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1F-氾濫と供給
1F-06 ノルバ叔父との再会
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魔物氾濫の三日目。討伐班は領主一族の作戦伝達を受け、三組に分かれて交代勤務を続けている。夜間はほとんど魔物が出ないため、防御陣を頼りにする程度で済むらしい。自分は相変わらず救護所の仕事だ。
この日から魔導師ギルドによる魔力ポーションの供給が始まった。劣化品から特級品まで四段階。瓶はすべて磁器製で、合計千本ほどが並べられた。副作用の一覧が掲示され、使用者が自ら選ぶ仕組みだ。記録係には商人ギルドの人員が追加され、クレア叔母さんと二人で行列をさばいた。
「少年、普及品だと効果はどのくらいだ」
声をかけてきたのは剣士レックス。以前は怒鳴られたが、今では気安く話しかけてくれる。
「魔術師なら火球二十発分ほど。剣士なら肉体操作の精度次第ですが、かなり補充できます」
「なるほどな。じゃあ俺は一級品だな」
魔術師たちは特級品を嬉々として受け取り、神聖魔法使いも同様に喜んでいた。逆に剣士や騎士は初めて使う者が多い。長時間の戦闘で魔素が枯渇することがあるのだ。
配布を続けていると、商人ギルド長のアゼル爺がやってきた。
「レッドよ、ここはもう良い。ハイポーションも周知された。今日からは商人ギルドの方を手伝え。持っている三本をクレアに預けていけ」
「了解です。叔母さん、よろしくお願いします」
「がんばってねー」
アゼル爺に連れられ、城郭都市西側の訓練場へ。ここは万一魔物が侵入した際に誘導する場所で、今回は回収作業の拠点となっていた。仮設小屋が並び、魔石や素材の回収が進められている。
「ここだ。しばらくはノルバと一緒に動け」
「レッドか、久しぶりだな。随分と大きくなった」
ノルバ叔父さん。父サルタンの兄で、城郭都市のベルナル商店を任されている。金には厳しいが家族には優しい、典型的な商人だ。
「素材を回収した後は焼却だ。骨にも需要を見出したとか」
「骨は捨て値ですけどね」
「それでも価値を見出したことが重要なんだ」
案内された穴には解体済みの魔物が山積みになっていた。薪を敷き、これから燃やす算段だ。
「レッド、お前の火魔法で骨だけにしてくれ」
「このままでは燃え残ります。少し細工を」
土魔法で斜めの通気口を掘り、薪の下に空間を作る。地面を硬化させて給気口を設け、露天掘りの穴を円筒形に整形。さらに土を盛り上げて高さ十メートルの煙突を築いた。煙突効果で空気が流れ込み、炎が安定する仕組みだ。副産物の油を放り込み、火を点ける。
「おお、すごいな!」
炎が勢いよく燃え上がり、煙突から煙が立ち上る。
「レッド、お前どれだけ修練をしたんだ。一人前の魔術師じゃないか!」
「パラケル爺さんの教え方が良かったんです」
さらに三か所に同じ仕組みを作り、煙突が立ち並んだ。これで当面の魔物骨には困らないだろう。
「通常の魔術師は一本も作れないものなのだがな……」
叔父さんは呆れたように煙突を見上げていた。
この日から魔導師ギルドによる魔力ポーションの供給が始まった。劣化品から特級品まで四段階。瓶はすべて磁器製で、合計千本ほどが並べられた。副作用の一覧が掲示され、使用者が自ら選ぶ仕組みだ。記録係には商人ギルドの人員が追加され、クレア叔母さんと二人で行列をさばいた。
「少年、普及品だと効果はどのくらいだ」
声をかけてきたのは剣士レックス。以前は怒鳴られたが、今では気安く話しかけてくれる。
「魔術師なら火球二十発分ほど。剣士なら肉体操作の精度次第ですが、かなり補充できます」
「なるほどな。じゃあ俺は一級品だな」
魔術師たちは特級品を嬉々として受け取り、神聖魔法使いも同様に喜んでいた。逆に剣士や騎士は初めて使う者が多い。長時間の戦闘で魔素が枯渇することがあるのだ。
配布を続けていると、商人ギルド長のアゼル爺がやってきた。
「レッドよ、ここはもう良い。ハイポーションも周知された。今日からは商人ギルドの方を手伝え。持っている三本をクレアに預けていけ」
「了解です。叔母さん、よろしくお願いします」
「がんばってねー」
アゼル爺に連れられ、城郭都市西側の訓練場へ。ここは万一魔物が侵入した際に誘導する場所で、今回は回収作業の拠点となっていた。仮設小屋が並び、魔石や素材の回収が進められている。
「ここだ。しばらくはノルバと一緒に動け」
「レッドか、久しぶりだな。随分と大きくなった」
ノルバ叔父さん。父サルタンの兄で、城郭都市のベルナル商店を任されている。金には厳しいが家族には優しい、典型的な商人だ。
「素材を回収した後は焼却だ。骨にも需要を見出したとか」
「骨は捨て値ですけどね」
「それでも価値を見出したことが重要なんだ」
案内された穴には解体済みの魔物が山積みになっていた。薪を敷き、これから燃やす算段だ。
「レッド、お前の火魔法で骨だけにしてくれ」
「このままでは燃え残ります。少し細工を」
土魔法で斜めの通気口を掘り、薪の下に空間を作る。地面を硬化させて給気口を設け、露天掘りの穴を円筒形に整形。さらに土を盛り上げて高さ十メートルの煙突を築いた。煙突効果で空気が流れ込み、炎が安定する仕組みだ。副産物の油を放り込み、火を点ける。
「おお、すごいな!」
炎が勢いよく燃え上がり、煙突から煙が立ち上る。
「レッド、お前どれだけ修練をしたんだ。一人前の魔術師じゃないか!」
「パラケル爺さんの教え方が良かったんです」
さらに三か所に同じ仕組みを作り、煙突が立ち並んだ。これで当面の魔物骨には困らないだろう。
「通常の魔術師は一本も作れないものなのだがな……」
叔父さんは呆れたように煙突を見上げていた。
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