潤也は聖月の両親が事故で死んでしまったことを知っているし、葬式にも来てくれ参加もしてくれた。みっともらしくお焼香の時に泣いてしまった聖月を、そのあと付きっきりで慰め側に居てくれた。
 なのでその時決まった小向の施設のことも十夜は知っているのだ。
 少し考えて、聖月は十夜に話した。
「なんか、気味悪いよ」
 そうとしか、言えなかった。小向と神山は何を考えているのか分からないし、ケイだって何を隠しているのは分かるがそれが何を隠しているのかそれも分からない。
 蒼にいたっては、聖月のことを気になっているというふざける様な不気味なことを言っているのだ。言ってるわけではなくケイに聞いたから定かではないが、もし本当のことだったとしたら結構怖い。
 たまたまだったからも知れないが、施設に居たのがすべて男で、だいたいの子が美形ということも引っかかっていた。
 そのままの印象をいうと、十夜は心配した声で言った。
「気味悪いって、なんだよ。お化けでも出るの、その施設。それだったら怖いわー」
 心配したようにいったが、十夜のいっていることはふざける口調に聞こえた。
「お化けなんてでない。施設は結構綺麗なんだけどさ。なんか、人が怖いっていうかさ」
「なに、聖月虐められてんの? うわ、高2にもなって年下に虐められてんの? 弱すぎでしょ。聖月って体小さいもんなーもやしだしさーもやしもやし!」
「違うから! 170あるから、身長!」
「そこ、怒るー?」
「怒るだろっ! お前は180越えてるからもやしとかいうんだろ!」
 くすくすと馬鹿にしたように、十夜がいったので聖月は睨む。真剣にいったのにからかわれるのは聖月は嫌いだった。
 十夜は怒鳴ってもあまり怖くない聖月を可愛い可愛いといってまた馬鹿にした。聖月は前々から思っていたが十夜は性格が悪いし、かなりのSだと確信していた。
「じゃあ、施設の人がなんか怖いって何? なんだっけ、オーナーのこ、こむなんとかさんだっけ? すげえ、いい人っぽかったじゃん」
「こむなんとかさんじゃなくて、小向さんだから」
 はぁ、とわざとらしく大げさに十夜はため息をついた。聖月のほうがため息をつきたい気分だった。
 頬杖を行儀悪くしている十夜は、ふあ…と緊張感なく欠伸をする。
 聖月は言葉をつづける。
「いい人っぽいけど、目がなんとなく暗いって言うかさ。ずっと笑ってんだよ、その小向さん。その笑顔が作りものっぽいっていうか、仮面みたいにさ…ペターってついてるみたいなんだよ。なんかそれが気味悪いってこと」
 十夜は少し瞬きをして、色香溢れる口角をあげた。
「へえ、そんな人だったんだ意外。そういうやつこそ、性格がヤバいんだぜ? 気をつけろよ、聖月。聖月はひ弱でおこちゃまだから、すぐにバクって食わちまうぞー。どうせ聖月、人見知りでおどおどしてるから、からかわれてんじゃねェの、年下の施設の子にさ」
 からかわれているという言葉に、聖月は図星をつかれた。肯定しかけたが、おこちゃまとい単語に馬鹿にされたような気がしてすぐに反抗した。
「おこちゃまってなんだよ。十夜のほうが17才で俺のほうが年上じゃん」
 ジェスチャーをしながら、口を大きく開け狼が獲物を食らう時の荒々しい様子を表しながらガオガオと、猛獣の真似ごとをして、十夜は聖月を脅してきた。
 こんな馬鹿らしいことをしているのに、色気があって仕方がないのはやはり顔のせいだろうか。

 
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