恋人契約

詩織

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ありがとう

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意識が朦朧とする。

「美鈴?」

お父さん、お母さん、弟が近くにいた。

「美鈴、頑張って」

泣きそうな顔で言う。

私はもう話せないかもしれないので最後に言いたいことを言った。

「お母さん、産んでくれてありがとう」

「やめなさい!そんなこというの」

「お父さん、親不孝でごめんね」

正樹まさき、お父さん、お母さんよろしくね。あんたは長生きするんだよ」

「馬鹿じゃね?何言ってるんだよ!」





私はもうすぐ死ぬ。

もしかしたらこれで最後かもしれない。




あ~なんか気持ちいいな。ここどこだろ?天国かな?


「・・ず」

「・すず」

「美鈴!!」

誰かが呼んでる?誰?


誰?

「美鈴!?」

「気が付いた」

「美鈴!!」

「あんた何私に言わないで、こんなことしてるのよ!」

早織がいた。

ってか、居るように見えるだけなのかな?

早織がここにいるはずない。

既に声が出るか出ないかの私には、笑顔で返すしかなかった。

「あんた何よ!最低じゃん!なんでこんな...」

泣き崩れてる。

早織は大学入る前の予備校から知り合って、同じ大学、学部目指すって知って一緒に2人で勉強がんばったね!本当にありがとう。

早織がいなかったら私、大学受かってなかったも。




そして

「おい!!」



「なんだよこれ?」

そこにいたのは、加賀美さんだ。

「どういうこと?」

加賀美さんが私を怒るように言う。



ああ、早織と加賀美さんがいるってことは、神様が最後に会いたい人を連れてきてくれたんだ。

ここに2人がいるわけない。


言いたいこと、言い残したことを言いたい。

「さ...おり...、友達でありがと」

か細い声で何とかいえた。

「何言ってるのよ!ずっと友達でしょ?これからも」



「かが...しゅう、愛」

最後に言わせて、お願い

「し...てる」


「ふざけるな!まだまだ色々これからだぞ!」


ああ、お父さん、お母さん、ありがと

早織、修ありがと




愛してる

私は意識が遠くなるのを感じ


「俺も愛してるよ!」

そう聞こえた気がした。


ありがとう

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