偽装夫婦

詩織

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男前な女 【笹野智子篇】

一緒にいたい

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あの旅行から1ヶ月、俊二さんから連絡はない。

あのまま終わりなのか

私から旅行誘ったんだし、わかってたとはいえでもやっぱり、実際こうなるとなんともなー

俊二さんの温もりが忘れられない。

理沙は、偽装で結婚した旦那を本気で好きになったことにをやっと認め(随分前からわかってたが)、結局今は惚気話だ。

「それでね、修吾さんが…」

ハートマーク出過ぎだって

確かに見たらかっこよかった。

それに、理沙が和田から暴力振るわれた後の旦那さんのあの顔は最愛の人を守れなかった悔しさと、理沙に対する愛しさがよくわかった。


少し残業して帰ろうとしたとき

「笹野さん」

戸塚君だった。

「空いてます?飲みにいきたいっす」

「この間みたいに泥水にならなければいいよ」



「なんか、最近飲んでなかったら久しぶりだね」

「笹野さんも忙しいそうだったし」

「え?そんなことないけど」

駅前の居酒屋でビールで乾杯からはじまった。

「好きだけど伝えられないのって、俺みたいに浦田さんが結婚して伝えられないのもあるけど、自分で幸せに出来ない不安があって言えない人もいるって知ってます?」

「へ?」

急になんだ?

「笹野さん、何言ってるかわかります?」

「わからん!!理沙のことじゃないの?」

「まじか、遠回しすぎたか」

「だから、なに?」

「俊兄ですよ」

「え?」

戸塚君がビックリしてる。

「笹野さん、俊兄って言ったとたん、顔が乙女になった」

「はぁ?何言ってるの?」

「なるほどねー」

ふふーんと、笑ってる。

「男っぽい人かと思ったら、しっかり女なんですね」

「なによ!それ」

「俊兄、俺が好きになっても俺は日本にいないことも多いから、身は固められないからって言ってます」

あっ、

「俺、はじめ笹野さんのことって知りませんでした。でも、よく恋愛相談で笹野さんに相談する話をしたら動揺してたんで、気づきました。」

私の顔を見て

「俊兄のこと、好きですか?ってか、顔に書いてありますね。もう」

言葉がでない。

「確かに仕事柄、日本にいるのも不定期です。でももしその覚悟あるなら、俊兄のことお願いできませんか?」

「戸塚君、私、俊二さんに会いたい」

「はい」

戸塚君は笑顔で返事した。



ピンポーン

「おせーよ、来るの!急になんだよ、用ってさ、お前明日仕事…」

と言って、ドアが開いた。

「え?」

俊二さんはビックリしてる。

ここは、俊二さんのマンション。

戸塚君がこれから用があるから行くと俊二さんに電話して、それでここに私がいる。

「あ、あの、ごめ、雅也かと思って」 

「いえ、その戸塚君の代わりにきました。」

「あっ」

やられた!って顔にしてる。

「あの、お邪魔していいですか?」

「あ、汚いですけど」

と言って、入れてくれた。

落ち着く間もなく

「私、俊二さんが好きです」

ビックリした顔してる。

「私、俊二さんの側にいたいと言ったら迷惑ですか?」

「で、でも俺はまた週末から2週間ヨーロッパに行きます。そのあとも予定あって」

「日本で貴方を待ってるの駄目ですか?」

「…智子」

ギュッと抱きしめられた。

「寂しい思いさせちゃうし、辛いかもしれないよ。それでもいいの?」

「私のところに帰ってきてくれるなら、それでいい」

あ、俊二さんのキスだ。

情熱的で、優しくって、ドキドキする。

このキスが好き。




「智子、愛してるよ」

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