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三章
精神の幼さ
しおりを挟むそんなに震えるならやらなきゃいいのに、と思うが彼はやめたくないようだ。私は何がそんなに彼を駆り立てるのかが疑問だったが、傍観していた。
「…………」
震える手で私の服をほぼ剥ぎ取るように脱がせた。その後、私の左半身にできた広範囲に広がったあざを見て、その手で撫でる。なんという、優しげな手。
「……暴力で……くそ、なんでもない」
「…なに?」
何かを言いかけたレイを見上げて、首を傾げても結局誤魔化された。秘密主義はどっちだ。ふざけてる。
「…手が冷たい。無理してないですか?」
「黙れ!……加害者に同情なんてするな」
吠えるようにそう言ったあと、ひどく辛そうな顔して顔を背けた。まるで、わたしの目線から外れたがるように。
「お前、今から何をされるのかわかっているのか」
「ええ、全てわかっていますよ。どうぞ」
マグロもいいところだが、疲れている上のでもう動きたくない。私は眠いのだ。
「……軽いな、尻軽か?」
「そんな事をおっしゃっても、私は傷つきませんよ」
そう言えば悔しそうな顔をして、私を上からきっと睨みつけてくるレイ。彼は私を傷つけたいのだろうか。その割には、私の体についた傷は過剰に嫌がっている気がした。
「……くそ、」
静かに彼はそう吐き捨てる。
もう、どうでもいいのだ。屋敷にいた頃から、私の容姿に惑わされた男たちはたくさんいた。幼い私を犯す男たちもたくさんいたのだ。そして、アルバートさんのことをずっと覚えているレイと違い、私は彼らのことを一つも覚えていない。そうつまり、なぜか私を縛り付けたいから私を強姦しようとしているが、それにはなんの効果もない。その行為にショックを受けて恨みに思うことがないから。
それに、そもそも別にレイとならいいかなと思っていた。
「くそ、くそ………」
レイは肩で息をしながら、私の太ももに手をかけて、ぐっと持ち上げて陰部が丸見えになるような体制にした。彼は…勃つのだろうか?やはりセックスに対して非常に大きなトラウマがあるようで、先程から様子がおかしい。セックスどころの騒ぎではないその様子に、どう考えても今日はやめておいた方がいいと思うのだが。
「……うう…」
もう、見ていられない。どう考えてもう無理だろう。私は起き上がって逆に彼を押し倒した。押し倒されたにも関わらず、彼は抵抗は一切しなかった。彼は固まったまま、私の事を恐怖の目で見ていた。恐怖で体が動かないのだろうか。
「私にどう言う感情があって、強姦なんて暴挙に出ているのかは知りませんが、強姦すると言うことはあなたの体も性的に使うことになるのですよ!自分の体を大切にしなさい!!」
私は固まる彼を見て、居ても立っても居られない気持ちになった。少し語尾を強くしてそう言えば、彼は目に涙を溜めて私の方に両手を広げた。真夜中にベッドに入ってくる時にする動作だ。私に、抱きしめてほしい時にする動作だ。
「………頭が、ごちゃごちゃして……もうどうすればいいのかわからない…」
抱きしめれば、彼は私の耳元で静かに話し始める。啜り泣きながら彼はボソボソと続けた。
「もう無理だ、頼むから、」
「………」
「…頼むから、そばにいてくれ」
シンプルで簡単で、誰だって理解できる言葉。泣きながら懇願する彼を見て、彼のことをもう一度抱きしめ直した。
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