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SIDE STORY - He says -
#01 いいヤツのふりもラクじゃない
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*2012/07/19 『俺のものになりなさい -He says-』(Berry's Cafe 限定公開したものです)
人がなにか新しいことを始めるには大なり小なりきっかけが存在するものだ。
たとえばロックバンドを結成して音楽をやりたがる男子学生。そのほとんどが「女子にモテるから」という不純な動機を胸に秘めている。
しかし音楽やスポーツなどの「始めました」と宣伝するのにふさわしいものであれば、そのきっかけが「モテたい」であっても、心証を悪くする人は少ないのではないか、と聖夜は思う。
一方始めてしまったものが健康に悪影響を及ぼすとわかっている場合、世間の目はだいたい冷たくなる。
聖夜は近ごろやけに消費本数が増えている自らの喫煙について考えていた。
灰皿の上に置いた吸いかけのタバコから紫煙が立ちのぼり、そして宙に消える。
このペースで吸い続けたら、寿命は確実に縮むだろう。しかし知り得ることのない寿命を心配するのもバカバカしい。むしろ喫煙でストレスが発散されるなら、健康のためにいいのではないか。
そこまで考えて、聖夜は深いため息をつく。
聖夜が喫煙を始めたのは、忘れもしない3年前の夜のことだ。
仕事が終わり、知人の店に飲みに行くため、同じ店舗で働く仲間と繁華街を歩いていた。
当時の聖夜は指名が急激に増え、勤務明けは疲労とストレスが限界近くまでたまっていた。だから毎晩とにかく飲みに出かけた。「ただいま」と言っても返事のない寂しい部屋へ、まっすぐ帰る気にはなれなかったのだ。
時刻は24時。この時間の繁華街はすでにできあがった酔客が多い。
そしてその次に多いのがカップルだ。女性は明らかにデートを意識した服装で、それを男性がいやらしい目で舐めまわすように見ている。そんな彼らが目指す場所は、手っ取り早く欲望を満たすことのできる小部屋である。
正直に言えば、羨ましい。
だからカップルの姿を見ないようにしながら、わざと陽気にふるまう。むなしい気分が心を覆いつくす前に、楽しい気持ちを必死に呼び起こすのだ。
聖夜は隣を歩くアシスタントの男性と、プレイしたゲームでつまらなかったもののタイトルを挙げて、そのゲームのどこがどれだけつまらないかを面白おかしく議論していた。
(昔、ゲームに熱中したころがあったな)
ゲーム機に触ることすら面倒だと思う今、かつての自分が懐かしい。暇を持て余してゲームに興じるくらいなら、もっと勉強すればよかったのに、と後悔する一方で、やはり自分にはこの道が向いていたのだ、とも思う。
(それにこの仕事をしているからこそ、俺は……)
何気なく目をやった方角に、引っかかるものがあって、聖夜はハッとした。
視線が止まった先は、ベージュ色のパンツスーツの小柄な女性だ。ショートカットだった髪が放置されて約2ヶ月というところか。
(そろそろ予約が入るんじゃないかと思っていたのに……)
肩透かしを食らう日々が続いていたのだ。
彼女の隣には若い男性がいる。同じ会社の同僚だろうと思われた。というのも、彼らの間には向かい側から歩いてきた人が通り抜けできるくらいの隙間が空いている。これで恋人同士なら、隙間風が吹く程度の関係なんだろうと聖夜は想像した。
女性がぎこちなく笑うのが見えた。
同時に聖夜の胸が指でつねられたように痛む。
「浜本さん、どうかしましたか?」
聖夜の隣でアシスタントの男性が不思議そうな顔をしていた。
「いや……。あ、信号渡ろう」
少し先に見える横断歩道の信号が点滅し始めた。聖夜は走る。横断歩道を渡りきったところで、聖夜が気にする男女の背中に追いついた。
「でもワンデーの使い捨てタイプは、本当に快適だよ。俺は断然ワンデータイプをオススメする」
コンタクトレンズの話題だった。男は必要以上に大きな声で話しているので、少し後ろを歩く聖夜にも聞こえてくる。
何だか気が抜けて隣のアシスタントに話しかけようと聖夜が口を開きかけたとき、男がわざとらしい仕草で前髪をかき上げた。
(あ、あれは……!)
男の腕の時計が目に入った。
聖夜は思わず立ち止まっていた。
(あれは、俺がほしかった……)
驚いて目を見開いたまま、男の腕を数秒見つめる。
アシスタントの男性が「忘れ物でもしたんですか?」と見当違いな問いかけを発した。
「あ、ああ」
小声で返事をする。この距離で聖夜がしゃべると、前を歩く女性が振り返る可能性が高い。振り向かせたいような気もしたが、やはりそれはできない、と思い直す。
「今日、あの店、休みかもしれない」
立ち止まったまま、ケータイを取り出した。もちろんつぶやく声はボリュームを絞っておく。それからメールを確認するふりをした。
「じゃあ違う店にしますか?」
「そうだな。あの店は今度でもいいし、新しい店を開拓するのもいいよな」
アシスタントは聖夜よりもあっさりした性格だった。それをありがたいと思いながら聖夜は方向転換する。
最後にチラッと振り返り、女性の背中を見た。
彼女はどこか緊張したような足取りで、聖夜からどんどん遠のいていく。
胸の中が鋭利なものでズタズタに切り裂かれていることに、聖夜はようやく気がついた。
その夜、正確に言えばもう明け方だったが、酩酊した聖夜はふらつきながらコンビニエンスストアへ立ち寄り、初めてタバコを購入した。
知っている銘柄を1箱。それと酔い覚ましに野菜ジュースだ。
マンションに帰った聖夜は窓を開け放った。
それからキッチンへ向かい、空のコーヒー缶を持ってくる。
そしてタバコのパッケージを開けた。トントンと叩いて最初の1本を取り出すのは、友達がやっているのを真似してみた。
そういえばライターがない。聖夜は小さくため息をついて立ち上がる。居酒屋でもらったマッチがどこかにしまってあったはずだ。
目星をつけた収納をあさると、ほどなく目的のマッチが見つかった。マッチを擦る。慣れない手つきでタバコを持ち、先端に火を近づけた。
消火したマッチを空き缶に放り込み、タバコを口にくわえる。
思い切って吸い込むと、胸が苦しくなってむせた。聖夜はこれまでにないほど激しく咳き込んで、最後には涙を流した。
タバコの味は苦いと表現されるが、聖夜にとっての最初のタバコは涙の味がした。
しかし人間の順応力というのは大したものである。
最初はこんな不味いものを好んで吸い込む人間がいるということに驚き、少しばかり呆れた聖夜だったが、次第にその魅力に取りつかれていった。
いまや、暇さえあればタバコを吸っている。
止めたらほしくなる、という状態はほぼ中毒だろう。タバコをくわえて、有害な煙を肺いっぱいに吸い込むと、他のどんなものよりも強い充足感を得られるのだ。
そしてため息と同時に煙を吐く。
胸に閉じ込めたいろいろなものが、白い煙になって排出され、どこかに消えていく。
おかげで仕事に集中できるようになり、そのころから世間での聖夜の評価は飛躍的に上昇した。皮肉にも、聖夜本人の生活は豊かになるどころか、ますますシンプルになり、心がなにかを感じることも少なくなっていた。
なにを見ても、なにを食べても、味気がない。
それくらいならタバコを吸って、煙を吐き出しているほうがいい。
仕事に支障が出ない程度に健康状態を管理し、日々ひたすらある人の電話を待つ。
それがカリスマ美容師と呼ばれる聖夜のうそ偽りない生活なのだ。
「またテレビで紹介されたんでしょ?」
目の前の椅子にちょこんと座った女性が言った。
確かめなくてもわかる。前回彼女がそこに座ってから2ヶ月半が経っていた。
「そうらしいね」
「いや、そうだよ! 私、みたもん」
「へぇ。カナもそういう番組をみるんだ」
「え、いや……テレビつけたら、たまたま映っていたの。思わず『わー! 聖夜だ!』って誰もいない部屋で叫んじゃった」
澤田香夏子は小さく舌を出した。
無邪気に笑う顔は実年齢より幼く見える。童顔というわけではない。もっと言えば誰もが目を留めるような美人でもない。
しかし彼女の顔にはどこか心をくすぐられる魅力があった。
(目、かな……?)
聖夜は鏡越しに香夏子の顔を見る。決して大きくはないのだが、彼女の目は表情が豊かだと思う。
「ふーん。録画してくれた?」
「えっ!?」
香夏子がひどく動揺したので、聖夜はびっくりした。その動揺の種類が判別できない。
仕方がないので、香夏子の髪の毛を両手で掬い上げた。
「少し伸びたね」
「うん」
「仕事、忙しかった?」
「うん。それに前回少し短くしすぎたかな、って」
「ごめん。気に入らなかった?」
急に香夏子が振り向いた。聖夜は慌てて彼女の髪から手を離す。
「そうじゃないの。聖夜のカットは最高だった! でも1か月後がちょうどおさまりよくて、もう少しこのままでいたいな、って思ったの」
「へぇ。気に入ってもらえたのなら、よかった」
「いつも、すっごく気に入ってるよ」
そう言って香夏子は前を向く。
聖夜はまた香夏子の髪を指ですいた。柔らかくて艶がある。とてもいい状態だと思った。
「髪、ちゃんとトリートメントしてるんだね」
「うん。……聖夜に言われたから」
鏡の中で香夏子が恥ずかしそうに笑った。思い切って髪の間に指を差し込み、手のひらで地肌に触れる。香夏子は鏡に映る聖夜をじっと見ていた。
「じゃあ、シャンプーしようか」
いつまでも香夏子の頭を触っているわけにもいかない。
聖夜は自分自身に区切りをつけるように手をおろす。それから香夏子をシャンプー台へ案内した。
香夏子は、聖夜の人生に最初から登場している主要メンバーのひとりである。
幼馴染というのが彼らの関係を表すのにもっともふさわしい言葉だが、聖夜はこの言葉が好きではない。生まれたときから家が隣同士で、いいも悪いもないまま、聖夜は香夏子と一緒に育った。その環境のせいで幼馴染と呼ばれるのが、聖夜はあまり嬉しくないのだ。
しかも幼馴染は香夏子だけではなく、もうひとりいた。
このもうひとりがあの男でなければ、聖夜の人生は違ったものになっていただろうとさえ思う。
それが丹羽秀司である。現在、アメリカの大学に留学中で、もう5年以上姿を見かけない。
やっと目の上のたんこぶがなくなったと思ったのも最初の1年だけで、結局聖夜にとって秀司はいてもいなくても厄介な存在であることは、今も昔も変わりなかった。
秀司は聖夜の永遠のライバルなのだ。
しかしライバルと思っているのは聖夜だけで、秀司は聖夜のことなど競争相手とは思っていないかもしれない。
身長で負け、勉強で負け、そして恋愛で負け――。
秀司に勝てるものがあるとすれば、聖夜には常識があり、世渡りが上手いということくらいか。だがそれも、秀司がその気になれば、聖夜よりも数倍上手く立ち回るのではないかと思われた。
聖夜は秀司に対し常に劣等感を抱えたまま、香夏子と3人の幼馴染をいまだにやっているというわけだ。
傍若無人な秀司はいつでも、聖夜が大事に想う香夏子を、独り占めしようとした。
実際、高校生になった秀司は香夏子を独占する権利を手に入れた。聖夜にはそれを阻止する隙も与えられなかった。秀司が自分の大切なものを穢したのだと思うと、いてもたってもいられない気分だったが、結局なにもできないまま、彼らの交際を黙殺した。
そして姑息にも聖夜は、彼らへの当てつけに、地元でもっとも美しい少女と付き合うことにしたのだ。
あれがマズかった、と聖夜は思う。
あんなことをするから、聖夜は苦いタバコを嬉々として吸わねばならなくなったのだろう。
かわいい女子から告白されて、一瞬舞い上がったとはいえ、聖夜はそのかわいいと呼ばれる女子が好きではなかった。それほど好きでもない女子と付き合ったところで、長続きするわけがない。
しかし聖夜と美少女の関係が壊れる前に、秀司と香夏子の関係が壊れるという予想外の事件が発生した。これは聖夜にとっては吉報だったはずなのに、タイミングが悪かった。
香夏子は急によそよそしくなった。
いつの間にか聖夜と香夏子の間には、修復不能な溝ができてしまっていた。
他人からは香夏子の態度が聖夜を慕っているように見えるかもしれない。しかしそれが聖夜には苦痛だった。店に通ってくるくせに、プライベートでは一切の関わりを拒絶されていたからだ。
男として嫌われる部分があるとすれば、やはりあの奥野なつきという美少女と交際した事実ではないか。
おそらく誤解されているのだと思う。聖夜は美人が好きなのだと。
目の前に座っている香夏子は、雑誌を広げたまま、聖夜の手つきに見入っていた。それがあまりにも熱心な、いや熱狂的な視線なので、聖夜もくすぐったいような気分になる。
だが聖夜の顔を見るとき、香夏子の視線は瞬時に熱を失う。目を合わせると困ったように笑い、すぐにごまかされた。なんでもない、と表情を作り直し、ただの幼馴染を完璧に演じるつもりらしい。
そんなものはいらない、と喉まで出てきている言葉を、必死に留める。
これが店でなければ、後ろから抱きしめて、耳元で本音を問いただしたいところだ。
(俺だってそういうチャンスがあれば、それくらい……)
そこまで考えた聖夜の脳裏に、不遜な態度の秀司が出現した。
『お前にできるのか?』
(できるさ)
『臆病者の聖夜が、香夏子を口説けるのか?』
(できるって……言ってるだろ!?)
『やれるなら、やってみろよ』
(今は仕事中なんだよ)
『ほら見ろ。できやしない』
「ったく、なんなんだ!」
「え、どうしたの?」
香夏子が心配そうに聖夜を見つめていた。
「なんでもない。俺、最近ひとりごと多くてさ」
聖夜は慌てて取り繕った。
「えー、なんだか危険だよ! 仕事が大変すぎるんじゃない?」
「そんなことない。でもひとり暮らしって寂しいからさ。気がついたらひとりごとをぶつぶつ言ってるんだ」
「……あ、でも私もひとりごと、多いかも!」
聖夜は思わず笑ってしまった。香夏子が自分で自分につっこむ様子が目に浮かぶようだった。
「ほらね。ひとり暮らししていると誰でもそうなるよ」
「いや、聖夜はモテるからさ。……そんなに寂しくないでしょ」
「えっ?」
「な、なんでもない」
香夏子のシャッターがピシャッと閉じた。
聖夜はあきらめて仕事に専念した。どうせ店の中では当たり障りのないことしか言えないのだ。そして香夏子とはここでしか会えない。
しかも中途半端にこんな関係が続いている現状では、香夏子のシャッターが開いているうちに彼女の中へ滑り込むチャンスは、今後も皆無のような気がする。
それに――。
(「あの男、誰?」って、軽い調子で訊けたらいいのに)
美容師の仕事をするようになってから、女性と話をすることも苦ではなくなった。しかし香夏子にも他の客と同様に仕事用の対応をすべきか、それとも幼馴染としてくだけた態度で臨むべきか、聖夜はいつまでもその迷いを吹っ切れずにいる。
ただ今回の件は、聖夜にとって衝撃が大きすぎた。香夏子にその事実を確認して、傷が深くなるなら、訊かないほうがいい。臆病だと罵られるかもしれないが、聖夜にはその勇気がなかった。
そもそも普通に考えて、真夜中にふたりきりで歩く相手が、ただの同僚や友達であるはずがない。
(……彼氏? だとしたら趣味悪い)
はさみを動かしながら、聖夜は渋い顔をした。ふたりの後姿は恋人同士には見えなかった。そうなると、考えられるのは、もっと最悪な関係だ。
(どうして?)
櫛を入れて、自分の気持ちをクールダウンする。
香夏子が望めば、もっとレベルの高い男性と付き合うこともできるはずだ。以前は秀司が相手だったのだし、学生時代は他にも香夏子に想いを寄せる男子がたくさんいた。それが社会人になって急にモテなくなるとは考えにくい。
わざわざレベルの低い男と付き合っている香夏子の気持ちが、聖夜には理解できなかった。
(いつもなにかを我慢してるような顔して……カナの本心はいったいどこにある?)
結局それがずっとわからないままだ。
だから聖夜は躊躇してしまう。
これ以上嫌われるのは困る。それくらいなら幼馴染の関係を続けているほうがマシだ。避けられるのは高校時代でこりたのだ。
だが、いつまでもこのままでいるわけにはいかないだろう。聖夜もそれは覚悟していた。
だからその日、そのときが来るまで、香夏子のいい幼馴染を演じていようと思う。彼女の中の自分はできるだけ「いいヤツ」であってほしいから――。
人がなにか新しいことを始めるには大なり小なりきっかけが存在するものだ。
たとえばロックバンドを結成して音楽をやりたがる男子学生。そのほとんどが「女子にモテるから」という不純な動機を胸に秘めている。
しかし音楽やスポーツなどの「始めました」と宣伝するのにふさわしいものであれば、そのきっかけが「モテたい」であっても、心証を悪くする人は少ないのではないか、と聖夜は思う。
一方始めてしまったものが健康に悪影響を及ぼすとわかっている場合、世間の目はだいたい冷たくなる。
聖夜は近ごろやけに消費本数が増えている自らの喫煙について考えていた。
灰皿の上に置いた吸いかけのタバコから紫煙が立ちのぼり、そして宙に消える。
このペースで吸い続けたら、寿命は確実に縮むだろう。しかし知り得ることのない寿命を心配するのもバカバカしい。むしろ喫煙でストレスが発散されるなら、健康のためにいいのではないか。
そこまで考えて、聖夜は深いため息をつく。
聖夜が喫煙を始めたのは、忘れもしない3年前の夜のことだ。
仕事が終わり、知人の店に飲みに行くため、同じ店舗で働く仲間と繁華街を歩いていた。
当時の聖夜は指名が急激に増え、勤務明けは疲労とストレスが限界近くまでたまっていた。だから毎晩とにかく飲みに出かけた。「ただいま」と言っても返事のない寂しい部屋へ、まっすぐ帰る気にはなれなかったのだ。
時刻は24時。この時間の繁華街はすでにできあがった酔客が多い。
そしてその次に多いのがカップルだ。女性は明らかにデートを意識した服装で、それを男性がいやらしい目で舐めまわすように見ている。そんな彼らが目指す場所は、手っ取り早く欲望を満たすことのできる小部屋である。
正直に言えば、羨ましい。
だからカップルの姿を見ないようにしながら、わざと陽気にふるまう。むなしい気分が心を覆いつくす前に、楽しい気持ちを必死に呼び起こすのだ。
聖夜は隣を歩くアシスタントの男性と、プレイしたゲームでつまらなかったもののタイトルを挙げて、そのゲームのどこがどれだけつまらないかを面白おかしく議論していた。
(昔、ゲームに熱中したころがあったな)
ゲーム機に触ることすら面倒だと思う今、かつての自分が懐かしい。暇を持て余してゲームに興じるくらいなら、もっと勉強すればよかったのに、と後悔する一方で、やはり自分にはこの道が向いていたのだ、とも思う。
(それにこの仕事をしているからこそ、俺は……)
何気なく目をやった方角に、引っかかるものがあって、聖夜はハッとした。
視線が止まった先は、ベージュ色のパンツスーツの小柄な女性だ。ショートカットだった髪が放置されて約2ヶ月というところか。
(そろそろ予約が入るんじゃないかと思っていたのに……)
肩透かしを食らう日々が続いていたのだ。
彼女の隣には若い男性がいる。同じ会社の同僚だろうと思われた。というのも、彼らの間には向かい側から歩いてきた人が通り抜けできるくらいの隙間が空いている。これで恋人同士なら、隙間風が吹く程度の関係なんだろうと聖夜は想像した。
女性がぎこちなく笑うのが見えた。
同時に聖夜の胸が指でつねられたように痛む。
「浜本さん、どうかしましたか?」
聖夜の隣でアシスタントの男性が不思議そうな顔をしていた。
「いや……。あ、信号渡ろう」
少し先に見える横断歩道の信号が点滅し始めた。聖夜は走る。横断歩道を渡りきったところで、聖夜が気にする男女の背中に追いついた。
「でもワンデーの使い捨てタイプは、本当に快適だよ。俺は断然ワンデータイプをオススメする」
コンタクトレンズの話題だった。男は必要以上に大きな声で話しているので、少し後ろを歩く聖夜にも聞こえてくる。
何だか気が抜けて隣のアシスタントに話しかけようと聖夜が口を開きかけたとき、男がわざとらしい仕草で前髪をかき上げた。
(あ、あれは……!)
男の腕の時計が目に入った。
聖夜は思わず立ち止まっていた。
(あれは、俺がほしかった……)
驚いて目を見開いたまま、男の腕を数秒見つめる。
アシスタントの男性が「忘れ物でもしたんですか?」と見当違いな問いかけを発した。
「あ、ああ」
小声で返事をする。この距離で聖夜がしゃべると、前を歩く女性が振り返る可能性が高い。振り向かせたいような気もしたが、やはりそれはできない、と思い直す。
「今日、あの店、休みかもしれない」
立ち止まったまま、ケータイを取り出した。もちろんつぶやく声はボリュームを絞っておく。それからメールを確認するふりをした。
「じゃあ違う店にしますか?」
「そうだな。あの店は今度でもいいし、新しい店を開拓するのもいいよな」
アシスタントは聖夜よりもあっさりした性格だった。それをありがたいと思いながら聖夜は方向転換する。
最後にチラッと振り返り、女性の背中を見た。
彼女はどこか緊張したような足取りで、聖夜からどんどん遠のいていく。
胸の中が鋭利なものでズタズタに切り裂かれていることに、聖夜はようやく気がついた。
その夜、正確に言えばもう明け方だったが、酩酊した聖夜はふらつきながらコンビニエンスストアへ立ち寄り、初めてタバコを購入した。
知っている銘柄を1箱。それと酔い覚ましに野菜ジュースだ。
マンションに帰った聖夜は窓を開け放った。
それからキッチンへ向かい、空のコーヒー缶を持ってくる。
そしてタバコのパッケージを開けた。トントンと叩いて最初の1本を取り出すのは、友達がやっているのを真似してみた。
そういえばライターがない。聖夜は小さくため息をついて立ち上がる。居酒屋でもらったマッチがどこかにしまってあったはずだ。
目星をつけた収納をあさると、ほどなく目的のマッチが見つかった。マッチを擦る。慣れない手つきでタバコを持ち、先端に火を近づけた。
消火したマッチを空き缶に放り込み、タバコを口にくわえる。
思い切って吸い込むと、胸が苦しくなってむせた。聖夜はこれまでにないほど激しく咳き込んで、最後には涙を流した。
タバコの味は苦いと表現されるが、聖夜にとっての最初のタバコは涙の味がした。
しかし人間の順応力というのは大したものである。
最初はこんな不味いものを好んで吸い込む人間がいるということに驚き、少しばかり呆れた聖夜だったが、次第にその魅力に取りつかれていった。
いまや、暇さえあればタバコを吸っている。
止めたらほしくなる、という状態はほぼ中毒だろう。タバコをくわえて、有害な煙を肺いっぱいに吸い込むと、他のどんなものよりも強い充足感を得られるのだ。
そしてため息と同時に煙を吐く。
胸に閉じ込めたいろいろなものが、白い煙になって排出され、どこかに消えていく。
おかげで仕事に集中できるようになり、そのころから世間での聖夜の評価は飛躍的に上昇した。皮肉にも、聖夜本人の生活は豊かになるどころか、ますますシンプルになり、心がなにかを感じることも少なくなっていた。
なにを見ても、なにを食べても、味気がない。
それくらいならタバコを吸って、煙を吐き出しているほうがいい。
仕事に支障が出ない程度に健康状態を管理し、日々ひたすらある人の電話を待つ。
それがカリスマ美容師と呼ばれる聖夜のうそ偽りない生活なのだ。
「またテレビで紹介されたんでしょ?」
目の前の椅子にちょこんと座った女性が言った。
確かめなくてもわかる。前回彼女がそこに座ってから2ヶ月半が経っていた。
「そうらしいね」
「いや、そうだよ! 私、みたもん」
「へぇ。カナもそういう番組をみるんだ」
「え、いや……テレビつけたら、たまたま映っていたの。思わず『わー! 聖夜だ!』って誰もいない部屋で叫んじゃった」
澤田香夏子は小さく舌を出した。
無邪気に笑う顔は実年齢より幼く見える。童顔というわけではない。もっと言えば誰もが目を留めるような美人でもない。
しかし彼女の顔にはどこか心をくすぐられる魅力があった。
(目、かな……?)
聖夜は鏡越しに香夏子の顔を見る。決して大きくはないのだが、彼女の目は表情が豊かだと思う。
「ふーん。録画してくれた?」
「えっ!?」
香夏子がひどく動揺したので、聖夜はびっくりした。その動揺の種類が判別できない。
仕方がないので、香夏子の髪の毛を両手で掬い上げた。
「少し伸びたね」
「うん」
「仕事、忙しかった?」
「うん。それに前回少し短くしすぎたかな、って」
「ごめん。気に入らなかった?」
急に香夏子が振り向いた。聖夜は慌てて彼女の髪から手を離す。
「そうじゃないの。聖夜のカットは最高だった! でも1か月後がちょうどおさまりよくて、もう少しこのままでいたいな、って思ったの」
「へぇ。気に入ってもらえたのなら、よかった」
「いつも、すっごく気に入ってるよ」
そう言って香夏子は前を向く。
聖夜はまた香夏子の髪を指ですいた。柔らかくて艶がある。とてもいい状態だと思った。
「髪、ちゃんとトリートメントしてるんだね」
「うん。……聖夜に言われたから」
鏡の中で香夏子が恥ずかしそうに笑った。思い切って髪の間に指を差し込み、手のひらで地肌に触れる。香夏子は鏡に映る聖夜をじっと見ていた。
「じゃあ、シャンプーしようか」
いつまでも香夏子の頭を触っているわけにもいかない。
聖夜は自分自身に区切りをつけるように手をおろす。それから香夏子をシャンプー台へ案内した。
香夏子は、聖夜の人生に最初から登場している主要メンバーのひとりである。
幼馴染というのが彼らの関係を表すのにもっともふさわしい言葉だが、聖夜はこの言葉が好きではない。生まれたときから家が隣同士で、いいも悪いもないまま、聖夜は香夏子と一緒に育った。その環境のせいで幼馴染と呼ばれるのが、聖夜はあまり嬉しくないのだ。
しかも幼馴染は香夏子だけではなく、もうひとりいた。
このもうひとりがあの男でなければ、聖夜の人生は違ったものになっていただろうとさえ思う。
それが丹羽秀司である。現在、アメリカの大学に留学中で、もう5年以上姿を見かけない。
やっと目の上のたんこぶがなくなったと思ったのも最初の1年だけで、結局聖夜にとって秀司はいてもいなくても厄介な存在であることは、今も昔も変わりなかった。
秀司は聖夜の永遠のライバルなのだ。
しかしライバルと思っているのは聖夜だけで、秀司は聖夜のことなど競争相手とは思っていないかもしれない。
身長で負け、勉強で負け、そして恋愛で負け――。
秀司に勝てるものがあるとすれば、聖夜には常識があり、世渡りが上手いということくらいか。だがそれも、秀司がその気になれば、聖夜よりも数倍上手く立ち回るのではないかと思われた。
聖夜は秀司に対し常に劣等感を抱えたまま、香夏子と3人の幼馴染をいまだにやっているというわけだ。
傍若無人な秀司はいつでも、聖夜が大事に想う香夏子を、独り占めしようとした。
実際、高校生になった秀司は香夏子を独占する権利を手に入れた。聖夜にはそれを阻止する隙も与えられなかった。秀司が自分の大切なものを穢したのだと思うと、いてもたってもいられない気分だったが、結局なにもできないまま、彼らの交際を黙殺した。
そして姑息にも聖夜は、彼らへの当てつけに、地元でもっとも美しい少女と付き合うことにしたのだ。
あれがマズかった、と聖夜は思う。
あんなことをするから、聖夜は苦いタバコを嬉々として吸わねばならなくなったのだろう。
かわいい女子から告白されて、一瞬舞い上がったとはいえ、聖夜はそのかわいいと呼ばれる女子が好きではなかった。それほど好きでもない女子と付き合ったところで、長続きするわけがない。
しかし聖夜と美少女の関係が壊れる前に、秀司と香夏子の関係が壊れるという予想外の事件が発生した。これは聖夜にとっては吉報だったはずなのに、タイミングが悪かった。
香夏子は急によそよそしくなった。
いつの間にか聖夜と香夏子の間には、修復不能な溝ができてしまっていた。
他人からは香夏子の態度が聖夜を慕っているように見えるかもしれない。しかしそれが聖夜には苦痛だった。店に通ってくるくせに、プライベートでは一切の関わりを拒絶されていたからだ。
男として嫌われる部分があるとすれば、やはりあの奥野なつきという美少女と交際した事実ではないか。
おそらく誤解されているのだと思う。聖夜は美人が好きなのだと。
目の前に座っている香夏子は、雑誌を広げたまま、聖夜の手つきに見入っていた。それがあまりにも熱心な、いや熱狂的な視線なので、聖夜もくすぐったいような気分になる。
だが聖夜の顔を見るとき、香夏子の視線は瞬時に熱を失う。目を合わせると困ったように笑い、すぐにごまかされた。なんでもない、と表情を作り直し、ただの幼馴染を完璧に演じるつもりらしい。
そんなものはいらない、と喉まで出てきている言葉を、必死に留める。
これが店でなければ、後ろから抱きしめて、耳元で本音を問いただしたいところだ。
(俺だってそういうチャンスがあれば、それくらい……)
そこまで考えた聖夜の脳裏に、不遜な態度の秀司が出現した。
『お前にできるのか?』
(できるさ)
『臆病者の聖夜が、香夏子を口説けるのか?』
(できるって……言ってるだろ!?)
『やれるなら、やってみろよ』
(今は仕事中なんだよ)
『ほら見ろ。できやしない』
「ったく、なんなんだ!」
「え、どうしたの?」
香夏子が心配そうに聖夜を見つめていた。
「なんでもない。俺、最近ひとりごと多くてさ」
聖夜は慌てて取り繕った。
「えー、なんだか危険だよ! 仕事が大変すぎるんじゃない?」
「そんなことない。でもひとり暮らしって寂しいからさ。気がついたらひとりごとをぶつぶつ言ってるんだ」
「……あ、でも私もひとりごと、多いかも!」
聖夜は思わず笑ってしまった。香夏子が自分で自分につっこむ様子が目に浮かぶようだった。
「ほらね。ひとり暮らししていると誰でもそうなるよ」
「いや、聖夜はモテるからさ。……そんなに寂しくないでしょ」
「えっ?」
「な、なんでもない」
香夏子のシャッターがピシャッと閉じた。
聖夜はあきらめて仕事に専念した。どうせ店の中では当たり障りのないことしか言えないのだ。そして香夏子とはここでしか会えない。
しかも中途半端にこんな関係が続いている現状では、香夏子のシャッターが開いているうちに彼女の中へ滑り込むチャンスは、今後も皆無のような気がする。
それに――。
(「あの男、誰?」って、軽い調子で訊けたらいいのに)
美容師の仕事をするようになってから、女性と話をすることも苦ではなくなった。しかし香夏子にも他の客と同様に仕事用の対応をすべきか、それとも幼馴染としてくだけた態度で臨むべきか、聖夜はいつまでもその迷いを吹っ切れずにいる。
ただ今回の件は、聖夜にとって衝撃が大きすぎた。香夏子にその事実を確認して、傷が深くなるなら、訊かないほうがいい。臆病だと罵られるかもしれないが、聖夜にはその勇気がなかった。
そもそも普通に考えて、真夜中にふたりきりで歩く相手が、ただの同僚や友達であるはずがない。
(……彼氏? だとしたら趣味悪い)
はさみを動かしながら、聖夜は渋い顔をした。ふたりの後姿は恋人同士には見えなかった。そうなると、考えられるのは、もっと最悪な関係だ。
(どうして?)
櫛を入れて、自分の気持ちをクールダウンする。
香夏子が望めば、もっとレベルの高い男性と付き合うこともできるはずだ。以前は秀司が相手だったのだし、学生時代は他にも香夏子に想いを寄せる男子がたくさんいた。それが社会人になって急にモテなくなるとは考えにくい。
わざわざレベルの低い男と付き合っている香夏子の気持ちが、聖夜には理解できなかった。
(いつもなにかを我慢してるような顔して……カナの本心はいったいどこにある?)
結局それがずっとわからないままだ。
だから聖夜は躊躇してしまう。
これ以上嫌われるのは困る。それくらいなら幼馴染の関係を続けているほうがマシだ。避けられるのは高校時代でこりたのだ。
だが、いつまでもこのままでいるわけにはいかないだろう。聖夜もそれは覚悟していた。
だからその日、そのときが来るまで、香夏子のいい幼馴染を演じていようと思う。彼女の中の自分はできるだけ「いいヤツ」であってほしいから――。
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