巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1E-蒸留と羊油

1E-08 パテンツと商会設立

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 エシプスからの精製ランナの作成は終わり、大きめの磁性瓶に保存した。保冷と破損防止の魔導加工を施してある。酸化による劣化を避けるため、保冷は必須だ。

 ハイポーションの保存試験も順調に進み、三年の保存期間があることが確認できた。量産が可能となれば、間違いなく衝撃が走るだろうとパラケル爺さんは言っていた。

 サナーレウンゲンの品質検証も終えた。ピレネ白磁瓶だけでなく、マーロ青磁瓶でも試験を行った。青磁は素色に近いため中身の色と馴染むが、保存性は白磁と同等。どちらも魔素の拡散はなかった。

 そんな折、父が帰宅した。城郭都市から男爵領へ赴き、現地で買い付けを済ませてきたという。馬車三台分の荷。山盛りのデンタータとアントス、大甕に入ったアルテミ、さらに五十キロほどのエシプス。少量ながらローサもあり、品質保持の魔導具入りだ。見えているのは荷馬車分だけで、父のアイテムボックスにはさらに蓄えているのだろう。

「いや、大変だったよ。城郭都市の商人から探りを入れられたし、冒険者ギルドからはポーションの流通を急かされた。苦情まで来たよ。パラケル爺の手紙を見せて、代行夫人に口添えを頼んだら“パラケルの依頼なら協力する、後で教えなさい”と言われたよ。爺、ちゃんと伝えたからな」

 父はやれやれと肩をすくめたが、結局は飄々とかわしてきたのだろう。

「大変だったな。おかげでこちらは十分に準備ができた。今回は大商いだ。値段は強めに設定する。商会の設立とパテンツも取るぞ」

 この国には特許に似た「パテンツ」という制度がある。王国が管理し、商人ギルドが運営を委託されている。製法と用途を守る契約魔法の一種で、鑑定によって原料が暴かれる可能性があるため、広く販売するものはパテンツで守るのが常だ。逆にハイポーションのように秘匿すべきものは、販売を制限し、生産者を絞り契約で厳重に管理する。

 パテンツと商会の件は後日、ベルナル商会とパラケル爺さんで詰めることになった。まずは報告だ。

 ######
――報告会の議題――
 1 ハイポーション
 2 サナーレウンゲンの販売
 3 領主献上品
 #######

「爺、まずはハイポーションからだな」
「性能が良すぎる。秘匿しているギルドが多い。魔導師ギルドに降ろしたいが、現状では無理だ」
「領主に報告し、周知は領主一族と一部の商人ギルド員、我々にとどめる意向を伝えましょう」
「うむ、謁見の時に上申だな」

 次はサナーレウンゲン。パラケル爺さんに促され、進捗を報告する。

「加工量の拡大を行いました。10kgのエシプスから7kgのランナが取れました。連続遠心装置を開発し、最大50kgを処理できます。それを三組作成済みです。いつでも製造に移れます」
「おお!すごいな、レッド!」

 さらに薬効成分のアルテミオイルについて説明する。含量は0.1%。アルテミ草5束で1mL採取可能。蒸留工程で魔力操作が必要だが、他の魔術師でも習得可能な範囲だ。
「治癒効果は1。理論値では0.6のはずが、鑑定では1となる。ランナとの相乗効果かもしれません」
「効果が確かなら、それで十分だろう」

 続いて量産計画。
「7kgのランナに必要なアルテミは35束。大甕単位で製造すれば、納入と製造のバランスが取れます。蒸留装置も大甕単位で対応可能です」
「ほぼ量産体制は整っているな!」

 小分け販売についても提案する。
「母の使用傾向から、20g程度で十分です。21kgのランナから1050個前後、一単位で1000個販売できます」
「売値はどうする?」
「原価は一個銀貨5枚弱。容器代が大きいです」
「ポーションは一瓶銀貨10枚、一級品の磁器瓶は30枚。今回の新規性なら50枚でも買う者はいる」
「まずは銀貨50枚で様子を見よう」

 さらに装置の販売価格も話題に上がる。
「遠心分離装置と蒸留装置は一組金貨5000枚だろう」
「……強気ですね」

 最終的に、一個売るごとに銀貨5枚を自分とパラケル爺さんにパテンツ料として支払う分配に決まった。



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