幸福を運ぶ女

詩織

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幸福を運ぶ女になった理由

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本当は、結婚して幸せな家庭とか夢見たりしてた。

東野舞子とうのまいこ、29歳。設備会社の設計を担当してる。

現在独り身。幸せな結婚を夢見てる。ちなみに実家通い。

親の勧めでお見合いを考えたが、今は乗り気になれない。

それは、過去付き合ってた男のあの一言が原因。

この会社は短大を出て就職したので9年目になる。

その間、社内恋愛を3回経験した。

そして最後の1人の人が

「俺、東野舞子と付き合ってるんが、あいつアゲマンなんだよ。だから付き合ったんだがそりゃもう…」

同僚の男性と休憩室で話してるのを聞いて、ショックを受けた。

今まで付き合った3人とも難関な出世。5%しか受からない資格、宝くじ当たったなど、幸運なことばかりだった。

学生時代も付き合ったことあるが、その彼も誰もが無理だと言われてた国立大学を一発でクリアし、大手商社に勤務してる。他にも親の難病が克服できたりと、それはもういい事ばかりだった。

ただ私自身には全く何もない。

ハッキリ言って見た目はいいほうではないと思う。

可愛くもないし美人でもない。まぁ彼氏が居てもおかしくはないかも?とは思う程度ではあるかもだけど、モテるとかそういう経験は全くない。


だが

「俺と付き合いませんか?」

そういう噂をかぎつけて告白する男性ばかりだ。

男性恐怖症になりそうだ。

「舞子、お見合いしないよ。社内とクソ男どもなんかもう相手にせんで。そっちのがいいって」

同僚の高田樹理たかだきりが言う。

今1番心を許せるのは樹理くらいだ。

樹理は大学時代から付き合った彼と1年前に結婚した。

妊娠するまで仕事はしたいと思ってるようで、しばらくは子供より仕事をしたいと言ってる。

お見合いも話はあるんだけど、何かいまいち乗り気がなぁ…。

結婚したいけどどこか不安がある。



最近の仕事帰りは、決まったところに立ち寄ることが多い。

会社の隣の駅のカフェで1~2時間まったりすること。

最近はスマホで推理小説を読みながら、この時間を過ごすことが多い。

このカフェは森の中ってのがコンセプトらしく、中に入ると木の家と思わせる内装で、自然の中にある建物をイメージして作られてる。

夕飯が遅くなるけど、この時間は私にとって大事な時間。

今日も決まった席が空いてたので、そこに座ってスマホで小説を読む。

犯人は3人考えていて、そろそろ誰か解ることだとは思うので今日は楽しみだ。

スマホで小説を見ようとしたら

「あれ?東野さん?」

と、声がかかった。

声かかった先を見ると

「えっと、吉本君?」

確か、営業部の吉本信哉よしもとしんや?じゃなかったかな。

2~3期下だったはず。

営業の成績もいいし、顔もいいし、スタイルもいい。

そりゃモテるわなっていう分類の人。

「ここ、座っていいですか?」

「え?」

他席あいてるでしょう?

「いや~、東野さんと話してみたかったんですよ」

と、ガンガン来る。

「東野さんの図面は評判いいし、どんな人が作ってるのか話してみたかったんです」

私の担当した設計にあたると、大当たりなんて噂も出て今まで難しかった交渉もうまくいったなんてこともあったりで、私が担当だと喜ぶ人も社内にはいる。

なので社内でも樹理以外とは仲良くしてない。

「はぁ」

この人もこういう分類か...

なんとなくウンザリしていた。

「図面なんてね、誰が担当しても一緒だと思ってたんです。でも東野さんはどっか気配りがあるんですよね。ここ後で確認しなくっちゃって思うところも既にわかってる。そんな感じが見て取れました。と言っても俺営業なんで詳しくわかりませんけどね」

と言って、笑って話す。

吉本君は、ガンガン喋りだして私は適当な相槌をうった。

小説読みたいんだけど…

1時間くらい話して「ご飯食べてなかったらどお?」って誘われたが、お断りしてカフェで解散した。
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