現在の政略結婚

詩織

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通り魔

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類さんも元気になって、今まで通りの生活に戻った。

でも唯一違うのは、食事を準備すること。

朝ご飯は基本準備してるけど、夕飯いらない時はメールで来るようになっていた。

まぁ、お手伝いさんみたいな感じになってるけど、ただで住むのもなんだしね。

「七瀬さんって、なんか変わりましたよね?」

「えっ?」

「彼氏でも出来ました?」

「あー、私も思った。合コンも飲み会もパス多くなったし」

「えっ?そお?そんなことないけど」

「彼氏できたでしょ?」

「出来てません!!」

「じゃ何かあった?」

まぁ、確かにあったけど…

「少し自炊を心がけてるだけ、節約です!」

と、言ってみたが、あやしーと言われてしまった。



今日はメールないし、夕飯の準備をと朝の準備をスーパーで買って帰る。

スーパーからマンションまでそこまで遠くないが…

この日に限ってなぜか人通りが少なかった。

人がいなすぎると、ちょっと怖いなーと思ってしまう。

ん?

え?

何?イヤ、気のせい?

何か後ろにいない?

ちょっと後ろをみたが

なんかあそこ、影あるよね?

まさか…

いや、考えすぎ?

ちょっと、早足で歩く!

足音が聞こえる。

やっぱり早足だ。

うそ!?なに?付いてくる

私は走り出した。

ちょっと、何よ!

後ろの足音も走り出した。

完璧にやばいと思って、必死に走ると、腕を掴まれた。

後ろを振り向くと、ナイフを持った男性が…

恐怖のあまり声が出ない。


た、類さん!!!

「おい!何してる?」

知らない男性が後ろから声かけてきた。

ナイフを盛った男性は、私をひっぱり、私の首に腕を巻き付け、片方にはナイフを私には向けて

「どけ!!」

と、男に向かって言う。

「警察ですか?」

つかさず、その男性は警察に電話する。

「おい!切れ!切らないと、コイツ指刺すぞ!」

男性は

「わ、わかった。」

と言って、耳からスマホを離した。

「どけ!ってのがわからないのか?」

もう、そのやりとりを聞いてるだけで、身体が震えて、身動きができない。

「おい!お前、こっち歩け」

私を引きずるように歩く

「しっかり、歩け!刺すぞ!!」

そう言われても脚がもつれて歩けない。

私、これでもしかして死ぬの?

目の前の男性はじっとこっちをみて動けない。

この人が類さんならよかったのにと少し思ってしまった。

その男性が一瞬頷いたと思ったら

「ウッ」

と、ナイフを持った男性が声をあげた。

そのスキに前にいた男性が私を引っ張る。

後ろを見ると、類さんがナイフを持った男性の上に跨って抑え込んでいた。

そのスキに

「場所は…」

と、住所を言う男性。

耳からスマホを離しただけで、通話は切ってなかったようだ。

「類さん!!」


「梨衣子ちゃん、まだこっち来ないで!」

と言うと、もう一人の男性も一緒にナイフを持った男を抑えつけた。

少しして、パトカーがきて

その男が引き渡された。

「梨衣子ちゃん、怪我ない?」

「は、はい」

「ありがとうございました。助かりました」

と言って、類さんは警察に電話してくれた男性に頭を下げた

「いやー、よく合図で解ったなと感心しました。」

「あ、あ、ありがとうございました」

私もその男性に向かって挨拶をした。

「お二人はお知り合いですか?」

と、男性は私と類さんを見て言った。

「あっ、はい。つ…妻です」

えっ!?

類さんの口から妻って…

「あー、奥様でしたか。よかったですね。旦那さんの冷静な判断凄かったです」

私は何も言葉が出ず、とりあえず頭を下げた。


その後警察から事情をきかれ、後日警察署に来てもらうかもということを言われて、連絡先を言い、帰宅することになった。

「梨衣子ちゃん、行こう!」

私は平常心のつもりで歩いていたけど

「あっ、やだ、もう」

手も足も震えてた。

それを見た類さんが

「家までもう少しだから」

と言って、手を繋いでくれた。

少しだけ落ち着いて、私の歩幅に合わせてくれて

やっと、マンションについた。

部屋に入ると、緊張感が一気に溶けて涙が一気に出てしまって

それを見た類さんが

「怖かったな、ごめんな。」

そう言うと、声を出して泣き始めてしまった。

それをみて類さんが

「もう大丈夫だから」

と言って抱きしめてくれた。

ビックリしたけど、今はそれが安心して、涙が止まらなかった。

泣き止むまで、ずっと抱きしめていてくれて

「あ、あの、すいません。」

と言うと

「いや、よく頑張ったね!凄いよ、梨衣子ちゃん」

抱きしめた腕を緩めて私の顔を見た。

「涙でぐちゃぐちゃだ」

と、類さんに言われて

「あっ」

こんな、ブサイクな顔を…

「余計ブサイクな顔を見せてしまった」

と言うと、

「そんなことないよ!可愛いよ」

そう言ってくれた。

…けど、そんなわけない!

私が可愛いと思ったことも言われたこともないし

「いや、そんな気を使わなくっても」

「ほんと可愛いよ」

やっぱり、イケメンは言うことも違うなっと、思った。

買い物はしたけど、気持ちがおちつかないので、夕飯は出前をとって、類さんがずっと話しかけてくれた。

そのとき、はじめて類さんのことを知った。

「そそ、小学校のときは、県大会まで行ったんだけどねー」

水泳が得意で県大会まで行ったという話をしていた。

「でも、やっぱり上位ってなんか既に決まってるのな。なんつーか、幼稚園入る前から英才教育受けてたとか、そんな感じの…、やっぱり形とかそういうのがなんか違うんだよなー」

「でも、そこまで行けるってなかなかないですよ」

「そお?まぁ今でも泳ぐのは好きだけどね、梨衣子ちゃんは?」

「私は全然です。25m程度です。でもきっと今はそこまで泳げないと思います。」

「そうなの?」

「はい。あまり泳ぐこともないし」

「そうなんだ」

事件のことを忘れようとして違う話で繋ごうとしてる類さんがいて、それが嬉しかった。

お風呂に入って、寝ようと自室に入る。

ベッドに入ると、怖くって寝れない。

どうしよう…怖い、

明るくして寝るかな。

色々考えたけどやっぱり寝付かず、部屋を出て、飲み物を取りにリビングに行った。

「類さん?」

「あー、ちょっと仕事の書類をね」

いつもなら自室でしてるに、わざわざリビングで?

もしかして

「もしかして、類さんあのー」

心配してくれてるの?

私が少し涙目になってるのを見て

「俺に何か出来ることある?」

「え?」

「俺に何か出来ることあるなら、何でもするよ」

どっかで、聞いた…

「そうやって、俺が病気のとき、梨衣子ちゃんが言ってくれた」

「あ、」

「言って!何でもするから」

「でも、ご迷惑…」

「いいから!言って!!」

「そ、側に…側にいてほしい。1人怖い」

そう言うと、類さんは近くにきて抱きしめてくれた。

「大丈夫!側にいるから」

「すいません」

「謝らないで!」

類さんは、優しく抱きしめてくれて自分の部屋に連れてきた。

フッと笑い

「何もしないから…、一緒に寝よう」

私は類さんに抱きしめられながら、一緒にベッドに入った。

緊張してドキドキしてたけど、しばらくしたら、類さんの体温がすごい安心して、居心地がよくなってしまった。

さっきまで不安だった気持ちが薄れていき、いつの間にか眠ってしまった。



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