巻き込まれた薬師の日常

白髭

文字の大きさ
68 / 235
1F-氾濫と供給

1F-04 魔導師ギルドの生産室

しおりを挟む
 商人ギルドの炊き出しで腹を満たし、城内へ戻る。馬車は封鎖で使えないため徒歩で移動し、南北に走る道を抜けて広場へ。広場には魔導師ギルドと商人ギルドの本部が並び、冒険者ギルドは森のそばにある。ここにあるのは伝令用の小さな支部だけだ。

 魔導師ギルドに入ると、黒い重厚な雰囲気に包まれ、窓はなく薬品の匂いが漂っていた。中は閑散としている。受付の女性に声をかける。
「パラケルさんはいますか?自分はレッドと言います」
「パラケル爺は生産室よ。案内してあげる」

 彼女はピトゥリ。元冒険者で魔導師枠、結婚して子供が小さいため今は内勤だという。
「外は氾濫で大変だけど、受付は暇なのよ。本当は私もパラケル爺の話を直接聞きたいくらい」
 話しながら生産室へ。中ではガウスとオルグという魔導師がブラックメンタから熱水抽出をしていた。
「ほら、熱を上げすぎるな。眠れなくなる成分まで抽出してしまうぞ。火と並行して水の魔力操作を行え」
 パラケル爺が指導している。二人は不慣れで戸惑っているようだ。

「おう、レッド。休憩か。お前もやってみろ」
「了解」

 久しぶりの熱水抽出だ。メンタ草を五束計り取り、風魔法で粉砕。大甕の水を操作して規定量を浮かせ、火魔法で80度を維持する。熱水を注ぎ、攪拌しながら魔素を剥がす。液体が淡い青に染まる。水魔法で固形物を分離し、磁器瓶に収めて鑑定。

「こんな感じでしょうか?」
 瓶を渡すと、ガウスとオルグ、ピトゥリは口を開けて固まった。
「少年がここまでの制御を……」
「パラケル爺の教え方が鬼だからだ」
「風・水・火の制御は完璧だったろう。魔導師を名乗るならこの程度は当然だ」

 その後、数回の見本を見せてお手本は終了。次は水蒸気蒸留の修練に移るらしい。戦時中なのに修練の時間があるのだろうかと心配になる。

 手伝おうとしたが、パラケル爺に止められた。
「もう子供は寝る時間だ。商人ギルドの祖父のところで休め」

 追い出される形で魔導師ギルドを後にし、広場南の商人ギルドへ向かう。ようやく休憩だ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...