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あやまち
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「なっ…!?」
すぐに口を押さえる。
この状況は何!?
どうしたっていうの?
ここは…きっとホテル。
そして男性がいる。しかも2人とも裸。
…
ええっ!!!?
冨田課長!?
マジで?やばいでしょ!!
私は音を立てずベットか離れ、服を着て急いで部屋を出た。
ど、どいういこと!?
私は持川葵、29歳の独身。電気メーカーの開発部に所属。
1年前まで恋人はいたが、なんとなく距離が出てしまい自然消滅。同じ会社だが彼は営業だし仕事で接点はほぼない。2つ年上の優しい彼だった。今では新しい恋人がいるなんて噂もある。
多分だが好きな人が出来て距離が出たんだろうな…と思っている。
それからは、結婚願望はあるにしても焦るのは過ぎてしまい、仕事と家の往復だった。
そんな私に今、とんでもないこが…
同じ部の課長、冨田佳樹、多分30前半の方と裸で寝ていたのだ。
なんで課長と?
マンションに帰っても謎が残る。
昨日は同期の加原紀子と飲みに行ったんだよな。なんで!?
記憶がない!紀子と居酒屋で飲み、バーまで行ったのは覚えてる。その先は?
紀子にラインする。
『おはよー!ちゃんと帰れた?ようね』
『えっ?あの昨日どうなった?』
『やっぱり覚えてないか。昨日バーまでは覚えてる?』
『うん。』
『その後、私は永遠独り身なのよ!って言い出していじけちゃってさ…、終電近いから帰ろう!って行ったんだけど、まだ1人でここで飲む!!って言い出してね。それでマスターに話して面倒みとくって言ってくれてさ』
よく行くバーなので、マスターはよく知ってる。60過ぎの落ち着いた男性で昔はハメはずして面倒もみてくれた人だ。
そーいえば、そんな気が…
『深酒するなよ!っとは言ったけど』
『なんか、その辺から覚えてない』
『全く…、マスターにお礼しっかり言うんだよ』
と、返信できたが…
今日が週末の休みでよかった。これで課長と会ったら、混乱しまくるよ!
その夜バーに行き
「いらっしゃい!」
「…」
とマスターに言われ
「き、昨日はども…」
「かなり酔ってたけど大丈夫だった?」
と言われ
「うー」
と、曖昧に答える。
「マスターあのさ、昨日紀子が帰ってから誰かと会ってた?」
と聞くと
「えっ?覚えてないの?」
「…う、うん」
「しばらくは1人だったけど男性が1人葵ちゃんの近くにきてね、会社の上司とか言ってたなー」
きっとそれが課長だ!
「なんで私だけ1人なのよ!ってその人に 愚痴ってたよ」
なにやってるのよ私!!
「そ、それで?」
「これから一緒に飲もうとか言って2杯ほど一緒に飲んで店出たよ!」
「えっー!?」
「葵ちゃん、もう帰りな!とは俺は言ったんだが、信頼出きる人だからとか言ってその男性に飲みに行こって絡んで連れていったよ」
「し、死にたい」
いい歳してなにを…
「マ、マスターありがとう…」
「…」
マスターは何も言わなかったが、何かを察したようで片手を軽くあげた。
「また来るね」
そういって店を出た。
課長をそそのかして飲みにいこーって言ってそして最後はホテルへ…
絶対私地獄に落ちるわ!
だって、だって、課長、既婚者だよ!!
「はぁー」
やっちまった!
週末はもうどんよりとした気持ちで終わった。
「おはようございます」
普通に、普通に…
課長だってなかったことにしたいし、だから大丈夫!ってかお互いなかったことにしたいはず
「おはよう」
課長がきた!!
「「おはようございます」」
みんなに混ざって挨拶をする。
はぁー、今日1日もつかなー
課長の指をみる。しっかりと結婚指輪がはまってる。
また重い気持ちになる。
仕事の通常は、先輩や主任に確認したりすることが多いので私が課長に直接話すことはほぼない。そういう意味では助かってるけど…
「持川さん、ちょっといい?」
「はい」
主任が私を呼びミーティングエリアに異動した。
「急で申し訳ないんだけど、明日から冨田課長についてくれないかな?」
「へ?」
な、なに!?
「先週までやってた作業で、それを客先に説明に行くんだが、持川さんにお願いしたいんだよね」
「待ってください!いつも主任がしてたんじゃ」
「別件があってね…、それとそろそろ持川さんにも全体管理できるようになれると助かるしね、客先とかにも顔を出してその辺も今後対応お願いしたいしね」
いや、指示された作業だけでいいです!と言いたかったがそんなことも言えず…
「とりあえず、よろしく!」
「は、はい」
なんでこんなにタイミングで…
「…冨田課長…、あの明日の客先での打ち合わせ同行させて頂きます。よろしくお願い致します」
顔は見れないよぉーー!
「…よろしく」
ううう、きまずーい!!
その後少しだけ確認事項をして、自席に戻った。
明日だけだよね?これからも…とか?なら、心臓もたないよー
翌日客先に行くまで無言。
でもちょっと見るとやっぱりいい男だよなー、俳優さんみたいな顔立ちだし、渋みがあって面長で鼻も高くって唇は…
「なんだ?」
!?
「あっ、いえ、すいません」
見すぎたぁー!!
客先で打ち合わせをして、思った以上に長引き
「よければこの後どうですか?」
と、先方の方に言われて…現在に至る。
居酒屋で6人で何故か飲んでる。私は冨田課長の隣で…、こんなの全然酔えないって!!
初めての方とばかりなので緊張してる私に課長がいつも間に入ってくれて、フォローが助かる。
それでも飲まされて、3時間してなんとか解散。
「帰れるか?」
「…はい。大丈夫です」
ちょっとよろめいてる私を支えてくれる。ずっとフォローしてくれて、隣に居てくれて、課長を意識してしまう。
「…」
?
「…時間あるか?」
「は、はい」
私達はバーに行った。
本当に軽めのカクテルを課長は頼んでくれて
「…この間」
!?
あの事を話しうとしてる?
「か、課長!あの、あの、すいませんでした!」
私は深々と頭を下げる
「私、まさか…、あんなことになってたなんて…」
「…覚えてないのか?」
「え?」
「あの事も覚えてないのか?」
「…あの事?」
な、なに?なんかあったの?
「あ、あの…、私何かしましたか?」
「…何かは…したが…」
…
カァーと赤くなる。
覚えてないけど、言いたいことは解った。
「本当に覚えてないのか?」
「…はい」
「話したことも?」
「…はい」
何を話したかも全く…
「…そうか」
「か、課長!あの、もし私が失礼なことをしてたら」
「いや、失礼なことをではないが…でも俺は酔ってて覚えてたとはいえ、手放す気はないよ」
「なっ!?」
なっ!?どういうこと?
「か、課長!何を言ってるんですか?」
「その辺もあのときはしっかり話して君は了承してくれたよ」
「…」
な、何を…
「課長、あの…」
「ずっと側にいたいと言ったのは君だからね」
うそでしょ!!
「そ、そんな…、私既婚者の方になんてことを…」
と言うと寂しそうな顔をして
「…そうか、本当に覚えてないんだな」
課長は声が低くなってしばらく何も言わなかった。
何か、何か訳あり!?私はそれを聞いて側に居ると言ったの?
ど、どうしよう…、また聞くべき?…だよね?
「課長、あの、すいませんがもう一度経緯をお伺いしたいです。」
「…」
少し笑みになって
「いや、もういいよ!今言ったことは忘れてくれ」
「…」
「出ようか」
店に出てタクシーを呼ぶ
「気をつけてな」
私だけ乗せて車は走って行った。
あんな、あんな顔されて忘れて!って無理だよ!
私はあの課長の顔をみて落ちてしまったんだと確信した。
それから、度々課長と仕事することが増えて行った。今までの自分だけの作業から管理する側に少しずつ変わり
「わたしが主任ですか?」
部長に呼ばれてそう言われた。
今までの主任は新たに課が出来るのでそこの課長となるらしい。
昇進にはなるんだろうけど、昇進はあまり嬉しくはなかった。
…というのは、同部署に同期が1人いてその人は未だ役職がついてない。
かなり前から敵対心みたいなのがあった。というか私は無かったんだが…、敵対心より恋心があった。
彼の名前は友坂瑛大、30歳。3年前までは2人でも飲みに行くいい関係だった。そしてお互いを認め あい付き合うまでに発展した。
私のが長く片想いをしてたので嬉しかった。でも、それは長く続かなかった。
彼は次第に恋人としてというより、敵対心が芽生えて行ったのだ。
同期では課長になってる人もいた。それなのに私達は役職すらなかった。私は気にしてなかったが瑛大は焦るようになり、当たるようになっていった。それからギクシャクし、いつの間にか他部署の子と付き合っていた。
それからは仕事での最低限しか話してない。
瑛大がまだ役職につてないのに、私が先に…
「私ではなく、友坂君は…」
「あー、彼はまた次回検討するよ」
なんか含みがある言い方に違和感を感じた。
その後私の主任が決まり、離れたところで瑛大が悔しそうな顔をしている。
そんなことよりも、私は課長のことが頭から離れてないでいた。
私達は寝てしまったことは確かで、その前に私は課長の側に居たいと言った。
酔っぱらってたからってのもあるけど、でも課長はきっと私に大事な何かを話したんだ。それを知りたい!
課長の寂しそうな顔、優しそうな微笑み。私の中には十分ってほど悩殺されてしまっている。
「あ、あの…、冨田課長!今日このあとお時間ありますでしょうか?」
勇気を絞って声をかけた。
2人で客先に行った帰り、どうしても課長と話したいと思った。
「…いや、予定はないが仕事以外の話なら遠慮しとく」
「…」
スタスタと歩いてしまう課長。
やばい!完璧に距離をとられてる。
でも、やっぱり聞きたい!
私はその後もしつこく話したいと課長に言った。
「持川さん、もう忘れなさい!俺も反省してるから」
「嫌です!私が課長の側にいるって言った理由を知るまでは離れません」
「…酔ってたしな。真に受けた俺がいけなかったんだから」
酔ってて覚えてないのは私が悪い!けど、どうしても知りたかった。
それからも、2人でもいるときはしつこく時間が欲しい!と言った。今じゃ2人の名物になってる。
「…」
「お願いします!」
「いい影にしろ!」
めげないもん!!だって私は課長に落とされてしまったし、いや…本当は既婚者だからダメだけど、でも経緯知りたい!
1ヶ月もしつこく言ったところで
「…わかったよ!」
やったぁー!!と心の中でガッツポーズ!
やっと折れてくれた。
「ただし、聞いたら解ってるだろうな」
「…えっ!?」
な、なに!?
課長と19時に約束をし、夜になるのが待ち遠しかった。
会社から1駅行った店で待ち合わせをした。
「待たせたな」
「あっ、いえ」
5分ほど遅れてきたけど、私はドキドキでいっぱいだった。
個室の居酒屋で向かい合わせになる。
とりあえずビールを頼み乾杯をする。
「お疲れ様です」
何も言わない課長。
「あ、あの、それで…」
「…」
少し言葉を詰まらし
「…あの日、俺は持川さんに憧れてたとか結婚してなければ恋心を抱いてたとか言われて、ならなるか?って言ったんだ」
「私、そんなことを…」
「でも、奥様がいるしねって言う持川さんに、近くで支えてほしいと言ったんだ」
「えっ?」
「…妻はいる。けど妻が愛してるのは弟なんだ」
「…ど、どういう?」
さらっという言葉に理解ができなかった。
「結婚したときは、確かにお互い好きだった。だが時期に弟と関係をもち、今でも進行している」
「そ、それじゃ、課長は?」
「おれは、形式上の夫だ」
「なんで?なら別れればいいじゃないですか!?」
「俺もそういったが、双方の両親にそれで離婚したら恥ずかしくって表に出れないと…、何度も頭を下げられて今は家に出て1人でいるよ」
「そ、そんな…」
「妻のお義父さんはうちの会社の取締役なんだ。だからそういうので離婚されたらこっちの面子が丸つぶれと言われ、俺自身も会社に居づらくなると言われ、やる気、気力全てがもう疲れた」
なんで課長が…
「課長はそれでいいんですか?」
「…」
「私なら嫌です!そんな環境で生きていくの!」
だから私は側にいると言ったのか…
「俺ももう疲れたよ」
「…じゃあ」
「会社も辞めようと思う」
「…はい」
課長が悪くはないけど…、でもそれが一番楽なのかもって思ってしまう。
「自分の中で個人で仕事をやろうと準備してたのもあるんだ。だからそろそろ準備も出来たし、いいタイミングかもしれない」
「そうなんですね」
課長がいなくなるのは、正直寂しい。
「でも、課長!会社やめても」
「もしかしたら、離婚はすんなり行かないかもだな。でも俺は世間ていを気にする両親、それを承諾してる妻、弟に嫌気がさしてる。もう関わりたくない」
「…なら、課長」
私は1つの案を出した。
「まさか…な」
課長は驚いて私たちをみる。
「お話は聞いてます」
私の隣にいる人が言う。
名刺を差し出し
「弁護士の持川です」
そう、隣に居るのは私の母。
私は母子家庭で育った。
私が物心つく前に両親は離婚。理由は暴力が凄かったことだった。
離婚したくても相手が了承しないとなかなか進まない。そこで家庭裁判所となりかなりの歳月がかかったそうだ。その時母は、こんな大変な思いまでしないと離婚が出来ない環境に不便に思い、突然司法試験の勉強をしだしたらしい。そして6回目の試験で合格。今では離婚の相談が多い弁護士として忙しい日々を送っている。
「私は有名大学とか優秀な経歴はありません。ですが、冨田さんの大変だった事情を紳士に受け止め依頼していただければせいいっぱいやるつもりです」
母の強い目を冨田課長はみて
「是非よろしくお願いします!」
と言った。
それから母は離婚をする方向で双方の両親、奥さん、弟さんとも話し合うことになった。
相手もすぐに弁護士を入れた。向こうは離婚はしないと言い出すが、既に長く別居してること、課長の家で弟さんと奥さんが住んでることが解り、しかも妊娠までしてるという。冨田課長の子と奥さんは言い出すけど、課長は身に覚えがない!っとキッパリ言う。
産まれてからDMA判定してもいいとすら課長は言っている。
「待ってよ!俺たち兄弟だろ!」
弟さんは課長に向かって言ったらしい。慰謝料を請求したからだ。
「俺はもう弟だとは思わない!親も兄弟もいない!」
と言いきったとか。
家庭裁判まで行く話をしたときに、向こうから離婚と慰謝料の承諾があって示談となった。
引き継ぎも多かったのでなかなか辞めれなかった課長。
でもなんとか今日、退職となった。
会社を出た課長に声をかけ
「ありがとな。持川のお陰で新しい人生が歩めそうだよ」
「いえ…、あ、あの課長!!」
「ん?」
「課長のお仕事、サポート必要ですか?」
「…えっ?」
「…だから課長仕事、一緒にお手伝いしたいです!」
「…持川さん」
「おかけていいですか?」
そうすると、優しい笑みで
「待ってる」
その2ヶ月後、私も退職をした。
ピンボーン
「待ってたよ」
自宅兼事務所の家にお邪魔し
「これからよろしくお願いします!」
と言う私に
「何改まってるの?いつも来てるでしょ?」
と言われる。
「だって、これからは従業員として」
「でもその前に恋人同士でしょ」
そう言われ、課長に抱き締められる私だった。
すぐに口を押さえる。
この状況は何!?
どうしたっていうの?
ここは…きっとホテル。
そして男性がいる。しかも2人とも裸。
…
ええっ!!!?
冨田課長!?
マジで?やばいでしょ!!
私は音を立てずベットか離れ、服を着て急いで部屋を出た。
ど、どいういこと!?
私は持川葵、29歳の独身。電気メーカーの開発部に所属。
1年前まで恋人はいたが、なんとなく距離が出てしまい自然消滅。同じ会社だが彼は営業だし仕事で接点はほぼない。2つ年上の優しい彼だった。今では新しい恋人がいるなんて噂もある。
多分だが好きな人が出来て距離が出たんだろうな…と思っている。
それからは、結婚願望はあるにしても焦るのは過ぎてしまい、仕事と家の往復だった。
そんな私に今、とんでもないこが…
同じ部の課長、冨田佳樹、多分30前半の方と裸で寝ていたのだ。
なんで課長と?
マンションに帰っても謎が残る。
昨日は同期の加原紀子と飲みに行ったんだよな。なんで!?
記憶がない!紀子と居酒屋で飲み、バーまで行ったのは覚えてる。その先は?
紀子にラインする。
『おはよー!ちゃんと帰れた?ようね』
『えっ?あの昨日どうなった?』
『やっぱり覚えてないか。昨日バーまでは覚えてる?』
『うん。』
『その後、私は永遠独り身なのよ!って言い出していじけちゃってさ…、終電近いから帰ろう!って行ったんだけど、まだ1人でここで飲む!!って言い出してね。それでマスターに話して面倒みとくって言ってくれてさ』
よく行くバーなので、マスターはよく知ってる。60過ぎの落ち着いた男性で昔はハメはずして面倒もみてくれた人だ。
そーいえば、そんな気が…
『深酒するなよ!っとは言ったけど』
『なんか、その辺から覚えてない』
『全く…、マスターにお礼しっかり言うんだよ』
と、返信できたが…
今日が週末の休みでよかった。これで課長と会ったら、混乱しまくるよ!
その夜バーに行き
「いらっしゃい!」
「…」
とマスターに言われ
「き、昨日はども…」
「かなり酔ってたけど大丈夫だった?」
と言われ
「うー」
と、曖昧に答える。
「マスターあのさ、昨日紀子が帰ってから誰かと会ってた?」
と聞くと
「えっ?覚えてないの?」
「…う、うん」
「しばらくは1人だったけど男性が1人葵ちゃんの近くにきてね、会社の上司とか言ってたなー」
きっとそれが課長だ!
「なんで私だけ1人なのよ!ってその人に 愚痴ってたよ」
なにやってるのよ私!!
「そ、それで?」
「これから一緒に飲もうとか言って2杯ほど一緒に飲んで店出たよ!」
「えっー!?」
「葵ちゃん、もう帰りな!とは俺は言ったんだが、信頼出きる人だからとか言ってその男性に飲みに行こって絡んで連れていったよ」
「し、死にたい」
いい歳してなにを…
「マ、マスターありがとう…」
「…」
マスターは何も言わなかったが、何かを察したようで片手を軽くあげた。
「また来るね」
そういって店を出た。
課長をそそのかして飲みにいこーって言ってそして最後はホテルへ…
絶対私地獄に落ちるわ!
だって、だって、課長、既婚者だよ!!
「はぁー」
やっちまった!
週末はもうどんよりとした気持ちで終わった。
「おはようございます」
普通に、普通に…
課長だってなかったことにしたいし、だから大丈夫!ってかお互いなかったことにしたいはず
「おはよう」
課長がきた!!
「「おはようございます」」
みんなに混ざって挨拶をする。
はぁー、今日1日もつかなー
課長の指をみる。しっかりと結婚指輪がはまってる。
また重い気持ちになる。
仕事の通常は、先輩や主任に確認したりすることが多いので私が課長に直接話すことはほぼない。そういう意味では助かってるけど…
「持川さん、ちょっといい?」
「はい」
主任が私を呼びミーティングエリアに異動した。
「急で申し訳ないんだけど、明日から冨田課長についてくれないかな?」
「へ?」
な、なに!?
「先週までやってた作業で、それを客先に説明に行くんだが、持川さんにお願いしたいんだよね」
「待ってください!いつも主任がしてたんじゃ」
「別件があってね…、それとそろそろ持川さんにも全体管理できるようになれると助かるしね、客先とかにも顔を出してその辺も今後対応お願いしたいしね」
いや、指示された作業だけでいいです!と言いたかったがそんなことも言えず…
「とりあえず、よろしく!」
「は、はい」
なんでこんなにタイミングで…
「…冨田課長…、あの明日の客先での打ち合わせ同行させて頂きます。よろしくお願い致します」
顔は見れないよぉーー!
「…よろしく」
ううう、きまずーい!!
その後少しだけ確認事項をして、自席に戻った。
明日だけだよね?これからも…とか?なら、心臓もたないよー
翌日客先に行くまで無言。
でもちょっと見るとやっぱりいい男だよなー、俳優さんみたいな顔立ちだし、渋みがあって面長で鼻も高くって唇は…
「なんだ?」
!?
「あっ、いえ、すいません」
見すぎたぁー!!
客先で打ち合わせをして、思った以上に長引き
「よければこの後どうですか?」
と、先方の方に言われて…現在に至る。
居酒屋で6人で何故か飲んでる。私は冨田課長の隣で…、こんなの全然酔えないって!!
初めての方とばかりなので緊張してる私に課長がいつも間に入ってくれて、フォローが助かる。
それでも飲まされて、3時間してなんとか解散。
「帰れるか?」
「…はい。大丈夫です」
ちょっとよろめいてる私を支えてくれる。ずっとフォローしてくれて、隣に居てくれて、課長を意識してしまう。
「…」
?
「…時間あるか?」
「は、はい」
私達はバーに行った。
本当に軽めのカクテルを課長は頼んでくれて
「…この間」
!?
あの事を話しうとしてる?
「か、課長!あの、あの、すいませんでした!」
私は深々と頭を下げる
「私、まさか…、あんなことになってたなんて…」
「…覚えてないのか?」
「え?」
「あの事も覚えてないのか?」
「…あの事?」
な、なに?なんかあったの?
「あ、あの…、私何かしましたか?」
「…何かは…したが…」
…
カァーと赤くなる。
覚えてないけど、言いたいことは解った。
「本当に覚えてないのか?」
「…はい」
「話したことも?」
「…はい」
何を話したかも全く…
「…そうか」
「か、課長!あの、もし私が失礼なことをしてたら」
「いや、失礼なことをではないが…でも俺は酔ってて覚えてたとはいえ、手放す気はないよ」
「なっ!?」
なっ!?どういうこと?
「か、課長!何を言ってるんですか?」
「その辺もあのときはしっかり話して君は了承してくれたよ」
「…」
な、何を…
「課長、あの…」
「ずっと側にいたいと言ったのは君だからね」
うそでしょ!!
「そ、そんな…、私既婚者の方になんてことを…」
と言うと寂しそうな顔をして
「…そうか、本当に覚えてないんだな」
課長は声が低くなってしばらく何も言わなかった。
何か、何か訳あり!?私はそれを聞いて側に居ると言ったの?
ど、どうしよう…、また聞くべき?…だよね?
「課長、あの、すいませんがもう一度経緯をお伺いしたいです。」
「…」
少し笑みになって
「いや、もういいよ!今言ったことは忘れてくれ」
「…」
「出ようか」
店に出てタクシーを呼ぶ
「気をつけてな」
私だけ乗せて車は走って行った。
あんな、あんな顔されて忘れて!って無理だよ!
私はあの課長の顔をみて落ちてしまったんだと確信した。
それから、度々課長と仕事することが増えて行った。今までの自分だけの作業から管理する側に少しずつ変わり
「わたしが主任ですか?」
部長に呼ばれてそう言われた。
今までの主任は新たに課が出来るのでそこの課長となるらしい。
昇進にはなるんだろうけど、昇進はあまり嬉しくはなかった。
…というのは、同部署に同期が1人いてその人は未だ役職がついてない。
かなり前から敵対心みたいなのがあった。というか私は無かったんだが…、敵対心より恋心があった。
彼の名前は友坂瑛大、30歳。3年前までは2人でも飲みに行くいい関係だった。そしてお互いを認め あい付き合うまでに発展した。
私のが長く片想いをしてたので嬉しかった。でも、それは長く続かなかった。
彼は次第に恋人としてというより、敵対心が芽生えて行ったのだ。
同期では課長になってる人もいた。それなのに私達は役職すらなかった。私は気にしてなかったが瑛大は焦るようになり、当たるようになっていった。それからギクシャクし、いつの間にか他部署の子と付き合っていた。
それからは仕事での最低限しか話してない。
瑛大がまだ役職につてないのに、私が先に…
「私ではなく、友坂君は…」
「あー、彼はまた次回検討するよ」
なんか含みがある言い方に違和感を感じた。
その後私の主任が決まり、離れたところで瑛大が悔しそうな顔をしている。
そんなことよりも、私は課長のことが頭から離れてないでいた。
私達は寝てしまったことは確かで、その前に私は課長の側に居たいと言った。
酔っぱらってたからってのもあるけど、でも課長はきっと私に大事な何かを話したんだ。それを知りたい!
課長の寂しそうな顔、優しそうな微笑み。私の中には十分ってほど悩殺されてしまっている。
「あ、あの…、冨田課長!今日このあとお時間ありますでしょうか?」
勇気を絞って声をかけた。
2人で客先に行った帰り、どうしても課長と話したいと思った。
「…いや、予定はないが仕事以外の話なら遠慮しとく」
「…」
スタスタと歩いてしまう課長。
やばい!完璧に距離をとられてる。
でも、やっぱり聞きたい!
私はその後もしつこく話したいと課長に言った。
「持川さん、もう忘れなさい!俺も反省してるから」
「嫌です!私が課長の側にいるって言った理由を知るまでは離れません」
「…酔ってたしな。真に受けた俺がいけなかったんだから」
酔ってて覚えてないのは私が悪い!けど、どうしても知りたかった。
それからも、2人でもいるときはしつこく時間が欲しい!と言った。今じゃ2人の名物になってる。
「…」
「お願いします!」
「いい影にしろ!」
めげないもん!!だって私は課長に落とされてしまったし、いや…本当は既婚者だからダメだけど、でも経緯知りたい!
1ヶ月もしつこく言ったところで
「…わかったよ!」
やったぁー!!と心の中でガッツポーズ!
やっと折れてくれた。
「ただし、聞いたら解ってるだろうな」
「…えっ!?」
な、なに!?
課長と19時に約束をし、夜になるのが待ち遠しかった。
会社から1駅行った店で待ち合わせをした。
「待たせたな」
「あっ、いえ」
5分ほど遅れてきたけど、私はドキドキでいっぱいだった。
個室の居酒屋で向かい合わせになる。
とりあえずビールを頼み乾杯をする。
「お疲れ様です」
何も言わない課長。
「あ、あの、それで…」
「…」
少し言葉を詰まらし
「…あの日、俺は持川さんに憧れてたとか結婚してなければ恋心を抱いてたとか言われて、ならなるか?って言ったんだ」
「私、そんなことを…」
「でも、奥様がいるしねって言う持川さんに、近くで支えてほしいと言ったんだ」
「えっ?」
「…妻はいる。けど妻が愛してるのは弟なんだ」
「…ど、どういう?」
さらっという言葉に理解ができなかった。
「結婚したときは、確かにお互い好きだった。だが時期に弟と関係をもち、今でも進行している」
「そ、それじゃ、課長は?」
「おれは、形式上の夫だ」
「なんで?なら別れればいいじゃないですか!?」
「俺もそういったが、双方の両親にそれで離婚したら恥ずかしくって表に出れないと…、何度も頭を下げられて今は家に出て1人でいるよ」
「そ、そんな…」
「妻のお義父さんはうちの会社の取締役なんだ。だからそういうので離婚されたらこっちの面子が丸つぶれと言われ、俺自身も会社に居づらくなると言われ、やる気、気力全てがもう疲れた」
なんで課長が…
「課長はそれでいいんですか?」
「…」
「私なら嫌です!そんな環境で生きていくの!」
だから私は側にいると言ったのか…
「俺ももう疲れたよ」
「…じゃあ」
「会社も辞めようと思う」
「…はい」
課長が悪くはないけど…、でもそれが一番楽なのかもって思ってしまう。
「自分の中で個人で仕事をやろうと準備してたのもあるんだ。だからそろそろ準備も出来たし、いいタイミングかもしれない」
「そうなんですね」
課長がいなくなるのは、正直寂しい。
「でも、課長!会社やめても」
「もしかしたら、離婚はすんなり行かないかもだな。でも俺は世間ていを気にする両親、それを承諾してる妻、弟に嫌気がさしてる。もう関わりたくない」
「…なら、課長」
私は1つの案を出した。
「まさか…な」
課長は驚いて私たちをみる。
「お話は聞いてます」
私の隣にいる人が言う。
名刺を差し出し
「弁護士の持川です」
そう、隣に居るのは私の母。
私は母子家庭で育った。
私が物心つく前に両親は離婚。理由は暴力が凄かったことだった。
離婚したくても相手が了承しないとなかなか進まない。そこで家庭裁判所となりかなりの歳月がかかったそうだ。その時母は、こんな大変な思いまでしないと離婚が出来ない環境に不便に思い、突然司法試験の勉強をしだしたらしい。そして6回目の試験で合格。今では離婚の相談が多い弁護士として忙しい日々を送っている。
「私は有名大学とか優秀な経歴はありません。ですが、冨田さんの大変だった事情を紳士に受け止め依頼していただければせいいっぱいやるつもりです」
母の強い目を冨田課長はみて
「是非よろしくお願いします!」
と言った。
それから母は離婚をする方向で双方の両親、奥さん、弟さんとも話し合うことになった。
相手もすぐに弁護士を入れた。向こうは離婚はしないと言い出すが、既に長く別居してること、課長の家で弟さんと奥さんが住んでることが解り、しかも妊娠までしてるという。冨田課長の子と奥さんは言い出すけど、課長は身に覚えがない!っとキッパリ言う。
産まれてからDMA判定してもいいとすら課長は言っている。
「待ってよ!俺たち兄弟だろ!」
弟さんは課長に向かって言ったらしい。慰謝料を請求したからだ。
「俺はもう弟だとは思わない!親も兄弟もいない!」
と言いきったとか。
家庭裁判まで行く話をしたときに、向こうから離婚と慰謝料の承諾があって示談となった。
引き継ぎも多かったのでなかなか辞めれなかった課長。
でもなんとか今日、退職となった。
会社を出た課長に声をかけ
「ありがとな。持川のお陰で新しい人生が歩めそうだよ」
「いえ…、あ、あの課長!!」
「ん?」
「課長のお仕事、サポート必要ですか?」
「…えっ?」
「…だから課長仕事、一緒にお手伝いしたいです!」
「…持川さん」
「おかけていいですか?」
そうすると、優しい笑みで
「待ってる」
その2ヶ月後、私も退職をした。
ピンボーン
「待ってたよ」
自宅兼事務所の家にお邪魔し
「これからよろしくお願いします!」
と言う私に
「何改まってるの?いつも来てるでしょ?」
と言われる。
「だって、これからは従業員として」
「でもその前に恋人同士でしょ」
そう言われ、課長に抱き締められる私だった。
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