美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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四章

面倒な男


 「レイちゃん、なーレイちゃん。ルイスちゃんの話どこまで知ってんの?なぁ??」

 アルバートさんはわざとらしくレイに話しかける。歩きながら何度もレイの方を振り返るが、そのたびにレイはひたすら無言で歩き続けていた。その姿はまるで、逃げるように顔を伏せたまま、アルバートさんの問いかけを避けているかのようだ。レイの肩がさらに固くなる。彼が言葉を発しないのは、恐怖なのか、それともただただ面倒くさいからなのか、私には分からなかった。だが、アルバートさんのしつこさには、少しだけ意図が見え隠れしていた。

「ルイスちゃんの実家の話、ルイスちゃんから聞いたん?なぁ」

 アルバートさんが、更に迫るように質問を続ける。周囲の空気が少し重くなった気がする。レイが私の後ろでどこかに視線を逸らしながら無言で歩き続ける中、アルバートさんはまるで興味津々にレイの反応を見ている。
 
「アルバートさん、まだその話はできてないから」

「ええ!まだしてへんの!じゃあうちの方がルイスちゃんに詳しいな~レイちゃんよりずっと詳しいわ」

 アルバートさんが笑って言う。その顔に浮かんだ笑みは、どこか自信たっぷりで悪どかった。
 それを聞いたレイは、なおさら黙り込んでしまった。私は心の中で少しだけ息を呑んだが、レイが言葉を発しないのを見て、アルバートさんは楽しげに続けていた。

「……………」

 レイがこちらをジッと暗い瞳で睨んできている。その目は、どこか深い不安と憤りを湛えていて、まるで私のすべてを見透かそうとしているようだった。ああ、ずるずると引き延ばしにしなければよかった、と胸の中で後悔がこみ上げてくる。
 アルバートさんが言っている話とは、私が王族を庇っているという勘違いや、私が実家で受けた仕打ちのことだろう。あのことは確かに、アルバートさんには船の中で少し話したけれど、レイに話すことはできなかった。怒涛に過ぎていく日々に腰を据えて話をする時間はなかったし、彼に重荷を背負わせたくなかったからだ。

「うちなんか出会って1日目で教えてもらったのに~レイちゃんは信用されてへんのちゃう?まあ、あんだけルイスちゃんに暴力振るってたらそりゃそうか」

 アルバートさんの言葉に、私は思わずため息をついた。
 そして、隣を歩いていたレイが突然、ぴたりと足を止めた。彼は黙って俯き、足元をじっと見つめている。その姿勢には、どこか諦めと無力さが混じっているように見えた。私はすぐにレイの側に駆け寄り、無言で彼をぎゅっと抱きしめた。彼の背中に手を回すと、少しだけ硬直していた体が、少しずつ緩んでいった気がした。彼の耳元に顔を寄せ、小声で囁く。

「ごめんね。あとで全て話しますから。あの人の言うことに耳を傾けないで」

 レイは私の腕の中で、しばらく黙っていた。言葉を発することができないのか、あえて黙っているのか、彼はじっと動かずに私に身を任せていた。その時間がまるで永遠のように感じられたが、やがてレイが口を開いた。

「………くそっ……」

 その一言は、怒りだけでなく、痛みや失望、そして積み重なった過去の重さがすべて込められたような響きだった。
 突然、レイが乱暴に私を抱きしめ返してきた。あまりの力に息が詰まりそうになったが、それでも私は彼の腕の中で身を任せた。レイは何かを必死に抑え込むように、私を強く抱きしめる。強く、強く、まるで私を手放さないように。それに、少しだけ息が苦しくなるくらいだった。でも、それでも私はレイを離さなかった。

「見せつけてくれるやん?ルイスちゃん、うちとも抱きしめ合おうや」

 その言葉に私はふっと顔を顰める。アルバートさんの発言が、どこまでも無神経で不快に感じる。

「……こいつに触るな外道」

 レイの声が、まるで地獄の底から響いてくるような暗い力を帯びていた。その声に、アルバートさんは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐにその顔がにやけた。まるで新しいおもちゃを見つけた子供のように無邪気でありながら、その笑みの奥にはどこか卑劣で冷徹な残酷さも滲んでいる。
 レイが私の後ろに隠れるように身を寄せ、アルバートさんの視線から隠れた。

「アルバートさんやめて、その顔悪どすぎるよ」

 私が口を挟んだ瞬間、アルバートさんの表情がますます不愉快に変わった。あまりにも無神経なその顔に、私はつい言葉を発してしまった。彼の視線が私に向けられると、その瞳が少し嬉しそうに輝いたことに気づく。私が反応したことを楽しんでいるような、あの冷ややかな目が私の胸に重くのしかかった。

「そう?レイちゃんは怖がりやな」

 アルバートさんがさらにその笑みを深めた。やはりレイの怖がる反応を見て楽しんでいるようだ。レイはその視線から隠れるように私の後ろに身を寄せた。
 しばらくその場で立ち止まっていたレイの手を、私は軽く引く。その手はやっぱり冷たくて、緊張しているのが伝わってきた。無理もない。さっきの会話やアルバートさんの目を思い出せば、レイが不安に感じるのも当然だろう。私はその冷たい手を両手で包み込むようにして、少しでも彼が安心できるように暖める。左手も使って、しっかりとレイの手を握る。
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