巻き込まれた薬師の日常

白髭

文字の大きさ
70 / 235
1F-氾濫と供給

1F-06 ノルバ叔父との再会

しおりを挟む
 魔物氾濫の三日目。討伐班は領主一族の作戦伝達を受け、三組に分かれて交代勤務を続けている。夜間はほとんど魔物が出ないため、防御陣を頼りにする程度で済むらしい。自分は相変わらず救護所の仕事だ。

 この日から魔導師ギルドによる魔力ポーションの供給が始まった。劣化品から特級品まで四段階。瓶はすべて磁器製で、合計千本ほどが並べられた。副作用の一覧が掲示され、使用者が自ら選ぶ仕組みだ。記録係には商人ギルドの人員が追加され、クレア叔母さんと二人で行列をさばいた。

「少年、普及品だと効果はどのくらいだ」
 声をかけてきたのは剣士レックス。以前は怒鳴られたが、今では気安く話しかけてくれる。
「魔術師なら火球二十発分ほど。剣士なら肉体操作の精度次第ですが、かなり補充できます」
「なるほどな。じゃあ俺は一級品だな」

 魔術師たちは特級品を嬉々として受け取り、神聖魔法使いも同様に喜んでいた。逆に剣士や騎士は初めて使う者が多い。長時間の戦闘で魔素が枯渇することがあるのだ。

 配布を続けていると、商人ギルド長のアゼル爺がやってきた。
「レッドよ、ここはもう良い。ハイポーションも周知された。今日からは商人ギルドの方を手伝え。持っている三本をクレアに預けていけ」
「了解です。叔母さん、よろしくお願いします」
「がんばってねー」

 アゼル爺に連れられ、城郭都市西側の訓練場へ。ここは万一魔物が侵入した際に誘導する場所で、今回は回収作業の拠点となっていた。仮設小屋が並び、魔石や素材の回収が進められている。

「ここだ。しばらくはノルバと一緒に動け」
「レッドか、久しぶりだな。随分と大きくなった」
 ノルバ叔父さん。父サルタンの兄で、城郭都市のベルナル商店を任されている。金には厳しいが家族には優しい、典型的な商人だ。

「素材を回収した後は焼却だ。骨にも需要を見出したとか」
「骨は捨て値ですけどね」
「それでも価値を見出したことが重要なんだ」

 案内された穴には解体済みの魔物が山積みになっていた。薪を敷き、これから燃やす算段だ。
「レッド、お前の火魔法で骨だけにしてくれ」
「このままでは燃え残ります。少し細工を」

 土魔法で斜めの通気口を掘り、薪の下に空間を作る。地面を硬化させて給気口を設け、露天掘りの穴を円筒形に整形。さらに土を盛り上げて高さ十メートルの煙突を築いた。煙突効果で空気が流れ込み、炎が安定する仕組みだ。副産物の油を放り込み、火を点ける。
「おお、すごいな!」
 炎が勢いよく燃え上がり、煙突から煙が立ち上る。
「レッド、お前どれだけ修練をしたんだ。一人前の魔術師じゃないか!」
「パラケル爺さんの教え方が良かったんです」

 さらに三か所に同じ仕組みを作り、煙突が立ち並んだ。これで当面の魔物骨には困らないだろう。
「通常の魔術師は一本も作れないものなのだがな……」

 叔父さんは呆れたように煙突を見上げていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...