美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

一章

処刑

　突如、異国の言葉での大声が聞こえた。その内容は理解できなかったが、その声は聞き迫るように響いてきた。私はその声に驚き、彼が死刑の直前に不安感に取り憑かれたのかと思った。話しているのはいつもの、捕虜たちの中で唯一話をする男だった。
　その男以外の捕虜たちは何も話しておらず、静寂が支配している一方で、その男が話すたびに周りの人間は皆、頭を垂れて手を合わせていた。
　大声と、不気味な静寂、そして謎の行動が不穏な雰囲気を漂わせていた。この異様な光景に、何が起きているのか疑問が渦巻いていた。

「……なにあれ」

　金髪の彼はその様子にひどく苛立っており、不機嫌さが増していた。一方で、彼以外の船員たちは、鬼気迫る男と周りを取り囲む人々の様子を楽しんでいた。手を叩いて笑い声が響く中、この不可解な光景が船内に独特の緊張と奇妙な雰囲気をもたらしていた。

「悪魔の子！！！神は、神はお前にいつか鉄槌を下す！」

　悪魔の子。神。
　突然理解できる言葉が聞こえてきた。話をするその捕虜の方を見た。彼はやはり鬼気迫る表情をこちらに向けていた。

「………チッ………」

　再び静寂が船内に広がり、金髪の彼はひどく苛立っている様子だった。金髪の彼は怒りに任せて座っていた樽を激しく蹴り飛ばした。金髪の彼は腰に携えた剣を取り出し、その剣を手に持って捕虜の方に近付いていく。
　私は状況が読めなかったが、金髪の彼と捕虜の人々の間に非常に深い因縁があるのはわかった。私は彼の部下の方を見た。

「…悪魔の子？そして異国の言葉を使っているのは…彼らはなんなのです？」

　そう尋ねれば、彼の部下は思い切り馬鹿にしたような表情をこちらに向けた。

「バカな坊ちゃんだな。テメェの国の神さんもしらねぇのか？異国の言葉じゃなくて宗教に残ってる古りぃ言葉使ってんだよ」

　その瞬間、私は驚きに包まれた。彼らの使っていた言葉、それが宗教的な意味を持つものであり、なおかつ自国のものであることは衝撃的だった。
　私は宗教やその文化について何も知らなかった。お父様によって勉強が禁じられ、知識が奪われてきたため、この人々に対する理解が全くなかった。

「お頭はちっちぇえ頃からずっと、あいつらに難癖つけられてたらしい。俺らはてめぇとお頭の国出身じゃねぇから理由はしらねぇけどな」

「……ということはあの人もあの国出身なのか」

　まさか彼が同郷だったとは。文脈から読み取った私のどうでも良い発見は、歓声によってかき消された。私はそちらを感情のない目で見る。
　金髪の彼は怒りに駆られたように、その剣で、あの男の頭部に一刀を入れた。男の頭が一瞬で吹っ飛び、血飛沫が舞い上がった。その瞬間の凄絶な光景に、捕虜たちは呆然とし、部下たちは興奮と歓喜の声で沸いた。船内に響く血の匂いと笑い声が、この場の混沌を一層強調していた。

「悪魔の子だと！何度も何度も舐めやがってくそが！！何度俺を侮辱しやがれば気が済む！！」

　金髪の彼は怒り狂って、男の顔を何度も何度も踏みつけた。肉と骨が砕けるぐちゃぐちゃという音が船内に響き渡り、私は眉を顰めた。彼の凄絶な怒りの爆発によって、男の顔がひどく惨たらしく傷ついていった。
　金髪の彼の尋常でない怒り具合に、笑っていた部下たちも次第に恐怖の目を携え、船内の緊張感はさらに高まっていた。

「……あの人、なぜ周りの信者に信仰されていたのです」

「…教祖の孫かなんかで要はあいつが宗教団体を司令してたらしいからな」

　船内であの男だけが話していた理由がようやくわかった。私は壮絶なその光景をじっと見ていた。彼はまだ気が済まないようで、今度は体の方を切り刻んでいる。よほど彼に恨みがあったらしい。
　普段彼に受けていた折檻はかなり優しいものだったのだなと実感したし、部下たちが彼を異様に怖がる理由もよくわかった。