犠牲の恋

詩織

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あのメモ帳を丁寧に作った男性が忘れられない。

はたからみたら消耗品。

でも、丹念に気持ちを込めて作られてる気がして、自分がものをあまりにも大事にしてないことに恥ずかしくなってしまった。

企画書は勿論何も書かれてない。

でも、自分の中で何かを感じたいと思うようになっていて…



久々にバーへ飲みに…

森沢課長のあのとき以来かな。ここ来たの

前みたいな無茶な飲み方はせず、飲みながらゆっくりとしている。

前はもう全てが嫌になっていた。

今は仕事のことばっかり考えてる。

こんなに変わるものなのか。

と言っても、通った企画はないが…


「ねぇ、1人?」

!?

隣に図々しく座ってくる男性。

森沢課長みたい…

「1人だけど、1人がいいの」

「そうなの?でもさ俺と飲まない?2人のが楽しいよ」

「…」

「悪いけど他あたって!」

「ええ!?いいじゃん!」

その後も1人で飲みたいのに邪魔されて

「ほんと、もういいから!」

しつこい!!

もういいや!となって、諦めて店を出ようと、カウンターの席に立った。

「なに?ほか行くの?一緒に行こうよ!」

え!?付いてくるの?

「帰るから来ないでくれる?」

「ええ?そうなの?じゃ一緒に自宅に…」

あほか!!

睨みつけて

「いい加減にしなさい!ナンパ野郎!恥ずかしくないの?」

イライラしていったら

「なんだよー!1人じゃ寂しいと思って相手しようとしたのに」

店を出てスタスタと歩き出した。

ねぇー!!と付いてくる。

勘弁してほしい。

腕を掴まれて

「ふざけんなーー!!」

と、叫んでしまった。

「な、なんだよ…」

なんでこんなにしつこいの?

「あんた、不倫女なんだろ?尻軽ってことだろ?」

「…は?」

なに、こいつ…

「まぁ、いいや。もう少し着いてくると思ったわ」

と言って居なくなった。

同じ会社の人?

なんなの!?それ?

日高課長がそう言ってるってこと?



あまりのゲスすぎてがっかりした。

もう忘れよう…

腹も立つけど、今は仕事のこと考えよう。

最近はネットなどで興味のあるもの、ほしいものなど色々調査することが多くなった。

帰りには店に寄って今は何がメインで置いてあるか?なども見るようになった。

あっ…

付箋をみて何か思い出した気がする。




「どうでしょうか?」

「…」

沈黙が怖い…

出直してこい!!って叫ばれたほうがまだマシだ

「…」

何か言ってぇー!!

「甘すぎるな」

といって、企画書をバシッと机に置いた。

やっぱりダメか…

「もう少し詰めろ!非現実なところがある。」

「…えっ?」

これって…

「この方向でもう少し、具体的にしろ」





「おい!どうした?」

企画が通ったの?

うそ!?

「…い、おい!笹山!!」

「うぇ、あっ、はい!」

「聞こえたのか?」

「あっ、はい。もう少し具体的に書いてみます」

席に戻り、自分でもビックリしている。

ただの付箋。

でも立体的に動物の絵がある。

それなら、他にもあったけど、付箋といえども大事なところは他の人もみたいかも…と思ったので、貼り付ける付箋と伝言で1言書いて見せあえる付箋と二通り使える付箋を考えてみた。

「笹山さん、よかったですね」

隣に座ってる人に言われて

「…はい!」

「ずっと頑張ってたもんな」

前の席の人にも言われた。

「…は…い」

なんか泣きそう。

総務でのあの冷たい空気と違い、こういう風に言われたこと涙が出そうだった。

少しづつ具体化はするもののダメ出しも多い。

でも自分の考えたのが動いてるのが嬉しい。

総務の仕事ではなかった嬉しさがあった。


「えっ?あの…」

「何言ってるんですか!お祝いですよ」

企画の人たちと飲みに行くことに

「俺も初めて企画通ったときは先輩にこうやって祝福してもらったな」

「あー、私も。こういうのって無意識に伝統だよねー」

「うんうん」

「総務からくるって聞いたときは驚いたけど、凄いガッツあるんでビックリしました」

「私も…、長年総務に在席されてたんですよね?仕事内容全然違うし、どうなるんだろ?って思ってましたよ」

そう言いながらお酒を飲む。

あの噂で私のこと関わりたくないって人多いのに…

「あ、あの…、私って色々噂もあるじゃないですか…、それなのに…」

皆一気に沈黙してしまった。

って、なんで私このタイミングで言ったのよ!バカすぎない!?

「…確かに色々噂はあるよね」

「まぁ、俺も歌舞伎町で女と歩いてたら、キャバケラの常連とか噂はされたし」

というと、一気に皆笑いだした。

「あれウケたわ!結局風俗の常連とかまで噂になってたもんな」

「勘弁してほしかった」

「私もあったよ!痴漢にあったんだけど、それを警察に届けたりしたら、痴漢と最後までやったとかそんな噂…」

ちょっと、辛そうな顔して女性は言った。

「あれは酷かったな。ほんとそういうの噂好きのやつ居るからな」

「うん。まぁそういうわけだから、噂なんてほっとけばいいのよ」

心からほっとした。

こうやって受け入れてくれる人たちもいるんだ。

長い間あの会社いたのに、私どこ見てたんだろ?

「あー!遅いですよ課長!先乾杯しましたよ」

「おっ、そうか」

森沢課長が来たのはビックリ。

「課長は笹山さんの隣ですよ」

と、皆が私の隣に誘導する。

「あ、あの、課長色々ありがとうございます」

そう言ってお酌をした。

「ありがとうってなんだ?まだまだこれからだぞ」

「はい!がんばります」

隣は緊張したけど、周りは和やかで楽しくってこの雰囲気がとても居心地がよかった。



「じゃ、また明日」

「お疲れ様!」

「お疲れ様です!」

明日も仕事なので一軒目でお開きとなった。

私だけ方向が違うので1人で歩いていると

「笹山!」

あっ、課長…なんだろ?

後ろから声を掛けてきた

「このあと少しいいか?」

「えっ!?」

一緒に行ったのは課長行きつけのバーのようで

「まぁ、前みたいに歩けないほど飲むなよ」

と言われてカクテルで乾杯した。

「課長、あの…」

「お前が思ってる以上にガッツがあったんでビックリしたよ!だが筋があるかどうかは話は別だ」

「…はい」

それは、ぶっちあけ才能がない…と言いたいのか?

「笹山の努力次第になる」

「…はい」

どっちもどっちってことを言いたいのか…

「今はとにかく頑張るしかないので、今後も色々ご迷惑お掛けしますがよろしくおねがいします」

軽く頭を下げる

また激が飛ぶかと思ったら

フッと笑顔になった。

それを見てドキッとする。

眼鏡の奥の眼が本当に優しくって

「とりあえず、環境は変わったんじゃね?」

「はい」

噂よりも仕事で頭いっぱいだった。

「ありがとうございました」

「…」

何かいいたそう

なんだろう?

「笹山!」

「はい!」

「…いや、いい。何でもない」



「とりあえず…、まだまだだ。これからだ」

「…はい」

結局、喝を入れるために誘ってくれたっめことか

まぁ、私がまだまだなのは解ってたけどね

その後、少ししてお開きとなった。

それから、2ヶ月して商品化までになった。

他のも考えたらもう一点企画が通り、並行で進めてる。


新しい企画とは別に今までのを改善するというのもあって、そっちも考えることに…

もうやることいっぱい!!


あれ?麻美?

フロアと別の方に、非常階段の方に向かってる。

「あさ…」

声を掛けようとして止まった。

あれ?あの男…

覚えてる。右頬にほくろ…

バーでナンパされた尻軽女って言った男だ。

なんで麻美と!?

「紹介さしてくれさあの女、あんまたいしたことなかったよ!ホテルにもホイホイ付いていくし、なんつーか喘ぎ声も下品だしさー、もう少し楽しめる女といないの?」

…なに?これ…

「何人やれば気が済むのよ!本当にあんた好きねー」

「あの課長不倫女?お高くとまっちゃってさ、あーいうのも面倒だし、適当にさやれてあとくられなく上玉みたいなのがいいんだけど」

「そう簡単にいるわけないでしょ!?」

静かに離れる。

麻美かわ言ったんだ。

噂も確かに私が日高課長に勢い余っててのもあったけど、不倫とかまでは正直すぐ噂があったし、まさか…と思ってしまう。

長い間何でも話して信用してただけに、ショックが強すぎた。

その後麻美とはチャットの連絡がくる。

仕事どお?とか新しい出会いあった?とか

仕事が忙しい返事してそれ以上は会話しないことにした。




やっと私が企画した付箋が本日発売。

当日は商品が並ぶ店に行ったりしてソワソワしていた。

結構目立つ所においてくれる店もあれば、他の付箋と同じ棚に置いてあるのとあった。

あっ!買ってくれた!!

と見ると、40代くらいの男性だった。

本人が使う?それとも…

聞きたいけど…

他の店でも意外に男性の購入が多かった。

やっぱり本人が使うのかな?

モニターさんからも男女問わず使えるような感想も貰ったから、前向きに考えよう。

社に戻ったときは21時だった。

「はぁ~~~」

皆帰ってるわ!

さて、軽く報告書だけまとめて…

コツ

頭に何か当たった。

振り返ると

「課長!」

「ほら!」

缶コーヒーを渡された

「あ、ありがとうございます」

「サクッと書いて続きは明日でいい」

「はい!」

30分くらいで終わらせ、帰ろうとしたとき

「飯でもいくか?」

「え?」

「明日休みだから、少しは遅くなってもいいだろ!」

「…はい」

二人で社を出て、駅の反対側にある小さな店に入った。

「おう!いらっしゃい」

「こんばんわ!空いてます?」

「あー、ちょうど奥空いたよ」

「何?彼女かい!?」

「…部下ですよ」

「なんだ!残念。ビールでいい?」

「はい。あといつもので」

「はいよー」

馴染みのある店のようで、いつもので通じてるのが凄い。

ビールでとりあえず乾杯をした。

「笹山!」

「はい!」

「仕事は成果が出れば言うことない。企画だからセンスもある。才能もあっほうがいい」

「はい」

「…ただ」



「頑張りすぎだ!お前見てるといつ倒れるかと心配になる」

「え?」

「もう少し力抜け!それと…」

「…はい」

「もう少し周りを頼れ!俺を頼れ!」

「…」

「わ、私…」

力抜けと言われて一気に涙が出てしまった。

「お、おい!」

「すいません。なんか少し気が楽になって」

「何かあったのか?」

「え?」

「最近がむしゃらに仕事するから」

「…」

「話聞くから…日高さんのことか?」

「…いえ」

「じゃなんだ?」

「…」

「何かあったんだろ?」

「…大丈夫です」

「話せ!」

!?

警察の取調で吐くんだ!(取調受けたことないけど)と言うくらいの勢いで言われたのでビクッとしてしまった。

「凄いくだらないことですよ」

「…話せ!」



勢いに負けて麻美のことを話しはじめた。

「…」

話し終わったあと、何も言わず日本酒を飲んでし。って、いつから日本酒になってた。

「…友達は選べ!」

「…はい」

「あと、男も選べ!」

「…はい」

何も言えない。

「…お前には、話せる友達、頼りになる存在が必要なのかもな。今のお前はすぐポキっと折れそうだ」

「そ、そうですか?」

「…だから、俺を頼れ」

「へ?」

それって仕事以外ってこと?

と聞こうとしたが、まぁそれはないだろう…

「課長、ありがとうございます!でも大丈夫です」

「お前な…」

はぁーと言いながら返された。

「少しは察しろよ」

そか、部下に頼られるのも仕事か…

「…すいません。じゃ時々相談させていただきます」

「そうじゃ…」

と言って私の顔を見るが

「…わかったよ!ちゃんと言わないと解らないようだな」

何したんだろ?私。

「あの、まだまだ至らないこ…」

「そうじゃない!」

!?

時間を見るともう24時近かった。

「出るぞ」 

そう言って店を出た。



「あの…、すいません。ご馳走になってしまって」

二人で駅に向かうと、急に足を止めた。

「解らないようだからハッキリ言う。頼れってのは側にいるってことを言いたい。仕事の関係でない!友達でもない!それ以上の関係ってことだ」

「…へ?」

な、何言ってるんだ?課長は

「前は恋人もいたが今はいない。二股とかそんなことはしない。今はフリーだ」

「えっ、えっと…」

「…まだわからないのか?」

いや、わからないってか、理解出来ない。

「率直に言うが、今夜帰したくない」

!?

私がボーとしてると

「うわぁ」

腕を引っ張られた

「か、課長!!」

そして腕の中にすっぽり入って

「…好きだ」

!!?

駄目だ。今の状況も理解出来ないし、課長の言った言葉も理解出来ない。

「…聞いてるのか?」

しばらく何も反応しない私に声を掛けた。

「だ、だって…、ありえない」

「何が?」

「課長が私を」

「ありえないとは?俺が誰好きになろうが勝手だろ?」

「そうですけど、その相手が私って…、私仕事も全てにおいて迷惑かけてるし、ましてや不倫女…」

「自分で言うな!」

うっ…

「俺がすべてを受け入れる。だから俺の側にいてくれないか?」

手を差し伸べられ

そして顔を見られて







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