美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

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三章

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 ひげもじゃ以外にも案外生存者はいたようで、みな船に穴が開けられたことを知ってさっさと逃げようとしていた。あたりは水しぶきと怒号、混乱した声で溢れ、混沌としていた。
 私はアルバートさんとレイさんを探すことにした。

「お坊ちゃんてめえ、さっさと逃げねえと死ぬぞ!」

 ヒゲモジャ以外にもこちらを気にかけてくれる人はいるようで、船内を彷徨っているうちにそのように何度か声をかけられた。

「アルバートさん見てない?」

「しらねぇよあんなサイコパス野郎!」

 なぜサイコパス野郎と呼ばれているかはわからないが、かなり嫌われているようだ。私がここを離れているうちに何かしでかしたのかなと思った。
 私は困り果ててどうしようかとその場で立ち尽くしてしまった。一人だけで逃げるわけにはいかないし、もしも彼らがまだ船内に取り残されていたらと思うと足がすくんだ。
 そんな私の様子を見た船員たちは頭をかき、仕方がなさそうに口を開いた。

「あいつは食堂の方で縛り付けられてる。助けてもいいが、俺らの前に二度と面見せんなよ」

「わかりました」

 この感じアルバートさん、おそらく手当してもらった後にひと暴れしたんだろうな。
 私は食堂がどこにあるのかわからなかったが、船員たちが指差す方に走って行った。つくづく、この顔は役に立つなと思った。



 私は食堂にたどり着いた。そこに辿り着けば、アルバートさんの隣にレイさんも縛られていた。彼らは私に気が付いていないようで、二人で話をしていた。

「えーーなんやの、あんたこんな死に方とかめっちゃおもろいやんまじ?」

 彼は激怒しながらアルバートの方を睨みつけた。その視線からは怒りの火花が飛び散りそうなほどの憤怒が感じられた。
 しかし、アルバートはヘラヘラとした笑みを浮かべながら、ますます彼を煽り続けた。その笑みは挑発的で、まるで彼の怒りをあざ笑うかのようだった。

「うちの軍団入るの断って、うちの軍団滅ぼして、んでこんな末路?哀れすぎて涙出そう」

「テメェが言えたことじゃねぇだろうが」

「なんでそんな酷いこと言うん?そんなに犯したん気に入らんかったん?」

 耳が痛いほどの静寂が一瞬船内に広がり、その中で船の揺れだけがその場を支配した。
 
「黙れ!!!」

 レイさんは怒り狂った。その怪我を顧みずに、まるで括り付けられた柱を倒すかのような勢いでこちらに殴りかかろうとしていた。彼の拳は空気を切り裂き、その勢いはまるで嵐のようだった。

「ほんまあん時のあんた面白かったわ。ちょっと殴って抱いたらヒーヒー言って怖がってさ。はははは!」

「殺す!!絶対に殺してやる!!!」

「うるさいな、大きい声出さんといて。不貞の子は黙っとけばええねん」

 彼は怒りに燃えて、アルバートさんの言葉を遮った。しかしアルバートさんはまだヘラヘラとしながら話を続ける。
 不貞の子…なんの話だろうか。
 私はその会話が聞いてられなくて、辛くなってその場に行った。昨日、怯えに怯えて私に縋った彼のことを思い出して切なくなった。

「わ!ルイスちゃん!」

「アルバートさん、それは良くないよ…」

 私はアルバートさんのその最低すぎる言動に少し引いていた。ただ私は、なんともいえない気持ちになる。アルバートさんは今は飄々としているが、地下牢で苦しそうにしていたことがあったことも知っている。
 ただ、それを引き起こした原因はアルバートさんの最低な行為にあるし、レイさんがアルバートをこのように幽閉したがる気持ちもよくわかった。

 こんなところで悠長にお喋りなんてしている暇ない。さっさと行かなくては。私は昨日から隠し持っていたナイフを服の中から出した。そして、縛られているアルバートさんのロープを切る。

「アルバートさん、早くいこう。早く逃げないと逃げ遅れる」

「ルイスちゃん今の話聞いてた?うち、嫌がるやつ無理矢理抱くやばいやつやねんけど」

「もう、約束したでしょ?はい」

 いつ処刑されるかわからない極限状態の中で、私の体で性処理しなかった彼を私は信じようと思った。私はアルバートさんの手を握り、力強く引っ張った。その瞬間、アルバートさんは驚いた表情を浮かべ、黙って私に引っ張られた。
 そして私は、レイさんの方にも向き直った。レイさんは怯えた顔でこちらを見ていた。いや、正確にはアルバートさんの方を見ていた。

 同じ国の出身地。そして、同じ色の目。悪魔の子、不貞の子というワード。私はなんとなく彼が置かれた境遇がわかった気がした。

「アルバートさん。ごめんね、彼と二人で話がしたい」

「ル、ルイスちゃん??今おしゃべりする時間ないで、早よ行こ?」

 焦ってグッグと私の腕を引っ張るアルバートさんを尻目に、私はレイさんの正面に立つ。

「アルバートさん、ちょっと先行っておいてくれる?」

「え、無理。絶対嫌。絶対ルイスちゃん死ぬで。その辺で耳塞いでおいたるからさっさと喋ること喋って?な?」

 アルバートさんが少し離れたところに行き、そして耳を塞いだのを確認して私は彼に向き直った。
 ナイフで彼のロープを切りながら、彼に話しかける。

「まえに貴方が言っていた、極悪非道の王族の話は、ベンジャミン・ホワイトと関係がありますか」

 レイさんがハッと息を吸った。その瞳が困惑した色を乗せて、私をじっと見た。私は彼のことをじっと見る。
 ああ、やはり私と同じ色だ。

「そうだ……そいつは俺の…本当の父親。」


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