俺のせいでえっちな呪いにかけられた同僚騎士に責任を取りに行ったら、与えられたは夜通しの⋯説教!?泣いた

春瀬湖子

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えっちな呪い

4.震えるのは、彼のテントとこめかみと

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「いつも言ってるがお前は迂闊すぎるんだ」
「ごもっともで⋯」

腕を組んだキャロンにそう言われ項垂れる。

「ちゃんとわかってるのか?」
「わかってる⋯よ?」
「何故疑問系なんだ」
「わ、わかってます!俺がもっと慎重だったらキャロンは呪われなかったし⋯!」

俺の回答を聞いたキャロンは、はぁ、と再び深いため息を吐いた。


「⋯他には」
「ほ、他?」

俺が走らず歩いていればキャロンがシチューまみれになることも、あと俺が足元を見ていれば泥まみれになることもなかったはず。

そう思った俺は、その事も伝えるがキャロンはまだ足りないと言うようにじっとこちらを見つめてきて――

“うっ、そんな射貫くように見られるとドキドキしちゃうんだけど⋯”

だが迂闊にキャロンの顔から視線を落とすとキャロンのテントが目に入る。
そう、俺の視線の先はその2つしかない訳でー⋯


「ここに来たこともそうだろう」

⋯なんて、バカな事を考えていたせいで一瞬キャロンの言葉が理解できなかった俺は、軽く首を傾げてしまった。


「ここに来たこと?」


どれの事だ?と頭を捻りながらそう聞くと、キャロンのこめかみがピクッと動いたのが目に入る⋯が、わからないものはわからない。

「えーっと、扉はちょっと焦げただけ、だぞ?」
「それは迂闊とは言わん、ただの器物破損だ」
「あ、キャロンがお風呂に入っている事くらい想像出来た⋯ってことか?」
「エイベルだって泥を落とす為に風呂に入って来たんだからな」
「それから⋯」

“あと、なんだ?”

本当にピンと来ず、うんうん唸る俺に本日何度目かのため息を吐いたキャロンは、ポツリポツリと話し出した。


「⋯そもそもな、任務から帰るときも『やめろ』って言っただろ、何故だかわかるか」
「やめろ⋯?」
「お前が俺に肩を貸そうとした時だ!」
「あ、あぁ!はい!言われましたッ」

嫌がってるのに気付かずベタベタしようとして手を払われた事を思い出しながら慌てて頷く。

“そのまま足を泥に取られて泥まみれになったんだよな。泥まみれになった後は、キャロンがいつも通りだったから忘れてたけど⋯”


確かに、あの時キャロンは明らかな拒絶を示していた。
腕に触れる事すら拒絶を示すなら、その先なんてもっと無理だと理解する。


「⋯そうだな、俺なんかに触られるのなんて嫌だよな」
「⋯呪いのせいで理性が危うい、無理やり抱かれるとか考えなかったのか」

「え?」
「は?」


同時に話し出し、同時に戸惑う。

“無理やり抱かれる⋯?”

キャロンの言った言葉に唖然とする。
無理やり抱かれるどころか、一発俺とどうかな?なんて誘ったのは間違いなく俺の方だったはずで――


「⋯え?キャロン、なんて⋯?」

呆然としながらそう聞くと、一瞬口ごもったキャロンは渋々と言った風に口を開いた。


「⋯だから、俺は呪われてるんだぞ。それもえっちな呪いとかいう訳わからん呪いだ!」
「そ、そうだなっ!!?」
「えっちな呪いの実態は、理性のタガを外し性的欲求に思考が支配されるというモノだ」
「本能に従順なキャロンもいいと思いま⋯いえ、何でもないです」

いらん茶々をいれたせいでキャロンに睨まれ慌てて口を閉じる。

“いつも説教⋯じゃなくて、理性的なキャロンだからそういう野性的なのもいいと思ったんだけどな⋯”

どう考えても口に出すタイミングを間違えた。


「それなのにお前ときたら、俺の腕に体を擦り寄せてくるし」
「す、擦り寄せて⋯?」

“それってまさか、腕を貸そうとした時の事か?”

擦り寄せる、なんて可愛い感じではどう考えてもなかったはずだけど⋯


でも、だからあの時腕を振り払われたのだとしたら⋯


「ー⋯俺、キャロンに嫌われた訳じゃなかったのか?」
「はぁ?何故そんな話になる?」

怪訝なキャロンの顔を見てホッとした。

「だってキャロン、俺のせいでとうとう呪いまで受けて⋯」
「?だからそもそも、エイベルを庇ったのは俺の勝手だし迂闊だとは思うがお前のせいじゃないだろう」
「もう本当にそういうとこだぞ~~~!!」
「ちょ、バカやめろ!!!」


自分が思ったよりも不安だったのか、一気に安堵したせいでじわりと視界が滲む。

その勢いのまま、キャロンの制止を無視してひしっと抱き付き――


グリッとした固いものが俺の頬に当たった。


「ッ!」
「⋯⋯あ」

しまった、と思ったときにはもう遅く、一瞬息を詰めたキャロンが心なしか赤い顔で俺を睨む。

「⋯そ、その、不可抗力って言うか⋯えっと、解呪する?」
「エ、イ、ベ、ル⋯!!」
「だ、だって俺の事嫌いじゃないんだろ!?知らない女は抱かないって言ってたし、だったら知ってる男ならアリなのかなって⋯」
「あのなぁ!」
「ひぇっ」

ピクピクッと震えるキャロンのこめかみに怯みつつ、それでももちろん引き下がる訳にはいかない。


“俺が嫌いで触られるのも嫌だっていうならどうしようもないけど⋯、そうじゃないなら”

「キャロンがどれだけ俺のせいじゃないって言ってくれても!これは俺が迂闊だったせいで招いた事だし、俺はキャロンの呪いの責任が取りたいよ⋯っ!」
「⋯エイベル⋯」

相変わらずキャロンのテントの前で見上げていると、そっと俺の方に手を伸ばしたキャロンが少し控えめに俺の頬を撫で――



「いだっ、だだっ」

そのまま思い切り頬をつねられた。


「俺の話を聞いてないのか!?俺は“無理やり抱かれる可能性”を示唆してるんだぞ!」
「え、えぇ⋯?聞いてたけど⋯」

無理やり抱かれるどころかされているのは終わらないお説教。

そしてそれは、何よりも俺を大事にしてくれてるからだとも伝わってきていて。


「⋯俺はいいよ?無理やりでも⋯って、全然無理やり感はないけど、でも。俺はキャロンになら」
「呪いを解く為か?」
「もちろん」


――なんて断言したものの、心にチクリとした何かが刺さる。

抱かれたいのは、呪いを解く為ー⋯


ー⋯なの、だろうか。


“責任を取りたいのも本当だし、キャロンに苦しんで欲しくないのも本音だ。けど⋯”


“――俺、キャロンに抱かれたいんだ”


それはこんな状況じゃなければ叶わないからこそ、芽生えてしまった本心だった。


「⋯お前なぁ⋯」

もうデフォルトとしか思えないキャロンのため息を聞きながら、何かを考え込むキャロンを見る。


「⋯本当に、いいのか」
「え?」
「後悔しないかと聞いている」
「後悔なんかしないッ!」


反射的にそう宣言すると、キャロンのテントがピクリと震えて。


「後でお説教もいっぱい聞く!だから⋯」

相変わらず床に座っている俺と、ベッドに腰かけているキャロンの視線が絡む。

そして絡んだ瞳が心なしか熱を帯びている気がし、俺の喉がごくりと鳴った。



――どちらから、とかはわからない。


「んっ」

キャロンと向かい合うように右足だけベッドに乗せて膝立ちになった俺は、促されるように瞳を閉じる。

俺が口付けを降らせたのか、キャロンが俺の頭を引き寄せたのか⋯
初めて重ねたキャロンの唇は、呪いのせいで渇いていたのか唇も少しかさついていて。

そしてその柔らかいだけではない感触が実感を伴い俺の心を痺れさせた。
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