幸福を運ぶ女

詩織

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挨拶

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その週末、どうしてもお見合いの話を止めたいと言い出し

「吉本信哉と言います」

実家に挨拶に行った。

「ちょっと、聞いてないじゃない」

お母さんもびっくりしてる。

私だってちょっと前まではいなかったし

「なんで言わなかったのよ」

「なんでって」

今週のはじめはお見合い考えてたし、言うも言わないも...

「ご両親様には突然驚かれたかと思います。舞子さんとは本社時代にお付き合いをさせて頂きました。私の我儘で別れることになったのですが、その後も私が舞子さんのことを忘れることが出来ず最近B支店に転勤願いをだし舞子さんを追いかけに行きました。ほんとお恥ずかしいです。まだ舞子さん自身が私に心を許してないで正式なお付き合いにはなってませんが、お見合いの話が進んでると伺いましたので、なんとしても止めたく恥をかいてでも伺った次第です。」

「ちょっ」

ちょっと、そこまで言わなくっても

お父さんもお母さんもびっくりして

「まぁ舞子のことそんなに想う方がいたなんて」

「1つ間違えればストーカーにまでなってしまいますが」

と苦笑し

「でも舞子さんの嫌がることはしません。本当に嫌なら諦めます」

そう言って、頭を下げ

「お見合いの件は待っていただけないでしょうか?」



「お前はどうなんだ?」

お父さんに言われた。

正直まだよくわからい。信哉がそこまで言ってくれるのはうれしいけど、その先にまた捨てられる何かがある気がして。

私はそんな恋愛しかしてないから

「まだ...わからない」

ここまで連れてきて、こんな答えって悲しいけどこれが本心だ。

「でもうちにまで連れてくるくらいだから、全くその気がないってことはないんだろう。ゆっくり時間かけて向き合ってみなさい」

「うん」


帰り際に

「まぁ吉本さんかなりのいい男んだからね、俳優さんかと思ったわ。いい男すぎると不安もあるからね、お母さんも昔、モデルの人と付き合って不安だったことあるのよ」

と、お母さんが近くにきて私だけに言った。

何娘にそんなこと暴露してるのよ。

とはいっても、お母さんが言うことも満更でもない。

実際信哉が、女子社員にご飯食べませんか?って誘われてるのを見たという人もいる。


慎重も185cm近いし、スタイルもいい、顔もモデル並み。それでモテないわけない。

私だってあんなジンクスなければ相手されないし。



「あんなこと言わないでも」

と言う私に

「間違ってないでしょ?」

それはそうかもだけど

「じゃ結婚します!って言ってよかった?」

「それは...」

「舞子がどれだけ傷ついて、どれだけ人を信用できなくなったのも理解してるから。俺もその1人だったし。だからゆっくりでいいから俺のこと考えてくれればいいから。でもモテるから周りを固めといたけどね」

そう言っていたずらっぽく笑う。

私がモテるわけないのに何言ってるんだろ。

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